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No.684 勤務医の時間外労働規制に向け、厚労省が「医師の勤務実態調査」「地域医療への影響に関する調査」結果を公表

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■2024年から始まる年間960時間の時間外上限規制、実際は勤務医の10%は1824時間超の時間外労働

 2024年4月から全ての勤務医の時間外労働規制は、①原則として「年間960時間以下」が上限となる(いわゆるA基準)、②救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(いわゆるB基準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(いわゆるC基準)では、「年間1860時間以下」まで上限とされるなど、新たな時間外労働の上限規制が適用される。

 厚生労働省は、今後の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の議論に供するため、このほど令和元年医師の勤務実態調査」「医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査」結果を公表した。

 

 このうち、2019年9月に実施した「令和元年医師の勤務実態調査」結果では、2024年度に始まる罰則付き時間外労働時間上限規制で基本となるA水準(休日含め年間960時間)を超えた勤務医は37.8%だった。さらに回答者の上位10%は、年間1824時間を超える時間外勤務だった(図2 病院常勤勤務医の週労働時間の区分別割合)。

 

 調査は2019年9月2日から9月8日にかけ、1万9112施設に施設調査票、14万1880人に医師調査票を配布し、Webサイト上での回答も受け付けた。施設調査票の回収率は20.8%(3967施設)、医師票は紙の調査票とウェブ回答を合わせ2万382人だった。今回の発表は調査結果のうち、基礎的なデータと「病院常勤勤務医の就労働時間の区分別割合」など一部分である。医師の回答のうち病院常勤医師の回収数は1万5675人で、そのうち労働時間等の記載が4日以上、性・年齢、主たる診療科、主たる勤務先の回答がある8937人分が今回の分析対象となった。

 

宿直・日直の適正管理などで超時間残業はかなり適正化。一方で連続勤務時間制限、インターバル確保が重要

 勤務医の多くは複数の医療機関で副業・兼業を行っており、時間外労働の時間は当然「通算」される。例えば「普段はX病院で勤務し、夜間にY病院で当直を行う」勤務医では、XY両病院の勤務時間を「通算」して960時間以内に収まっているかなどを確認する。その際、X・Y病院のいずれもがA水準医療機関であった場合、X病院で600時間、Y病院で400時間の時間外労働を行うと、合計で1000時間となり、960時間を超えてしまうため「違法」となる。

 この問題について、厚労省「医師の働き方改革の推進に関する検討会」構成員から「一部の大学病院では、早くも地域医療機関への医師派遣をストップするなどの動きをとっているとの話も聞く。大学病院や基幹病院が医師派遣ストップにするなど、地域医療にどういった影響が出るのか把握すべきではないか」との要望が出ていた。これを受け厚労省は、厚生労働科学研究の一環として「医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査」を実施したもの。

 同調査結果では、①医師の勤務実態は、大学病院・診療科によってさまざまである、②宿直・日直の適正管理などで、1860時間を超える超時間残業はかなり適正化できる(図3 医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査 概要①)、③勤務医の健康管理のためには、「労働時間の短縮」だけでは不十分で、「6時間以上の連続した睡眠時間の確保」が重要であり、このためには、連続勤務時間制限、勤務間インターバル確保と代償休息が重要である(図4 医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査 概要②)、④医師の働き方改革実現のための医師増員も最大でも「1.25人の増員」にとどまっており、医師働き方改革の影響は限定的と考えられる、⑤調査結果を踏まえ、各医局での今後の対応をヒアリングしたところ、「地域の医療を守るという観点から関連病院等への医師の派遣をやめることは難しい」「時間外労働時間の上限規制を遵守するため、関連病院等からの医師の引き上げを第一選択とする医局はない」「各医療機関の機能や役割を明確化するなど、抜本的な改革が必要と各医局とも考えている」ことが分かり、地域の医療機関の機能分化を推進することが、医師の働き方改革実現の鍵となる-ことなど明らかになった。

■医師不足悩む12県知事が医師確保で厚労省に提言

 ところで、岩手県や新潟県など医師不足に悩む12県の知事で構成される「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」(会長=達増拓也岩手県知事)は8月7日、医学部の体制強化や臨床研修制度の見直しなど医師不足解消に向けた提言書「医師不足や地域間偏在の根本的な解消に向けた実効性のある施策の実施を求める提言」を厚生労働省に提出した。

 

 青森、岩手、福島、新潟、長野、静岡、秋田、山形、茨城、栃木、群馬、宮崎の12県で構成される「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」は、今年7月にまとめた各県の医師確保計画を踏まえ、(1)医師をはじめとする医療従事者の養成・確保、(2)医師の地域偏在解消に向けた臨床研修制度の見直し、(3)医師の地域偏在解消に向けた実効性を伴う専門研修の仕組みの創設、(4)医師の地域偏在解消のための仕組みづくり、(5)医師の働き方改革と医師確保・偏在対策の一体的な推進、(6)医師確保対策等への強力な財政支援-からなる「提言書」を厚労省に提出したもの。

 このうち、医療従事者の養成・確保では、現在の医学部の臨時定員増を恒久的な措置とするほか、既設医学部の大幅定員増や医学部新設を要望。臨床研修医の確保については、都市部への集中を是正する抜本的対策を求めたほか、臨床研修2年目の地域医療研修の拡大などによる地域での研修期間の約半年の確保等を掲げた。

 また、専門研修については、より厳格なシーリングや、地方への指導医派遣にインセンティブを付与するなどの仕組みを求めた。さらに、地域偏在解消に向け、地域の拠点病院で政策的ニーズが高い医療分野などには診療報酬を含めたインセンティブの設定を提案した。

【事務局のひとりごと】

 

 筆者は、ホラー系、スプラッタ系の映画は大の苦手である。というより、見ない。

 筆者の趣味の一つである映画鑑賞は、今コロナ禍で一つの転機を迎えた。公開を待ってようやく封切を迎えた作品、未だ公開日の決まらない作品、本来なら夏休みを目掛けて制作したのに年末年始をターゲットにせざるを得ない作品、もしかすると撮影すらままならない作品…。

 

 8月の終わり。今夏はどこにも連れていけなかった子どもが、2学期の登校日も終わり、つまり夏休みの宿題から解放されたということから、ショッピングモールに連れていくこととなった。そして映画を見ることになった。

 まだ小学4年生なので、てっきり「2分の1の魔法」か「ドラえもん」をのような映画になるだろうと思っていたら、なんと!まさかの「ホラー」である。

 ジャニーズタレントの主演の話題作だ。8/28公開だったので、満員(定員の1/2で満員となる)だった。

 内容は訳アリの賃貸住宅物件に住んでみて、その真相を語るというお笑い芸人の物語だ。霊感の強いヒロインが、「見える」がゆえに傷つきながらも、主人公との絆を深めていく。

 意外にも目を覆いたくなるようなシーンがあるわけでなく、最後まで気絶せずに見終えることができ、親としての面目は何とか保たれた(※1)。

 

 ただ、「見える」というのは良いことなのだろうか?霊感の強い人がたまにそんなことをいうと聞いたことがあるが、筆者は、幸か不幸か、何も見えないし、何も感じない。

 

 消費者金融の過払い問題がそろそろ社会的に落ち着きを見せてきた昨今、雇用者側から被用者側を相手取って訴訟を起こすのは、これからの時代はやはり「時間外労働に対する対価」、これが非常に大きな市場なのだろう。医療における医療従事者、特に勤務医の労働実態がつまびらかに「見える」というのは、果たして良いことだったのだろうか

 時代が時代ゆえ、表向きには誰しも「当然良いことだ」と仰るのだろうが…。

 

 今回のテーマは「医師の勤務実態調査」と「地域医療への影響に関する調査」の結果についてである。

 

 コメントを紹介したい。

 

〇厚労省医政局長:医療機能を集約してチームで対応することが不可欠

 かねてから「医師の偏在対策と働き方改革は地域医療構想と三位一体で進めていく」との考えを示してきた前医政局長の吉田学氏。昨年10月の講演の中で、「医師の地域ごとの医療ニーズは大きく変化してきているが、医師をはじめとするマンパワーには一定の制約があり、医療の高度化に対応するには今までの体制では限界がある。産科が典型例だが、ある程度機能を集約してチームで対応していくことが不可欠である。そのため病床機能や外来・在宅などの診療機能を含め、地域の医療全体の形をどう再編するかという視点から地域医療構想の検討が進められている」と述べた。

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 新事務次官の樽見英樹氏の後任として内閣官房新型コロナウイルス感染対策推進室長となった、前医政局長 吉田 学氏のコメントだ。ちなみに、「三位一体」を辞書で引くと、

 

 1.三位はすべて神の現れで、本来一体のものだというキリスト教の教義。

 2.三つのものが本質において一つのものであること。また、三者が(心を合わせて)一体になること。

 

 とある。「医師の偏在対策働き方改革地域医療構想三位一体で進めていく」ということは、分かったようで分からない気がするが、2.の後半部分、三者が(心を合わせて)一体となるそんな考え方なのだろうか。あるいは本質は同じという意味なのだろうか

 

 勤務医の労働環境について地域住民からこんなコメントをいただいた。

 

〇一般労働者の2人分超働く勤務医の長時間労働は異常

 ともかくも勤務医の長時間労働は異常である。年間2000時間近い勤務をする医師は、一般の労働者2人分超働くことになる。年2000時間は月160時間程度に相当し、いつ労働災害が発生してもおかしくない水準であることを十分に踏まえる必要がある。

 

〇過酷な労働時間の割には思ったほど給与も低く、勤務医は“損な職業”

 お金をかけて医学部を卒業しても、30歳台で給与1000万円に達しない勤務医が多数であると聞く。大手IT企業や大手都市銀行だと30歳前には1000万円を超える社員が多い。過酷な労働時間の割には給与も低く、医療事故のリスクを負う勤務医は“損な職業”だと思う。

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 大学病院、自治体病院からはこんなコメントをいただいた。

 

〇岩手医科大学理事長:医師法で「教育病院」として大学病院のあり方を規定すべき

 「大学病院で働く医師については、時間外労働の上限が年間960時間の場合には、副業・兼業のために別枠で年間420時間まで認める制度を導入すべき」と、今年6月日本医師会の「医師の特殊性を踏まえた働き方検討委員会」が提言をまとめた。同委員会委員の小川彰岩手医科大学理事長は、医療法で規定されている病院の分類の中に、大学病院が「教育病院」として位置付けられていないことが問題であると指摘。国は「大学病院は病院なのだから、診療を最重要視すべき」と言うが、大学病院では診療と教育を切り離して考えることはできない。また、中には「教育に費やした時間は病院の勤務時間に含まれない」との見解を示す地方厚生局もある。医師法で「教育病院」として大学病院のあり方がきちんと規定されれば、文部科学省と他とで解釈がこれほどまでに異なることはないはずだと指摘している。

 

〇全ての当直を夜勤として換算した場合、休日診療や夜間診療を廃止せざるを得ない病院が出てくる

 地方の自治体病院長。病院経営は、国民皆保険制度下で統制された経済の中で事業を展開していく必要がある極めて特殊な分野である。病院規模によっては当直手当のみでも年間支出は10億円を上回っている。限られた経営資源の枠の中で、全ての当直勤務を夜勤として扱おうとする場合、地域の基幹的な病院でも夜間・休日の診療を休止するといった動きをとらざるを得なくなる。この動きが広がった場合、地域医療の崩壊が起こる可能性もあると懸念する。

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 中学校時代の担任の先生に「ノートは贅沢に使え」と教わった。また、教育には、湯水のようにお金をかけるべきだ、そんな言葉も教わった。世界では、飲み水に困っている人口の方が実は多いのだが、我国においては本当にありがたいことに、少なくとも夏の渇水期はともかく、水に困ることが少ないので、「湯水=たくさんあるもの」という考え方があるのだろう。ところが勤務医の労働資源を「限りあるものとして捉えた時、見えてきた実態と今まで覆い隠されてきた表面的な数字とのギャップ、そして最後はお金が絡んできて、さらには「地域医療の崩壊」という表現が出てきてしまう

 

 数年前、厚労省官僚に質問をした。医師の時間外労働規制について、(最終的には財源論や病院経営の問題に踏み込まなければならないのだろうから、それでも)本気に取り組むのか?という趣旨で。

 真剣な答えが返ってきた。

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 労働者である以上、労働基準法は守らなければならない。それは医師も例外ではない。もし、労働時間に対する対価を支払っていない医療機関があったとして、その医療機関の実態が明るみに出たとして、その結果その医療機関の経営が傾き、病院経営が成り立たなくなったとしても、そもそも、その医療機関はきちんと労務管理と経営ができていなかったということなのだから、果たしてそんな医療機関を残すことに意味があるのか?

 また、本当に医師の労働時間に見合う対価が現実に不足しているのであれば、それならばそれを堂々と国民に示し、その上で中福祉・低負担のままで行くのか、中福祉・中負担、あるいは高福祉・高負担などの議論を行うことで、国民に問うていく必要があるだろう。

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 とにかく。

 厚労省は、今も昔も時間外労働問題には本気なのである。被用者である以上、そこには医師だ、看護師だ、あるいは会社員だ、などの線引きや、ましてや聖域などないというスタンスだ(但、国家公務員は別なのかもしれない)。

 

 医業系コンサルタントからはこんなコメントをいただいた。

 

〇院内制度・業務・組織改革を柱として慣例に固執しない革新的な病院運営を

 医師の働き方改革、労働時間の短縮の可否は、①医師本人、②病院の経営・管理者、③医師以外の医療職、④患者という4つのキープレイヤーがどう動くかにかかっている。このうち、②については、病院トップが率先して働き方改革の必要性を説き、労務管理を徹底する。病院経営はますます厳しくなることを理解し、院内制度・業務・組織改革を柱として、慣例に固執しない革新的な病院運営で乗り切る術を模索すべきだと思う。例えば、経営トップや部長が意識的に“早く家に帰る”よう心掛け、一部の企業では当たり前になってきたが、急を要する仕事がない日は事前に「今日は、残業は2時間まで」と残業時間宣言をすべきではないか。

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 令和の時代、実にまっとうなご意見だ。ちなみに、残業が2時間毎日続いたら月間で40時間超年間480時間超の残業となる。コメントを見る限り、暇な日がこれなので、医療機関については最低でもこの残業は止む無し、ということなのか?一部、革新的でないコメントも見られたような気もする。せめて、「ノー残業デー」といって欲しかったのは筆者だけだろうか。

 

 一般企業も時間外労働に対する取り組みは本気度を増している(はずだ)。そして医療においてもオンライン診療の初診までもが、コロナ禍を契機として「例外中の例外」であるが診療報酬として認められることになった。これも勤務医にとっては拘束時間を減らすための朗報になったのではあるまいか

 

 勤務医と開業医からコメントをいただいた。

 

〇リモート化により、ある程度超時間勤務が改善されると期待

 大学病院の内科医。某大学病院で内科医をしつつ、市中病院で3次救急もやっているが、コロナ禍でいろんな変化が起きた。初診外来では実際に目で見て触って、聴診してなどといった診察が必要だが、定期通院されている患者では薬だけ欲しいという方が増えた。そういった方々を対象にリモートでの診察、また、薬も直接薬局に行かずに家に届くというスタイルが確立しつつあるように感じる。他の業界ではリモート化が進んでいるが、医療界もオンライン診療など少しずつリモート化が進んでいくのではないか。リモート化が進めば、超時間勤務の問題はある程度は改善されると期待している。

 

〇コロナ禍契機に沖縄で開業することになった外科勤務医

 都内の大学病院外科勤務医。コロナウイルス感染症拡大を契機に、同僚の40代半ばの外科医が沖縄で開業することになった。開業の理由は、「大学病院に残っても幹部ポストは限られている」「勤務する大学病院の給与は、時給換算すると1300円と思った以上に安い。当直は1回1万円だが、時給換算すると800円と驚くほど低い。一方、開業すると経営問題で悩むことが多いが、それなりの収入が得られる」「開業医は自分で時間をコントロールできる」「開業地のインターネット環境は整っており、安価である」「最新の医療情報もネットを通じて簡単に入手することができる。コロナ禍でほとんどの医学会がオンラインで開催され、単位もオンラインで取得できるようになった。今後、オンライン学会が増えていく」などがあるが、何よりも自分で時間をコントロールできることが大きいようだ。

 

〇労働時間をコントロールできる開業医と超時間勤務強いられる勤務医

 一般的なイメージでは、白衣を着て椅子に座り、「今日はどうしましたか」と話しているのが医師だろう。しかし、それは開業医で、多くの医師は病院勤務医として働いている。開業医の場合、個人でやっていることが多いので労働時間はある程度コントロール可能だ。

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 勤務医開業医では、雇用される側と経営者側 と立場は異なるが利便性の進化については見解が一致している。リモート化、必ずしも対面を必要としない仕組み、それを実現するためのペーパーレス、ハンコレス、そして事務所レス(そのうち仕事レス、になってしまうかもしれないが:笑)、時代は、もはや勤務地が街中であることが有利という考え方すら必要としていないのということなのかもしれない。価値観のパラダイムは確実に変化している

 

 看護師からはこんなコメントをいただいた。

 

〇医師からのタスクシフティング推進には、ナースプラクティショナー制度を創設

 医師の労働時間の短縮を進めるためには、「医師から他職種へのタスクシフティング」が重要となる。大学病院の看護部長は、「タスクシフティングを進めるためには、ナースプラクティショナー制度を創設すべきである。特定行為研修を修了した看護師と異なり、医師等の包括的指示を受けずに、自身の判断で一定の医行為を実施できる看護師を育成すべきだ」と主張している。

 

〇病棟で医師がチームリーダーの役割を果たしていない事例をみかける

 病院は医師がチームリーダーになることが多いが、彼らのやる気・視野・バランスですべてが変わる。実際は病棟でチームリーダーとしての役割を果たしていない事例をみかける。結果が悪いと実働部隊のコメディカルのせいにされ、患者さんとトラブルが起き、トラブル処理のため残業することがある。

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 勤務医の時間外労働規制について、タスクシフティングの対象となる看護師からのコメントは、厳しく聞こえるかもしれないが、これは医師に対するエールなのだと考えたい。医師にも、協力はするけれど、是非ともこれは歩み寄っていただきたい、という願いなのだろう。

 

 タスクシフティングといえば、看護補助者もタスクシフティングで業務が下りてくるはずだ。コメントをいただいた。

 

〇30点アップ「急性期看護補助体制加算」が看護職の待遇改善に回るか疑問

 ナースステーションに置いてあった看護師向けの月間誌「2020年度診療報酬改定では、看護師の業務負担を軽減するため、看護補助者(看護助手)を多く配置する病院には「急性期看護補助体制加算」が30点アップされた。300床・病床稼働率80%の急性期病院で試算すると、年間約2600万円の増収となる」との記事があった。この増収が我々看護補助者の待遇改善に回してもらえるか疑問。看護職員ではなく、まず医師の待遇改善に回されるのではないか。

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 確かに病院も増収とはなるのだろう。仰ることもごもっともなので、エビデンスをもって、しっかり医師・看護師等の資格者を交えて病院経営陣と対話していただきたい。一方、病院経営においても、ただ収入が増えるばかりというわけでもないだろう。被用者側は病院の経営状態を知り経営陣は幅広い職種の意見を知る。このようにお互いの理解が深まることこそが、まずは一番ではないだろうか。

 

 まずは働き方改革の方が先にあるのだが、コロナ禍が背中を押す形で、3密回避も含めて、一般企業においてはIT系の投資が加速度的に進んでいる。先端を走る医療機関のコメントを紹介したい

 

〇「3密検知システム」を導入した石川記念会HITO病院

 医療現場でのICT活用で全国的に有名な愛媛県四国中央市の石川記念会HITO病院は、3密を回避する施策のためにIoTによる「3密検知システム」を導入した。HITO病院が導入したIoTシステムはシンプルな仕組みだ。呼気によって上昇する二酸化炭素(CO2)の濃度をセンサーで計測し、混雑を検知したらLEDライトを点灯するなどして通知する。椅子の配置などを見直し、外来の患者に混雑緩和を促し、換気するタイミングの目安に使っている。同院では外来患者の対応に無線の呼び出しアラームを使っていて、外来患者は受診や会計を待合いスペースで待つ必要がなく、待合室での3密を回避できる。この呼び出しアラームと3密検知システムを合わせて使えば、例えばCO2濃度が高くなりつつあれば、アラームを手渡す時に人の少ない場所で待つよう案内するといった対応ができる。看護師が集まる場所などにも設置し、混雑を避けながら働きやすい環境づくりに取り組んでいる。

 

〇感染防止のためICT活用した診療予約システムを導入した診療所

 冬にかけて新型コロナウイルス感染症とインフルエンザが重なり、院内の感染防止対策が大きな課題となる。院内にスペースがあり、ゾーニングが可能な病院に比べ、診療所の感染防止対策は課題が多い。3密(密集・密閉・密接)を防ぐために、①待合室での混雑緩和、②患者同士、患者とスタッフの接触減少、③定期的な待合室の換気徹底-が基本となる。ICTを活用した患者の来院をコントロールできる「予約システム」導入が効果的であると、医師会の仲間から聞かされ、医療機関向けのICTコンサルタント会社の「予約システム」を導入した。患者は自宅にいながらオンラインで「来院状況(混雑状況)」が確認でき、オンラインでホームページやスマホから自宅から予約が可能となり、診療時間が近づいたら来院をメール等で告知するシステムである。この「予約システム」を導入した結果、コロナ禍で安心して受診できるクリニックとしてイメージアップにもつながった。

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 診察の待ち時間には泣かされる患者も多いことだろう。加えてコロナ禍である。少しでも密の回避を心掛けたいのは人情だ。

 先日、病院で外来レストラン事業を行っている企業の営業担当者と話をしたが、外来レストラン事業は、ただでさえ収益が思わしくないところ、予約診療やコロナ禍の密回避、つまり先述のような取り組みにより、病院外来はもはや患者を含めて多くの人が集まる場所ですらなくなりつつあり、外来レストラン事業には難題山積なのだそうだ。

 長い待ち時間は、外来レストラン事業者にとってはビジネスチャンスだったのだ。

 これまでの常識が通用しないのがこれからのIoTの時代であり、コロナ禍後の時代であり、新常態の時代である。新時代への希望もさることながら、一抹の寂しさも覚えてしまう。

 

 最後に、コロナ禍でも上昇株のIT企業からのコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇働き方改革にICTを活用するには、まずはITリテラシー向上。それも経営幹部のリテラシー向上を

 病院における効率的な労務管理の活用など、働き方改革にどうITを活用していくか。ITツールの活用に当たっては、ITリテラシーの問題も考慮しなくてはならない。ITリテラシーが高い業界の一つが金融業界で、ITへの投資が競争力を左右している。こうした業界と比べ、医療界のITリテラシーは、臨床のIT活用を除き低いように思う。今の10~30代は、若いうちからITツールに親しみ、若手医師は学会発表などITを駆使している。一方で、40代後半から50代以上の病院の経営幹部のITリテラシー向上が課題である。病院幹部がITリテラシーを高め、病院経営にとってITが重要な投資と認識し、院内のどの部門に重点的に投資するか判断する能力が求められる。

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「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できるものである。」

 チャールズ・ダーウィンが遺したとされる名言は、果たしてこれからの医療業界にも名言として通用するのだろうか。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)…今話題の俳優陣が目白押しだった。特に筆者の印象に残ったのは、現在TBS系ドラマで、銀行マンを主人公とした勧善懲悪熱血ドラマに、白いスーツを颯爽と着込んだ、元ニュースキャスターの国土交通省大臣役を演じた、江口のり子だ。最もユーモラスであり、なおかつ最も戦慄したのが彼女の演技であった。