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No.670 公立・公的病院の再編統合対象は約440に増加、厚労省、再編統合の再検証を要請する医政局長通知を発出

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■「再検証」要請424病院に約20施設追加し厚労省がデータ修正の上、「再検証」の対象は約440施設に

 2019年9月の厚生労働省が発表した「公立・公的医療機関の具体的対応方針の再検討要請」の対象となった424病院の実名入りリストは、統合再編の対象病院を抱える地方から「病院つぶし」「地域医療の崩壊につながる」と強い反発を受けた。全国知事会、全国市長会、全国町村会は連名で「全国一律の基準により推進することは適切ではなく、地域住民の不信を招いている」とする意見書を提出するなど、全国的に波紋を呼んだ。こうした反発を受けて、厚労省は橋本副大臣、吉田医政局長らが出向きブロック単位の意見交換会を開くなど対応に追われた

 

 また、昨年12月24日、総務省・厚生労働省の両省が第3回「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」を開催、厚労省は地域医療構想の調整会議で活用する民間病院のデータについて、年明けのできるだけ早い時期に都道府県に提示するとともに、民間病院データを一般に公表するかどうかなど、その取り扱いは都道府県に判断を委ねる方針を示した。さらに、厚労省は2020年度予算案で、稼働病床を10%以上ダウンサイジングした際に活用できる全額国費の84億円の予算事業を創設することを説明し、都道府県側に理解を求めた(図4 地域医療構想の実現を図るための病床ダウンサイジング支援について)。これに対して地方からは、10%削減に満たない場合、病床の機能転換などの場合への支援を要望する声も上がり、国側は現行の地域医療介護確保総合基金の活用も合わせて、いろいろなパターンの再編統合を支援していくと説明した。

 その後、厚労省は2020年1月17日付けで各都道府県に対して、公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証を要請する医政局長通知「公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等について」を発出した。昨年9月公表した地域医療構想を踏まえた再検証を要請する公立・公的医療機関「424病院リスト」について、データの入力漏れなどがあったため、新たに約20施設が加わった。個別の医療機関名は、9月の公表が風評被害を招いたなどとして公表していない。逆に、済生会中央病院など7施設は除外され、「再検証」の対象は約440施設となった。

 今回、対象から外れる7施設は、社会福祉法人恩賜財団済生会支部東京都済生会中央病院(東京都)/JA静岡厚生連遠州病院(静岡県)/岩国市医療センター医師会病院(山口県)/徳島県鳴門病院(徳島県)/宗像医師会病院(福岡県)/熊本市立熊本市民病院(熊本県)/杵築市立山香病院(大分県)。

 

 厚労省は対象施設が入れ替わった原因として、①一部データの入力漏れ、②紙レセプトの手術実績の追加、③病床機能報告の病棟名・病棟ID等の確認-の3点をあげている。このうち、データの入力漏れは、主に厚労省職員のミスで、18万余りの項目のうち300項目に誤りがあった。昨年9月に公表した時点では、紙レセプトのデータや病棟IDの報告に不備のある施設のデータは除外して分析し、その結果、分析の対象となる公立・公的医療機関等の総数は、1455施設から1466施設に増加。このようなデータの不備などによって、「再検証の対象」とされた7施設に対しては謝罪をした上で、施設側の希望も踏まえて、対象から外れることを公表することにした。

 

■再検証の期限は「改めて通知」するが、期限延長の可能性

 厚労省は通知と同時に、2017年の病床機能報告で高度急性期・急性期の機能を持つと報告した民間医療機関3187施設の診療実績のデータを各都道府県に提示した。このうち約370施設は、機能や地理的条件から「公立・公的医療機関等と競合すると考えられる民間医療機関リスト」として、医療機関名をあげて都道府県に示したが、これらの民間医療機関のデータについても、厚労省からは公表しない方針だ。

 

 焦点となる各都道府県での再検証の期限については、通知の中で「2020年度から2025年までの具体的な進め方については、状況把握の結果を踏まえ、また、地方自治体の意見も踏まえながら、厚労省において整理の上、改めて通知する」とした。「2019年度中に対応方針の見直しを求める」「医療機関の再編統合を行う場合については、遅くとも2020年秋頃まで」と明記した「骨太の方針2019」を基本としながらも、事実上、期限の延長の可能性が示唆されたと言えそう。

 

 

【事務局のひとりごと】

 

 ネット上では様々な疑問に対し、ユーザー同士で答えてくれるシステムがある。こんな遣り取りがあった。

 

 Q:戦争で一番難しいのは撤退戦でしょうか?

 

 A:戦術においては、撤退戦が一番難しいと言われています。

 後退しながら戦うということは、相手の圧力を常に受け続けることになります。後退しながら相手の圧力を受け続けると、一歩間違えば前線が崩壊して全軍敗走を余儀なくされかねません。

 基本的には全軍敗走を食い止めるため「しんがり」という部隊が作られますが、このしんがりは「全滅ないし半滅」も辞さないことが前提です。いわば囮となって敵を食い止めつつ、自軍を逃がすという困難極まりない役回りなのです。当然敵の圧力をもろに受けるため、壊滅しても当然ということになるでしょう。

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 何かを破壊することから逃れられない戦争と、命を救う医療が同列に扱われるべきでないのは百も承知の上だが、一連の地域医療構想の遣り取りから印象を受けるのは、これは“撤退戦”なのだろう。さらにこれは撤退するだけでなく、撤退しながらも新しい調和を創出しようという、とんでもない離れ業をしようとしているのだと思う。

 誰だって自分の領地を減らして全体最適を図ろうとは、第一義的には思わないはずだ。せっかくここまでの屋台骨にしてきたのに…、そこは実力主義に基づいて行われるべきだろう。そういう考え方が、多かれ少なかれ根底にあるのではないか。ゆえに簡単には進むはずがない。

 というわけで、今回のテーマは、以前にも採り上げたが、公立・公的病院の再編統合対象病院リストの問題である。

 

 コメントを紹介したい。

 

○大塚耕平衆議院議員(日銀出身の国民民主党共同代表、元厚生労働副大臣):「自治体の運営能力の低さ、他の行政サービスの犠牲等も考慮し、判断すべき」

 公共病院の運営方針は公選首長・議会で決定される。今後の検討を担う地域医療構想調整会議も法律に基づく仕組みであり、民意といえば民意。どちらを優先するか難しい問題である。調整会議が厚労省の意向を忖度すれば、非民主的、独断・専横の誹りを免れない。一方、首長や議員は選挙を意識して公共病院の統合・再編には消極的。統合・再編、撤退・縮小が適当な場合でも「新改築、医師増等で患者が増える」と主張し、公的資金で不採算病院を建て直し、地域の民間病院の経営を圧迫している事例も少なくない。公共病院を保有・運営している自治体は医療に熱心という印象を与えがちだが、僻地等の不採算地域以外は民間病院に地域医療を任せることも一理ある。自治体の運営能力の低さ、他の行政サービスの犠牲等も考慮し、判断すべき。(大塚議員のホームページより)

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 病院リストの公表で多くの物議をかもしたこのテーマだが、数字が増減し、424から440に変わってしまった。そこには集計ミスがあったというのだ。

 

○地域医療計画課長:「データが膨大で、確認や修正作業が繁雑になってしまった。今後は複数の目で確認したい」

 データの入力漏れは主に厚労省職員のミスで、18万余りの項目のうち300項目に誤りがあったことについて、厚労省医政局の鈴木健彦地域医療計画課長は、「入力漏れは我々のミスであり、深く反省したい。言い訳になるが、データが膨大で、確認や修正作業が繁雑になってしまった。今後は複数の目で確認したい」と述べた。

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 老健局老人保健課長でもあった鈴木健彦氏、データ集計(※4)についての反省の弁である。厚労省は18万にも上る項目をチェックされたとのことなので、厚労省を庇うわけではないが、そんな量のデータが正しく処理出来て当たり前だろうという見方もいかがなものか、と思わなくもない(もちろん、公表された病院にしてみれば、間違いで公表されたとあってはたまらない、というのは心よりお気の毒であるが)。

 また、改善策として複数の目で見る、つまりダブルチェックについてだが、内部統制などでよくいわれる管理手法である。確かに一理ある。しかしここは敢えて申し上げるが、ダブルチェックをしさえすれば今後このような間違いは絶対起きないのだろうか?否、そうではない、私見であるが筆者としては“意味がない”とは言わないが、ダブルチェックやトリプルチェックをいくらしたところで、こういったミスが完全になくなるとは思わない。つまるところ、まず作成する本人の精度がどれだけ高いかということに尽きる、と考える。仮にダブルチェック体制を敷いていたとして、それでも間違いが起きれば、次はどんなことを対策するのか?すでにこれまでデータ集計ミスは今回も含め近年で二度も起きているのだ(もう一つは消費税率が上がった際の補填の問題の時)。

 

 少し嫌みが過ぎた。自治体からのコメントである。

 

〇全国知事会社会保障常任委員会委員長:「424病院が結論を得る時期は、弾力化すべき」

 再検証を要請された424病院が結論を得る時期について、12月24日開かれた総務、厚生労働の両省による第3回「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」で、全国知事会社会保障常任委員会委員長の平井伸治鳥取県知事は、知事会でも、議論を進めるためには期限があった方がいいという意見と、期限を付けること自体おかしいという意見があったため、「弾力化すべき」と主張した。

 

〇吉田三浦市長:「総務省の公立病院経営改革事例集で好事例とあげながら、再編対象とは何を言っているんだ!」

 再編統合の424病院リストに神奈川県の三浦市立病院が含まれたことについて、市議会本会議で吉田英男市長は「2016年に総務省の公立病院経営改革事例集で好事例とあげながら、厚労省は再編対象に入れた。何を言っているんだ!」と苦言を呈した。

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 国と自治体の対立はなかなかうまくいかない。平井知事も官僚でいらっしゃったはずであるが、知事となるとこういったご発言になるのは否めないか…。

 

 病院団体からはこんなコメントだ。

 

〇全自病会長:「今年9月末の結論は絶対無理」

 全国自治体病院協議会の小熊 豊会長は1月9日の記者会見で、再編統合を伴う再検証要請対象となった病院は2020年9月末までに結論を出すことについて事実上の期限延長となったことに関し、「評価したい。9月は絶対に無理と考えている」と述べた。また、一律には公表しないことについては、「民間も同じようにデータを出して、調整会議で一定の基準で、と話してきたが、厚労省はそう考えていない」と指摘した。

 

〇JA厚生連病院:「調査が行われた6月は農繁期で農村部なら患者が減る時期。恣意的と感じる

 再編統合の424病院リストでは、全国に105あるJA厚生連病院も3割に当たる31病院が対象となった。北海道帯広市で開かれた日本農村医学会学術総会でも、厚生連病院関係者から今回の公表や議論の在り方に疑問を投げかける意見が出された。ある関係者は、調査が2017年6月の診療実績に基づき行われたことについて「6月は農繁期で農村部なら患者が減る時期。恣意的と感じる」と指摘した。

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 おっしゃる通りではあるが、一体何ヵ月分のデータであればご納得いただけるのだろうか。仮に3年分のデータを均せばよいのか。今度は、それはデータ処理上、膨大すぎて“困難だ”となるに違いない。それが1年分だったとしても同じだろう。言われた側が圧倒的に弱い議論である。

 

 医師からはこんなコメントだ。

〇「再検証で救急対応の実績が比較的少ない医療機関が救急現場から撤退しないように」

 1月24日静岡県富士市で2020年度診療報酬改定に向けて開かれた中医協公聴会で、浜松医科大学医療福祉支援センターの小林利彦特任教授は、厚労省の地域医療構想の具体的対応方針に関する「再検証」要請で、対象選定の指標に救急診療の実績やシェア等が含まれていたことから、「救急対応の実績が比較的少ない医療機関が救急現場から撤退を検討するような方向性とはならないようにしてほしい」と述べ、地域の実情に応じた対応を要望した。

 

〇「再編統合公表と医師臨床研修マッチングの最終締め切りと重なり、研修医採用が1人になってしまった」

 臨床研修病院の指定を受けている再編統合対象の県立病院の副院長。「再編統合の対象病院の公表が医師臨床研修マッチングの最終締め切りの直前だったため、それまではフルマッチだったが、今回はマッチ者が1人になってしまった。臨床研修医は地方の病院にとって貴重な戦力であり、頭を抱えている」。

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 個別の議論が必要なので地域医療構想会議なのだが。

 

 民間病院からはこんなコメントを頂いた。

 

〇「公立公的、民間を問わず公表すべき。地域住民に病院の実態を知ってもらう良い機会」

 厚労省は、再編統合の対象となる民間病院のリストは公表しない意向だが、公立・公的、民間病院を問わず各病院の診療データを公表し「見える化」して、地域での各病院の役割を明確化することは、大切である。患者や地域住民に、病院の実態を知ってもらう良い機会ではないか。

 

〇「救急患者の受け入れに消極的な病院は、公立公的、民間問わず、撤退すべきだ」

 2次救急患者を積極的に受け入れている民間病院長。「近隣の公的病院は、2次救急患者の受け入れをあまりしてくれない。このため、救急車が当院に回ってくる。救急対応できない“なんちゃって急性期病院”は、地域から撤退すべきだ」。

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 民間病院と公立・公的病院の対立軸にしたいと考えているわけではないのだが、相当に自信がおありのコメントである。 

 

 看護師からはこんなコメントだ。

 

〇「病院リストが公表された途端、人材会社から転職案内のメール」

 再編統合の対象となったある市立病院の看護師。「ここ2、3年、入院患者が減っており、いつかは県立病院に統合されると思っていた。病院リストが公表された途端、人材会社から県内の別の病院への転職案内のメールが入った。

 

〇「患者さんから病院が無くなるのかと聞かれるのが辛い」

 再編統合の対象となったある県立病院の看護師。「何よりも、病院が無くなるのかと高齢の患者さんから聞かれるのが、とても辛い」。

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 人材会社のフットワークには恐れ入る。

 

 それぞれのお立場でそれぞれの考え方があるのを紹介してきたが、地域医療構想会議にご出席のメンバーからもコメントを頂いた。

 

〇「県立病院院長と県知事の意見が一致しているとは限らない」

 ある県の地域医療構想アドバイザー。「地域医療構想会議には、県立病院の院長が出席していても、県知事と意見が一致しているかは分からない。その中でどこまで議論が活性化できるのか。開設者を含めた会議を2次医療圏でやっていかなければいけないのか」。

 

〇「調整会議で機能分化に向け成果をあげつつある中、再編統合の対象になったことで落胆、混乱が」

 県内の調整会議に参加している県立病院院長。「病床機能分化で成果をあげつつある医療機関、調整区域などがあるが、今回対象になったことで落胆、混乱が生じている。何らかの手当てができないものか」。

 

〇「再編統合の対象にならなかった病院にとっては他人事。地域医療構想に協力してもらえなくなる」

 「今まで各病院が調整しようとしていたところ、再編統合の対象にならなかった病院にとっては、他人事になり、地域医療構想に協力してもらえなくなる。『うちは関係ない』として、対象病院だけがベッドを減らせばいいでしょう、となっている」。

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 早めに取り組まれた医療圏、これから議論しようとしていた医療圏、あまり積極的に議論をしてこなかった医療圏、様々おありなのだろう。話がループしてしまいそうだが、それ故の、議論活性化のための病院リストの公表だった。令和2年度の予算案で計上されている「地域医療構想の実現を図るための病床ダウンサイジング支援について」の84億円は、10/10のスキームだ。謝罪があったとはいえ、批判覚悟の上でのデータ公表からのこれまでの動きだ。厚労省として看板を下ろすつもりがない、本気であるということなのだろう。

 

 最後に地域住民の声もいただいた。

 

〇「地元選出の国会議員に陳情した」

 町立病院が再編統合の対象となり、町長に働きかけて、地元選出の国会議員に「町内唯一の病院は、地方創生の柱」で陳情し、訴えた。

 

○全国に2カ所しかない専門病院の再編統合に患者は不安

 高齢化が進む福岡県の筑豊地域では5施設が再編統合の対象となった。その1つが脊髄損傷患者の専門医療機関である独立行政法人労働者健康安全機構・総合せき損医療センター(飯塚市 1979年開設)である。この施設には、福岡県外からも多くの患者が受診しており、「専門医が揃っていて安心感がある。全国でも2カ所しかない専門病院であり、この先も残って欲しい」と患者の声は切実だ。

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 地域医療構想に関するこの議論、華麗なる撤退戦が成功するのか、はたまた収束できずにいるのか、先延ばしされたとはいえ、期日はもう決まっている。少なくとも新型コロナウイルスの動向が収束するよりは遅くなりそうだ…。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※4)…元データについては、ナショナルデータベース(NDB)のデータを集計していたらしい。

 

<WMN事務局>