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No.587 近隣の病院との統合・再編で公立病院のさらなる経営改善を  内閣府が第10回「公立病院改革の経済・財政効果」を公表

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医業収益が改善した病院は290、悪化した病院は342

 内閣府は8月16日、近年の公立病院改革による経営改善効果を個別病院の経営データによって検証するため、政策課題分析の第10回「公立病院改革の経済・財政効果について」を公表した。総務省の「公立病院経営改革プラン」の取り組みがあった期間(2007~2013年度)を中心に、有識者の研究会(座長=池上直己・慶大名誉教授)が全632の公立病院の経営状況について分析。医業収益が改善した病院は290、悪化した病院は342で、②医業損益変化の分岐となった主な要因は医業収益の変化であり、医業費用を抑制して経営改善を果たした病院は相対的に少なかった、③医業収益は大規模病院ほど増加し、規模が小さくなるにつれ減少していた、④規模に関わらず平均単価(患者1人当たりの平均診療報酬)は医業収益プラスに寄与し、特に入院患者の平均単価はプラス効果が大きかった、⑤不採算地区の病院では、患者数の減少が平均単価の上昇効果を上回り、全体の医業収益を減少させる結果となった-などの分析結果を示した(図表1医業収支が改善・悪化した病院とその要因。図表2入院・外来収益の変化要因)。

 

 

 その上で、今後人口減少等が一層進む中で、公立病院は地域のニーズに応じ、①大中規模の公立病院は、医療の質の向上を図り、民間病院や公的病院を意識した合理的かつ意思決定の早い経営が求められる、②また、距離の近い公立・公的病院との統合・再編や、地方公営企業法の全部適用で経営改善を検討することも有用である、③小規模公立病院は地域で唯一の医療機関となっている場合が多いので、医師や看護師が勤務しやすい環境づくりを進めると同時に、場合によっては再編や統合等も検討し、地域医療の維持と病院経営とのバランスを常に見直していく必要がある-などの提言を行った。

 

 今回の分析は、総務省の「地方公営企業年鑑」における個別病院の経営データ(個票データ)を用いて、公立病院改革による経営改善効果を検証することが狙い。総務省は自治体病院の経営改善を目的に、2007年に「公立病院改革ガイドライン」を公表。その後、各自治体で、経営効率化、再編・ネットワーク化、経営形態の見直しなどの「公立病院経営改革プラン」を策定し実行。その結果、2008年度には公立病院の7割が経常赤字を計上していたのが、2013年度には赤字病院の割合は5割程度に減少した。

 

 内閣府はこの改革プランの取り組みがあった期間(2007~2013年度)を中心に、個別病院の経営データ(全632病院)に基づき、公立病院の医業収益及び費用の変化について、病床規模別・立地条件別に検証。分析では、「病院自体の経営改革努力」をより明確にするため、自治体からの繰入金は医業収益から除外したほか、過去の投資などの影響を除くために医業費用から減価償却費・消耗費を控除した。

 

小規模病院は地域医療の維持のため、場合によっては再編や統合の検討も

 分析に当たっては、632病院を、分類Ⅰ「不採算地区病院(200床未満で最寄りの一般病院まで15㎞以上離れ、あるいは国勢調査の人口集中地区以外の地域にある一般病院)」、分類Ⅱ「採算地区にある200床未満の病院」、分類Ⅲ「200~400床の病院」、分類Ⅳ「400床以上の病院」-に分類した。

 

 分類Ⅰ「不採算地区病院」は250病院で、①医業収益、医業費用とも増加した病院は79、うち収支が改善したのは29病院、悪化したのが50病院。②医業収益が増加し、医業費用が減少したのは10病院で、全て収支が改善、③医業収益が減少し、医業費用が増加したのは51病院で、全て収支が悪化、④医業収益、医業費用とも減少した病院は110、うち収支改善が19病院、収支悪化が91病院。

 

 分類Ⅱ「採算地区にある200床未満の病院」は106病院で、①医業収益、医業費用とも増加した病院は54、うち収支が改善したのは36病院、悪化しているのは18病院。②医業収益が増加し、医業費用が減少したのは8病院で、全てで収支が改善。③医業収益が減少し、医業費用が増加したのは13病院で、全てで収支が悪化。④医業収益、医業費用とも減少した病院は31、うち収支改善が6病院、収支悪化が25病院。

 

 分類Ⅲ「200~400床の病院」は144病院で、①医業収益、医業費用とも増加した病院は98、うち収支が改善したのは70病院、悪化しているのは28病院、②医業、収益が増加し、医業費用が減少したのは7病院で、全てで収支が改善。③医業収益が減少し、医業費用が増加したのは10病院で、全てで収支が悪化。④医業収益、医業費用とも減少した病院は29、うち収支改善が6病院、収支悪化が23病院。

 

 さらに、分類Ⅳ「400床以上の病院」は132病院で、①医業収益、医業費用とも増加した病院は123、うち収支が改善しているのは97病院、悪化したのは26病院。②医業収益が増加し、医業費用が減少したのは0病院。③医業収益が減少し、医業費用が増加したのは6病院で、全てで収支が悪化。④医業収益、医業費用とも減少した病院は3、うち収支改善が2病院、収支悪化が1病院。

 

 これらデータをもとに、「医業収支については、大規模病院ほど収益の増加によって収支の改善を果たした病院が多く、小規模病院では収益の減少が主として収支悪化を招いている状況が確認された。一方、費用の減少を主因として収支の改善を果たした病院は少なかった」「収益の変化については、規模や立地に関わらず、患者数の減少がマイナスに寄与している一方、単価(患者1人当たりの平均診療報酬)についてはプラスに寄与している傾向がみられた。特に、大規模病院ほど単価の上昇傾向が収益の増加に強く寄与したため収益が減少していることが明らかになった」「公立病院改革の効果は、各病院の規模や立地状況によって大きく異なっていることが確認された」とする分析結果を示した。

 

 分析結果をもとに内閣府は、大中規模病院については、「診療単価の上昇による経営改善が中心であり、医療の質の向上を図りつつも、民間病院や公的病院を意識した合理的かつ意思決定の早い経営が求められる。また、距離の近い公立・公的病院との統合・再編や、公営企業法の全部適用を検討することも有用であると考えられるが、形式的な形態の変更のみでは、必ずしも経営改善につながらない可能性がある点には留意する必要がある」と提言。

 一方、小規模病院については、「診療単価の上昇効果が小さく、患者数の減少によって経営の改善が厳しい状況にあり、特に一部の不採算地区病院では、病院として十分な医療供給体制を整えることが困難になっている可能性が見受けられる。小規模公立病院は地域で唯一の医療機関となっている場合も多いことから、医師や看護師が勤務しやすい環境づくりを進めると同時に、場合によっては再編や統合なども検討し、地域医療の維持と病院経営とのバランスを常に見直していく必要がある。さらに、介護・福祉分野との事業連携などを進めることも重要である」ことを強調した。

関係者のコメント

 

<亀水 晋総務大臣官房審議官(公営企業担当):「さらなる経営の効率化や再編・ネットワーク化を」>

 「新公立病院改革ガイドラインを踏まえ、地域の医療を守っていくよう、さらなる経営の効率化や再編・ネットワーク化等に取り組んでいただきたい」(2016年5月17日 平成28年度全国自治体病院開設者協議会定時総会での挨拶)

 

<佐々木 健医政局地域医療計画課長:「各都道府県で地域医療構想がまとまった際に、公立病院について優先的に議論してもらいたい」>

 厚労省の「医療計画の見直し等に関する検討会」の下に設置された「地域医療構想に関するワーキンググループ」の第2回会議が8月31日に開催。医政局地域医療計画課長の佐々木健氏は、公立病院は新公立病院改革ガイドラインに基づき、2015年度または2016年度中に新改革プランの策定が求められていることを踏まえ、「各都道府県で地域医療構想がまとまった際に、優先的に議論してもらう必要がある。それ以外についても、日赤、済生会、厚生連などの公的病院は本来期待されている役割について検証してもらいたい」と、地域医療構想の策定の際に公立病院のあり方を優先的に議論して欲しいと述べた。

 

<邉見公雄全国自治体病院協議会会長:「我々にとって一番つらいのは、松原市民病院、武雄市民病院のように民間委譲、廃院」>

「我々にとって一番つらいのは、松原市民病院、武雄市民病院のように民間委譲、廃院。ダウンサイジングは夕張市立病院等に見られるように、人口減少社会、あるいは平均在院日数が減っていく中では仕方がないことだと思う。今、許可病床から稼働病床にというふうに繰入金も減っているので、これは大きな問題かと思うが、致し方ないと思っている」(2016年5月17日 平成28年度全国自治体病院開設者協議会定時総会での挨拶)

 

<4公立病院を再編し新設された魚沼基幹病院:地元新潟大学との連携が鍵に>

 全国で43番目の人口10万人対医師数という深刻な医師不足の新潟県。その中でも全国有数の豪雪地帯の魚沼地域は、10万人対医師数が122.7人で県内でも医師数が最も少ない地域だ。医師不足と地域医療を支えてきた4公立病院の老朽化問題を同時に解決するため病院の再編を行い、新潟県南魚沼市に2015年6月にオープンしたのが、新潟大学地域医療教育センター魚沼基幹病院(新潟大学医歯学総合病院魚沼地域医療教育センター 新潟県地域医療推進機構 魚沼基幹病院)だ。

 再編前は、17万人の住民を抱える新潟県・魚沼圏域では11病院が診療を行い、一般・療養合わせて1600の許可病床があった。300床を超えるのは小出病院のみで、小出病院とともに再編の対象となった公立病院、魚沼市立堀之内病院50床(療養)、南魚沼市立ゆきぐに大和病院199床(一般161床/療養38床)、新潟県立六日町病院199床(一般)は、いずれも小規模病院であり、がんや心疾患などの高度医療や重症救急患者には対応できなかった。

 4公立病院の再編と新病院開院によって、重症救急患者や高度医療への対応は大きく改善。地元新潟大学医学部による人材面から支援・連携が鍵となった。魚沼基幹病院の院長に就任した内山 聖氏の前職は、新潟大学病院の院長。「新病院に併設された新潟大学地域医療教育センターは、新潟大学の1組織であり、同センターの教員は魚沼基幹病院の医師と同様に診療に携わっている。地域の病院と連携して療養型医療の研修や在宅医療の研修など保健・医療・福祉と一体となったプライマリー・ケア研修を行い、地域全体で医師を育てていきたい」などと、新潟大学との連携が再編と新病院開院の鍵となったと語る。

 

事務局のひとりごと

今回、今テーマに際し、あの民主党政権時代の「事業仕分け」で、仕分け人を務められた、東日本税理士法人の 長 隆 先生にコメントを頂戴することができた。

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~内閣府「公立病院改革の経済・財政効果」分析・批判~

 

監査法人長隆事務所(※1)

代表社員 長 隆

 

 内閣府は2016年8月16日、近年の公立病院改革による経営改善効果を個別病院の経営データによって検証するため、政策課題分析の第10回「公立病院改革の経済・財政効果について」を公表した。総務省の「公立病院経営改革プラン」の取り組みがあった期間(2007~2013年度)を中心に、有識者の研究会(座長=池上直己・慶大名誉教授)が全632の公立病院の経営状況について分析している。

 

 最新のビッグデータを入手できる内閣府にも拘らず、分析データは古い。2017年度からの改革に適切、有用な検証であったとはいえない。

 内閣府は2014年度から公立病院の会計について新会計基準に移行していることから、民間病院との比較が容易にできたはずである。

 民間病院の経営状況に係る統計も参考にしながら、できる限り類似の機能を果たしている民間病院との経営比較を行い、当該公立病院の果たす役割を分析し、民間病院並みの効率化を目指した取り組みを勧告すべきであった。

 地方公営企業会計制度について、1966年以来、約40年ぶりに大幅な改正が行われ、2014年度の予算および実績から適用されることになった結果について、十分な検証がなされていない。

 

 今回の会計制度改正は、地方独立行政法人の会計制度の導入及び地方公会計改革の推進、地域主権改革の推進、公営企業の抜本改革の推進が行われていることを背景とし、地方公営企業会計制度は地方公営企業会計についても企業会計基準との適合性を図るという点が特徴となっている点に注目すべきであった。企業会計基準が頻繁に見直され進展していく中で、地方公営企業会計制度は1966年以来大きな改正がなされておらず、両者の乖離が大きくなり、相互比較可能性が損なわれていたことを踏まえた分析になっていない。新地方公営企業会計制度は改正がなされたことの認識が全くないといわざるを得ない。

 

 

分析結果が誤解を与える箇所

 

「地方公営企業法の全部適用で経営改善を検討することも有用である。」

 

 新公立病院改革ガイドラインでは次の通り示されている。

 地方公営企業法(1952年法律第292号)の全部適用は、同法第2条第3項の規定により、病院事業に対し、財務適用のみならず、同法の規定の全部を適用するものである。これにより、事業管理者に対し、人事・予算等に係る権限が付与され、より自律的な経営が可能となることが期待されるものである。

 ただし、地方公営企業法の全部適用については、比較的取り組みやすい反面、経営の自由度拡大の範囲は、地方独立行政法人化に比べて限定的であり、また、制度運用上、事業管理者の実質的な権限と責任の明確化を図らなければ、民間的経営手法の導入が不徹底に終わる可能性がある。

 

 同法の全部適用によって所期の効果が達成されない場合には、地方独立行政法人化など、更なる経営形態の見直しに向け直ちに取り組むことが適当である。

 

 

<結論>

①資金繰り状況を明確にし、経営分析すべきである。キャッシュ・フロー計算書の作成が義務化されたことを重視すべきである。

 

 今回の地方公営企業会計制度の改正による財務諸表への影響は非常に多岐に渡る。改正基準に基づき作成された財務諸表は概して負債が増加し、資産が減少する傾向がある。財政健全化法や地方財政法に定められる資金不足比率を悪化させることになる。

 

②日本海総合病院(山形県)の分析ケースを参考までに提示する

 損益計算書に対する影響を見る。27年度の医業収益は181億818万円、医業費用は171億9,845万円であり、医業収支は9億973万円であった。新会計基準では、引当金繰り入れ(約9億円)が計上されることになる。そして、みなし償却制度の廃止により減価償却費が数億円増加する。

 貸借対照表について、資産356億2,867万円、負債198億2,639万円、純資産158億228万円である。新会計基準が適用されると、(1)償却資産の取得に伴い交付された補助金・一般会計負担金等(11億6,823万円)が「長期前受金」として、純資産から負債に振り替えられ、(2)退職給付引当等の引当て義務化により、約50億円が負債計上されることになる(ただし、日本海病院ではすでに負債計上済み)。なお、退職給付引当金は、特に小規模団体では一般会計等が全額負担する傾向が見られるが、その場合は、引当不要である。

 この結果として、資本が減り、負債が大幅に増えて内容が悪化することになる。さらに、自治体病院の場合、このほかに借入資本金が負債計上されることになる(地方自治体の一般会計からの「資本提供」とみなされてきたが、経費のどの部分が税金で負担されているのかを明らかにする必要があるため負債計上されることになる)。こうして一部の自治体病院のバランスシートは、民間であれば経営破綻しかねない債務超過に陥ることが想定される。

以上

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 非常に厳しいコメントをいただいた。舌鋒鋭い長先生の声が今にも聞こえてきそうである。これは公立病院改革ガイドラインが公表された、今から10年以上も、いや、それよりもっと前から、公立病院改革に長年携わってこられた長先生であればこそ言えるご見解だろうと考える

 WMN事務局としては、いろいろなお立場がおられる読者諸氏を前に、このコメントをこのひとりごとのコーナーで一律にご紹介することに対して、若干ひるみそうになってしまった。しかしながら、この問題を真摯に捉え、様々な角度から検証がなされた上(だろうと考える)、ご作成頂いたコメントだ。やはりこれは原文通り掲載することが最も大事だろうという結論に至った、ということをどうかお含み置き頂ければ幸いである。

 

 自治体病院は地方自治体からの一般会計からの繰入(分かり易く言えば税金)も「収入」とみなされる。自治体病院はその地域で不採算事業(5事業:救急・小児・周産期・災害・へき地 医療)を担う役目を持っており、その不採算部分は“税金で補いましょう”という建前だ。

 長先生からは非常に厳しいご意見を頂戴したが、こういった事情は、それぞれの自治体の、本来は主役であるはずの地域住民にまで知られる情報となっているのだろうか。

 これから始まる地域包括ケアにおいては、地域医療計画の中における自治体病院の存在はとても重要だ。それぞれの自治体が、それぞれの自治体の現実を見つめ、地域の実情とニーズに合致した医療・介護提供体制を構築していく必要がある。我が国の大きな問題としてとりあげられている問題の2020年」まで、あと3年、目の前だ

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)…… 長先生におかれては、今後開始される予定の社会医療法人の法定監査や、社会福祉法人への会計監査 等を見据え、本年5月に監査法人長隆事務所を立上げられたそうである。

<WMN事務局>