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560号 介護療養病床は本当に廃止される?ー厚労省の療養病床の在り方検討会が初会合ー

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2017年度末廃止の介護療養病床を含む慢性期医療のあり方を検討

 介護療養病床は本当に廃止されるのか、看護配置4対1を満たさない療養病床をどうするのか。2017年度末で廃止が予定されている介護療養病床を含む療養病床のあり方や慢性期の医療ニーズへの対応について、厚生労働省の検討会が総合的な検討を始めた。

 厚労省は7月10日、「療養病床の在り方等に関する検討会」の初会合を開催。医政局、保険局、老健局の3局合同による検討会として開かれ、2015年末に向けて「慢性期医療の在り方」「慢性期の医療提供体制などの在り方」の選択肢を議論する。検討会がまとめた選択肢は、2016年明けから社会保障審議会において、医療提供体制を議論する「医療部会」や、介護保険制度の見直しを検討する「介護保険部会」に示され、そこでさらに議論を深め、必要な法律改正案(2017年度の通常国会に提出する方向)などを策定することになる。 

■介護療養、看護配置など、療養病床には課題が山積

 療養病床は医療法に規定される病床区分で、医療保険の適用を受ける「医療療養病床」と、介護保険の適用を受ける「介護療養病床」(介護療養型医療施設)に分けられる。介護療養病床は、2006年の診療報酬・介護報酬同時改定の際に実態調査の結果、医療療養病床と介護療養病床で入院患者の状況に大きな差が見られなかったこと(医療の必要性の高い患者と低い患者が同程度混在)。さらに、医療保険制度改革の中で、医療費総額抑制を主張する経済財政諮問会議による医療費適正化の議論を受け、介護老人保健施設等への転換促進策として2011年度末の廃止が決定した図1

 ところが、2011年の介護保険法改正の際に、転換が進んでいないことが明らかになり、廃止・転換期限を2017年度末まで延長した。

 その後、2015年度の介護報酬改定をめぐる論議の中では「医療必要度の高い要介護者も少なくない。介護療養病床が果たしている機能は今後も必要である」との意見が数多く出され、新たに「療養機能強化型の介護療養病床」(機能に応じてAとBに分けられる)が新設された。このため「介護療養病床は今後どうなるのか」という疑問の声が医療・介護現場から強くなってきた。また、医療法では「療養病床の看護配置は4対1」となっているが、診療報酬の基準に換算すると「20対1」となり、病院全体で20対1を維持できない療養病床は、経過措置で2017年度末までしか認められない。

 さらに、2015年度から各都道府県で策定作業が始まった地域医療構想では、在宅医療や介護施設で対応する者への医療・介護サービス提供体制に関する方針を早期に示すことが求められ、検討会では介護療養病床だけでなく、慢性期医療および慢性期医療の提供体制に関しても議論することになった。

<厚労省の医政局長は、「施設類型の見直し含めた選択肢提示」求める>

 検討会の初会合では、厚労省医政局の二川局長が「施設類型の見直しも含めた政策の選択肢を提示してほしい」と検討会に求めており、総合的かつ抜本的な対策が検討される見込みだ。

<日本医師会代表委員は、「介護療養病床の存続」要望> 

 日本医師会代表の鈴木常任理事は「医療ニーズの高い要介護者を受け入れるため、介護療養病床は重要。廃止を撤回し、存続させるべき」と、介護療養病床の存続を求めている。

<田中座長代理、「老健施設以外の複数の転換先を考える必要」)

 検討会座長代理の田中慶應義塾大学名誉教授は、「介護療養病床から老健施設への転換を進めているが、今から振り返ると、老健施設は在宅復帰を目指す施設だが、介護療養に入院する患者の多くは死亡退院しており、患者像が大きく異なっている。老健施設以外の複数の転換先を考える必要がある」と指摘している。

【霞ヶ関うらばなし】

厚労省は都道府県知事による病床規制の権限強化に期待?

 厚労省の担当者は「療養病床にはふさわしくない患者も入院している可能性がある」と述べており、療養病床の削減に大きく舵を切りたいのが本音。2015年度から各都道府県で策定がスタートした地域医療構想(ビジョン)。地域医療構想を規定した医療介護総合確保推進法では、都道府県知事の病床規制に対する権限が強化された。かつて同法案の国会審議時に原徳壽医政局長は「(都道府県知事は)懐に武器を忍ばせている」と発言しており、療養病床の削減に、都道府県知事の病床規制権限の強化に期待しているかも…。

ある介護ジャーナリストのコメント:「先送りは限界に。方向性のいち早い提示を」

  2017年度末廃止のカウントダウンまで1年半を切って、ようやく「療養病床の在り方等に関する検討会」がスタートした。2025年の医療需要と、目指すべき医療提供体制を示し、医療機能の分化・連携と、地域包括ケアシステムの構築を一体的に推進ための地域医療構想(ビジョン)の策定も始まっている。2017年度末には地域医療構想の策定に基づく医療計画の策定、さらに介護保険事業(支援)計画の策定、そして2018年4月の診療報酬・介護報酬の同時改定など、スケジュールは目白押しだ(図2)。

 地域の実情を踏まえた慎重な検討は必要だが、時間は限られており、「先送りは限界」である。方向性のいち早い提示が必要だ。

事務局のひとりごと

 結果として「政権交代」だけを目標に掲げて、第一党になった民主党政権から自民・公明連立政権に戻ったこの3年間、アベノミクス効果により、実態はともかくとして、表面的には日本は好景気とも呼べる状態になった。
 「消えた年金問題」、「『後期高齢者』という名称はお年寄り切捨ての考え方だ」、振り返ると厚生労働省絡みの政治問題は民主党への政権交代に大きなきっかけを作ったことを思い出す。
 民主党に政権交代された間、診療報酬改定が2度あったが、いずれも一応は「プラス改定」であった。政権交代という言葉がほとんど見向きもされなくなった現在、診療報酬は「マイナス改定(全体としての総額は増えるが一人あたりの頭数で割ると単価が下がる)」が当たり前という風潮になってしまっている。

 診療報酬や介護報酬で新たな点数が承認されるプロセスは、先駆的に行った事例で、医療・介護において患者・利用者・取り巻く人々(医師・看護師・スタッフの処遇)が何らかの恩恵を被ることができるような「良い事例」を役所が勉強し、試算・点数化して設定される。役人が机上でだけ考えて設定するのではない。あくまで事例が基となっているのが通例だ(例:急性期看護補助体制加算、医師事務作業補助体制加算など)。その観点からすれば、実際の現場が必要としているものを止めさせるという考え方は、政治的・社会的要素が大きな圧力になっているとしか思えない。

 平成27年4月時点の病院の病床数合計は、約157万床である。ちなみに同月時点の入院患者数は約126万人だ。先月号で触れた2月時点では約129万人だった入院患者が約3万人も減少している。これはゴールデンウィークの影響ではないかと思われる。連休一つで入院患者が3万人も減るのはどういうことかという気もするが、連休の間くらいだけなら自宅に帰ってもらっても大丈夫な患者、一般的に考えれば、病状が安定しているものの、ずっと在宅では心もとない、あるいは面倒を見る家族が大変、などの理由で入院している患者が結構いるということだろう。平均在院日数が徐々に減り、そんな中で病院が利用率を上げるためには、適切な表現ではないかもしれないが、入院患者を開拓しなければならない(病気を生産しなければならない)のだ。でなければこれまでもずっと入院患者が130万人あたりで安定して存在していることの説明がつかない。つまり病床があるからそれを埋めるための活動が行われているのだ。
 だからこそお役人からしてみれば、医療区分1(医療の必要性があまり高くない患者と思われている方々)のために、増える医療費の伸びを抑制するためにそこにメスを入れに行ったのだろう。

 「平成30年3月31日まで」と廃止期限が法律に明記されている介護療養型医療病棟の行方の問題だが、療養病床削減に向けては多くの社会的背景から、医療費適正化計画の一環として掲げられてきた目標だ。ところが今となっては、現場感覚としては療養病床必要論の方が勝っている現状もある。
 昨今、安保法案で日々議論されている憲法上の解釈をめぐっての議論が頭にちらつくが、「在宅がテーマ」とされつつも、なかなかインフラが整っていない段階では、それとは異なり、「法律だから変えてはならない」という考え方の方がおかしいのではないか、とさえ感じてしまう。
 来年は診療報酬改定の年に当たる。年末に至るまでの議論で、療養病床の行く末を見守りたい。

<ワタキューメディカルニュース事務局>