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短信:超高齢社会の課題解決へ壮大な社会実験 ‐東大が取り組む社会実験型研究「柏プロジェクト」‐

 超高齢社会の最前線にいる日本。地域の中で安心して生活できる次なる社会の土台となるのは、在宅医療を中心に据えた「地域包括ケア」である。健康寿命の延伸を目指す東京大学高齢社会総合研究機構(東大IOG)の壮大な社会実験、「柏プロジェクト」をご紹介する。

 
 厚労省は、今後の医療、介護政策の方向として地域包括ケアの展開を掲げている。
 そこでは、生活習慣病の予防として、まず虚弱(フレイル)予防を重視。虚弱期のケアシステムの確立、在宅における予防、医療、ケアの推進などを目標としている。日常生活圏の中学校区程度を単位として、医療、介護、生活支援、介護予防、住まいの5つの視点から、包括的、継続的な取り組みを行っていこうというものである。
 東大IOGでは、2009年6月から柏市(人口約40万人)の豊四季地域を中心としたフィールドで、地域包括ケアシステム具現化の最重要課題としての、在宅医療推進、充実への具体的な取り組みをすすめた。その重点は以下の5点に置いた。

 
① 在宅医療を行う医師の増加及び質の向上を図るシステム(研修プログラムの実践)
② 在宅医療の負担を軽減するバックアップシステム
*主治医の訪問診療を補完する副主治医、医師のグループ化
*病院の短期受け入れベッドの確保
*24時間対応できる訪問看護と、訪問看護の充実及び多職種の連携
③ 情報共有システムの構築
③ 市民への相談、啓発
④ ①~④を実現する中核拠点(地域医療拠点)の設定

 
 では、実際に地域で実施した具体策はどのようなものか。
東大IOGの飯島勝矢准教授は、「重要なのはまず地域における在宅推進の機運を高めること。そのために“多職種連携研修会”を構成しました。これにより、在宅医療を推進する専門家を地域に養成することが重要なのです」と語る。
 研修会の開催主体は郡市医師会を中心とする地域の関係職能団体及び市町村行政。研修内容は講義、グループワーク、同行実習(医師のみ)、懇親会など。受講対象者は、同一地域内に勤務する在宅医療・ケア関係者(開業医、歯科医師、薬剤師、訪問看護師、ケアマネジャー、病院職員など)でそれぞれ同数。開催は原則として郡市程度の単位を想定している。

 
 この多職種連携研修会の特徴は、①郡市医師会と市町村行政がタッグを組んで運営の中心を担うこと。②受講者のリクルートにあたっては、原則として地域の関係職能団体の推薦を経ること。③現実の連携との連続性を考慮して、同一市町村内の多職種を対象としていることなどである。
 なお、これらの在宅医療の旗振り役は、特定の医師のみが担うのではなく、郡市医師会が介在して、地域を“面”として在宅医療・ケアの供給体制を整えることが重要となる。
 継続的にその活動を応援し、各団体そして医療と介護の中心となって調整するのは、市町村行政の役割である。
 「注目すべき研究結果の一つは、在宅医療に取り組む医師数次第で高齢化が進展した際の対応の余力が大きく変わってくるということです」(飯島氏)。

 
 超高齢社会の課題解決に向けたこの研究活動は、「柏プロジェクト」として5年間取り組んだ。東大IOGでは今後も順次取り組みを進めていく方針である。