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No.606 厚労省、社会福祉法人への指導監査に新ガイドライン。焦点は、経営組織のガバナンスと財務規律の強化

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■4月の社会福祉法改正に伴う「社会福祉法人の指導監査に関するガイドライン」

 社会福祉法人による不正事案が各地でみられる中、2017年4月から社会福祉法人の「新指導監査ガイドライン」の運用がスタートした。厚生労働省社会・援護局などは4月27日付けで、指導監査の際に確認する監査事項とその根拠、確認事項や着眼点、指摘基準などを示した「社会福祉法人の指導監査に関するガイドライン(GL)」についての通知(社援発0427第1号)を都道府県などに発出した。

 通知では都道府県などに対して、所管社会福祉法人への周知を求めるともに、指導監査の実施周期の変更も記載した。今後の指導監査は、年度ごとの報告書の提出状況などを勘案し、基本的には3年に1回とする。ただし条件を満たせば、会計監査人を設置している法人は5年に1回、公認会計士などの専門家による財務会計に関する支援を受けている法人は4年に1回とした。ガイドラインで示されたように、2025年の地域包括ケアシステムに向けて、今後、社会福祉法人は「強固な内部統制(内部管理体制)と財務規律の強化」が求められる。

 社会福祉法人の指導監査についてはこれまで、指導監査事項のみを定め、指摘基準などは明確にしていなかったため、いわゆるローカルルールができているとの指摘があった。このため、指導監査の標準化を図るために、今年4月からの社会福祉法改正に伴う社会福祉法人制度改革(図2 社会福祉法人制度の改革(主な内容))を受けてGLを策定。監査事項の適法性に関する判断を行う際の確認事項や、確認する際の着眼点、違反がある場合に文書指摘をするための指摘基準などを定めている。指摘は文書指摘か口頭指摘、助言の3種類。違反の程度によって明確化した。

 

 

■社会福祉法人制度改革のポイントは、ガバナンスと財務規律の強化

 社会福祉法人制度の改革のポイントは、「経営組織のガバナンス強化」「事業運営の透明性の向上」「財務規律の強化」「地域における公益的な取組を実施する責務」「行政の関与の在り方」の5点。このうち、「経営組織のガバナンス強化」では、①法人運営に係る重要事項の議決機関である「評議員会」、業務執行の決定・理事の職務執行の監督を行う「理事会」、理事の職務執行の監査を行う「監事(一定規模以上の法人は、会計監査人を必置)、法人の代表・業務の執行を行う「理事長」という経営組織の役割を明確化する。

 また、適正かつ公正な支出管理、いわゆる内部留保の明確化、社会福祉充実残額の社会福祉事業への計画的な再投資など「財務規律の強化」では、①社会福祉法人が保有する財産については、事業継続に必要な財産(控除対象財産)を控除した上で、再投下対象財産(社会福祉充実財産)を明確化、②社会福祉充実財産が生じる場合には、法人が策定する社会福祉充実計画に基づき、既存事業の充実や新たな取組に有効活用する仕組みを構築する。社会福祉充実財産の使途は、社会福祉事業、地域公益事業、公益事業の順番に検討の上、法人が策定する社会福祉充実計画に基づき、既存事業の充実や新たな事業に再投資するとしている。

 特に、「経営組織のガバナンスの強化」と「財務規律の強化」の観点では、今回の社会福祉法改正前は「資産額100億円以上もしくは負債額50億円以上または収支決算額10億円以上の法人は2年に1回、その他の法人は5年に1回の外部監査が望ましい」としていたが、改正後は「一定規模以上の法人への会計監査人に監査が義務づける」ことになり、会計監査人の役割が重要視されている。

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関係者のコメント

 

<田中社会・援護局社会福祉法人制度改革推進室長:「会計監査人の導入は、社会福祉法人制度改革の柱の1つ」>

 厚労省社会・援護局の田中社会福祉法人制度改革推進室長は、社会保障審議会福祉部会での社会福祉法人制度改革についての説明で、会計監査人の導入について、「今回の改革の柱の1つ。しっかりとした監査体制を構築して、社会福祉法人への信頼を確立するとともに、法人の経営力強化、効率的な経営の観点からも、一定の規模を超える社会福祉法人に会計監査人による監査を義務づけ、ガバナンスの強化、財務規律の強化を図ることが重要だ」と強調している。

 

<社会福祉法人の指導監査強化の背景には、各地で相次ぐ社会福祉法人の不祥事が・・・>

 各地で社会福祉法人の経営者による不祥事が相次いでいる。いずれも、会計監査人による十分な外部監査が行われていたら、防げた不祥事と言えそう。愛知県や神奈川県で老人ホームなどを運営する社会福祉法人で、老人ホームの施設長と会計責任者を兼務していた常務理事が9年間にわたり、法人の運営費約1300万円を着服。千葉県で障害者の支援施設や生活介護事業所を運営する社会福祉法人は、障害者らに生活介護サービスを提供した際の給付金約5870万円を不正受給。和歌山県の社会福祉法人は、法人理事長が務める政治団体への献金として、法人会計から150万円を流用。

 

事務局のひとりごと

 

「今日は8,000歩くらいか」、「今日は12,000くらいか」。筆者は1日10,000歩を目標にしているので、万歩計を付けて歩いている。自分の一日の行動を振り返りながら、万歩計を見ていると経験則的に、大体数値予測が当たる。ところが、最近どうも調子がおかしい。明らかに思っている歩数よりも格段に大きい値が表示されている。昨晩リセットしたはずなのに、朝見て見るとすでに10,000歩を超えている。あれ?と思い、リセットボタンを押す。するとどうだ、歩いてもいないのに万歩計がカウントをし始めた。どうも今は歩数を刻むのではなく、時を刻んでいるらしい(しかも1秒に2~3カウント)。この原稿を書いている間にも、たまにストップするが時を刻み続けてくれている。もう買い替えの時期か…。

 

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 社会福祉法人経営者からコメントを頂いた。

○北海道のある社会福祉法人理事長

「運営費は全て使い切るという時代の経営感覚が残っている」

 社会福祉法人では、かつて長い間継続された措置費時代には、運営費は全て使い切らなければならず、年度末に0円に近いほど良い運営がされたと見なされた時代があった。まだ、その経営感覚のある経営者が、公私混同などの不祥事を起こしているのではないか。

○都内の社会福祉法人理事長

「第三者から見ても納得がいくように財務規律をホームページで公開すべき」

 地域社会の中で社会福祉法人としてふさわしい多様な事業や、困りごと相談のような枠を広げた事業にしていくことや、第三者から見ても納得がいくように財務規律の公開を、積極的にホームページ等を用いてすべきではないか。今回の社会福祉法人制度改革は良い機会であるととらえている。

 

 ある高齢者のコメントである。

○父親が特養にようやく入所できた家族の声

「政治家と社会福祉法人の経営者の関係は切っても切れないと実感」

 5年以上入所待ちの特別養護老人ホームに、市議会議員の先生の紹介で、父が入所できた。その市議会議員が特養ホームの理事長と昵懇の間柄だった。全国的に地方議員が理事長などしているケースが多いと聞く。政治家と社会福祉法人の経営者の関係は切っても切れないと実感した。

 

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 社会福祉法人の内部留保について国会の注目を集めたのは、後藤田 正純氏であったか。もしかすると本文中にもあったように、不正が行われた法人があるかもしれない。ただ、不祥事は社会福祉法人でなくても起こる。誰もが知っている大手企業の不正会計問題でも監査法人は見抜けなかった。例えば特養は(病院もだが)、その非営利性から配当ができない。従って健全な運営を行っていれば必然的に内部留保は貯まっていくだろう。また、その公益性のある業務を行うための投資(建て替えなど)も当然行う必要がある。

 

 今や「マイナス金利時代」ということもあり、福祉医療機構の医療貸付の利率は甲種増改築資金(病床不足地域)について、29年超30年以内で0.8%だ(平成29年6月9日付)。一般企業において30年の長期借り入れなど、およそ考えられないのだが、医療の話ではあるが存在するのである。30年間かかってようやく返済が終わり、ただ30年もすれば新築もすでに老朽化。新たな投資のために新たな借り入れが必要でまた借り入れ(しかも超長期)。筆者の使い物にならなくなった万歩計など、比べるべくもないが、更新は必要なのである。しかしこれでは何をやっているのかわからない。健全な内部留保は、敢えて言うならその「負の連鎖」を作らないために必要なことではないのだろうかと筆者は考える。社会福祉法人においても同様だ。

 

 とは言え、本年4月から「新指導監査ガイドライン」の運用がスタートした。久しぶりに監査法人長隆事務所の長隆先生から、このテーマに関するコメントを頂戴したのでご紹介して締め括りとしたい。

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 指導監査ガイドラインをみるとガバナンスに関する部分がかなりを占めている。一方で、会計監査人による監査で無限定適正意見を受けている場合などは、一般監査の周期が延長されるとのことである。法人の負担等を考慮してのものであろうが、会計監査人の監査は、基本的に監査対象である計算関係書類等の適否に関する意見のみであって、ガバナンスの適否に関する意見ではない。会計監査人が担うのは指導監査ガイドラインのほんの一部分のみである。もちろん、監査の過程でガバナンスに関する部分の評価も行うであろうが、それが監査意見と直結するとは限らないのである。会計監査人の監査に過度な期待をし過ぎている感がしてならない。

監査法人長隆事務所

代表社員 長  隆

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