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No.625 厚労省、訪日外国人患者受け入れ体制を本格整備へ。内閣府の健康・医療戦略推進本部にワーキンググループ新設

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オリンピックなど国際的なイベント控え受け入れ体制整備は急務

 わが国の在留外国人は約247万人(2017年6月末現在)、訪日外国人旅行者は年間2869万人(2017年)に達し、外国人患者が安心・安全に日本の医療サービスを受けられるよう、外国人患者受け入れのための体制整備が急務となっている。

 厚生労働省では、これまで医療通訳の配置や院内案内図・資料等の多言語化を支援するなど、地域における外国人患者の受け入れ拠点となる医療機関の整備を促進してきた。その結果、政府の「未来投資戦略2017で目標に掲げた「外国人患者受け入れ体制が整備された医療機関」を2020 年までに100カ所で整備する目標を前倒して2017年度中に達成した。

 

 今後、2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えるなか、訪日外国人は、基幹となる医療機関ばかりでなく、中小の医療機関にも突然受診することが想定される。このため政府は、訪日外国人が医療機関を受診した際の言語や、医療制度の違いに伴う医療機関側の事務負担や、治療費の未払い、自治体の支援窓口整備などの問題に対応するため、内閣府の健康・医療戦略推進本部の下にワーキンググループを新設することにした。構成員は、観光庁や厚労省、外務省など関係省庁、日本医師会や日本病院会などの代表で組織される。医療機関向けの統一的なマニュアル整備や、医療機関からの相談を受け付ける自治体窓口の設置を視野に検討する。

 

厚労省新年度予算で新規に「地域の外国人患者受け入れモデル事業」「電話医療通訳の利用促進事業」

 また、厚生労働省は2018年度予算の新規事業として、地域における外国人患者受け入れ体制のモデル構築事業(上限1件当たり684.3万円)」と、「団体契約を通じた電話医療通訳の利用促進事業(上限1件当たり991.8万円)」を計上するとともに、2014年より拠点病院に対して行ってきた医療通訳者・医療コーディネーターを配置する「医療機関に対する医療通訳等の配置支援(上限1件当たり437.2万円)」を継続して行う(図1)など、医療機関における外国人患者受け入れ環境整備を推進する。

 

 

「地域における外国人患者受け入れ体制のモデル構築事業」は、外国人患者の受け入れについて地域毎に異なる問題が生じており、地域固有の事情を勘案した上での対応が必要との観点から、地域特性に応じた外国人患者受け入れ体制のモデルを構築することが目的。都道府県単位で実施し、実施する都道府県は公募で5カ所程度を選定する。

 「団体契約を通じた電話医療通訳の利用促進事業」は、対面型の医療通訳が広がりつつあるが、利用者数の増加に伴い対面通訳のみでの対応が困難な状況となり、また、電話による医療通訳は対面通訳と比べて利便性が高いものの、医療機関における認知度はまだ十分でないことから、病院団体や医師会、地方自治体などとりまとめ団体と電話通訳事業者との間で、一括して通訳利用に係る契約を行い(団体契約)、傘下の医療機関が電話通訳を利用できるようにする事業を行うもの。病院団体、医師会など複数の医療機関から構成される法人、複数の医療機関を運営する地方公共団体が実施団体となる。実施団体は公募で5カ所程度を選定する。

 

関係者のコメント

 

<厚労省調査「医療通訳利用経験がある医療機関は12.7%に過ぎず」>

 厚労省は、医療機関3761(回収1710)、自治体、80の医療通訳サービス提供事業者を対象に、外国人患者受け入れの状況や医療通訳の養成・研修の実施状況などについてアンケートを実施し、2017年8月、「医療機関における外国人旅行者及び在留外国人受け入れ体制等の実態調査」として発表した。外来では79.7%、入院では58.5%の医療機関で外国人患者の受け入れ実績があり、そのうち、「医療通訳(電話通訳を含む)を利用した経験がある医療機関は12.7%」に過ぎず、医療通訳の体制整備が課題となっていることが明らかになった。

事務局のひとりごと

①あなたが行ってみたい国や都市は?
②あなたが住みたい国や都市は?

 

①と②の問いで、同じ人に質問をした時、両方の答えが同じ名前で返ってくるような都市は、そうないだろう。少なくとも筆者が回答者なら同じ回答にならない。

 行ってみたい国や都市、つまり旅行などで訪れたい国・都市に期待するものは何か?文化、食べ物、景観、スポーツやアクティビティ・・・などだろうか?

 一方で、住んでみたい国や都市に期待するものは何か?気候、教育、自然、文化、治安、医療、友人、仕事、買い物事情・・・それらを総称すると“住環境”とでも言おうか、行ってみたい国や都市に期待する以上の条件を、一般的には求めてしまうのではないか?全く個人的な意見で大変恐縮だが、例えばギリシャやスイスには行ってみたいとは思うが、住みたいとは思わない。イタリアも旅行は楽しいだろうが、治安や、雰囲気的にいい加減さを感じてしまい、住みたいとは思えない。花の都パリであっても、イタリアとは理由が異なるが住みたいとまでは思えない。

 

 今回の本文テーマは、訪日外国人受け入れ体制のワーキンググループが内閣府に新設された、というものだ。

 「観光立国」というフレーズが我が国の成長に欠かせない要素である、と耳にしたのはいつのことだったか?少なくとも、ここ2~3年どころの話ではないはずだ。対応の遅さを嘆くのは簡単だが、それだけ切実な医療機関の声が国に届いた、ということでもあるのだろう。

 旅行中に病気になる、ということは稀なケースで、修学旅行などの際、先生から渡された持ちものリストの中に、“保険証の写し”は必須であった。が、筆者はこれまで使ったためしがない。社会人になってからも、ありがたいことに風邪薬や酔い止めなどを服用して乗り切るようなことはあったにしても、旅先で医療機関のお世話になる、といったことはなかった。海外に出張した時も、整腸剤や風邪薬など、いろいろ準備していくのだが、結局は殆ど使わず終いである。あくまで万が一の時のための準備なので、使わないに越したことはないのだが・・・。

 

 我が身に当てはめればそんなことであるのだが、それでも旅先で病気にかかってしまう不幸な事態は、この世の中の病気の発症率、事故の発生率などがゼロにならない限り、それは誰にでも起こりうるリスクだ。筆者は幸い、これまで運が良かっただけなのだろう。日本経済新聞によれば、訪日外国人が何らかの不慮な理由により、医療機関にかかった際、不払い経験のある病院が3割もあるのだという(関連記事:3月23日(金)5頁上段)。

 日本人である我々が、国内において医療機関で受診の際は、原則保険証があれば、実際にかかる医療費の3割を自己負担すれば、医療というサービスの現物給付を受けることが可能だ(※1)。国民皆保険制度の恩恵である。

 それでも、大体不慮の際に都合よく保険証を持ち歩いているというのもなかなか難しいので、救急窓口で受診される患者は「保険証持ってません」、という状態になることもある。普段罹っている病院であれば患者情報(住所・氏名・連絡先・保険情報など)があれば、保険証がなくても保険診療にしてくれる場合もあるかもしれない。しかし新患の場合はそうはいかず、保険証がない状態での受診は、医療機関によってルールが異なるが、原則は10割の医療費をお支払いいただき、後日保険証が確認されれば、あらためて受診日に遡って保険診療がなされたこととなり、10割支払った医療費のうち、7割が返金される、というのが一般的だ。

 

 一方で訪日外国人は、もともと日本の国民皆保険制度の枠外なのだから、いくら自国の保険証に類するものを持っていたとしても、医療サービスの現物給付の後は、まず10割負担をしていただき、自国に帰国後、手続きを行い、例えばその国に医療保険制度があるなら、そのルールに従って、いくらか還付されるだろう。または、旅行保険等に入っていれば、そこから支払いの手続きをすることになるだろうから、保険会社と医療機関との遣り取りで、一旦の10割も支払わずに帰ることが出来るかもしれない。筆者も海外出張の際は、ありがたいことに会社で海外旅行保険に加入していただけるので、その証明書を持って行けば、おそらく海外で医療機関に罹ることがあったとしても、自己負担しないで良いかもしれない。ただ、それを正確に相手に伝えるための「言葉の壁」がとても心配であるが・・・。

 前出の日経新聞によれば、不払いの一因として、旅行保険に加入する外国人が少ないことも背景にあるという。欧州などでは保険加入をビザ取得の条件にする国も多いが、日本では事実上未対応なのだそうだ。

 2020年の東京オリンピックの年には4000万人もの訪日外国人を目標としているのだから、中には医療機関に罹る外国人もいることだろう。体制作りの必要性が叫ばれるのも無理はない。

 

 

厚労省医政局長:「地域の実情を踏まえ、外国人患者の受け入れ体制の裾野拡大に着手」

 厚生労働省の武田医政局長は2018年年頭所感の中で、「2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック競技大会も見据え、訪日・在留外国人患者が安心・安全に日本の医療機関を受診できるよう、外国人患者受け入れ体制が整備された医療機関の整備に加え、地域の実情を踏まえながら外国人患者の受け入れ体制の裾野拡大に着手し、受け入れ環境のさらなる充実を目指していきたい」と抱負を述べた。

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 厚労省のコメントである。では、医療機関の経営に携わる方々の意見はどうだろうか?

 

○民間病院事務長:「一番深刻なのは、未収診療費の問題。本音は、外国人の患者に来て欲しくない」

 都内の民間病院の事務長。「一番の深刻な問題は、診療費の未収金問題である。特にアジア系外国人は、海外医療保険に加入していない場合が多く、英語でのコミュニケーションもままならないのに、英語以外の言語で日本の診療費の仕組みを説明するのは無理だ。本音は、日本語のしゃべれない外国人の患者に来て欲しくない」。

 

○大学病院の看護師:「JCI取得病院でも、きめ細かいケアには相当な語学力が必要」

 外国人患者の看護経験のある大学病院の病棟看護師。「当院では、米国の病院評価機構JCI(Joint Commission International)取得の病院であり、英語で治療ができる医師、看護師がいる。また、症状や手技などよく使う言葉を、英語・フランス語・中国語・ロシア語に訳した表を常に手元に置いているが、きめ細かい看護をするには、しっかりした語学能力がないと難しい場面が多い」。

 

○外来受付職員:「英語以外に中国語の対応も必要に」

 大阪の民間病院の外来受付職員。「病院の近くには、中国人のコミュニティがあり、日本語も英語も話せない中国人(小児)がたくさん受診してくる。幸い当院には、中国語を話せるパートの事務員がいて、大変助かっている。今までは、英語での対応で済ませてきたが、これからは、訪日外国人観光客の大半を占める中国人の対応は必須ではないか」。

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 「自分は日本から出ないから、外国語なんて話せなくても大丈夫」、「日本に来るんなら、日本語くらい、自分で勉強してきたら?」などという、日本至上主義的発想・発言は、もはや国際的には“思い上がり”である。招致プレゼンの時に流行した「お・も・て・な・し」は、幻想に過ぎず、むしろ「お・も・ろ・な・し」と思われてしまうことだってあるかもしれない。

 良くも悪くも、独自の文化圏、言語体系が出来上がってしまった日本は、言葉の壁で海外から取り残されるのではないだろうかそんな危機感すら感じるメッセージを紹介したい。

 

 

○ドイツからの観光客:「地方都市での受診は、大変」

 ドイツからの観光客。「東北地方を旅行していて、急な発熱で地方都市の公立病院に受診した。ドイツ語はもちろんのこと、英語が話せる受付や看護師、そしてドクターもおらず、持っていたスマートフォンのグーグル翻訳アプリを使い何とか病状を説明した。地方の病院で受診するのは、大変だと思った」。

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 訪日外国人もそうであるが、旅行好きの日本人も海外で大変な経験をされている。

 

 

○海外で受診した主婦:「薬の処方量の違いで大変な思いを」

 米国の南部都市に駐在経験者のある主婦。「持病の膝の痛みが悪化し、ホームドクターに紹介され地元のコミュニティホスピタルに受診した。ステロイド外用剤100gを処方され、ドクターの処方通りに塗っていたが、かえって炎症がひどくなり、大変な思いをした。日本に帰国して主治医に聞いたら、日本人の場合は30gチューブが標準量であると説明を受け、驚いた」。

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 今から約20年前くらいだろうか?日本人旅行客が海外でみんな同じ格好をして、みんな首からカメラをぶら下げての集団行動、買い物においてはシャネル、グッチ、ルイ・ヴィトンなど、海外のブランド品を買い漁っていく・・・海外から、日本人旅行客が皮肉られていたことを思い出す。

 翻って現在、政府としては訪日外国人4000万人突破に向けて躍起になっているが、国内では訪日外国人に対し、当時の我が事は棚に上げ、経済的な恩恵はさておき、住環境におけるマナーの悪さや、迷惑だ、というネガティブな意見も目立ってきた。筆者も、公共交通機関における海外旅行客のスーツケースの大きさと多さや、海外旅行客が、レジの前で行列を作り、日本円に慣れていないこともあるのだろうが、しかも誰かがまとめて払うのでなく、一人ひとりでゆっくりゆっくり支払っているのを待たなければいけない状況には若干辟易しているのだが・・・。

 

 筆者の住む地方都市(結構海外旅行客はくるのだが)でもこんな状況であるので、東京オリンピックを目前に控え、都の対応は待ったなしだ。

 

○東京都:『医療機関受診のための多言語ガイドブック~感染症の症状がでたときの道しるべ』を作成

 外国人入国者数が増加するとともに、海外で流行する感染症が日本に持ち込まれるリスクが高まっている。訪日外国人は言語等のさまざまな障壁があるため、感染症を疑う症状があっても医療機関の受診を控えてしまう可能性があり、その結果、感染拡大につながることが危惧される。東京都は、外国人が感染症を疑う症状がある時に医療機関を受診できるようサポートする『医療機関受診のための多言語ガイドブック~感染症の症状がでたときの道しるべ~

 

○都医副会長:「軽症の患者さんは地域の医療機関で受診を」

 昨年2月の医療機関における外国人患者対応研修会で、東京都医師会の近藤太郎副会長は、「発熱や風邪など軽症の患者は地域の診療所、歯科診療所、薬局で対応したらいいと思う。そのためには、受付、看護師、医師・歯科医師・薬剤師が利用できるような翻訳機器、電話通訳サービス、さらに診療費の支払いトラブルの対応など対応策が必要だ」と述べた。

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 行ってみたい国・都市と思われている国・都市の住人は、海外旅行客をどうみるか。商売につながるから良いことと思う関係者もいれば、生活がいろいろな意味で脅かされるのであまり来ないで欲しい、という意見もあるだろう。

 花の都パリ。誰もが一度は訪れてみたい都市を有するフランスは、年間9000万人にも上る旅行客を受け入れていると聞く。前出の日本人と同じような、観光で訪れる外国人旅行者に対してネガティブな意見を持つフランス人もいることだろう。それでもなお、観光で立国するという国には、やはり国を挙げての取組みがなされてきたからこその実績なのだろう。

 はたして日本はどうすべきなのだろうか

 

 ところで、筆者を含む一行(5~6人)が欧州に行った際、日本人であることだけを理由に、現地の人に明らかに“馬鹿にされた”と思しき経験を紹介して締め括りとしたい。

 日本人が訪日外国人に対して(特にアジア圏の方々に)このような言動をしないことを切に願いたいものだ。念のために付け加えておくが、海外に行くことができた経験はとても素晴らしく、このような経験をしたからもう二度と行きたくない、と思っているのでは決してない、ということは付け加えておきたい。

 

・セーヌ川クルーズを待っている際に、日本人一行をみた他の旅行客(白人系の集団)から、見下すような目つきで「ジャップ!!」といわれ、鼻で笑われた。恐らく相当に日本人(東洋人・黄色人種)のことを自分たちよりも下等な存在のように思っていたのだろう。

 

・ホテルの受付でチェックアウトの際、何らかの行き違いで途方もない宿泊費を請求され(ツアー会社を通じての宿泊なので、ルームキーを返却すればチェックアウトと思っていたのだが)、同行していた通訳の方に間に入ってもらい、結局その金額は払わなくて済んだものの、そのホテル受付の女性(20代と思しきホテル職員:フランス人)が、その対応の面倒さに、話としては解決したものの、日本人(ごとき、と思っていたのだろう)との対応がよほど腹立たしかった様子で、床に何かを投げつけた上に、筆者を睨みつけ、フランス語で怒鳴り散らして奥のカウンターに去っていった。私なりの解釈では、「あー分かったわよ!そうすりゃあいいんでしょ!日本人のくせに!あー気分悪いわ!!」という感じに聞こえた。仮にもサービス業のホテルの受付のスタッフに、彼女のあまり好きではないであろう外国人旅行客で、しかも日本人ではあるのだろうが、一応顧客であるはずなのにそんな態度を取られるとは思いもしなかった・・・。

 

・ローマで、パスタの店で我々日本人一行のテーブルに、オーダーを取りに来て欲しいので声を掛けた際、真っ赤な髪の毛のウエイトレスに我々の顔を見回した後、「チッ」と舌打ちされた上、オーダーをとり終わったあと、さらにイタリア語で(恐らく)聞こえるように罵られた(のだろう)。あまり気持ちのいい経験ではなかった。本場のパスタもそれほど美味しくなかった(ように感じた)。

 

・街の露天で我々日本人一行をみて「OH! MOMOTARO BOYS!!」と指を指された(イタリア)。フランスで感じたほど馬鹿にされた感じは受けなかった(むしろユーモアさえ感じた)が、しかし、これも恐らく、彼ら欧州人の、東洋、しかも日本人を侮蔑する表現の一つだったのだろう。

 

 嫌な思い出はあるものの、それでも海外に行ったことを後悔しない自分がいるわけだ。果たして「お・も・て・な・し」が、海外旅行において行きたい国を選ぶ重要な要素となり得るのか?日本人の一個人それぞれが、いや、大半の日本人が、「お・も・て・な・し」の精神で海外旅行客を迎えようとしているのだろうか?我々日本人はとんでもない勘違いをしているのかもしれない・・・

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)・・・ 保険証(主保険)の他、医療証(乳幼児医療、障碍者医療、母子医療)などの従保険がある場合、自己負担が3割とはならない場合もある。

<WMN事務局>