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No.668 厚労省、介護分野の事務負担軽減でICT活用したシステム構築へ

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■2022年度メドに介護分野の文書負担軽減のシステムを構築

 介護の現場を悩ませている事務負担の大幅な軽減に向けて、厚生労働省は新たなシステムの構築に取りかかることになった。事業所の指定・更新の申請や報酬請求に伴う届け出などを標準化し、一括してWebサイトで行える効率的な環境の整備を目指す。2020年度までに大枠の設計を固め、3年後の2022年度に稼働できるよう準備を進めていく

 

 社会保障審議会介護保険部会は12月5日開いた会合で、「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」の「中間とりまとめ」の報告を受け、意見交換を行い、委員の了承を得た。「中間とりまとめ」は、①個々の申請様式・添付書類や手続に関する簡素化、②自治体毎のローカルルール解消による標準化、③共通してさらなる効率化に繋がる可能性のあるICT等の活用-の3つが方向性として示されている(図6 介護分野の文書に係る主な負担軽減策)。

 ①簡素化では、押印について「申請者が介護報酬等の支払いを受けることを認めるにあたり前提となる事項に関する申請について、押印を求める」とした上で、具体的には「指定(更新)申請書」「誓約書」「介護給付費策定に係る体制等に関する届出書」のみを対象とし、正本1部に限るとした。付表や添付書類への押印は原則不要。また、押印した文書をPDF化し、電子メールなどにより送付することも可能にする。
 ②標準化では、介護保険法施行規則の改正を踏まえた「平成30年省令改正・様式例改訂について、改めて周知を図る」とし、老人福祉法施行規則の改正や設置の届出・変更について法律に明記のある老人福祉法の規定の見直しも含めて検討。様式例の整備、ガイドライン、ハンドブックなど効果的な周知方法の検討を進める。

 ③ICT等の活用では、申請様式のホームページにおけるダウンロード、指導監査における実地指導のペーパーレス化・画面上での文書確認指定申請・報酬請求に関するWeb入力・電子申請自治体と事業者との間でやり取りするデータの共有化・文書保管の電子化を進める。3年以内の取組みとして、申請や報酬請求に関する届出などの入力項目の標準化とWeb入力の標準化について「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」の機能を参考にしつつ、2020年度中に検討するとしている。

 

■介護文書の標準化、ICT化を急げ、電子カルテの轍は踏んではいけない

 介護保険部会では、2021年度からスタートする第8期介護保険事業(支援)計画策定(市町村が介護保険事業計画を、都道府県が介護保険事業支援計画を作成)に向けて介護保険制度の見直し論議が進められている。

 論議の中で部会の委員から、「介護現場では文書作成等の負担が大きい。様式が自治体毎に異なり、極論すれば全市町村分の書類を準備しなければならず、大きな負担となっている」などの指摘が相次ぎ、部会の中に「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」を設置し、検討を進めてきたもの。

 

 文書作成等の負担が大きい例として、介護福祉士の配置割合が高い訪問入浴介護事業所や通所介護事業所などを評価する「サービス提供体制強化加算」の届け出書類を見ると、「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」「サービス提供体制強化加算に関する届出書」「有資格者の割合の算出に係る書類」「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」「研修計画に関わる書類」「会議の開催に関わる書類」「健康診断の実施に関わる書類」「その他の書類」があり、保険者(市町村)によってどの書類を提出すべきか、まちまちである。

 また、「有資格者の割合の算出に係る書類」についても、「職員の資格の一覧表の提出を求めている」「常勤換算数の記載を求め、有資格者の割合については、数式で自動入力される」「常勤換算数の算出を数式で補助し、有資格者の割合についても、数式で自動入力される」「勤換算数については、計算方法のみ示しており、エクセルの数式等での補助はしていない」と様々なパターンがある(図7(例)具体的な添付書類等が定められていないために指定権者ごとに事業者に作成を求める文書が異なっている加算)

 

 

 介護分野の文書負担軽減を巡る社会保障審議会の論議では、「ICT化は中長期的課題と位置づけるのではなく、短期・中期的な課題として検討すべき」「電子カルテのように各ベンダーが独自に開発を進めば、異なるベンダー間でデータの共有ができなくなり標準化は不可能となる。まず標準化をし、そこからベンダーの開発を促すべきである。電子カルテの轍を踏んでならない」との提案がされた。

 

 次期介護保険制度改革では、「2025年には団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となり、今後、介護ニーズが急速に増加。その後、2040年にかけて高齢者の増加ペース自体は鈍化するものの、支え手である現役世代人口が急速に減少する」ことから、「少子高齢化が進む中、制度・サービス提供体制を維持していくか」が極めて重要な視点となる。その中で、限られた介護マンパーで介護サービスが提供できるよう、①介護ロボットやICT等の活用、②事務負担の軽減、③事業所・施設の集約化の検討は、より重要となっている。

 

 

【事務局のひとりごと】

 

 「何かを取り纏める」という作業は、その主体が民主的であればあるほど困難を極めると思う。

 年末年始になると、見切れないほどの人気映画が深夜に放送される。ほんの数日、民放がスカパーのようになる。番組のタイトル表を見ると、どれも見たくなるが、そうもいかない。

 おっ、「ダヴィンチ・コード」があるではないか。

 当時ブームからかなり遅れて文庫の同小説にハマり、映画化と聞いて飛び上がって喜んだものだが、果たして映画を見ると、小説では登場人物の心情的描写が子細に表現されて感情移入ができるのだが、映画ではそのシーンも一瞬で終わってしまうことなどざらにある。さらにはそのシーンすらすっ飛ばされてしまう(映像化されない)ことだってある。であるから、小説などの大作が映画化すると、“大満足”という結果には、期待が大きければ大きいほどつながらないものである。実際、公開当時は原作の深みと映画の(悪い意味で全てがカラー映像で表現されてしまっているが故の)画一感で、個人的にはさほど感銘を受けなかったことだけは覚えている。

 ところがどうだ。小説の内容をおぼろげにしか覚えていない現在、映画を見るとそれなりに入り込めるではないか。夜中の3時にも関わらず、最後まで見たくなるではないか。結局途中で力尽きて翌日ビデオで最後まで見たのだが、その中で、イエス・キリストがどういった人物だったのか?福音書の真実とは?など、単に聖書を読むだけでは想像もつかないような歴史の奥深さを感じることのできる内容だ。恐らく、この部分こそが、ダン・ブラウンのロバート・ラングドンシリーズの真骨頂であり、魅力なのだろう。

 で、映画の中では、当時、現在新約聖書にあるマタイ・マルコ・ルカ・ヨハネによる福音書以外にもたくさんの福音書が実際には存在しており、その中でイエスに関する描写も様々で、現在知られている歴史としては、復活して神の子、救世主として認知されているイエスであるが、福音書によっては預言者として扱われていたにすぎないという、センセーショナルな内容も明らかになるのである。それをキリスト教の布教と領土拡大を目論む存在により、意図的に編纂がなされてきた結果が今の新約聖書に記載されている福音書であるというから驚きだ。小説を読んだ時にはかなりの衝撃を受けたものだ(※1)。前にも書いたが、「ダヴィンチ・コード」を読んでから新婚旅行に行きたかった、なんと勿体ないことをしたのだろうかと、未だに後悔している。

 

 話を戻す。“編纂”である。編纂のようなものである、といった方が正しいか。都道府県ごとに異なる細かなルールと様式、添付書類を最大公約数的に束ね簡素化を図り皆が納得するような取り纏めを行う。気の遠くなるような話である。件の映画では、ローマ帝国コンスタンティヌス帝(の野望)によって編纂された。我が国の老人保健制度民主的に、議論を尽くして行われる。どちらの方が良いかなど議論の余地もないが、手っ取り早く決めるならば専制的に決めるのも手なのかもしれない、仮に真っ当な専制君主がいてくれれば、物事はスムーズに進むのではないか、とも感じた。

 

 コメントを紹介したい。

 

○厚労省老健局:「介護現場、保険者、自治体の負担について、一回横串を刺して改善」

 介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会の初会合で老健局の黒田総務課長は、「これまで介護分野の事務負担軽減について検討する場がなく、報酬は報酬、事務は事務、制度は制度ということでやってきた。今回、介護現場の負担、保険者の負担、自治体の負担ということで、一回横串を刺してみた上で、お互いに持ち寄って改善できるものがあれば、みんなの総意として推進していこうということで、専門委員会を開いた」と、専門委員会設置の意義を説明した。

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 そうですよね。総意が大切ですね。でもそれではいつになったら現場に反映できるのでしょうね?と感じてしまう。

 

○老健局長:「介護分野の文書負担軽減は、お互いにとっていい答えが見出し得る課題」

 専門委員会の初会合で大島老健局長は、「行政が求める指定申請の関係、報酬請求の関係、指導監査の関係等の文書の作成には、多くの時間と労力が、貴重な介護現場の人材、直接ケアをされる方、あるいは事務局として作業をされている方の労力を奪っている。介護分野の文書についての負担軽減は、介護事業者にとっても地方自治体にとっても、共通の課題、お互いにとっていい答えが見出し得る課題ではないかと考える」と、介護分野の事務負担軽減に臨む姿勢を強調した。

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 2年前の文章を少し編集して再掲したい。

 

 ある大学の医療関係の講義のテーマ「医療政策の方向性について」の講師、元官僚の明快な講義後の質疑応答(こちらも90分)。

 「・・・ご質問のように、日本では規制が強いとか、色々なご意見があるだろう。診療報酬制度は「公共の宝」。皆で大切に使いましょう、というのが根底にあるのだが、ルールが決まれば必ず抜け道を抜けようとする者が出てくる。そういった者がいる以上、規制が強化されてしまうのは致し方ないところだ。が、日本も世界の流れには逆らうことは出来ないこれまでの政策は、例えばドラック・ラグの問題を取ってみても、皆が良い、と思う方向に確実に一歩ずつ前進している時間はかかるかもしれないが、必ずや皆が(こうあるべきだと)思う時代がやってくる。逆は決してない(悪い方向に行くことはない)。それこそが日本の良さであり、官僚も常に良い方向を目指し、それを信じて取り組んでいる、ということを是非ご理解いただきたい。」

 講師が最後に述べられた言葉がとても印象的であった

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 役所に提出する資料に手間がかかるのは、言ってみれば不正を防ぐための障壁なのである。これまでの国の考え方は、「規制強化は致し方なしだったと記憶している。そこから考えると、人的リソース不足を背景として、国もかなりの方向転換をしなければならない時代に突入したのだと考えてよいのだろう。

 

 関係団体からコメントをいただいた

○老人福祉施設協会調査:「入居者一人当たり職務時間の13%が書類作成」

 公益社団法人全国老人福祉施設協会が行った調査によると、入居者一人当たり総計の職務時間に占める割合は、トイレ介助が17%、食事介助が17%であるのに対して、「書類作成」はなんと約13%もあった。事務作業時間が本来の業務であるトイレ・食事介助の時間に匹敵するほどかかっていることが明らかになった。

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 書類作成、恐るべし。

 開設者関係者から複数、コメントをいただいた。

 

○「介護事業者は、書類が揃わないと事業所廃止。書類をシュレッダー処分なんてあり得ない」

 居宅介護事業者は、書類が揃っていないと事業所廃止である。訪問介護、訪問看護ステーションも同じである。安倍首相の桜を見る会では、書類をシュレッダーにかけて処分しても、誰も罰せられず、お役人には給与が支払われている。こんな不公平が許される日本はおかしい。

 

○「他業種から介護業界に参入したが、コストがやたらにかかる業界」

 やたらに多いアンケートや提出書類の山。行政の各担当官別に提出しなければならず、一元管理など行政側に創意工夫が必要だ。他業種から介護業界に参入したのだが、事務コストがやたらにかかる業界であることを思い知った。

 

○事務系スタッフ:「そもそもIT化に必要なパソコンを整備できるお金がない」

 いくらパソコンを使ってIT化を進めようとしても、中小の事業所ではそもそもIT化に必要なパソコンを整備できるお金がない。

 

○介護スタッフ:「書類作業ばかりで休日がとれない」

 居宅介護支援事業所のケアマネジメントの書類を削減して欲しい。書類作業ばかりで本来のケア業務に時間がとれない。休日もまともにとれない。

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 桜を見る会への恨み節もごもっともだ。お役人に届くべきメッセージなのか、それとも政治家に届くべきメッセージなのか。

 

 こんなコメントも。

○介護系コンサルタント:「介護職の業務負担量増で残業が常態化。残業手当不払いも」

 介護現場の人手が足りなければ、現在就業中である介護職の業務負担量はどうしても増えてしまう。このため、始業前や終業後にやむを得ない残業を強いられる労働者が相当数いる。全国労働組合総連合(全労連)が2019年4月に公表した「介護労働実態調査報告書」によれば、日勤帯の場合、「始業前の残業(時間外労働)」がないと答えた人は全体のわずか2割。準夜勤帯でも始業前に「残業がある」と回答した人は約6割に達している。さらに、人手不足で発生した残業に対して手当が支払われないケースがあり、「介護労働実態調査報告書」によると、残業手当の不払いの有無は、介護職員の4人に1人が「ある」と回答。事務負担軽減策だけではなく、介護業界を「底上げ」するような根本的な対策が必要ではないか。

 

○効率化コンサルタント:「中小企業が多い介護事業者のICT化にはコストがかかり、政府や地方自治体の補助が必須」

 既に一部の事業所では、ケア記録のICT化、日常業務におけるタブレット端末の導入、見守りロボットなどIoT機器の導入などが行われており、AIやICT導入が負担を軽減すると期待される。ケア記録を作成する際の負担を軽減するAIツールを大手家電メーカーが開発し、話題を呼んだ。このシステムを使うと、過去の介護記録を学んだAIが状況に合わせた記録の文例を、自動で作成してくれる。しかし、中小企業が多い介護事業者のICT化には投資とメンテナンス・コストがかかり、国や地方自治体の補助が必須だ。

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 客観的にみる立場の人間からしてみるとこういうことなのだろう。財源か?ルールか?何を採るべきなのか?答えは出ているのに方策が今一つ見えてこない

 

 最後にこんなコメントを紹介したい。

○利用者の家族のコメント:「ケアマネさんの負担が非常に大きいことを実感」

 今回父の介護サービスを受けるに当たり、窓口であるケアマネジャーさんの事務作業をはじめとする負担が非常に大きいことを実感した。ケアマネさんは、利用者宅を訪問し、本人やその御家族のさまざまな要望を聞く。主治医がいる診療所に足を運んで利用者の病状などの情報も聞く。関係者を集めたケア会議を開催する。医師や看護師、事業者や家族との調整をする。利用者一人一人に応じたオーダーメードのケアプランを作成する。あるケアマネさんは、なし崩し的に業務が拡大している、余りの忙しさで、自分たちが抱える日々の業務問題はどこにあるのか、ぱっと頭に浮かばないこと自体が問題と、おっしゃっていた。

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 忙しすぎて心に余裕がないと、改善策すら思いつかない、というのは厚労省も当然ご存じのはずである(特に労働省)。

 何を最優先すべきか今ひらめいた。まずはスピードだ。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)…よくよく考えてみれば、歴史の捏造はイエス・キリストに止まらず、多く見られる。織田信長が大うつけであったこと、桶狭間の戦いのような天才的な行動にしても、信長を神格化するために良いように書かれている(らしい)。人心を惹きつけるため、編纂の過程において何らかの加工がなされてきたのが、洋の東西を問わずの歴史なのである。

<渡辺京二カブレ>