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短信:患者が笑顔で過ごせる在宅医療を ‐在宅緩和ケアのスペシャリストのコメント‐

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 「私が在宅医療を始めた20年ほど前と違って、在宅医療の環境はかなり整ってきました。がん末期の人は、65歳にならなくても40歳から介護保険のサービスが受けられるようになりました。訪問看護も医療保険が利用できます。また、緩和ケアの技術を持った在宅医もずいぶん増えてきました。システムが整ってきて在宅でも医療機関とほぼ同様の処置が受けられるようになったのです。ですから家族が無理にすべてを行う必要はありません。しかし、現状では、在宅療養・介護を選択する人はそれほど増えてはいません。理由は、こうした状況を知る情報が不足しているためです。」
 がん診療連携拠点病院や大学付属病院には、医療相談や在宅支援室が設置されるようになった。しかし、実際の在宅の仕組みや、準備については知らない病院がまだ多いという。

 「相談窓口があってもいわゆる“縦割り”の組織のため、医療保険の一般的な紹介はしても、介護保険までカバーして患者さんの生活環境に合わせたプラン作りをしてくれる窓口は、ほとんどないに等しいのです。緩和ケア病棟を希望しても、入院にこぎつけるまでに1か月かかり、経済的問題で入れないこともあります。こうした時の患者さんのケアについてはほとんど考えられていません」。

 そこで、自治体に働きかけてこうした状況をカバーできる“在宅医療相談窓口”を地元豊島区に開設した。「患者さんや家族のために、こうした窓口が全国に増えていく重要性を痛感します」。

 “末期がん患者の家族のための看取りの教科書”を刊行した。そこには豊かな経験に基づく在宅緩和ケア医からの、実用的で、細かい指針と、患者家族への温かい言葉が綴られている。

 「大病院や専門病院で治療を終えた患者がいきなり在宅療養に踏み出すには、何かと不自由があります。本人、家族が周辺の準備をし、安心して在宅に移れるように、近くの中規模病院等が後方支援ベッドを設け、家族が介護に限界を感じた折や、緊急入院を引き受け、連携して緩和ケアを行うことがのぞましいのです。」

 こうした考え方の実践に2006年、同区要町にホームケアクリニックも開設した。まだ、全国でも数少ない専門的存在だ。

 「こうした在宅医療、介護をバックアップする受け皿病院がないと、今後、大勢のがん難民を生み出すことになるのではないでしょうか」と危惧する。

【東京都がん対策推進協議会委員、(第26回 日本在宅医療学会学術集会 会長:2015.7.19~20日開催予定)】