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No.607 地域枠医師は地元出身者に限定、県内での臨床研修が原則。厚労省、医師需給分科会で医師偏在の是正案を提示

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■厚労省、地域医療支援センター、キャリア形成プログラムの改善などを提示

 地域の医師偏在が社会問題となっているなか、厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会」の第10回医師需給分科会が6月15日開かれ、同省が提示した「早期に実現可能な医師偏在対策」である、①大学との十分な連携を図り、医学部地域枠の入学生は原則として地元出身者に限定、②卒後は都道府県の地域医療支援センター等が策定する「キャリア形成プログラム」に沿って大学所在地の都道府県において研修することなどの提案が了承された。

 

 医師不足対策を総合的・効果的に実施するために各都道府県に設置されている「地域医療支援センター」が派遣調整できる地域枠医師の増加が今後見込まれるため、同センターを強化するのが厚労省の狙い。2018年度からスタートする第7次医療計画の作成指針には、「医療従事者の確保」対策は盛り込まれておらず、厚労省は、地域医療支援センター強化などを踏まえた計画を作成するよう都道府県に通知する。また、2018年度予算において、代診医師の派遣、遠隔診療に関する補助の拡大を目指す。

 

 近年、都会への医師偏在とへき地の医師不足、産婦人科をはじめ診療科による医師不足など、地域間・診療科間の医師偏在が大きな問題となっており、2018年度が始まる新たな専門医制度でも「都市部に医師の偏在が生じないよう、地域医療に十分な配慮を行う」ことが求められている。しかし、偏在の解消に向けた規制的手段の検討などには時間がかかるため、まず「早期に実行可能な対策」が求められていた。この日の分科会では厚労省が、①キャリア形成プログラムの改善、②へき地における医師確保、③若手医師へのアプローチ、④医師の勤務負担軽減-といった具体的な4つの対策案を提示した。

 

 キャリア形成プログラム図1)とは、主に地域枠医師を対象に、地域医療に従事する医師のキャリア形成上の不安解消、医師不足地域・診療科の解消を目的に、地域医療支援センターなど都道府県が主体となり策定された医師の就業プログラム。地域医療支援センターは全都道府県に設置されているが、「キャリア形成プログラム」の未設定が7県、大学と連携していない県があるなど、都道府県によって取り組みが異なり、運営が成功しているとは言いがたい状況にあった。このため、キャリア形成プログラムの改善を図ることにしたもの。

■医学部地域枠の入学者は原則、地元出身者に限定に

 キャリア形成プログラムでは、地域枠の医師には、原則として「一定期間、地域の医療機関で勤務する」ことが求められている。対象医師には「きちんとしたキャリア形成」ができるのか不安がある。そこで都道府県の地域医療支援センターが、主に地域枠の医師が2年間の初期臨床研修、その後の専門研修において、どの医療機関・診療科に従事するのかの選択肢を提示し、キャリアを積みながら、偏在解消に資する医師就業を目指すキャリア形成プログラムに改善する考えだ。

 

 厚労省が昨年9月に実施した調査(図2)では、「地域枠の入学者よりも、地元出身者(大学と出身地が同じ都道府県の者)の方が、臨床研修修了後、大学と同じ都道府県に勤務する割合が高い(78%)」ことが明らかになっている。しかし、各都道府県のプログラムを見ると、「大学との連携が不十分」「修学資金貸与を地元出身者に限定していないケースが多い」「初期臨床研修を県内に限定していない」など、「地域偏在などの解消」効果が減殺されているのが現状。このため、同省はキャリア形成プログラムの改善として、①全都道府県で、大学(医学部・付属病院)と十分連携して、必ずキャリア形成プログラムを策定する、②地域枠の入学生は地元出身者に限定し、大学所在都道府県で初期臨床研修を受けることを原則とする、③勤務地や診療科を限定する、④修学資金貸与事業における就業義務年限を自治医科大学と同程度の年限(9年程度)とする-などの見直しを進めることにしたもの。

 厚労省は今後のスケジュールとして、今年秋以降、抜本的な医師偏在対策を検討し、今年末を目途に法案提出を視野に取りまとめを行い、2018年から2020年度以降の医学部定員の取り扱いについて判断するため、医師需給推計の結論を得る考えだ。

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関係者のコメント

 

<今村日医副会長:「地域医療支援センターの機能の検証を」

 医師需給分科会の論議の中で、日本医師会の今村 聡副会長は、「確かに今まで地域医療支援センターが機能していなかった」と指摘。医療法に位置づけられ、公費が投入されている以上、なぜ機能していないのか検証が必要だとした。

 

<新井医学部長病院長会議会長:「大学がコミットしないとうまく行かない」>

 全国医学部病院長会議の新井 一会長は、大学が日常的に医師の派遣を行っており、「大学がコミットしないと、地域医療支援センターの機能はうまく行かない」と指摘した。

事務局のひとりごと

 

 沖縄ではすでに梅雨明け、本州でもそろそろ梅雨明けしそうな時期となった。「空梅雨」といわれた、とても気持ちの良い6月中旬の気候が今は懐かしい。じめじめして少し歩くだけで汗が出てくる(筆者は現在関西在住)。ようやく「それらしい」天気となった。夏真っ盛りに向けて、少々琵琶湖の水位が心配であったので、梅雨の天気は、それはそれで重要なのだと思う。先日の九州地方の集中豪雨のような、「その時期特有」と片付けるわけにいかないほど、地域住民の方々に大きな爪あとを残すような豪雨は決して望ましくないのだが、最近、「それらしくない」ことが多く起こった(ような気がする)。東京の野球チームが球団史上でも類を見ない低迷をしていたり、関西の球団がペナントレース前半から快調な進撃を見せたり(今は「それらしく」なっているようだが・・・)、東京都議会選挙では、第一党が歴史的な大敗を喫したり・・・。

 歴史とはこれまでの延長線上にある、というよりは、常に新しいことが上書きされているのであり、膨大に積み上がったこれまでのデータによって、将来予測はできても、それでも明日本当に何が起きるかなど、誰にも分からないのだ。そんな気のする今夏である。

 

 自分の子どもには、将来どうなって欲しいか?多くの親は子どもの将来に思いを馳せる。自分ができなかったことをやって欲しい、会社を継いで欲しい、野球選手、サッカー選手、プロゴルファー、アイドル歌手、弁護士、医者など、数え上げればきりがないが、医者になって欲しい、と願う親は、医者である親を除いたとしても少なくないのではないか。

 今回のテーマは医師の需給に関するテーマである。「医師偏在」と言われているが、まず、それに関する現状認識はどうなっているのだろうか

 

 医師会のコメントを頂戴した。

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中川日医副会長「日医は、大勢として医師の絶対数は充足していると考えている」

 6月25日に開かれた第140回日医定例代議員会で中川俊男日本医師会副会長は、代議員から医師偏在解消に関する質疑に対して、「日医は大勢として医師の絶対数は充足していると考えている」との現状認識を示した上で、「都市部では診療所が極めて多いところもあるが、地方では医師自身の高齢化もあり、かかりつけ医の確保が課題となっている。医師の不足、偏在の問題については、病院勤務医の負担軽減を念頭に置きつつ、同時にかかりつけ医の負担軽減に対応していきたい」などと答弁した。

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 将来、「自分の子どもには自分の生まれ育った地域に根ざして生涯を捧げてほしい」、そう思う親と、「子どもには好きなことを思うようにさせてあげたい。都会で一旗揚げるならそれもよし。あきらめたらいつでも帰って来い」と思う親。色々な気持ちが交錯するのだとは思うので一言ではとても言い表せるものでもないのだろうが、医師に関しては「原則、生まれた地域で」という風にもっていかないと、偏在がおきるのだそうだ。一般論としてはうなずけるところである・・・・。

 

 医師偏在の問題について、様々な立場の方からコメントを頂戴した。

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○鶴田全国衛生部長会会長:「一律に地域枠入学者を地元出身者に限定するには、無理がある。各県の事情を考慮して欲しい」

 医師需給分科会の構成員で全国衛生部長会会長を務める鶴田憲一氏(静岡県理事)は、「静岡県では240名程度の臨床研修医が必要だが、地元、浜松医大出身医師は1年間で120名程度しかおらず、他県から医師を招聘するために奨学金等を出している。各県の事情に配慮して欲しい」と、一律に地域枠入学者を地元出身者に限定するには、無理があるとの考えを示した。

 

○へき地国保病院の勤務医:「学会参加もままならない。段々、最新医学に取り残されている気がして、寂しい」

 都心の医学部を卒業して地方の国立大学病院で臨床研修の後、山間部の国保病院に勤務する30代前半医師。「大学の地域医療勉強会でへき地医療に関心を持ち、結果的にへき地の病院に勤務している。勤務する病院では医師のやりくりが大変で、学会には年1回参加できれば良い方。最新の医学情報は、インターネットによってリアルタイムで入手できるが、学会に出席して同じ専門分野の医師同士で生の意見を交換したい。へき地では、最新医学に取り残されている気がして、寂しい」。

 

○開業医の声(子息が地方医学生の横浜市開業医):「本音は都会に戻り、ゆくゆくは後を継いで欲しい」

 横浜市内で開業する内科開業医は、本音を語る。「長男は東北地方の医学部6年生。最近、大学の実習で地域医療に興味を持ち、へき地医療に従事したいと言っている。今後のキャリア形成を考えると、都会に戻り、専門医教育を受けるべき。私も開業時の借金もようやく返済のメドが立ち、ゆくゆくは後を継いでもらいたい」。

 

○勤務医の声(眼科専門病院の勤務医):「高齢化が進む地方での眼科のニーズは高い。診療科ごとの医師定員は必要だ」

 都心の眼科専門病院の勤務医。「勤務する病院には、全国から患者が受診してくる。その多くが60歳以上の高齢者で、交通費と宿泊費をかけてやってくる。高齢化が進み、眼科医の需要は高まっているが、私の出身大学では毎年入局者の確保で苦労しているようだ。眼科医は不足していないとの声もあるようだが、都会に比べ高齢化が進む地方でのニーズは高い。診療科ごとの医師定員は必要だ」。

 

○都心の病院の内科勤務医:「都心の病院では内科医は飽和状態。内科部長にはなかなかなれない」

 都心の大学病院の内科勤務医。「都心の病院の内科医は飽和状態だ。私の勤務する病院もそうだが、内科系では医長・部長のポストはなかなか見つからない。私の父は、地元の病院の部長を経て、勤務していた病院の患者さんを受け入れる形で開業した。そのような時代は終わった。診療科目の調整は必要だと思う」。

 

○医療過疎といわれている地域住民の声:「公立病院の統廃合で、医師は都会に集中。地方の医療過疎は進む一方」

 公立病院の統合再編で病院が減り、新病院の統合された東北の地方都市の住民。「10年間で病院が3つもなくなった。今はバスを乗り継いで1時間以上かけて新しい病院に通院している。人口減少で病院を運営しても赤字。病院が無くなり、医師は都会に集中し、地方の医療過疎は進む一方で心配だ」。

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 あらゆる世界で偏在があるのはつきものであろう。人気のあるエリアには人は寄っていこうとするものだ。医師も人間。患者も人間。これからの日本の医療を取り巻く環境は大変・・・

 職業選択の自由、住まいを選ぶ自由、生き方を選ぶ自由、果たして「自由」はどこまで行使されるべきなのか、煩悶するが全員が納得する答えは出ない・・・。次期診療報酬・介護報酬同時改定で、わが国の医療制度に「梅雨明け宣言」を見通させることは出来るだろうか

<ワタキューメディカルニュース事務局>