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No.652 経済財政諮問会議で厚生労働大臣、「医師の生産性、2040年までに7%以上改善」を表明

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■労働力制約が強まる中での医療・福祉サービス確保「医療・福祉サービス改革プラン」

 次期2020年度診療報酬改定に向けた中医協での論議で、「年代別・世代別」の課題とともに、厚生労働省が示した「昨今の医療と関連性の高いテーマ」の中で焦点となっているのが、「働き方改革と医療の在り方」である。医師の働き方改革に関する検討会が議論をとりまとめ、2024年4月の適用に向けて、5年間で「労務管理の徹底」や「タスク・シフティングなどによる労働時間短縮」を進めていくことになっている。診療報酬でこれらをどう評価していくのか、幅広い議論がなされるか注目される。

その「働き方改革と医療の在り方」に関連して4月10日開かれた経済財政諮問会議で、根本厚生労働大臣は、今年夏をメドに2040年を目指した「労働力制約が強まる中での医療・福祉サービスの確保(医療・福祉サービス改革プラン)」を策定し、医療・福祉分野の生産性を少ない人手でも回るようするため、医療分野全体として5%以上改善を図ることを表明した(図3 医療分野の時間当たりのサービス提供の改善における目標について(医療分野全体))。特に、医師については「7%以上」の数値を示した。

 

 

 医療・福祉分野の生産性5%以上の改善については、2018年5月21日の「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」に基づくマンパワーのシミュレーションでも打ち出されていたが、医師については、医師の働き方改革を念頭に「7%以上」の数値が新たに加わったことになる。

 

■医師の生産性改善目標を7%以上とした背景

 会議で根本厚生労働大臣は、2040年を展望し今年夏を目途に「健康寿命延伸プラン」と「医療・福祉サービス改革プラン」を策定する方針を説明。健康寿命については、2040年までに男女ともに2016年と比べて3年以上延伸し、75歳以上とすることを目指す。

 

 また、「医療・福祉サービス改革プラン」では医療・福祉分野の単位時間当たりのサービス提供(生産性)を全体として5%以上の改善を図る。医師については7%以上の数値を示した背景は、医療サービスは多くの医療関係職種が関わり合い提供されているが、最も大きい役割を担う医師を医療分野の代表として、医師に着目した指標等の検討を進めることにしたため。

 医師の業務のうち、ICT等で代替可能と考えられる医療記録、医療事務、院内物品の配送等の業務時間は、医師の平均労働時間の4.8%を占めると推計。さらに、他職種への移管(タスク・シフティング)が想定される「患者への説明・合意形成」及び「血圧などの基本的なバイタル測定・データ取得」等を考慮した業務時間を含めると、結果的に医師の平均労働時間の7.2%と推計されることから、「医師については7%以上の業務効率化を目指す」ことになったもの(図4 医療分野の時間当たりのサービス提供の改善における目標について(医師))。

 

 

 

 根本大臣は、「医療分野では、医師をはじめとした医療従事者の労働時間短縮に向けて、タスク・シフティング等の推進や、業務効率化に資するICT等の活用方策や業務分担方法について検討を進め、普及を図りたい」と述べている。

【事務局のひとりごと】

 

 ある企業で今から10年ほど前に実施された、その企業の営業業務量調査によれば、営業担当者が営業活動の中で本来最も注力すべき新規提案にどれくらい携わることができているかを調べた結果、平均業務時間中、約9%が新規提案に携わることができている時間であった。これには待ち時間も含まれている。逆に言うと、営業といいながら、9割の時間は新規営業以外の業務に時間を費やさざるを得なかったのだ。

 

 全国支店間 社外業務 社内業務 比較

 

 そして上図は、営業担当者の社外業務、社内業務の割合がどれくらいあるのかを示している。調査の結果、全国平均で60%が社外勤務に費やしている時間であった。

 営業担当者がいかに社内業務に時間を取られているか、一目瞭然である。そこでこの企業は、営業担当者以外でも実施できる事務業務は営業担当者以外が行うことで改善することができるだろう、という考え方の下、営業事務を営業拠点に導入することとしたそうだ。

 営業事務が行う業務として想定されたのは以下の業務だ。これは営業業務量調査の内、営業担当者が社内業務で多くの時間を占めている業務を洗い出し、抽出したものだ。その企業の内部情報でもあるのであまり詳細には触れないが、大枠の項目を挙げると下記の通りだ。

 

 ・各帳票類作成

 ・顧客提出書類作成

 ・会議資料作成

 ・電話対応(顧客問合せ一時対応と、対処策の各部署への指示・連絡)

 

 その企業はそういった取組みを通じて、営業の業務時間の中で、営業が本来注力するべき新規提案の比率を上げ、企業の業績向上を図ろうとしたのであった。聞くところによれば、その企業の業績は、売上高についてはそこからの約10年、常に右肩上がりなのだそうである。まことにうらやましい限りである。

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 平成から令和にかけての今年、「働き方改革」元年は、医療界においても大きなテーマである。

 先述の企業においても綿密なデータを元にした議論がなされ、先の結果に至ったとのことだが、「医師の働き方改革」においても、おそらくデータの改ざんや間違った統計はなされず、当然綿密なデータを元にした分析と議論がなされたことだろう

 

 ・医療・福祉分野の生産性5%以上の改善

 ・医師については、医師の働き方改革を念頭に「7%以上」の数値を改善

 

 医師の業務のうち、

 

 医療記録

 医療事務

 物品運搬や患者の移送

 患者への説明・合意形成

 基本的なバイタルデータ取得

 

 これらの業務をICT等による業務代替とともに他職種への業務移管を含めた業務効率化を推進して7%以上の業務効率化を図ることを目標としている(2040年)のだそうだ。

 

 先ほどの某企業の10年以上前の話がリフレインしているような気もするが、どうも記録系書類作成系の業務が効率化のカギとなりそうなのは、どの業界も同じなのだろう。この「働き方改革」に関して、厚労省の本気度合い(政府なのかも?)は並大抵ではない

 

 コメントを紹介したい。

 

○厚労省医政局長:2040年は金の制約より人の制約が現実の問題になってくる社会

 厚生労働省の吉田 学医政局長は1月に開かれた講演会で、人口減少社会が深刻となる2040年の社会保障について、「金の制約より人の制約が現実の問題になってくる社会である」と述べ、労働力の制約にいかに取り組むかが課題であると指摘。その上で、「医療・福祉サービス改革」の具体的方向性として、効率的な業務分担の推進、テクノロジーの徹底活用、組織マネジメント改革の推進をあげ、「これらを本格的にやっていかないと、現役世代が減少する時代にサービスの提供が難しくなる」と警鐘を鳴らした。

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 病院団体も本気である。

 

○日病会長:日病の会員病院のタスク・シフティングを支援

 次期診療報酬改定の焦点である働き方改革、その中で注目されるのが、医師の業務の特定行為研修を修了した看護師へのタスク・シフティング(業務移管)である。相澤孝夫日本病院会会長は、2019年度から、日病の会員病院が特定行為研修の指定研修施設への申請を考える場合、煩雑な申請等の手続き、座学の研修のe-ラーニングシステム活用などの課題に対応するために「日病として支援する」考えを明らかにした。

 

○全日病会長:業務の効率化を重点的に論議して欲しい

 中医協委員の猪口雄二全日本病院協会会長は、「業務の効率化を今回は重点的に論議して欲しい。質を担保しながら効率化するのは、どういうことができるか。また、AIやIoT、ロボティクスなどを柔軟に診療報酬体系に取り入れていくことが今後重要になってくる」と要望した。

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 働き方改革に向け、実際に取り組んだ成果のコメントをいただいた。

 

○スマホのカルテ入力で理学療法士などのカルテ入力時間を約70%削減

 愛媛県四国中央市の石川記念会HITO病院(257床)は、ICTを活用した医療の質向上、業務効率化によって、患者サービス向上と働きやすい環境作りの両立を目指した「未来創出HITO(Humanity Interaction Trust Openness)プロジェクト」を展開。その一環として、スマートフォンを活用したAI音声認識による電子カルテの入力システムを導入し、リハビリテーション科の理学療法士などのカルテ入力時間を約70%削減する大きな成果をあげるなど、病院の働き方改革を進めている。

 

○高齢社会で必要な医療・介護・福祉の情報システムの統合

 石川県七尾市で恵寿総合病院(426床)などを運営する社会医療法人財団董仙会は昨年10月、オーストラリアで開催された第42回世界病院学会で、同法人の「keiju Integrated Healthcare Service -Cooperation of Integrated Health Records and Human interface(恵寿式地域包括ヘルスケアサービス)」が評価され、「国際病院連盟賞 特別賞」を受賞した。恵寿式地域包括ヘルスケアサービスは、董仙会と関連の社会福祉法人徳充会が経営する、病院、診療所、介護保険施設、各種の介護系サービスを利用する患者・利用者が、自身の診療情報の一部を、インターネットがつながる環境があれば、いつでも、どこでも閲覧できるシステム。神野正博理事長は、受賞について、「高齢社会は全世界的な課題であり、日本は先んじて高齢化が進んでいる。医療、介護の情報システムを統合、それを患者・利用者が自由に使えるようにするという発想は、他の国でも応用できることから、評価されたのだろう」などと述べている。

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 聞いてみると、なんとなく前からあったような考え方でもありそうだが、考えるのと実行(実現)するのとでは天と地ほどの差がある。この病院は、きっとあきらめず、真摯に取り組まれてきたのだろう。

 

 今回は気付きの言葉にカブれてしまったので、こんな言葉もご紹介したい。

 

 ・才能とは何かと問われれば、「続けることだ」と私は答えます。続けることなど誰にでもできると思うでしょうが、実はこれが最も難しいのです。【将棋棋士   羽生 善治】

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 医師のコメントである。

○AIによって単純作業に費やす時間から開放され、高度な技術習得

 「AIを使うことで人間が勉強しなくなるのではないか」という声もあるが、逆だと思う。医師はこれまでは単純作業に費やすしかなかった時間から解放されるわけだから、その時間はもっと高度な技術習得や最新の研究発表に目を通すことに使われるようになると思う。

 

○医師にはAIが出力する情報を統合し、最終判断を下す能力が必要に

 AIによる画像診断が進む未来において、医師は、さまざまな情報を統合する能力が重要になってくる。AIを活用した診断支援システムが出力するさまざまな情報をまとめて、高度な判断を連続的に下す能力が必要になると思う。

 

○医師の間でも情報格差(リテラシーの格差)が生まれる

 医療分野でAI、IT化が進むと、それを使いこなすことができる医療従事者とそうでない者との情報格差(リテラシーの格差)が生まれることが心配だ。近い将来、AI、ITを使いこなす医師とそうでない医師の給与格差が生まれかねない。

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 やはり、学問レベル最高学府を出られた医師の言うことは違う志が高い。業務がAI等に代替された(あくまで補佐なのだろうが)あとの、医師としての役割についてしっかりと思いを致しているのが伝わってくる。

 特にこの志の高さを、町内会の自治会のペラ紙たった一枚程度の案内文を、筆者が夜遅くに帰ってくるまで待って、“私はワープロが打つのが苦手だから、あんたが得意やろうから仕事とっておいたで。ちょちょいっとたのむわ。おやすみー”などとのたまわる、DIY(Do It Yourself)の精神が欠落している家内に言って聞かせてやりたいものだ(※3)。

 

 もう一つこんなコメントを。

○IT活用のロボット支援手術や腹腔鏡手術の増加で、手術時間が増加

 第119回日本外科学会定期学術集会で外科医の勤務環境改善策の1つにあげられる「看護師の特定行為研修」に関する説明会で講演した同学会外科医労働環境改善委員長の馬場秀夫熊本大学大学院教授は、ITを活用したロボット支援手術や腹腔鏡手術が保険償還されるようになったことから、かえって手術が増えて外科医の手術時間が長くなる傾向があることや、高齢者が増加して周術期に時間を取られるという実態を指摘。外科医が担っている業務量を減らすためには、ICTの活用はもちろんだが、看護師等へのタスク・シフティング(業務の移管)がカギになると強調した。

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 看護師からもコメントをいただいた。

 

○患者の病態を情報共有できる在宅医療ICTシステム

 当院の訪問看護部門では、訪問看護師が患家を訪問した際に、褥瘡をはじめ患者の病態変化をスマートフォンの画像アプリで撮影し、直ぐに病院に添付画像ファイルで送信する在宅医療ICTシステムを導入している。患者さんの病態について適確に医師をはじめ病院スタッフと情報共有でき、便利なシステムだと思う。

 

○看護業務の無駄なくすためのICTやAIの活用

 医師の生産性向上のためタスク・シフティング(業務移管)論議が盛んだが、タスク・シフティングに当たっては、業務を可視化して整理しないといけない。今も看護師は多くの業務をこなさなくてはならず、手いっぱいの状態だ。そんな状況で看護師が他職種のタスクをシェアするためには、業務の無駄をなくしていく必要がある。何が看護師の業務を圧迫しているのか、看護師仲間にヒアリングをしたところ、「看護必要度」の記録が大きな負担になっていることが分った。ICTやAIを活用し、ベッドサイドで作業した内容を話せば自動的に記録に反映されるような仕組みがあれば、とても便利だ。

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 聞いていますか?お役人の方々。これはどうしたことか。医師の業務のタスク・シフティングの前に、看護師の業務も手一杯なんだそうですよ。看護師の業務のタスク・シフティングも必要ですね。

 

 病院の事務系職員の方からもコメントをいただいた。

 

○IT化は、人件費などのコスト削減には寄与していない

 IT導入による経済効果や業務効率化は、「診療報酬の請求事務が効率化された」「比較可能なデータの蓄積と活用が可能になった」という効果が現れた。事務的な業務は効率化されたが、人件費などでのコスト削減にはそれほど寄与してはいないというのが実感だ。特に、病院にとって医師の人件費削減はタブーで、IT化によっても踏み込めない

 

○IT化で多額なお金をかけず、LED照明に変更し、職員の業務効率が上昇

 医療機関で一層の経営効率化が求められている中、当院では、確実に電気料金のランニングコストを削減できる方法として、全館の照明をLED照明に変更した。LED照明にすることで、単にコスト削減にとどまらず、患者への快適な環境の提供、職員の作業のしやすさなどの向上、照明交換の人的な手間の削減、地球温暖化抑制への貢献など、さまざまなメリットが得られた。中小民間病院にとって多額な費用がかかるIT化よりも、あまりコストのかからない業務改善もある

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 病院の人件費問題に踏み込んだコメントは、これまであまりなかったような気がする。常に医師・看護師などのコメントをいただいてきたからかもしれない。少し反省である。事務職員のコメントにも非常に注目すべき点があるし、最先端の技術を駆使した業務改善だけでなく、身近な改善にも目を向けるべきかもしれない。

 

 医療における働き方改革は、その業務のタスク・シフティングに重きが置かれているということが、これまでのコメントから強く感じることができたが、いっそ、厚労省が質の担保のために求めている大量の書類自体を減少させたほうが、余程働き方改革に貢献するのではないか?と思わなくもないが、それはこれまで何度かWMNで触れてきたように、必ず法の抜け道を抜けようとする不届きな存在を排除するためにも必要なことなのだろう。少なくとも、労働力不足が叫ばれてはいるが、それがどうしようもない状態になるまで、方針が変わることのなかった外国人労働力の問題がいい例で(実際には現在も方針が変わっているわけではないのだが)、国が宗旨替えを行うことはないのだろう

 

 そういった点において、IoT活用による効率化などの手法を導入するというのが、やはり建設的な考えなのだろう。

 

AIの進化は「ディープラーニング革命」、医療画像が全産業の中で最も早い

 第78回日本医学放射線学会総会の特別講演で「人工知能の進展と医療・ヘルスケアにおける可能性」をテーマに講演したAI研究の第一人者である松尾 豊東京大学教授は、今のAIの進化はディープラーニング革命であり、画像認識→運動の習熟(ロボット・機械に熟練した動きが可能に)→言葉の意味理解が技術の進展に伴い、順次可能となるとし、これらの段階についてそれぞれ例をあげて説明した。特に、ディープラーニングに関する動きは、「医療画像が全産業の中でも最も早い」と指摘し、2011年には眼底検査、2014年にはレントゲン写真やCTスキャンから悪性腫瘍を検出するベンチャーが現れるなど、次々と新たなシステムや企業が出現していることをあげた。

 

医療従事者の生産性や医療プロセスなど効率・効果測定、最適化への取り組み

 医療機器メーカーのフィリップス・ジャパンの堤浩幸社長は2019年度戦略発表会で、統合されたあらゆるデータの解析から個々人にあった精密な診断・最適な治療、実行可能な予防を提示できるシステムをつくっていくとし、そのために異業種との連携(パートナーとのエコシステムの構築)をさらに加速・強化していくことを表明。また、医療従事者の生産性や医療プロセスなどヘルスケアの効率・効果測定、最適化への取り組みの一例として、昭和大学病院と共同で行ってきた「遠隔集中治療患者管理プログラム」(eICU)をあげ、集中管理の仕組みによる医師の生産性向上、ケアの効率化・最適化を進めたいと述べた。

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 さまざまな方面からコメントをいただいたが、とにもかくにも、改革元年、まずはやってみるしかない

 令和に入ったワタキューメディカルニュースを、今後ともこれからもよろしくお願いしたい。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※3)・・・社会人になりたての頃、同級生は中学校の先生になっていた。飲みにいったら似たようなことを言っていたものだ。“新人の先生にはワープロ打ちの仕事ばかりが回ってくる。あと大変な部活(運動部)の顧問も・・・何が○○先生、あとよろしくー、 だ!!”。

パソコンに慣れた世代が最高齢者になり、端末ネイティブばかりの世の中になるには、もう数十年はかかるのかもしれない・・・。

<筆者>