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No.648 進まない医療・介護療養病床から介護医療院への転換、13都県で未整備

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■介護医療院は2018年末で113施設・7414床、東京、神奈川など13都県は未整備

 2018年の診療報酬・介護報酬の同時改定で、「医療・介護・住まい」の3機能を併せ持つ新たな介護保険施設として創設された介護医療院。設置根拠が消失する「介護療養病床」(介護療養型医療施設)や「病院全体で4対1看護配置などを満たさない医療療養病床」の有力な転換先になると見られているほか、「医療職・看護職が常駐しており、看取りニーズに十分応えられる」施設としても注目されている(図4 慢性期の医療・介護ニーズへ対応するためのサービス提供類型(イメージ))。

 

 

 介護医療院は、2018年9月末時点で63施設・4583床と6月末の調査から3倍増加したものの、2018年末時点では113施設・7414床にとどまり「転換が順調に進んでいる」とは言い難い状況だ。都道府県別では北海道の10施設・606床が最も多く、次いで、富山県8施設・564床、山口県の9施設・562床。一方で未整備は、首都圏の東京、神奈川、千葉など13都県で、地域格差がみられる。さらに、介護療養病床(全体の62%)や転換老健(23%)からの転換が多く、医療療養病床からの転換(14%)は一部にとどまっている(図5 介護医療院の開設状況について)。

 

 転換が進まない背景には、①介護療養等の設置が2024年3月まで認められており、様子見をしている(言わば、介護医療院等への転換・準備期間である)、②準備中である(設備整備やスタッフの意見集約など)と、さまざまな理由が考えられる。

 

 介護医療院の整備に前向きに取組み、傘下に日本介護医療院協会を抱える日本慢性期医療協会の武久洋二会長は2月14日開いた定例記者会見で、「小規模な自治体が介護保険料の高騰をおそれ、ストップをかけているケースがある」ことを改めて指摘。さらなる整備に向けて、「小規模な介護保険者の集約化」や「移行定着支援加算の延長」を提案した。

 

■武久日慢協会長、介護医療院の整備に向け「小規模介護保険者の集約化」や「移行定着支援加算の期限延長」など提案

 医療療養が介護医療院へ転換した場合、医療療養について医療保険から費用が支払われていたものが、介護医療院になった場合、介護保険から費用が支払われることになる。このため、介護費用が増加し、「介護保険料の上昇」につながる。特に、地方で過疎化が進む小規模な町村では高齢者が多く、数10床の医療療養が介護療養へ転換するだけでも、介護保険料が大幅に跳ね上がる可能性があり、住民(被保険者)からの反発も予想され、自治体としては介護医療院の設置にストップをかけるケースが見られる。

 この問題の解決策として武久会長は、新たに「介護保険財政を安定させるために、小規模な市町村(特に町村)は、人口20万人程度の規模に集約して介護保険の保険者としてはどうか」と提案。2000年に創設された介護保険制度が20年近く経ち、制度改革の論議が高まっており、近く始まる厚労省の社会保障審議会・介護保険部会での議論が注目される。

 

 また、武久氏は、25対1医療療養病床や介護療養病床だけでなく、空床が目立つ一般病床についても、介護医療院への転換を早期に認めてはどうかと提案。「30万床以上が空床となっている一般病床から介護医療院に転換しやすくすれば、新しい介護施設を作る必要がなく効率的である」と強調した。

さらに同氏は、介護医療院への転換が進んでいない現状を踏まえ、「移行定着支援加算」の算定期限を2年程度延長することも提案。「移行定着支援加算」(1日につき93単位)は、「介護療養や医療療養などから転換した介護医療院では、最初に転換した日から起算して1年間に限り算定できる」が、期限は2021年3月末となっている。しかし、算定期限延長となれば、「設置期限ギリギリまで様子見をしよう」という管理者も出てくることも考えられ、算定期限の延長には慎重な検討が必要かもしれない。

 

<関係者のコメント>

 

○老人保健課長:「ブロック会議で自治体の介護医療院への理解を促進」

 2月13日の社会保障審議会・介護給付費分科会で厚生労働省老健局の眞鍋馨老人保健課長は、「介護医療院への理解を促すためのブロック会議(いわば勉強会)を全国で実施中である」ことを報告。自治体によっては、介護費上昇による介護保険料アップを懸念して、「医療療養などから介護医療院への転換」にストップをかけている(認めていない)ところもあることを認め、ブロック会議において「自治体の介護医療院への理解」を促進し、転換のハードルを下げたいとの考えを示した。

 

【事務局のひとりごと】

 

 2019年3月1日(金)メディファクス7978 4/8頁の記事(介護療養病床の廃止、「後戻りすることはない」 厚労省眞鍋老健課長)によれば、介護療養病床について、経過措置期間とされている2023年度末までに、医療療養病床介護療養型医療施設転換老健からの移行が総量規制の対象外とされるのは2021年の3月末までだと説明し、早く手を挙げて欲しいというメッセージを述べたそうだ。また、介護療養病床の廃止については「後戻りすることはない」とも述べたそうだ。

 

 コメントを紹介したい。

○コンサルタントのコメント:“脱施設化”が医療施策の基軸となり、介護医療院への転換は経営戦略上、大きな意味を持つ

 政府が介護療養型医療施設の廃止に伴う最大の受け皿として介護医療院をとらえていることは間違いない。施設基準や報酬面をみても、「限りなく容易に」という配慮が見て取れる。「病院・施設から地域・在宅へ」の動きは今後急速に進んでいく。このような“脱施設化”が今後の医療施策の基軸となる以上、必要病床数そのものが減少の一途をたどることは明らかであり、その意味でも、介護医療院への転換は経営戦略上、大きな意味を持つことになる。

 介護療養型医療施設は、「介護医療院に転換する/しない」に関わらず、いずれ必ず廃止になる施設だから、早めに転換して「移行定着支援加算」をゲットした方がお得だと思う。

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 これほどの転換に向けた後押しにもかかわらず、介護医療院への転換が増えないのは一体どうしたことか。

 

 ある自治体のコメントである。

○介護保険財政を安定化するための「新元号下の大合併」

 そもそも介護保険制度は、給付と負担の関係を自治体が決められるという、本来地方分権の試金石となるはずの制度だった。それが、長引く地方自治体財政の悪化で、地域住民が納得できるように、自治体が自ら給付と負担を決めることができないのが現状。「平成の大合併」と同じように、介護保険財政を安定化するための「新元号下の大合併」を行うことも必要ではないか。

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 先月号で少し触れた、医療保険である国民健康保険の都道府県化と同様の行為が行われなければ進むものも進まない、ということか。

 

 

 平成30年12月末時点の届出状況によれば、介護医療院は113施設(全ての類型計)、7,414床であるという。そんな中で介護医療院に転換された施設からコメントをいただいた。

 

○併設型介護医療院を開設し、232床から193床に戦略的にダウンサイジング

 2018年10月に併設型小規模介護医療院を開設した福島県の民間病院。介護医療院の開設に併せ病院全体の病棟構成を見直し、許可病床数を232床から193床に戦略的にダウンサイジング(削減)した。その背景には、当院がある医療圏の2025年の慢性期の必要病床数は873床で、2016年度の病床機能報告1429床よりも556床も過剰になる推計がある。当院は2003年に回復期リハビリテーション病棟を開設して以降、一般病棟、回復期リハ病棟、療養病棟の3種の病棟を柱に運営してきたが、診療報酬改定の度に療養病棟入院基本料が下がり、収益が悪化。特に、医療療養病床は、医療区分の高い患者の割合のハードルが上がり、重症者を積極的に入院させなければ経営的に成り立たない状況だった。当院で医療療養病床を継続させるメリットは少ないと感じ、介護医療院の開設に併せて、病床をダウンサイジングした。

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 “戦略的に”という用語に思いがおありなのだろう。“ダウンサイジング”という言葉がネガティブに捉えられる向きもあるので、それを払拭するためにも必要な用語なのかもしれない

 

 どんどんいきたい。

 

○介護医療院を検討している施設のコメント:

 「高齢者の看取りの役割を担う施設として、介護医療院の開設を検討」

 介護医療院が増加していく背景として、高齢化に伴う多死社会への対処の必要があると思う。厚労省の推計によると、団塊世代と呼ばれる人々が後期高齢者となる2025年には、その数が2000万人に達すると言われる。団塊世代が平均寿命に到達する2040年には年間の死亡者が約166万人と、2015年よりも、36万人増加すると推計される。多死社会のなかで、必要となるのが、高齢者が「最期を迎える場所」の確保だ。2040年には死亡者に対して病院のベッドの供給が追い付かず、41万人分の病床が足りなくなるという試算がある。当院では、『看取り難民』とも言うべき人々に対して、最期のときを迎える場所として介護医療院を開設したいと思っている。

 

○介護療養型病床で介護医療院への転換を検討していない施設のコメント

 「敷地が狭い施設では転換のメリットが活かせない」

 介護療養病床から介護医療院に転換すれば、サービス費は入居者1人1日あたり25単位の増加となる。しかし、我々の病院のように敷地が狭い施設では、療養室基準の「定員4名以下、床面積8㎡/人以上」が満たすことは難しい。移行定着支援加算(93単位/日)のメリットは大きいが、算定制限があり、介護医療院への転換のメリットが十分に活かせないので、転換に二の足を踏んでいる。

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 後者のような医療施設ももちろんのありのことだろう。ただ、これまでの経緯から言えるのは、「介護療養病床の廃止については『後戻りすることはない』」のであり、もし介護医療院への転換をされないのであれば、廃止になる前に医療療養病床、一般病床などの他の病床への転換を検討する必要がある。このコメントの字面だけを読んで軽々に判断するのは大変失礼ながら、先の施設のように戦略的なダウンサイジングを図って転換するのか、建て替えまでの間は、経過措置期間であるので面積要件は必ずしも8㎡/人をクリアせずともよいはずだから、先ず転換し、やはり建て替えを行わなければならない際には戦略的なダウンサイジングか、別な土地を探すことか、とにかく現状のままでは大変なことだけは間違いなく、二の足を踏んでいる余裕などないのだ。

 

 仮に面積等の用件がクリアでき、さらに転換を検討している施設がたくさんあるのだとしても、もう一方の問題、財源論も避けて通れない。

 

 コメントをいただいた。

 

○武久日慢協会長:「保険者規模の拡大で、介護保険料の高騰を一定規模抑制が可能に」

 2021年度からの第8期介護保険事業(支援)計画の策定に向け介護保険制度改正の論議がスタートした2月25日の社会保障審議会・介護保険部会で、日本介護医療院協会を傘下に組織する日本慢性期医療協会の武久洋二会長は、「介護保険料の高騰」を危惧して、医療療養病床から介護医療院への転換に消極的な介護保険者があることに対して、「保険者規模の拡大」を提案。大規模化によって高騰を一定程度抑えることが可能になるとの考えを示した。

 

○自治体首長:「どこまで介護保険料、サービス提供の地域差が許されるか検討すべき」

 2月25日の社会保障審議会・介護保険部会で、保険者である大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長、香川県高松市長)は、将来の人口減少社会ではサービス提供体制整備の格差・保険料等の格差などが広がっていくと指摘。一定程度の地域格差はどこまでが許されるか、「保険者の在り方も含め検討が必要ではないか」と提案した。

 

○老健局総務課長:「保険者機能の強化」を強調

 2040年にかけて訪れる超少子高齢社会を見据え、現役世代減少で介護保険財政が厳しくなることから、厚生労働省老健局の黒田総務課長は2月25日の介護保険部会で、5つの横断的検討事項の検討を要請。その中で、地域保険としての地域の繋がり機能・マネジメント機能の強化など「保険者機能の強化」をあげ、保険者による「サービス提供体制の整備」「保険料の設定・徴収」などの基幹機能に加え、介護予防、生活支援などの新たな機能についても強化していくことを求めた。

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 厚労省が、仮に介護療養病床が全て介護医療院に転換して欲しいと考えているとするならば、財源論が先に立つのはどういうわけか?まさか失念していたということもないだろう。となれば、とにかく財源の広域化によるリスクヘッジしか、道は残されていないのではないか。

 

 

 最後に、できたばかりの新類型、介護医療院に入所している方の家族からコメントをいただいたので紹介して締め括りたい。

○介護医療院は最期まで入居できる「終の棲家」であり、安心した

 老人ホームは看取りができるほど医療体制が整っていないことが多く、家族として、「状態が悪化したら施設を出なければならない」と不安を感じていた。介護医療院では医師も看護師も24時間対応で、看取りも可能となり、家族としても安心して高齢者を預けられる。

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 昨年の中医協での療養病床についての検討がなされていた際の資料によれば、介護療養病床は約5.9万床、医療療養病床の25:1は約7.2万床(20:1は約14.4万床)とある。

すでに、いわゆるニンジンである、最大1年間算定が可能な“移行定着支援加算”を、1年間まるまる算定するためには、現在届出を行い、自治体とのやり取りをしておられる施設があったとしても、そんなに余裕はないのではないか?とても不安である。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>