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No.633 多発する大規模災害!!注目される病院BCP(事業継続計画)の策定

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■厚労省の救急・災害医療検討会、DMAT事務局強化など予算確保求める

 今年の夏は、6月18日の「大阪北部地震」、7月の西日本を中心に降り続いた記録的な「平成30年7月豪雨」など大規模災害が多発し、改めて大規模災害医療に対する取組みが注目されている。

 今年4月から開催されている厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等の在り方検討会」は7月6日の会議で、同省が、DMAT(災害派遣医療チーム)事務局の人員増など体制強化災害時を想定した燃料供給手段の確保ドクターヘリの安全運用・運行を事業者に求めること、広域災害・救急医療情報システム(EMIS)の構築、地域の救急医療関係者間の協議の場としてメディカルコントロール協議会を活用するなどの論点案を提示し、了承された。DMAT事務局強化については、2019年度予算の編成に向けた概算要求に盛り込み予算確保を目指し、それ以外は通知を発出する予定である。

 DMAT事務局災害医療センター(東京都立川市)と大阪医療センター(大阪市)に設置され、計33人が配置されているが、専任の常勤職員は3人だけで、併任や非常勤が大半となっており、増員することを目指す。また、他の医療機関との協力をしやすくするため、病院内の一部門としての位置付けを改める方針だ。

 また、災害時の燃料供給に関しては、今年2月の福井県などでの豪雪の際、医療機関のボイラーなどの燃料を確保するため、日頃は取引のない業者にも連絡を取ったが、供給するべき燃料やポンプの種類などの情報収集に一部で混乱があった。これを受け、平時から医療機関が、燃料を扱う複数の業者との間で、災害時の供給に関する協定を結ぶことを通知で求める。

 

■注目される病院のBCP(事業継続計画)策定の推進

 大規模災害医療対策で課題となるのが、災害後、医療提供機能を維持するための「災害対策マニュアル」作成をはじめ医療機関がいかに存続していくのかを明らかにしたBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の策定である(図1 BCPの全体像~災害拠点病院用病院BCP作成の手引きより)。2011年3月11日の東日本大震災を契機に一般企業ではBCP策定が進んだ。しかし、医療分野では、「災害拠点病院(2018年4月現在で全国731病院)ではBCPの策定が必要」と指摘されてきたにもかかわらずBCP策定が進まず2016年4月の熊本地震でも病院自体が被災し、本来期待されている役割を十分に果たせなかった災害拠点病院もあった。このため、厚労省は2017年3月、医政局長通知「災害拠点病院指定要件の一部改正について」で、「災害拠点病院の指定要件にBCP(事業継続計画)」を追加し、病院のBCP策定を進めている(図2 災害拠点病院指定要件の一部改正)

 

 災害拠点病院のBPCで想定される業務は、①症状のある患者の手術、外傷患者の治療、ICU患者への投薬など災害発生時にも中断が許されない優先度の高い通常業務、②トリアージや被災した重症患者の治療、不足する医療資器材の手配など災害時応急対応業務、③地震等で破損したライフライン確保など応急復旧業務、④破損したライフラインの復旧など医療サービス機能を回復するために優先度の高い復旧業務、⑤BCPや災害マニュアルの策定など平時からの予防業務-があげられる(東京都福祉保健局「大規模地震発生時における災害拠点病院の事業継続計画(BCP)策定ガイドライン」より)。このうち、病院のBCPでは、「水、電源、医薬品、医療資器材の確保は、病院存続のコア」となる。また、災害発生時には点滴など医療機器の誤操作も懸念され、医療資器材の緊急輸送で資器材を間違える可能性もあるなど、資機材の互換性、均てん化も課題となっている。

 

 「災害医療は総力戦であり、病院、医療界だけでは成り立たない。食料や医薬品など様々な物資の供給管理、ライフライン確保のためには関係する企業等との協力体制が必要」となる。このため、2017年9月「異なる視点や専門知識をもつ複数プレイヤーが参加することにより、単独では発想できない戦略・対策を創出し、実効的なHealthcare BCP体制を構築し、日本の災害医療の先駆けとなること」をコンセプトに、災害時の福祉・医療機能存続事業連合体である「一般社団法人Healthcare BCPコンソーシアム」(理事長=有賀 徹独立行政法人労働者健康安全機構理事長)が設立された。

関係者のコメント

 

 

<高知県、南海トラフ地震対策として、病院BCP策定拡大するための助成制度創設>

 最大震度6強が想定される南海トラフ地震の発生確率が高まっている高知県では、災害拠点病院の100%、救護病院の37.7%で病院BCP策定が完了している。災害拠点病院や救護病院以外の病院は小規模なところが多く策定のノウハウ等がないことから、2018年度から災害拠点病院を除く病院及び有床診療所を対象にBCP策定等に係る経費(委託費)に対する助成制度を創設した。

 

 

事務局のひとりごと

 「偏在」、「偏り」。

 近年、ますますこの言葉を考えさせられるようになった。あらゆる経済活動は、例えば資源・エネルギー関係の事業なら、その資源の眠っている「偏り」を探し(投資も伴うのだろうが)、そこから富を得る仕組みを構築していく。流通にまつわる業界なら、その流通の首根っこを捉まえ、自らの売上高を増やし、購買力を高め、さらに強力になろうとしながら「偏り」の仕組み構築していく。投資家は自らの資産を増やすための活動を通じ、富の集中、いわば「偏り」を作ろうとする。大企業は自らのグループを拡大させ、グループ収益の最大化を目指しながら業界内の「偏り」を構築していく・・・。

 医療の世界では、人口10万人あたりの医師数は、OECD諸国に比較してもそう遜色のない我が国、日本であるが、医師の地域偏在・診療科偏在は間違いなく存在し、地域や診療科によってはその継続性が深刻な状況すらある。それは言い換えれば「都市」間の競争の結果、勝者である都市に人・財が集中し、そうでない都市の存続が危ぶまれる、そんな繰り返しによる「偏り」がもたらした帰結なのだろう。

 そういった「偏り」を求めた諸々の動きは、地球温暖化にもつながり、それが新しい何らかの「偏り」をもたらしてもいるのだろうか。亜熱帯の気候における、スコールといわれる“どしゃ降り”は、その地域によっては、当たり前の自然現象であるが、日本においてはスコール以上のどしゃ降りが、あれだけ偏った地域に降ってしまうと、これまでではとても考えられなかったような事態を招く。上から降ってくる水や雪を防ぐ術を、とてつもなく強い風に対抗する術を、これだけの科学技術が発展を遂げてきた現代においても、人類には防ぐ術がない・・・。

 

 厚生労働省もタイアップしている今夏の注目映画、「劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」も、救命救急はもちろんだが、災害医療も大きなテーマの一つとなっている。TVドラマシリーズで人気を博し、満を持しての劇場版の登場である。家内に無理矢理了解をもらって映画館に足を運んだ。医療を大きなテーマとして扱っている、我がワタキューメディカルニュース事務局にとしては、これはやはり見ぬわけにはいくまい(※1)。

 

今回のテーマは病院の事業継続計画(BCP)策定についてだ。

 病院ではないが、帝国データバンク(TDB)が実施した事業継続計画(BCP)に対する京都府企業の意識調査(2018年)によれば(※2)、自社におけるBCPの策定状況について尋ねたところ、「策定している」と回答した企業は14.0にとどまったそうだ。

 「策定している」企業を業界別に見ると、『金融』が50.0%、次いで『建設』が20.0%となり、反面、『農・林・水産』、『不動産』は0.0%となった。

社員数別では1,000人超の企業がBCPを策定している割合は100.0%、6~23人の企業は3.3%にとどまるなど、業界・社員数いかんにより、策定状況は大きく異なっているようだ。

 どのようなリスクが事業継続困難になると想定しているのかとの問いには「自然災害」が62.8%、「設備の故障」38.4%、「情報セキュリティ上のリスク」36.0%、「製品の事故」34.9%、「自社業務管理システムの不具合・故障」34.9%の順の回答。「戦争やテロ」は10.5%と、これをリスクと捉える企業はそう多くないようだ。

事業が中断リスクに備えてどのようなことを実施・検討しているか、との問いには、「社員の安否確認手段の整備」が67.4%と6割を超え、「調達先・仕入先の分散」43.0%、「事業所の安全性確保」43.0が4割超となった。

 BCP策定によりどのような効果があったか、という問いには、「業務の定型化・マニュアル化が進んだ」42.9%、「事業の優先順位が明確になった」28.6%、「取引先からの信頼が高まった」28.6%、「業務の改善・効率化につながった」17.9%と、TDBの分析によればBCP策定の効果を実感する企業が「徐々に増えている」そうだ。

反対にBCPを策定していない企業にその理由を尋ねた問いには、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が50.5%、「策定する人材を確保できない」35.1%、「策定する時間を確保できない」と考えている企業が多いようで、さらに「書類づくりでおわってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」26.8%、のような、実効性に対する困難さが理由として挙げられた。また、「必要性を感じない」22.7%、「自社のみ策定しても効果が期待できない」16.5%という理由も挙げられたそうだ。

<TDB TEIKOKU NEWS weekly 7/30号 京滋版 NO.1078号 参照>

 

コメントを紹介したい。

○佐々木地域医療計画課長:「高齢化に対応した災害医療対策、救急医療体制の見直しが必要」

 4月6日開かれた厚労省の救急・災害医療提供体制等のあり方に関する検討会の初会合で、地域医療計画担当の佐々木 健 地域医療計画課長は、「高齢化、疾病構造の変化に対応した災害医療対策、救急医療対策の見直しが必要である」と指摘した。

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 4月のご発言なので、そりゃあそうであるが、指摘だけならば誰でもできる。肝心なのはその先に何を行うのか、ということだろう。

 

東日本大震災を経験した自治体からこんなコメントをいただいた。

○「病院の耐震化が課題だが、厳しい財政事情では困難」

 東日本大震災では、地元の市立病院は津波の被害は受けなかったが、本震と度重なる余震で電源系統が故障した上に予備電源も機能できず、十分な診療機能を果たせなかった。一方で、同じ県内の赤十字病院では病院の新築移転の際に本格的な免震装置を整備していたことから、長期間の停電を免れることができたと聞く。震度6に対応するような本格的な免震装置の整備が必要だが、免震装置の整備には病院自体の建て替えが必要であり、厳しい市の財政事情で困難な情勢だ。

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 ここでも財源問題である。

 

財源だけでなく、ヒューマンリソースも深刻だ。DMATに派遣する医療機関の院長のコメントである。

○中小民間病院の経営者:「職員のやりくりが困難で災害派遣できない」

 当院は中小民間病院で、職員のやりくりが困難で災害派遣できない。職員も自分の生活維持で手いっぱいなのが実情。災害医療の派遣は、医師・看護師の余裕がある大学病院や公的病院に頼るしかないと思う。

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実際に派遣された医師や看護師からもコメントをいただいた。

○東日本大震災に派遣された小児科医:「小児の患者を診ることはほとんどなく、高齢者の診療がほとんどであった」

 地元の公立病院の代表派遣医師として5月末に東日本大震災の被災地に赴いた。小児科が専門だが、小児の患者を診ることはほとんどなく、定期薬の無くなる高齢者の診療がほとんどであった。これからも災害医療に役立ちたい気持ちは強いが、本当に小児科が専門の自分が役に立つのか自問している。派遣する医師の診療科と被災地が求める診療科のマッチングも必要ではないかと思う。

 

○東日本大震災に派遣の看護師:「日赤の医療救護チームの対応は素晴らしかった」

 東日本大震災では全国から色々な医療チームが支援に当たった。各支援場所などでスムーズな活動ができるのは、現場のリーダーの統率力が大切だと感じた。その中でも、赤十字病院の医療救護チームは、災害派遣に慣れているためか、リーダーの統率の下、看護師、薬剤師、事務職の方々が整然と対応していたことが印象に残った。

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 実際に派遣された医師や看護師のコメントは、経験をもとにしているだけに重みがある。とはいえ、実際に被災地に応援に行くというのは、財政面も、メンタル面も、送り出す側の医療機関にとっても簡単にはいかないだろう。DMATについてどう考えているか、コメントをいただいた。

 

○ある市立病院の勤務医:「市の幹部の理解がなく、DMATに消極的」

 職場を管轄する市の幹部が「1カ月も医師・看護師がいなくなると、市立病院の運営に影響するから」と、DMATに参加させようとしない。かつて災害支援を受けた市に属する病院だが、自治体幹部の意識は低い。

 

○民間病院の看護師:「院長がDMAT派遣に理解してくれることが大きい」

 東日本大震災で1カ月間病院団体のDMATの一員として参加した。その際、他の病院の医師や看護師との交流ができ、貴重な経験となった。その後は、災害支援の要請がある度にDMATに参加し、院内のスタッフにもDMAT参加を勧めている。DMAT派遣で診療に支障を来すにもかかわらず、当院は院長がDMAT派遣に理解してくれていることが大きい。

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 少し意地悪な対比かもしれないが、自治体だとこのように考えてしまうのだろうか…。

 

 最後にこんなコメントも紹介したい。利用者(患者・家族)のコメントである。

○「災害拠点病院という病院があることを知らなかった」

 県内に大規模災害に対応する「災害拠点病院」があることが知らなかった。大規模災害が発生した際に患者はどのような医療機関に駆け込んでいいのか、自治体はPRすべきだと思う。

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 災害については、国や自治体などの対応が肝心であるなあ、と多くのコメントを見て感じるテーマであった。

 

 BCPについて何かのセミナーで聞いた。「そういう計画がなかなか立てられない組織においても、これだけは決めておいてください。それだけでかなり動きやすくなりますよ。」

 曰く、何か事態が発生したときに大事なのは体制図を作成することにあるのではなく、その時に指揮・命令する人はだれか?その序列表を作ってさえおけば良い、ということだ。

なるほど、それだけならいろいろな書類を作成しておかなくても、何とか対応することができそうであるし、非常に現実的である。

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 「♪南の島の大王は…」 

 南国の鷹揚さを歌ったこの歌は、小学校の学校放送などでよく聞いたものだが、“風が吹いたら遅刻”、“雨が降ったらお休み”だったりして、幼心になんていい島だ、などと思っていたものだが、いまや日本も雨が降ったら電車が止まる、学校もリスクがあるから授業を取りやめるなど、おそらく鷹揚さなどとは対極の理由によっているのだろうが、皮肉なことに、南の島の天候は、もはや他人事とは思えない状況だ。

 今年の台風シーズンが始まるまで、我々はあといったいどれだけの災害に悩まされば良いのか。ギリギリまで効率を追い求めてきた日本に、ハメハメハ大王ならどんなアドバイスをくれるのだろうか?酷暑・台風・大雨の夏にふと思った。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)・・・7月27日公開。TVドラマシリーズも実に10年間の歳月をかけ、第3弾までが終了、ついに劇場版を迎えることとなった。主人公の5人、医師4名、フライトナース1名は、日々起こる救急搬送や災害医療との直面する日々を経験しながらこの映画でそれぞれの人生の転機を迎えていく・・・。

 Mr.Childrenの主題歌も10年間変わらずだ。色褪せない。ドラマが終わった時に聞くあのメロディが、このドラマと完全に同化しているような気がする。毎回別の主題歌にするよりも、その方がしっくりくるのだろう。「♪もう一回もう一回・・・」と頭の中でリフレインする。シリーズが重なるにつれて、この歌のダウンロードは果たして増え続けているのだろうか?

 映画の内容については、もちろん「良かった」というコメントもある反面、結構厳しい批評のコメントもWeb上で目にしたが、筆者は映画通でも何でもない、ただの一視聴者、ドラマのファンであるので、素直に「お涙頂戴シーン」では涙が出そうになったし、Web上で批判されている恋愛シーンもそれなりに共感できた。

 医療に終わりはないので彼らはこれからも多くの試練に立ち向かうことになるのだろうが、ひとまずは大団円を迎えたといって良いのだろう。かたせ梨乃演じるアルコール中毒患者の登場には、その症状を目にしたとたん、椅子から体が浮きそうになった。CMでも流れていたフェリーの大災害の現場の緊迫感は、映画(エンターテインメント)と分かっていても、「ここまで患者や主人公たちをいじめるのか・・・」というくらいの惨状だ。

 最近、災害医療のたびに命の危険にさらされる、山P(山下智久)演じる藍沢耕作の感情を押し殺した台詞回しは、時に胸を締め付ける。戸田恵梨香演じる直球ズケズケ感情的ドクター、緋山美帆子は時として患者やその家族の心を動かす。浅利陽介演じるおとぼけドクター、藤川一男はこのドラマに欠かせないキーパーソン、ムードメーカーだ。あいかわらず、苦笑と、そして感動を提供してくれた。この藤川医師と本当に結ばれることになるのかどうかがこの映画のキモの一つであるのだろうが、比嘉愛未演じる、どんな時も冷静沈着でどこか憂いのあるフライトナース、冴島はるかは、見る人全てが「幸せになって欲しい」と願っていたに違いない。ドラマで引っ張りだこ人気女優の新垣結衣演じるチームのリーダー、白石恵は、このドラマでは損な役回りだが、現代社会の求めるリーダー像の一つを演じてくれたのではなかろうか?児玉清の友情出演(なのか?)には驚いた。たった一つの疑問を除き、個人的にはいろいろ胸にストンと落ちた。

 家内には「日本のドラマの映画なんて、劇場版で見んでもええやないの?アクションでもないのにどこに盛り上がりがあんの?」などと、地上波放映を待つように止められたのだが、実際に見て損はしなかったぞ、と言ってやりたい。

<筆者>

(※2)・・・調査期間は2018年5月18日~31日、調査対象は480社、有効回答企業数は200社(回答率41.7%)。

<WMN事務局>