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No.581 介護保険料の長期滞納で、資産差し押さえ高齢者が1万人に               背景には年々アップする保険料が

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■2014年度の資産差し押さえは2013年度の3割増の1万人超え
 何らかの理由で介護保険料を滞納していため、市町村によって資産を差し押さえられた人が2014年度で1万人を超えていたことが、厚生労働省の「平成27年度介護保険事務調査」で明らかになった。サービスの利用料を引き上げられ給付を制限された高齢者も、2年連続で1万人を上回っていた。背景に、保険料上昇や高齢化の進行があり、今後さらに増えていく可能性があり、社会問題化してきている。

 

 調査は、全国1741市区町村を対象に昨年度に実施された。2014年度は、517市区町村で計1万118人が資産の差し押さえを受けた。2013年度の7900人から3割近く増え、調査を始めた2012年度以降で最も多かった図1

 

 自治体別では、大阪市(404人)、長崎市(347人)、横浜市(293人)、長野県飯田市(278人)、広島市(272人)-の順。資産がない人も多く、実際に預貯金などが差し押さえられたのは、2014年度で計6305人だった。滞納した期間は自治体によって数カ月から数年までまちまちだった。

 

 資産の差し押さえは、件数の中に40~64歳の現役世代も含まれている。資産の差し押さえは、長期間にわたり保険料を滞納している人を対象に市町村の判断で行われる。その他の給付の制限は、高齢者が実際に介護保険サービスを使う時に課されるペナルティーで、保険料不払いの期間が1年以上になると、いったん全額を負担した上で後から給付してもらう「償還払い」とされる。さらに、不払いが1年半を経過すると、「償還払い」が止められ、2年以上となれば利用料を3割まで引き上げられてしまう。ただし、詳しい事情を踏まえてより柔軟な対応がとられることもある。

 

 介護保険は、介護保険料と税金を財源に運営される制度であり、被保険者の公平性を図る観点から、介護保険料の未納、滞納は原則許されない。しかし、厚労省の「介護保険事業状況報告」によると、全国の市町村を合わせた保険料の未収額は2013年度の時点で274.3億円。介護保険制度がスタートした2000年度は25.2億円で、既に10倍以上に達している

 

■滞納の背景に、年々上昇する一方の介護保険料

 厚労省の調査によると、2012年度の介護保険の総費用は8.9兆円、介護保険制度がスタートした2000年度(平成12年度)に比べると、総費用は約2.5倍にまで膨らんでいる図2 介護費用と介護保険料の推移)。

 高齢者の増加に伴い、総費用の上昇は避けられないことから、介護保険料の滞納者を減らし、収納率の向上を図ることが急務。しかし、保険料の滞納の背景には、年々上昇する保険料を納付できない65歳以上の高齢者がいることも確かなようだ。

 

 介護保険料は利用者が原則1割を負担し、残りは税金と40歳以上が支払う保険料で半額ずつ支払う。40~64歳の保険料は人口構成を踏まえて毎年度見直され、介護保険料の29%(2012~2014年度)となっている。保険者は市町村。加入者(被保険者)は、第一号被保険者(65歳以上の高齢者)2910万人、第二号被保険者(40~64歳)4263万人で合わせて7000万人余り第一号被保険者が支払う介護保険料(第6期:2015~2017年度)は全国平均5514円で、第5期(2012~2014年度:4972円)に比べ10.9%もアップし、今後も上昇傾向が続くものと見られる

 

 厚労省の試算によると、第一号被保険者(65歳以上の高齢者)が払う介護保険料は、2020年度が6771円、さらに団塊の全世代が後期高齢者となる75歳以上となる2025年度は8165円。2012~2014年度の第5期(4972円)に比べると、上昇率は2020年度で36.2%、2025年度には64.2%にも上ると推計される。

関係者のコメント

 

<厚生労働省のコメント:「給付制限を行う前にきめ細かい給付相談を行う」>
 保険料滞納者に対する保険給付の制限への対応について、厚労省は、「保険料滞納があった場合でも、給付制限等の措置を講じる前に、この措置についての周知やきめ細かい納付相談を行うことにより保険料を納めていただき、この措置を講ずる人が生じないようにすることが重要」との見解を示している(平成13年7月30日 老健局介護保険課事務連絡より)。

 

<滞納ワースト市町村の市民:「保険料徴収に嘱託職員を雇い税金を使うのは問題」>

 介護保険料滞納が目立つ大阪府の大阪市や柏原市などでは、非常勤嘱託職員を採用し、保険料訪問徴収を行っている。嘱託職員の平均報酬は約17万円。市民の中には、「保険料徴収に余計な税金を使うのは問題だ」と、憤慨する声がある。

 

<大阪市の民生委員の声:「ペナルティーを厳密にすると、必要な医療・介護を受けられない弊害も」>

 保険料滞納で資産差し押さえワースト1の大阪市の民生委員は、「介護保険料を滞納している高齢者の中には、健康保険料も滞納しているケースが多い」と指摘。ペナルティーをあまりにも厳密に適用しすぎてしまうと、「必要な介護サービス、さらに必要な医療も受けられなくなってしまう」と危惧する。

 

<要支援1~2の高齢者の憤慨の声:「真面目に介護保険料を払っても実質的な給付制限が進んでいる」>

 平成27年度の介護保険法改正では、要支援1・2の対象者は介護保険本体の給付(予防給付)から、訪問介護と通所介護を外されるなど、実質的な介護保険給付の制限が進んでいる。要支援1・2の対象者の中には、「真面目に保険料を払っても、給付制限が行われることに疑問を感じる」と憤慨する声がある。

 

<要介護度3以上の高齢者、家族の声:「特養への入所が遠のき、保険料納付への意欲が薄れる」>

 同じく平成27年度の介護保険制度の改正により、特別養護老人ホームへの入居は要介護3以上となった。全国で約52万人が入所待ちといわれる特別養護老人ホームの入所条件を、「より重度の人のための施設」と厳しくさせた。入所待ちの高齢者や家族の中には、「長年にわたり介護保険料を納めてきても、入所適応要介護度が上がってしまい、特養への入所は絶望的になった。保険料納付への意欲が薄れてしまう」と嘆く。

 

事務局のひとりごと

 

 「やりたい仕事が見つからない」などと、あまり贅沢なことも言っていられなかった当時、田舎の高校を卒業して大学進学。そして就職活動。そこからはや20年以上経過した。ほかにももちろんあるのだろうが、増えたのは人脈、家族、車、持ち物、昔よりは貯金、そして何といっても体重、といったところか…。

気持ちだけ社会人1年目に戻って1か月の生活費はいくらだったか、少し考えてみる。ネットで調べた平均値だと、ざっとこんな感じだ

【固定費】

・家賃 6万6000

・光熱費(電気、ガス、水道)1万円

計7万6000

【変動費】

・食費 2万円

・通信費 1万1000

・交際・おしゃれ費 3万円

・日用・医療費など 3万円

計 6万4000

 

 筆者が社会人になったばかりの頃は携帯電話などなかった。固定電話でNTTの電話加入権が7万円くらいした記憶があるが、ランニングコストで月に1万円かかったという記憶はない。せいぜい数千円ではなかったか。

 住まいは会社の借上寮(会社の建物の上)。給与天引きで月に約1万程度差っ引かれる。ありがたいことに水道光熱費は借上寮の天引き分の定額内に含まれていたので「ゼロ」。医療費と日用品で3万もかかったような記憶はない。食費はそれなりにかかったかもしれない。書籍にも金を費やした。小説、雑誌、マンガを売れるほど買った。一方で車も当時持っていなかったし、ゴルフも始めていなかったので、変動費の記憶は定かでないが、6万もあれば十分生活ができたのではなかったか。

 

 こうやって見ると、現代の1か月に約14万円かかるとされている生活費は、自分に当てはめてみると、固定費で6万6千円、かからなくて済んだのかもしれない。当時勤めていた会社の福利厚生に感謝だ。反面、給料も支給額は新卒時で月額17万円台の額面(手取りはもっと下)だったかと記憶している…。

 「定年」という言葉も、今や60才という年齢では区切ることができないだろう。1億総活躍社会」であるので、人は一生「生涯現役」なのかもしれない。とはいえ、終身雇用(もはや死語なのか?)を終え、第二の人生を歩まれる高齢者にとって、ある年齢を境に、収入面は大きな転換期を迎えることになるだろう。

 先述のように、人間が生活を営む上で「住まい」とそれにかかる固定費の大きさは無視できない金額だ。当時は憧れとされていた「年金生活」も、それだけで生きていこうとするならば、厚生年金や厚生年金基金に加入している組織での勤務を終え、それなりの貯蓄があったとしても非常に危うい時代だ。欲しいものは極力我慢、レジャー・旅行や飲食も控え、つつましやかな余生を過ごす、たまに来る孫にはお小遣いをあげて…、なんてことが、果たして今の団塊世代が後期高齢者に年々近づいている現在、マジョリティをとなる生き方になっていくのだろうか。

 

 施設から在宅に誘導される政策の中、多くの高齢者は医療や介護が必要とされないとされた方(決して自分の主観としてではなく、周りから決められるものなのだろうが)の、住まいにかかる費用には、公的な資金補助がほとんど入らない。つまり家賃や水道光熱費などの固定費が最低でもかかる。ましてや医療・介護の緊急必要度は否応なく上がっているので、いざという時の安心を求めたいところだろう。

 「サ高住」では食費も含めれば月額で約15万前後の支出は避けられない。先の筆者が20代前半で経験した金額とさして変わらないのだが、変動費にかかる医療・介護サービスの支出増と、支給開始年齢がどんどん上がっていく年金とのバランス…。さてさて大きな問題だ。

 

 今回のテーマである「介護保険料長期滞納」問題は2025年に向け、果たして改善されていくのだろうか。社会人になりたてで何も持っておらず、決して楽しくなかったわけではないが、地に足がつかず、不安で物寂しかった当時を思い出しつつ考えてみた。

 体が思うように動かなくなるであろう身にとっては、別な意味で不安で物寂しい未来なのかもしれない(※1)。そうならないためにも、一人ひとりが全てを国に頼ろうとするのではなく、将来を見据えた行動をしていく必要性があるということをあらためて強く感じるテーマであった。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 

(※1)……そういった漠然とした将来への不安感が、今やタンス預金1,700兆円を生んでいる背景にあるのではないだろうか。

<WMN事務局>