ワタキューメディカルニュース

ワタキューメディカルニュース詳細

No.610 新規医療技術への「支払い意思額」調査を巡り異論続出。中医協・費用対効果評価専門部会

→メディカルニュース今月の見出しページへもどる

 

 

■新規医療技術の費用対効果の基準となる国民の「支払い意思額」調査結果

 2018年度診療報酬改定で高額(新規)医療技術の費用対効果の本格導入について議論している中医協・費用対効果評価専門部会は7月12日の会議で、厚生労働省から公的医療保険から支出される額を問う「支払い意思額」(国民が健康のためにどの程度の費用を支払ってよいと考えるか)について調査方法が示された。これに対し委員から、「なぜ公的医療保険で考えなければいけないのか」「正確な意見が出てくるのか」など、調査方法に異論が続出した。支払い意思額とは、「完全な健康状態で1年間生存することを可能とする」、つまり「QALY(質調整生存年)」を1年延長させる医薬品・医療機器等について、公的医療保険から支払うべき額を調べるのが目的。

 新規医療技術の費用対効果は、概ね次のような手順で行う方向で固まっている(図2)。①医薬品・医療機器・高額な医療機器を用いた医療技術を保険収載(一度、償還価格を決定)。②医薬品・医療機器メーカーなどが費用と効果(質調整生存年:QALYを基本とする)に関するデータと分析結果を提出し、公的な専門体制の下でそのデータを再分析する。③中医協の費用対効果評価専門組織で「総合的評価」(アプレイザル)を実施。④薬価算定組織・保険医療材料専門組織で費用対効果評価結果に基づいて、①の償還価格について調整を行う。

 

■委員から調査方法に異論や慎重な対応を求める意見が続出

 医療技術の費用対効果の手順のうち、③の「総合的評価」では、その医療技術の費用対効果が良いのか悪いのかを判断する。その際の基準として、「支払い意思額(国民が健康のためにどの程度なら支払ってもよいのか)」を用いる(図3)。診療報酬や医薬品・医療材料の費用は、医療保険の財源で賄われ、また新規医療技術の恩恵を受けるのは国民であり、費用対効果評価の結果が、国民の多くが「支払っても良い」と考える金額よりも低廉であれば「費用対効果が良い」と判断するという考えだ。

 

 厚労省が示した調査方法は、全国100市町村で性・年齢に偏りがないように3000人を抽出。調査員が訪問して面接して調査を実施。(1)完全な健康状態で1年間生存すること(1QALY)を可能とする、医薬品・医療機器等の新しい治療法が開発され、その治療法に係る費用の総額がX 円である時、公的保険から支払うべきと考えるかどうかを「はい」または「いいえ」の選択肢で尋ねる。特定の疾患や医薬品・医療機器に限定するものではなく、あくまで一般論として、完全な健康状態で1年間生存することを獲得するための治療に係る費用の総額について尋ねる。治療の費用に応じて、自分の支払う保険料が増加する可能性も考慮して回答する。(2)予め設定した金額の組み合わせに基づき、得られた回答に応じて金額を上下させ、再度、同様の質問をする。(3) 各金額について「はい」と答えた者の割合を算出し、受諾確率曲線を作成する。(4) 支払い意思額に影響すると考えられる収入や健康上の問題等も併せて調査し、必要に応じて補正を行う。

 

 調査方法について中医協委員からは、「死が迫っていると言えば、国民の多くは『金額は問わない』と答えるかもしれない。支払額が健康保険料に及ぼす影響についても丁寧に説明すべきだ」「公的医療保険からの支出の観点から調査すべきではないか」「公的医療保険から支払う場合と、全額自己で負担する場合とでは、支払い意思額の結果が異なってくる」「回答者が恣意的に金額を低く回答するなどバイアスが生じる可能性がある」「調査員のマニュアルの整備や研修が必要」など、異論や慎重な対応を求める意見が続出した。

680

関係者のコメント

 

<迫井医療課長:「2018年度改定での費用対効果の本格的導入に理解求める」>

 7月12日の専門部会委員からの指摘を受け、保険局の迫井正深医療課長は、支払い意思額の調査については指摘を整理して再検討する意向を示した。その上で、次回会議で業界団体からのヒアリングを予定していることを踏まえ、制度の骨格の議論を並行する必要性を説き、2018年度診療報酬改定での費用対効果の本格的導入に向けた検討も行っていくことへの理解を求めた。

 

<保険局医療課企画官:「保険料にも影響することに留意をした上で回答してもらうことが必要」>

 「支払い意思額」調査について厚労省保険局医療課の眞鍋 馨企画官は、「日本は、国民皆保険であり、公的医療保険から支払われているので、その額を聞く方が適切だということで提案した。保険料にも影響することに留意をした上で回答してもらうことが必要」と説明している。

 

<幸野健保連理事:「皆が納得する物差しを作ってもらいたい」>

 同専門部会の議論の中で、健康保険組合連合会の幸野庄司理事は、「皆が納得する物差しを作ってもらいたい。ただし、最初から完璧なものは難しいので、PDCAサイクルを回しながら、適宜見直すことが求められる」と述べている。

 

<松本日医常任理事:「公的医療保険の給付額、3割自己負担額を聞くかにより質問のニュアンスが違ってくる」>

 日本医師会の松本純一常任理事は、「公的医療保険の給付額と、その3割の自己負担額のどちらを聞くかにより、質問のニュアンスが違ってくる。給付額が上がれば、保険料も上がることを想定して答えることを求めるのか」と述べ、合意に至っていない状況のまま本格的導入に向けた議論を進めることへの懸念を重ねて示した。

 

<万代日病副会長:「費用対効果評価の考え方は、国民に認知されていない」>

 日本病院会の万代恭嗣副会長は、「費用対効果評価の考え方は、国民に認知されておらず、医療関係者の中でも理解が不十分。『医師としての裁量権を大幅に制限されるのではないか』と言う人もいる」とコメントした。

 

<福田国立保健医療科学院部長:「今回の調査は公的医療保険で給付すべきかどうかを聞くのが目的」>

 「支払い意思額」調査に当たる国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部の福田敬部長は、「方法論としては、公的医療保険の給付額と自己負担額の両方があるが、今回は公的医療保険で給付すべきかどうかを聞くのが目的」と、保険給付額を調査する理由を説明した。

 

<関西の民間病院長:「治療内容に納得せず、医療費支払い拒む患者・家族が増えている」>

 最近、医師の説明、治療内容に納得がいかないという理由で、医療費支払いを拒む患者・家族が多くて困っている。入院に際して、入院同意説明書をとっているが、医療費についてもきちっと説明しなければならない時代に来ているのかと思う。これも、最近言われるようになった「モンスターペイシェント」なのか。

 

<都内下町の中小民間病長:「診療費の未払いが経営を圧迫している」>

 大企業は内部留保を貯めるなど景気が良いようだが、私の病院がある都内の下町の工場経営者は大変なようだ。受診する患者さんの多くは、国保や生活保護の患者が多い。先日も急に夜間外来に受診した患者さんが「保険証を持ってくるのを忘れた。手持ちのお金もない」と言って、会計時に全額を払わずに帰ってしまった。その後全く連絡がつかず、結局、未収金となった。受診の際には、気をつけているが、未収金となるケースは、月に3~4件もある。未収金は病院団体の調査によると、年額370億円を超えているという。未収金は、中小民間病院の経営を圧迫している。

 

事務局のひとりごと

 

 家内に「カエルコール」をした。すると「コンビニでおにぎりを買ってきて。梅かえびマヨ、どっちか一つ。」コンビニに寄ると、果たして両方あった。さてどちらを買おうか。私の判断材料は、渡した時の「家内の顔」を想像することだ。これまでなんど「え~?!(しかも「え」に濁点がつく)」という顔をされたことか。その結果、今では家内の身に付けるもの、食べるものを、予想して買うことは絶対にしなくなった。良かれと思って買って帰り、逆に気分が悪くなるという経験がどれほどあったことだろう。

 そういった経験上、いくら両方家内の指定したものであったとしても、必ず筆者の選んだほうが「ミスチョイス」となってしまう。どれだけ悩んでも結局は二者択一、フィーリングだ。ええい、今回は「梅」だ。

 帰宅して家内に渡す。「おー、ありがとう」。そうそう。いつもそういう反応なら我が家に嵐が吹き荒れることはないのだ。

 家内がおにぎりをほおばり始めた。すると、「何これ?パサパサやないの?全然おいしくないわー!」「はぁ~?」と聞き返す。もうこのあたりから筆者は臨戦態勢だ。

 「ちょっと~!?あンた、いつも言うてるやろ?棚に並んでいるものの賞味期限見いやって。あと2時間で期限切れるやないの!どおりでパサパサなわけや。あーあ、こんなんでお腹ふくらかして損したわ!ちゃんと奥からとってきいや。」

 「・・・(やっぱりえびマヨだったか?)」

 「僕はなあ、ちゃんと並んでいるんやから賞味期限内やと思ったし、先入れ先出しで買わんと店も大変やろ?それにそんなに数はあらへんかったから、買った時間帯が悪かったと思ってあきらめーな。だいたい、120円のおにぎりで何ぬかしてんねん。」必死で言い返す。

 「あーあ。また店の味方すんの?美味しくないおにぎり食べさせられたこっちの身にもなってよ。何か口直しになるもの、ないん?」

 「じゃあ、これは?」おつまみにとっておいたソフトいかくんせいを渡す。

 「うんうん、こっちの方がぜんぜん美味しいわ、あー、まずい梅おにぎりの味がまだ口に残ってるわ。お茶出してーな。」

 もはや言い返す気も起こらない。黙って冷蔵庫からお茶を出して冷えたウーロン茶を渡す。
しばらくしてお互い通常の会話に戻った(と思った)。

———————————————————————————————————————-

 今回のテーマは、画期的な開発ではあるものの、医療保険制度に激震を及ぼしかねない、ゾバルディやオプジーボなど問題を背景として、これから生まれてくる高額新規医療技術が、果たして「費用対効果」に見合っているのか、国民に意識調査をしようとする「びっくりテーマ」について取り挙げてみた(※1)。薬を例に挙げるとするならば、製薬メーカーの

 

 開発コスト+原価+適正な(?)利潤

 

 という方式で点数が決まっていくことに対する、厚労省の一つの改善策提言、といった雰囲気を感じる。

 

 以前にも取り挙げたが、ゾバルディに関しては、医療費は高くつくが、「完治」するという特徴がある。こちらは仮に「高い」といっても、「完治するなら安いものだ」という意見が出るかもしれない。対して抗がん剤に関しては、結局は寿命があとどれだけ延びるか?ということになってしまう。もちろん、患者を思う家族・親族の気持ちは、“1日でも長く生きてほしい、あらゆる手立てを尽くしてほしい”ということになることも当然あるだろう。このあたり、算盤勘定ではいかないものだ。

 というわけで、国民感情という、本当に一つに括ってよいのかどうかも分からないが、よく使用される言葉を、うなぎのぼりの新技術の価格に対して、開発側に対する牽制の意味もあるのだろうか

 

 今から約10年前、中国は蘇州、上海に視察に行った時のことだ。中国在住の方の、中国の医療に関するコメントだ。

———————————————————————————————————————-

 今日の中国医療体制を一言で言えば、儲け主義、或いは医療倫理の欠如と言うのに尽きます。
「背後関係のわからない身分不明の緊急患者には冷淡にして無常、救急車も最寄りの病院というより、コミッションの高い郊外の病院へ患者を運ぶ。たとえ緊急を要する患者であれ、看護婦から「もうベッドに空きがない」と、入院、手術を拒否され、そのまま死なせる例は珍しくありません。

 病院の費用には、幹部公費、職工工費、医療保険、自費、医療補助という五種類があり、この中で職工の工費が最も高く、風邪の診療だけでも280元で、実に職工の1か月分の給料に匹敵します。しかもそれだけでは済みません。単なる風邪であっても全身を検査され、それだけでも2~3千元とられる場合もあります。さらに患者は立ったままで点滴されたりするケースも少なくない。それに加えてニセ薬の氾濫です。すこし「恐ろしい」です。

 中国の病院は、患者の脱走、逃亡のような「食い逃げ」を防止するため、全て前金制です。「カネのない奴はあきらめなさい(※2)」というのが普通の考え方。(平成16年12月)

———————————————————————————————————————-

 少しぞっとする話だが、13億人も人がいると、相対的に命の重さが軽くなってしまうのだろうか。日本でこのようなことにはならない、と願いたいが、それもこれも、国民皆保険制度が維持できていればこその話だ

 「○○日長生きさせたければ、自費ですが追加であと○○百万かかりますが大丈夫ですか?(混合診療の問題が整理されたとして)」こんな台詞を、緊迫した医療現場で、患者を思う家族としては聞きたくないものだ。

 

 患者の声を紹介したい。

———————————————————————————————————————-

<患者の声>

「日本の国民皆保険制度に感謝している」

 アメリカには日本のような国民皆保険制度がなく、病気になると高額な医療費がかかることをテレビ等で聞く。一方、日本では具合が悪くなれば、お金のことを気にせず、直ぐ近くのお医者さんにかかることができ、自己負担額もめったに1万円を超えることはない。いつでも・どこでも安心して受診できる日本の国民皆保険制度に感謝しなければならないと思う。

「年金生活者にとって医療費支払いは大変」

 70台半ばの年金生活者。前立腺がんの外来治療を受けている。診察、治療、さらに意外とかかる薬代は、少ない年金収入で賄うのは大変。現役時代に民間がん保険に加入していればと後悔している。

「サプリメントには月5000円以上もかける一方で、健康保険の自己負担額は気になる」

 テレビショッピングを見て、グルコサミン、コンドロイチンといったサプリメントに月5,000円以上かけている。その金額はあまり気にならない。その一方で、風邪で近所の診療所にかかり、健康保険の自己負担額が3,000円を超えると、気になってしまう。

———————————————————————————————————————-

 旧自民党政権末期の頃、野党が当時の総理大臣に「カップラーメンがいくらで売られているかご存知ですか?」というような内容で質問し、対して総理は「今自分で買わないからよく分からないが、400円くらい?」のような答弁のニュースが流れていた。総理と庶民感覚が如何に違っていたかが強調されていた内容だったと思う。今やコンビニでは300円近い価格帯のカップ麺も登場している時代であるが、当時であれば質問の国会議員は“150円程度”と答えてほしかったのだろうか。あるいはご存じないと思ったので揚げ足取りで質問したのか。もっとも、総理がそんな優等生の答弁をしていたのであればニュースにもならなかったのだろうが・・・(※3)。

 全国一律で設定されている診療報酬だが、その点数一つ一つに、いよいよ「世間相場」や「庶民感覚」が導入されていく先駆けとなるのだろうか・・・(あくまで「モノ」に対してなのだろうが)。

 

 「うー、またあの不味いおにぎりの味思い出したわ」。子どもの件でお互いの意見をぶつけ合い、筆者の意見が優勢に傾きかけてきた矢先、ぼそっと家内が言った。もうおにぎりの件などすっかり忘れていたのに・・・。都合が悪くなるとすぐ煙に巻く。

 たいがい慣れてきたつもりだが、東北生まれの筆者にとって、関西人の「カブせ」にはもう辟易だ。こんな自分勝手が庶民感覚と言えるのか?もしそうだったら恐ろしい。
「まだ言うか?これやから関西人は!・・・。きみはおにぎり一つでどんだけカブせてくんねん!ほんまねちねちねちねちと・・・」

 おにぎり論争が果てしなく続く・・・。最近白髪が増えてきた原因はこれだろうか。まかり間違ってうちの家内に「支払い意思額」の調査票が送られてこないことを祈るばかりだ。日本の医療保険制度が出来る限り長く存続するためにも・・・(※4)。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 (※1)・・・ 仮想評価方法(CVM:Contingent Valuation Method)という調査法があるのだそうだ。環境を守るために支払っても構わない金額(支払意思金額)を尋ねることによって、環境の持っている価値を金額として評価する手法だという。

 研究の一例として、「京都市が市内の屋外公共空間のデザイン改善を意図した景観整備政策を策定すると仮定」した時、京都市民向(個人)からは平均して約657円/月/人支払っても良いという結果が出た。それを市民全体の人口で掛け算すると約55.4億円の財源が生まれる。それを観光客向けに調査すると、約553円/月/人になり、国内観光客と海外観光客の総計で掛け算すると117.8億、合わせて173億円の財源が生まれるのだそうだ(2015年実施研究)。

<WMN事務局>

 

 (※2)・・・実際にはもっと直接的な表現であったが自主規制。<WMN事務局>

 (※3)・・・これが国の最高機関の会議であるとは、実にくだらない。<筆者>

 (※4)・・・ 到底、送られてくるとも思えないが・・・。<筆者>