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No.639 財務省、CT、MRIなど高額医療機器の新規設置・更新に規制導入の検討を

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■CT・MRI台数はOECD諸国を上回ることが、財務省「予算執行調査」で明らかに

 財務省は10月5日発表した2018年度予算執行調査(10月公表分)のうち高額医療機器の配置状況等」で、①国内の人口10万人当たりCT・MRIの台数は、CTが10.7台、MRIが5.2台と、OECD平均のCT2.6台、MRI1.6台を大幅に上回っている、②人口10万人当たりCT・MRI台数と1台当たり年間撮影回数には相関が見られ、人口当たりの設置台数が多い地域では、需要に比して過大な設備投資が行われている可能性や医療機関の収益を圧迫している可能性がある、③一方でCT・MRIの共同利用を行っている機器の割合は、CTで4.2%、MRIで15.8%と低い数値である-ことが明らかになった(図1 高額医療機器(CT、MRI)の配置状況①(平成30年度予算執行調査)/図2 高額医療機器(CT、MRI)の配置状況②平成30年度予算執行調査)。

 

 

 予算執行調査は、財務省主計局の予算担当職員や日常的に予算執行の現場に接する機会の多い財務局職員が、予算の執行の実態を調査して改善すべき点等を指摘し、予算の見直しや執行の効率化等につなげていく取り組みで、政府の予算編成にも少なからず影響を及ぼす調査である。

 

 調査結果を受け、社会保障をテーマに10月9日開かれた財政制度等審議会・財政制度分科会で財務省は、改革の方向性として「地域における高額医療機器の効率的な活用の観点から、地域の医療需要や、高額医療機器の設置が医療費・医療機関の経営に与える影響も勘案しつつ、機器の新規設置や更新の際に都道府県や医療関係者の協議を経る規制の導入など、高額医療機器の配置を適正化するための取組を行うべき」と、高額医療機器の配置の適正化に向けて、機器の新規設置・更新に規制導入を検討することを示した。

 

CT・MRIの配置が多いと撮影患者が増加、「供給が需要を生んでいる」

 厚生労働省は、2016年7月15日の医療計画の見直し等に関する検討会で、「CT・MRIの配置が多くなると、CT・MRI撮影患者が増える」との分析(図3 人口あたり患者数と人口あたりCT、MRI台数の関係)を示し、「供給が需要を生んでいる」可能性を暗に示唆している。

 

 

 また、医療被曝(検査・治療などに伴って患者が受ける放射線被曝)の適正管理に関する議論の中でも、「わが国では、先進諸国に比べて、医療被曝線量が高く、CT・MRI撮影の件数も多い」ことが指摘されている。

 

 このため、2018年度からの新たな医療計画第7次医療計画)では、①「医療機器の安全管理等に関する事項」として、CT・MRIなどの高度な医療機器について「配置状況」に加えて、「稼働状況」等を確認し、「保守点検」を含めた評価を行う、②CT・MRIなどの医療機器を有する診療所について、「保守点検を含めた医療安全の取組状況」について定期的に報告を求める―ことになった。

 

 従来から厚労省も認識していた「CT・MRIの配置が多くなると、CT・MRI撮影患者が増える」「供給が需要を生んでいる」という実態。今回、財務省が提案した「高額医療機器の配置の適正化に向けて、機器の新規設置・更新に規制導入」の行方が注目される。

 

【事務局のひとりごと】

 

 ある朝、いつもより1本早い地下鉄に乗ることができた(たった5分だけ早いのだが)。いつものように会社に行く手前のコンビニエンスストアに立ち寄る。新聞と水、昼ごはんを買うのが日課だ。レジは3台あるが、あいているのは2台だ。えらく並んでいる。最近のコンビニは色々なものを販売するので、一人当たりの顧客に費やす時間が多くなっていると感じる。特に缶ではないコーヒーを買う客が増えているので、余計にそう思う。一列に並んでいる客は8人から10人。最後尾に並ぶ。まだか、まだか、いらいらしながら自分の番を待つのだが、朝から公共料金の支払いをする人や、外国人観光客が店員にスマホを見せながら、このサービスはこの店でやっていないのか?などと片言の質問をする。分からなくていろいろ別な店員に聞きまわる店員・・・。気の遠くなるような待ち時間だ。カップラーメンなどとっくに伸びるぐらいの時間は経過したことだろう。気付けば折角1本早い地下鉄に乗ったのに、その待ち時間で5分以上かかった(※1)。なぜか筆者の後ろにはほとんど並ぶ人がいなかったので、結局1本早い地下鉄で降りた集団の行列に巻き込まれた訳だ。5分遅いいつもの地下鉄に乗っていれば、さほど待たなくて良かったのかもしれないと思うと、なんとも悔しい、とても損をした気分になった朝だった・・・。このコンビニだけが会社の近くにあるわけではないので、別な店で買えば良かったかもしれない。5分以内で到着可能な近隣のコンビニは、4軒はあるのだ。ある意味、コンビニ激戦区である。

 

 筆者の住んでいる地方都市には、全国でも有数のラーメン激戦区がある。「激戦区」と聞けば、どの店もオリジナリティ溢れる独自の味を追求し、味にシビアな顧客の舌を満足させてなおかつ生き残っているのだから、味はやはり美味しいのだろう。と、普通は考える。

 CMや情報誌などもこの手のテーマは人気シリーズだからよく特集される。結果、ラーメンファンがひっきりなしに彼の地を訪れ、どの店もそこそこ行列ができ、互いがライバル店でもあるが、もちろん淘汰される店もあるのだろうが、相乗効果でみんな潤う・・・。町おこしにもなる。こんな好循環ができれば言うことはない。

 

 今回のテーマは高額医療機器の新規設置・更新に規制導入、というものである。

 筆者が小学生の頃、日曜日の夜は「東芝日曜劇場」をよく見た気がする。その時印象に残ったのが、世に出た「CT」のCMであった。体を輪切りにする画像診断装置であり、幼心にすごい!(少し気持ち悪くもあったが)と思ったものだが、だが、当時はCT検査を受けるなんてことは、なかなかできるものではなかったのではないか?(※2)それが今や、列数はともかくとして、わが国では一般病院でCT撮影ができない病院を探す方が困難である。まさにCT激戦国だ(※3)、というのが国が示している問題提起なのだろう。CTやMRIの普及につとめられた高額医療機器メーカーの営業のおかげで、お金はかかってしまうが、今日我々はあまり待つことなく、CTやMRI、PET検査だって受けることが可能な時代になったわけだ。また、さらには画像診断だけでなく、機械を使用した手術「ダヴィンチ」も登場し、医療における技術革新がとめどなく起こっていることを感じざるを得ない。

 

 コメントを紹介したい。

 

○患者のコメント:「最新の高度医療機器は、患者に優しい医療機器で本当に有り難い」

 最新鋭のリニアック(IMRT:強度変調放射線治療)によるがん治療を受けたが、治療台の上に1~2分間安静に寝ているだけの治療で済み、放射線が当たっている間、体に苦痛を感じることはなかった。最新の高度医療機器は高額と言われるが、患者に優しい医療機器であり、本当に有り難い。

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 筆者もPET-CT検査を受けたことがあるが、注射をして水を飲んで寝ているだけで終わる、という、地獄の苦しみのような胃カメラ検査に比較すると、文字通り天国のような夢見心地の検査であった(安静にして横になっているだけなので、睡魔すら襲いかねない)。ありがたい話である。

 

 技術革新にのみ目を向ければ素晴らしいことなのだが、財源が保険・税金となると一概にそうはいえないのが本文の骨子だ。

 

○鈴木医務技監:「高額医療機器の共同利用が必要」

 厚生労働省医系技官のトップである鈴木康裕医務技監は、11月3日都内で開かれた第17回日本医療経営学会学術集会の講演「平成30年度診療報酬ダブル改定を終えて~2025年に向けた医療制度の動向」の中で、日本はOECD諸国と比べて、CTやMRIの人口当たりの台数が圧倒的に多いことを指摘。「重粒子線治療やロボット支援下内視鏡手術(ダヴィンチ)など今後増えることが見込まれる高額医療機器については、CT、MRIのように自由に設置させるほど医療保険財政には余裕がない。共同利用など一定の対応が必要ではないか」と述べた。さらに、2018年度改定では、ロボット支援下内視鏡手術について「コスト」ではなく、既存技術(内視鏡手術)との「有効性」の比較に基づき診療報酬点数を設定したことをあげ、今後、高額医療機器の保険点数設定では、代替療法として既存療法があるものについては、2018年度改定と同様な考え方が行われるのではないかと示唆した。

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 これまでにも何度が書いているが、

 

我が国においては、日本国憲法で保障されている国民の権利がまず念頭に置かれなければならない、というのが、制度を守り、立案する官僚の考え方の根底にある。

 

診療報酬制度は「公共の宝」。皆で大切に使いましょう、というのが根底にあるのだが、ルールが決まれば必ず抜け道を抜けようとする者が出てくる。そういった者がいる以上、規制が強化されてしまうのは致し方ないところだ。

 

 「公共の宝」である制度を、皆で大切に使っていればこのような議論にならないのだろうから、高額医療機器がOECD諸国に比較して圧倒的に多い現状は、「抜け道を抜けようとする者」とはニュアンスが異なるが、医療における競争原理の結果がもたらしたという事実は否めないかもしれない。

そんなコメントを紹介したい。

 

○民間病院経営者:「高額医療機器導入は大学病院等に対抗するため、必要な投資」

 民間病院として近隣の大学病院等に対抗するため、陽子線治療装置とX線治療装置(IMRT)の両方を備えた陽子線クリニックを昨年秋に開設した。多額の投資となり当法人にとって経営的に賭けとなるが、高度医療機器は大学病院やナショナルセンターに対抗するためには、必要な投資であると思っている。

 

○ダヴィンチ導入した市立病院長:「高度医療機器がないと、若手勤務医は集まらない」

 当院は5年前に新設された450床の市立病院だが、近隣には3つの大学病院があり、勤務医、特に外科医が集まらなかった。しかし、3年前にロボット支援下内視鏡手術装置(ダヴィンチ)を導入し、新たに「ロボット手術部門」を新設したところ、勤務を希望する若手医師が急増した。ダヴィンチをはじめ高度医療機器がないと、若手勤務医は集まらないことを実感した。

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 そういった競争原理の行き着く先は、高額医療機器という「客寄せパンダ(昔、ある病院長との会話でこう表現された)」は、病院経営にとっては重荷であるが、他病院から抜きん出るためには必要だ、という判断(というより決断か?)がなされたということだろうし、経営努力は自助努力だ、と国が言うのならば選択肢としては間違いではない部分もあるだろう。共同利用するにしても、先に導入した方が有利なのだろうから、その規制が始まる前に駆け込み需要だって起こりかねない。そこに高額医療機器メーカー(あるいは販社)は当然営業をかけていくわけだ(※4)。メーカーはメーカーで売ることが至上命題であるし、開発した以上、何台以上売らないと採算が合わない、というラインもあるだろう。一体どう考えれば良いのだろうか

 

 メーカーからもコメントをいただいた。

○高額医療機器メーカー担当者:「今後はITを活用して共同利用を実現していく」

 今後、日本では地域医療が核になるが、各病院で大型医療機器を持つことは現実的ではなくなる。中核病院で設置し、そこからデジタル画像などを地域病院へ送るようになるだろう。つまり、日本の今後として考えていくべき方向は、ITの活用であり、過疎地に大型医療機器設置など現実的ではない。ITの力でおのずと共同利用は実現していくだろう。これが、わが国やアメリカでも考えている方向だと思う。メーカーの解決策としては、その方向で推進していく。

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 こんなコメントも紹介したい。

○経営コンサルタント:「メンテナンスを考慮した高額医療機器の導入を」

 日本病院会が2016年度に実施した408病院を対象とした調査では、CTやMRIなどの高額医療機器の関連費用(減価償却費や保守費など)は年間1兆9121億円程度と推計された。増患対策や勤務医対策として高度医療機器を導入したいという病院が多いが、

①メーカーや代理店以外の業者への保守業務委託は難しく、競争原理が働かない

②金額の設定根拠が不明確、

③契約内容が複雑で理解に苦しむ、

④「保守契約を締結しないと修理対応が遅くなる」との説明をメーカーからされた、

⑤部品供給可能期間が短すぎる

 -など保守点検に関する問題点は多く、導入後のメンテナンスを考慮して導入を検討すべきである。

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 もう一度問いたい。一体どう考えれば良いのだろうか?今回は財務省の発信段階なのでそれですら本当に規制が入るのか分からないが、果たして本文中にあるような規制導入はなされるのであろうか?

 

 地域医療構想調整会議も具体的な進捗を見せている都道府県はあまりないと聞く。秋が深まるにつれて、考え方も寂しい方向に行きがちだ。せめて誰もが考えていたであろうと思しきこの議論が、10年以上も前から国がしっかりと問題意識を持ってくれて、何らかの対応をしてくれていれば・・・、そう感じずにはいられない。すでに買ってしまった施設は一体どうすればよいのか?あってはならない事件が起こってしまってから、国が動く、という現象を我々は常に目にしてきた。「いまさら感」の拭えない、かなり遅ればせの対応が口惜しい。

 

 最後にこんなコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

○PET-CTを持つ病院:「台数だけで状況を判断せず、稼働率や画像の読影技術レベルなどで検討すべき」

 高度医療機器はさすがに非常に有用で、難しい診断治療に真面目に取り組む病院にとっては不可欠な存在だ。医療機器を看板代わりに導入する形の病院も散見されるが、台数だけで判断することは的外れだ。稼働率や画像の読影技術等をも重視した、医療の発展向上を阻害することのない、真の規制を図るべきである。

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 今回の ひとりごと は、財政論の観点から見た場合の論調であったが、日本の医療の特徴である「フリーアクセス」の観点からいえば、これは国民がそのメリットを享受しているということでもある。

 真の規制を図るための正しい指標とは何なのか?悩ましい問題である。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

<コメントあれこれ>

 校了後、地方民間病院の医師よりホットなコメントを頂戴した。以下列記したい。

 

・使用頻度の多い施設であれば導入しても問題ないが、少ないところは認めるべきではないのではないか。しかし国が制限するのは難しいのではないか。

 

・医療機器を制限すると業者が困るのではないか。

 

・検査機器にもよるが、PETや粒子線などの特殊なものは適正に配置するように国が制限しても良いのではないか。

 

・検査をすることで収益が見込めるので、導入する施設が多いと思われる。という視点から中途半端な件数では、収益が出ないような保険点数が良いのではないか(開業医などでは収益が見込めないようにするのも一つである)。

 

・特定の施設に集中するように共同利用をもっと進めればよい。

 

・公的な施設では赤字でもある程度は運用できているが、民間では赤字では困る。これは保険点数が低いので数でカバーするようになってきている。保険点数を上げて、件数が増えないようにしたほうが良いのではないか。

 

【取材者とそのうち一人の医師のコメント】

・検査をセンター化して共同利用を多くするよう推進する。自施設での撮影料は少なく、共同利用することで、依頼施設も撮影施設も大きな収益が出るようにしたほうが良いのでは。撮影側のスキルアップになるし人材育成も充実するのではないか。このような体制を持つように国がコントロールしても良いかも。

<ヘルスケアNOW>

 

 

 (※1)・・・首都圏の方々におかれては、5分なんて可愛いもんだ、とお思いかもしれない。東京のコンビニのピーク時に並んだら、20人以上並ぶなんてことはざらだ。ご苦労様です。

<筆者>

 

 (※2)・・・当時のCTはおそらく最新技術であったのであろうが4列だったと思われる。今や最新型となると128列だ。当時と比較にもならない高精細である。但し、この“列数”が大きい機器ほど当然高くなる。一医療機関の経営を脅かしかねないほどの高額だ。「供給が需要を生んでいる」のかもしれないが、投資に見合った回収(患者数の確保)ができなければ、「金食い虫」のそしりを免れないだろう。

<筆者>

 

(※3)・・・ただ、あくまで筆者の実感としてだが、CTはともかく、MRI検査はいつでも受けられる、というものではないと思う。いわゆる「脳ドック」とでも言おうか、精密検査で依頼しても、最低でも数週間は予約待ちという感じがする。街中のいたるところにコンビニがある状況から考えると、まだ行き渡っている、という感じではない。

<筆者>

 

(※4)・・・一昨年、ある外資系高額医療機器メーカーの日本法人のトップの方と意見交換した。高額医療機器の落下傘部隊のような営業と、その結果、医療機関の医療機器の稼動率が思わしくなく、お困りの状況などを勘案して物申してみたのであるが、曰く「当然、そんな営業展開はしていません。こちらから売るべき医療機関とそうでない医療機関を選別して営業しています」つまり、「医療財源の無駄遣いにつながるような営業はしていないのだ」とのこと。もちろん、「売れさえすれば良い」などという回答が来るとも思っていなかったが・・・。

<筆者>