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No.618 「院外処方、なぜ院内の3倍の技術料か」疑問の声 行革推進会議・行政事業レビューで指摘

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院内処方で940円に対して院外処方では2900円と約3倍の格差

 政府の行政改革推進会議は11月16日開いた秋の行政事業レビューで調剤報酬を取り上げて議論した。事務局から、1処方の平均的な技術料について、院内処方と院外処方で約3倍の差が生じていることを指摘する資料が示され、評価者からは、「なぜ院外だと3倍も払うのか、疑問だ」などの声が出された。取りまとめとして「薬局の実態として厚生労働省が目指す、かかりつけ薬剤師・薬局は現時点では少数派で、現在の調剤報酬体系のままで目指すことには疑問の余地がある。真に患者のため、かかりつけ薬剤師・薬局を進める上で、メリハリのある適正で効率的な調剤技術料の設定を目指すべきではないか」との意見が出された。

 

 事務局が提出した「院内処方と院外処方のコスト差」を示した資料では、1処方の平均的な技術料が、院内処方で940円に対して院外処方では2900円と約3倍の格差があると指摘(図3 院内処方と院外処方のコスト差)。事務局提出資料について、委員からは「グラフをみてびっくりした。院外処方が当たり前になっている中、お金をこんなに沢山余分に払っている」「院外処方には調剤技術料は調剤報酬940円も含まれており、さらに薬学管理料、調剤料、調剤基本料が上乗せされており、誰が見ても疑問を抱くのは当然だ」など、批判の声が相次いだ。これに対して、厚労省保険局医療課の薬剤管理官は、①調剤基本料には、医薬品の備蓄や建物などの運営経費という性質がある、②調剤料は、薬剤の調製、服薬情報の確認、処方監査、疑義照会、服薬指導などが基本的な業務として位置付けられている、③薬学管理料は薬歴の記載や後発医薬品の説明、お薬手帳への記載に対して上乗せの評価である-などと説明した。厚労省の説明に対し、委員からは「これらは院内処方でも当然行われており、上乗せすること自体おかしいのではないか。薬剤師という第三者の目で見るというのは一見もっともらしいが、それに3倍も払う価値があるのかは、別の話だ。実際には調剤薬局では、医師の処方箋通りに処方しているのが実態ではないか」などと、さらに疑問点を質した。

 

 

 

■厚労省側は、後発品の切り替えなど院外処方のメリットを強調

 この日の行政事業レビューでは、厚労省側は、「医師が患者に処方箋を交付し、薬剤師が処方箋に基づき調剤を行い、医師と薬剤師が独立した立場で業務を分担し、薬物療法の有効性・安全性の向上が図れる」「薬剤師は、患者の薬歴管理を行い、重複投薬、相互作用の有無の確認、薬の効能・副作用・用法等について服薬指導をする」という調剤技術料のメリットを説明した資料を提出(図4 調剤技術料の評価内容と患者メリット)。

 その上で、「高血圧、糖尿病、不眠、胃炎(内服薬28日分)」の症例をあげ、先発品使用時の薬剤費1万4000円と後発品使用時の薬剤費6720円の差額7280円について、院外処方の経済的効果は、①後発医薬品の使用促進の差2293円(7280円×(67.4%-35.9%)/100 平均後発品調剤割合=薬局67.4%・診療所35.9%)、②重複投薬・相互作用の防止等315円、③合計2808円の医療費適正化効果が望めると説明した。

 

 一連の厚労省側の説明に対して、委員などから「本来は、医学的にも財政学的にも薬局・薬剤師に必要な機能は、薬を減らすことである。後発品に切り替えるというのは本来の機能ではない。不要な薬剤を減らすための報酬体系を検討すべきである」と厳しい指摘が出された。

 

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関係者のコメント

 

<保険局医療課長:「院外処方で後発品への切り替えを推進できる」>

 行政事業レビューに出席した迫井厚労省保険局医療課長は、院外処方によって「薬剤師が後発品の切り替えを推進し、後発品の割合が高まっている。単純に技術料だけを見れば3倍だが、全体額を比べれば、十分に効果がある」と、院外処方のメリットを強調した。

 

事務局のひとりごと

 

「時速8kmの速度で進む船で、上流に向かって12km先の目的地に3時間かかり、元の地点に帰るときには1時間かかった。その時の川の時速を求めなさい。」(※2)

 

 小学3年生の息子がもうすぐ定期考査なので、今までやってきた問題のうち、間違えた問題を集中的に、毎晩のように、家内が息子に課題を出す。平日はなかなか時間をとることが出来ないので、土日は筆者が息子の算数特訓の先生役だ。この3週間、殆どこんな調子の週末を送っている。休みだというのにどこにも遊びに連れて行ってあげるわけでもなく、ひたすら間違った問題(つまり息子にとっては全てが難問)ばかりと向き合うのだ。学生の本分は勉強なのだろうが、可哀想になってくる。休みのたびに息子と算数の格闘をせねばならない我が身も可哀想になってくる。家内は容赦ない。社会人になってこのかた、毎日さまざまな数字と向き合う我が身だが、そういったものが理解できるのも、これまでの学生時代の勉強によって培われたものなのだろうが、ただ、小中学生の算数の問題を見ると、ナンセンスだと感じる時がままある(※3)。

 

231.28×4.5=?

 10dlの4%食塩水に何mlの水を加えると2%食塩水ができるか?

 

 こんな問題(※4)、社会人になったら殆ど役に立たないのではないか(と思う)。計算のトレーニングなので、小数点の位置を考えることは大事だとしても、こんなの、大雑把で大体1,000位だとあたりをつける方がよほど現実的ではなかろうか?dl(デシリットル)などという単位は、算数の教科書でしかみかけたことがない。l(リットル)とml(ミリリットル)で十分に事足るではないか。しかも、わざと異なる単位を問題に出して変換させようとする。そんなものなのだろうが、思わず突っ込みたくなってしまう。

 

 家内は子どもたちと筆者に“容赦なし”なのだが、今回のテーマである調剤報酬の議論も容赦がない。本来、医薬分業という制度改革の際、調剤薬局の運営が成り立つような点数設定を行ったはずなのに、今度はそれが高すぎてけしからん、という。

 最近はあまり聞かれることはないが、筆者は、「院外処方か院内処方、選ぶことができますが、どちらにされますか?」と病院で聞かれたら、迷わず「院内」を選ぶだろう。その方が自己負担も含めてお金がかからないということを理解しているからだ。院内での調剤まちは時間がかかったのも、殆どの病院が院内処方だった時のこと。ある程度、患者が院外に流れているのだ。そんなに待つ必要もない。むしろ院外の調剤薬局に行ったところで待つことになるのだ。

 

 診療報酬改定率が非常に気になるこの時期、医科本体の技術料に対するプラス要請、これが医療界の最も要望するところであるので、「マイナス、マイナス」と毎日唱えられれば、そんな中でもそれを死守するためにはある程度の犠牲は止むを得ない、という心理も働こうというもの。薬(モノ)と、それに関わる調剤には“容赦なし”の議論だ。増えすぎる医療費の伸びを抑えるために、「では調剤に関連する費用を下げるために処方箋料を下げて良い」とは、やはりならないのだろう。

 

 経済財政諮問会議の民間議員はこうコメントする。

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○「服薬管理や在宅医療等への貢献度による評価した上で、調剤報酬を見直すべき」:

経済財政諮問会議民間議員

 調剤技術料の妥当性の検証、薬局の機能分化や調剤報酬の適正化を論点にとりあげた2017年10月26日の経済財政諮問会議で、民間の有識者議員は、「保険薬局の収益状況を踏まえ、医薬分業の下での調剤技術料・薬学管理料の妥当性、保険薬局の果たしている役割について検証し、調剤報酬について、服薬管理や在宅医療等への貢献度による評価や適正化、患者本意の医薬分業の実現に向けた見直しを進めるべきだ」と、2018年度診療報酬改定で調剤報酬に厳しく切り込むべきだと強調した。

 

健保連幹部(支払側)も手厳しい。

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○「院外処方は、保険者や患者の負担増に見合う効果があることが前提だが、現実は違う」:健保連幹部

 健康保険組合連合会の幹部は、「これまでは医薬分業、院外処方を推進してきたものの、「保険者や患者の負担増に見合う効果があることが前提である」と強調。「現状の調剤薬局の動きを見ると、まだ不十分」と指摘する。「かかりつけ薬局」の機能、患者の立場に立って医療機関側と調整する役割を果たすことも期待していたが、実際に行っている調剤薬局は少ないようだ。薬剤服用歴管理指導料についても、「服薬の指導をしてもらうための費用。単に記録を取って、コンピューターに入力して終わったのでは、41点に見合う機能を果たしているとは言えない」など、保険者・患者の負担増に見合った活動をしていないと批判している。

 

 ここで調剤薬局運営事業者より、そもそも医薬分業が推進された背景について整理していただいた。

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〇医薬分業のメリットについて

 ・かかりつけ薬局・薬剤師を決めておくことで、担当の薬剤師が、他の医療機関や薬局で受け取った薬・市販薬・健康食品・サプリメントなどをまとめて把握し、薬が重複していないか、薬同士や食物の飲み合わせに問題がないか、薬の飲み方の注意点・保管方法などアドバイスすることができます。

 ・来局した際、過去の服薬記録も含め、患者さまの服用後の経過を継続してチェックして、薬の効果や体調変化をみて必要に応じて医療機関に連絡を行います。

 ・多数の余っている薬がある場合の調整の提案、自宅での薬の確認・整理などを行うことができます。

 ・後発医薬品の提案ができ、患者様負担の軽減や医療費抑制ができます。

 

 いろいろと来年の改定では議論の中心になってしまう調剤であるが、それでも医薬分業が進んできている中、まだ院内処方を選択されている医療機関もある。ただし仰る主旨は、ある意味もっともに聞こえる。

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○「厳寒の北海道。高齢の患者さんのことを考えると、絶対院内処方!」:北海道の診療所経営者

 厳寒の冬の北海道では、高齢の患者さんに院外処方で、外にある調剤薬局まで足を運んでもらうことはできない。一方、院内処方では、診察のお支払いとお薬代のお支払いが1回の会計で済む。また、薬剤師が処方内容を担当医に直接、問い合わせ、カルテを確認しながら、調剤を行うので、お薬の説明が的確でかつスムーズに行うことができる。絶対院内処方を選ぶ。

 

○「院外・院内の選択は、患者の利便性も含めた中長期的視野から」:院内処方にとどまった開業医

 院内・院外に迷い、院内処方にとどまった開業医。地域の開業医のなかには、「経営面でクリニックが得するから院外処方」と考える先生も数多くいるようだ。院外処方が増えている原因は、もっぱら経営者サイドから見たメリットが大きいからに他ならない。収入面でいえば処方箋料については院内処方の場合より高い点数だ。支出面では薬剤購入費は当然として、薬剤師らの人件費や調剤関連機器のための費用が不要になる。特に、比較的小規模なクリニックにとって、院内処方に対応するだけのスペースを確保するのは難しい

 しかし、それは、あくまで経営者サイドから見たメリット・デメリット。患者からの視点では少々様子が異なってくる。患者の中には、院外処方を「面倒くさい」と感じている人が少なくない。体調が悪くて医療機関を訪れたはずなのに、クリニックから薬局へわざわざ移動して、その度に順番を待って支払いを済ませなければならないその上、支払い金額は、院外処方により高くなった処方箋料が含まれる。患者本位のサービスが差別化となり集患につながれば、長い目で見た場合にはプラスとなる。中長期的視野も取り入れて、院内か院外かを検討するべきだ。

 

ある調剤薬局経営者よりコメントをいただいた。

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○「病院の横に調剤薬局を建てれば、儲けた時代は終わった」:調剤薬局経営者

 以前から2025年までに50%以上の調剤薬局が倒産するという推測があったが、2018年度診療報酬改定で現実化するか心配。処方箋の処理しかしない調剤薬局の経営者のほとんどが「そんな根拠どこにある?50%以上が倒産?ありえない」とタカをくくっていたが、今度の改定で、「病院の横に建てれば儲けた時代は終わった」と認識すべきかもしれない。

 

 若手人気女優の風邪薬のCMではないが、「狙い撃ち」されているとされる、特に大手の門前薬局は、不断のコスト削減と、集中購買の継続、マーケティングを駆使して、それでも恐らく生き残っていくことだろう。厚労省が(もしかすると)目の敵(?)にしている大手門前調剤薬局よりも、先のコメントをいただいたような、あまり大手でない調剤薬局が「狙い撃ち」の犠牲となり、薄利多売になるかもしれないが、故に「満員御礼」そこで「大手は焼け太り」、こんな将来が待っているのだろうか(※5)。

 

 早いもので、ワタキュー・メディカル・ニュースが刷新されてから丸3年だ。どのような形がたくさんの人に読んでもらえるだろうかと試行錯誤しながらやって来たのだが、もともと読者の自由なご要望・ご意見などをいただくような仕組みにはしていないので、読者の身になったつもりで自問自答しながら毎月編集作業を行っている訳だが、もう3年にもなるのか。トリプル計画、診療報酬・介護報酬同時改定、という、惑星直列が起きるかのような2018年は、医療・介護業界にどのような未来をもたらすような指針が示されるのだろうか。

 マンネリズムに陥らぬよう、新たな気持ちで新年に臨みたい、と決意して本年の締めくくりとしたい。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※2)・・・往路は12kmの距離に3時間かかるので、時速4km。

    復路は12kmの距離に1時間かかるので、時速12km。

    船のスピードは時速8kmなので、川の時速は4km。

 

<筆者>

 

(※3)・・・抽象的な考え方(代数を使う:しかも「χ(エックス)」ではなく「□(ハコ)」!!よけい分かりにくいと思う)を使って数式に変換する(=方程式にする)というのは、色々な経験があってはじめてできようというもの。まだまだ経験の浅い小学生にはつらいのではないだろうか・・・出来ない我が子を責めるより、学校教育の方にモノをいいたいものだが・・・(甘いか?)。

<筆者>

 

(※4)・・・231.28×4.5=1,040.76

    10dl→1000ml(1l)で4%の食塩水

    1,000(ml)×0.04=40(g)の食塩

    40(g)÷0.02(2%)=2,000(ml)

    2,000mlの水で2%食塩水となるので、水は1,000ml必要。

<筆者>

 

(※5)・・・「経済の論理からすれば当たり前だろうが!!」と仰る向きもあるかもしれないが、中医協の議論を思い起こしていただきたい。「重症度・看護必要度の基準が25%を上回れば、(7:1病棟が維持できず)経営できなくなる医療機関がたくさん出てしまいかねない。25%を上回ることのなきよう要望したい。」この手のコメントを良く見かける。

一方で「このように調剤ばかりに牙をむけば、生きていけなくなる調剤薬局がたくさん出てしまいかねない。あまりに厳しい締め付けは如何か?」こんなコメントはあまり見たことがない。

 

<WMN事務局>