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No.608 「急性期における評価指標のあり方」の議論を開始。中医協・入院医療等の調査・評価分科会

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■厚労省、「患者単位の評価」「病棟(病院)単位の評価」の視点から急性期評価指標の検討を提案

 中医協入院医療等の調査・評価分科会は6月21日、2018年度診療報酬改定に向け、急性期医療における評価指標の在り方の議論を開始。この日、厚生労働省は、一般病棟入院基本料でより適切な報酬設定を検討するため、現行の急性期における評価指標の考え方を整理した「評価指標に関する考え方(案)」を提示した。

 

 分科会で厚労省は、一般病棟の機能について、(1)患者の状態に着目した「患者単位の評価」、(2)病棟(病院)における総合的な体制など届け出基準に着目した「病棟(病院)単位の評価」という2つの視点から指標を検討すべきではないかと提案。同省が示した「評価指標に関する考え方案」(図3)は、入院医療で患者の状態に応じた評価と、機能に応じた評価の整合性を考慮した評価体系を議論する上での整理案で、「指標の性質」「評価手法」「検討項目」に分かれている。

 このうち、「指標の性質」では、①入院医療における評価は、患者の状態に着目した“患者単位の評価”と、病棟(病院)の診療機能に着目した“病棟(病院)単位の評価”があり、それらを適切に組み合せて評価を行うことが重要、②患者単位の評価では、状態に応じて医療ニーズも変化することに留意し、患者単位の評価と病棟単位の評価と、それぞれの目的に応じた基準を検討すべきではないか、③病棟単位での評価では、診療科などでの患者特性の相違があることやその標準化などにも配慮すべきでないか、④病棟(病院)の診療機能に着目した評価では、個々の患者ではなく、病棟(病院)における総合的な体制や取り組みを見るものであるため、入院基本料の届出基準などでの基準を検討すべきではないか―をあげた。

 

 また、「評価手法」では、①評価に用いる指標は、測定方法が簡便であること、客観性が確保されていること等が望ましいのではないか、②診療内容の改善に活用する観点からは、指標が何を意味するものかが分かりやすいことが望ましいのではないか―との考え方を示した。「検討手法」では、指標が適切な評価につながっているかどうか、設定している基準と、各指標が着目している項目(患者の状態、診療機能、医療の内容等)とでの相関関係や分布などについて分析を行うべきではないか-という考え方を示している。

 

■改定の度に厳格化が進む急性期指標に対し診療側は問題視

 近年、7対1病棟で重視される指標は、重症度、医療・看護必要度(=看護必要度)。看護必要度の該当患者割合はここ数回の診療報酬改定で厳格化が進み、現行では「25%以上」(200床未満の場合は23%以上)が基準値となっている(図4)。看護必要度を満たす該当患者割合を上げるには、重症患者をおり多く受け入れ、急性期症状が安定したら退棟しなければならない。そこで、厚労省は「看護必要度はA項目、B項目、C項目の複合的な評価軸を用いて25%という1つの基準値を設定しているが、それぞれの特性に応じたきめ細やかな分析が必要ではないか」との論点を示した。さらに、一般病床における評価は、患者の状態に着目した患者単位の評価と、病棟(病院)の診療機能に着目した病棟(病院)単位の評価という2つの視点があり、より深い分析が必要ではないかと提案した。

 

 急性期指標を巡る論議で日本医師会などが問題としているのが、5月10日に開かれた厚労省の「医療計画の見直し等に関する検討会」の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で示された「急性期指標」。病床機能報告制度の報告項目を用いて、病床機能報告制度の報告項目を用いて病院の「急性期を主体とした医療を行っている度合い」を、計66項目について数値化したもの。病院別に、66項目別のスコアのほか、合算した総合スコアを計算できる。各都道府県が使える状況になっており、既に奈良県などで使用している。この指標は、奈良県立医科大学医学の今村知明教授が厚生労働科学研究「病床機能の分化・連携や病床の効率的利用等のために必要となる実施可能な施策に関する研究」で開発を進めたもの。

 

 日本医師会は、「地域医療構想は病棟単位だが、急性期指標は病院単位であり、急性期指標が独り歩きすれば、地域医療構想が混乱に陥るのは、明白である」と強く問題視している。6月25日に開かれた第140回日医定例代議員会でも代議員から質疑が出され、中川副会長が「急性期病院が満たしそうな項目が恣意的に選ばれている。民間病院に多いケア・ミックスでは、実態よりも低い急性期スコアが計算され、あたかも急性期機能が劣っているように見える。議論の遡上に載せるのを阻止したい」と答弁している。

 

 今後「地域医療構想に関するワーキンググループ」では、①今年10月実施の病床機能報告に向けた、項目の追加・見直し、報告対象の期間の考え方の整理、定量的な基準の検討、②地域医療構想の進捗の把握の在り方、③その他(住民等への情報提供の改善など)などについて議論する予定になっている。「急性期指標」についても、引き続き検討課題になる見通しだ。

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関係者のコメント

 

<神野全日病副会長:「今後は病棟単位、病棟群単位も議論の遡上に」>

 中医協入院医療等の調査・評価分科会で、全日本病院協会の神野正博副会長は、「評価指標は、病棟単位にするのか病院単位でするのかで大きな差が出る。現行の7対1、10対1は病院単位での評価だが、今後は病棟単位、病棟群単位も議論の遡上に載せてもらいたい」と述べた。

 

<石川日医常任理事:「まずは、現行の評価指標でいいのか議論していくべきだ」>

 一方、日本医師会代表委員の石川広己常任理事は、「評価指標を大きく変えることは混乱を招く。まずは現行の評価指標でいいのか議論していくべきだ」と、慎重な議論を求めた。

 

<中川日医副会長:「急性期指標は病院全体のイメージを左右し、いわば情報操作」>

 「地域医療構想に関するワーキンググループ」で示された「急性期指標」について、中川俊男日本医師会副会長は、「唐突に公表されたのは、大いに問題である。この急性期指標は、病院全体のイメージを左右しかねず、いわば情報操作に当たる」と、強く反発している。

事務局のひとりごと

 

 賢明な読者諸氏におかれてはすでにご案内のところであるが、「病床」を大雑把に整理してみるとこうなる(平成29年4月現在 括弧内は床数)。

・精神病床(332,958)

・感染症病床(1,850)

・結核病床(5,301)

・療養病床<医療型・介護型>(327,251)

・一般病床(891,357)

・一般診療所(100,873)

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m17/dl/is1704_01.pdf

 

 これまでの医療提供体制に関わる制度改革は、この数字のバランスを患者像の実情に合わせた形で有効に変化させていき、医療費の伸びを出来るだけなだらかにしていこうとする考えの下、行われてきた。恐らくこれからもそうなるだろう。

 精神病患者7万人に地域に戻っていただく、介護医療院に転換していただく、実現の難易度はともかくとして、制度改革上、精神病床と療養病床再編の方向性は定まった残る大きな山は一般病床である(※1)。

 

 一般病床はその昔の呼称としては「その他病床」と言われていた。精神・結核・伝染病床以外は療養病床も含めて「その他」だった。それが「一般」と「療養」に分かれ「療養」は医療型と介護型に細分された。「療養病床」が慢性期医療を担うとするならば、残った「一般」は急性期医療を担うとされるのだろうから、「一般病床」とは「急性期病床」と言い換えられるかもしれない

 病床は、各医療機関の届出制である。届出制は、その病床に定められた一定の基準を満たすことを前提とした「自己申告制」だ。

 今回のテーマは、一般病床における患者像が一般的に考えられる“急性期の患者”であるか、はたまたその患者に対して“適切な急性期医療”を医療機関が提供できているかを計る指標の議論である。

 7:1病棟における重症度、医療・看護必要度の「25%以上」の基準値に関する議論は読者の皆さん方の記憶にも新しいところであるだろう。

 「急性期」という言葉から連想される患者像は、これは一般論としては人によってさまざま異なってくるだろう。交通事故で救急搬送された患者で意識不明、これは当然、急性期だろう。骨折して手術が必要な患者、これも急性期だろう。肺炎、進行性のがん、脳卒中、心筋梗塞・・・当然そうだろう。あくまで一般的な見方として、このあたりまではあまり異論の出るところではないだろう。眼科の病気も急性期だ。産科だってある意味急性期だ。

 

 平成29年3月末時点の一般病床における平均在院日数は16.3だ。一般病床全体のほぼ二倍の患者がまかなえるわけだ(一床で一ヶ月に患者が2回転)。対して月末病床利用率は74.0。26%が使用されていない、とされる病床だ。厚労省の統計はあくまで「月末」一日だけの数字をもとにしたものなので、一ヶ月の延べ数の平均値を取ったものではないが、数値で見ると、急性期病床のうち使用されてない病床は、この先の行く末をしっかり考えて欲しい、と言うのがデータから暗黙で示していることなのだろう(と推測せざるを得ない)。故に出てきている議論であろう。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/byouin/m17/dl/03-kekka.pdf

 

各方面からコメントを頂いた。

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○迫井医療課長:「看護必要度が現場に与える影響は大きいという意見は参考になった」

 6月21日開かれた中医協の入院医療等の調査・評価分科会の議論を受け、厚労省保険局の迫井正深医療課長は、「看護必要度が現場に与える影響は大きく、丁寧に深掘りをして欲しいという意見は参考になった」とした上で、「1年後の改定が見える中でどのように実施するかは中医協で議論していただくが、実際に(看護必要度を)反映するか否かは別として、本来あるべき姿についても中医協でご議論いただきたい」と、中医協の議論を見守る考えを示した。

 

○90床の急性期病院長:「これからは『生活支援型急性期病院』として生き残る」

 東京都下で90床の急性期病院(非DPC、7対1、重症度28%)を運営する病院長。「次回改定でも急性期病院の施設基準はますます厳しくなるのではないか。われわれのような100床未満の急性期病院が生き残るためには、急性期医療から在宅、診療所の患者さんの急変時に直ぐ対応できる『生活支援型急性期病院』を目指すしかないと思う」と強調する。

 

○大学病院に入院経験のある患者:「退院後の転院先を見つけるのに苦労した」

 四国地方の大学病院に脳梗塞で入院した患者。「入院中は快適な治療環境で、最新の治療を受けることができた。しかし、退院後の転院先を見つけるのに苦労した。リハビリ施設がある地元の病院が見つからず、結局、隣の県の病院に転院することになった。入院する前からある程度、退院後の転院先が分かれば、ありがたいと思った」。

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 締め括りに再度、日本医師会中川副会長のコメントを紹介したい。

 

○中川日医副会長:「急性期指標は病院全体のイメージを左右し、いわば情報操作」

 「地域医療構想に関するワーキンググループ」で示された「急性期指標」について、中川俊男日本医師会副会長は、「唐突に公表されたのは、大いに問題である。この急性期指標は、病院全体のイメージを左右しかねず、いわば情報操作に当たる」と、強く反発している。

 

 このコメントを最後にご紹介するのも、筆者の「情報操作」に当たるのかもしれない。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)・・・一般病床の中にはさらに地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟など、さらに「病棟」別で細分化されているのもご案内のところである。