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No.688 新型コロナ後の医療計画、地域医療構想巡り医療計画見直し検討会が議論スタート

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■新型コロナの医療計画、地域医療構想に与える影響を厚労省の審議会、検討会で議論

 厚生労働省は10月1日、約半年ぶりに「医療計画の見直し等に関する検討会」を開催し、新興・再興感染症と医療計画、地域医療構想の関係について論点(図3 新型コロナウイルス感染症を踏まえた医療提供体制構築に関する論点)を提示し、議論を開始した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生により医療計画、地域医療構想であまり想定されていなかった状況となっており、今後関係する審議会、検討会も含めて検討を進めることになった。

 

 さらに、医療計画見直し検討会の下部組織「地域医療構想ワーキンググループ」の会合が10月21日に開かれ、新型コロナウイルス感染症を踏まえた地域医療構想の考え方をテーマに、新型コロナウイルス感染症への対応」「より広い新興・再興感染症への対応」「少子高齢化を踏まえた効率的かつ効果的な医療提供を可能とする医療提供体制の再構築」について議論が行われた。議論の結果、(1)感染症対策の専門的議論を待って、医療計画・地域医療構想への反映を検討する、(2)病床規模が大きく人員配置が手厚い病院ほど新型コロナウイルス感染症の対応能力が高いことが明らかになった、(3)公立・公的病院の再編統合は期限を切って再検証を求めるべきか今後も議論を進める-ことになった。

 

 議論された新型コロナウイルス感染症を含めた新興・再興感染症への対応については、「どういった感染症(疾病の種類)を新興・感染症対策のターゲットに据え、医療計画や必要病床数にどう位置付けるか」などは、極めて難しく、専門的な検討が必要となることから、厚生科学審議会など別の審議会で専門的な知見に立って議論し、一定の結論を踏まえ医療提供体制のあり方を検討することにした。

 感染症法では、厚生労働大臣が感染症対策の「基本方針」を示し(感染症法第9条第1項)、各都道府県がこれを踏まえて「予防計画」(感染症指定医療機関の整備目標、一般医療機関における感染症患者に対する医療提供、国・自治体・医療機関の連携体制など)を作成する(法第10条第1項)(図4 感染症法に基づく予防計画について)。これらについて、厚生科学審議会等で「現在の内容で十分か」「改善すべき事項はないのか」「運用上の課題はどこにあったのかなどを検証していく必要がある。

 

病床規模が大きいほど、新型コロナ患者を受け入れる能力・実績が高いという資料

 10月21日の地域医療構想ワーキンググループの会合では、医療機関の新型コロナウイルス感染症への対応状況に関する資料が示され、①100床未満の小規模病院でも新型コロナウイルス感染症への対応を行っているが、病床規模が大きいほど、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる能力・実績が高い図5  病床規模別の新型コロナ患者受入可能医療機関及び受入実績の有無について)、②医師・看護師などの人員配置が手厚いほど、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる能力・実績が高い図6  100床あたり常勤換算医師数別の新型コロナ患者の受入可能医療機関及び受入実績の有無について)(図7  100床あたり常勤換算看護師等職員数別の新型コロナ患者受入可能医療機関及び受入実績の有無について)-ことが明らかになった。

 この資料を受けて、「地域での協議が前提となるが、医療機関の再編統合を通じて、各地域で拠点となる大規模な病院を整備することが新興・再興感染症対策にもつながる」と、感染症対策のためにも地域医療構想の実現を加速化させる必要性を指摘する意見が出された。

 

 

 

 その一方で、人口規模の小さな地域では「公立病院・公的病院による新型コロナウイルス感染症対応」が多くなり(人口10万人未満の地域医療構想区域(おもに2次医療圏)では82%が公立・公的)、人口規模が大きくなるにつれ「民間病院での対応」が多くなってくる(人口100万人以上の地域では48%が民間)資料も出され(図8  構想区域の人口規模別、公立・公的等・民間別の新型コロナ患者受入可能医療機関について)、公立病院・公的病院・民間病院の役割を一義的に決めることが難しいことも明らかになっている。このため、地域医療構想調整会議での丁寧な議論が必要となる。

 

 こうした資料を受け、①「公立病院・公的病院等の機能に関する再検証」について、改めて期限を切るべき意見、②新型コロナウイルス感染症が収束を見ない中で「期限を切って再検証論議を求める」ことに難色を示す意見、③再検証を求めればダウンサイジングが進まず将来的に病院経営が厳しくなるとの意見-などが出された。

【事務局のひとりごと】

 

 病院の経営を研究するという会は結構存在している。非常に興味深いテーマを取り上げている研究会もある。

 ある研究会は、医療機関がDPC/PDPS(当時はDPCとだけ言われていた)を戦略的に導入することを検討するためには、医業経営においてアドミニストレータともいうべき存在が不可欠であり、それに資するための研究をしよう、という勉強会であった。医療機関(院長、事務長)、医師薬剤師看護師大学教授大学院生一般企業などが集い、毎月一つのテーマで報告、議論が行われる(現在は不定期開催)。

 その中で議論されていたテーマを思い出した。

 

 「病名(病気)とそれに対する治療は、ある一定のところまでは正規分布しているので医療の標準化を図ることが可能だと考えるのだが、どうしても最後の1~2は「べき分布」となってしまい、一向に収束しない。これ、何とかならんのだろうか。」

 ある数学系大学教授の質問だ。

 

 「なんのこっちゃ」

 「意味不明」

 といわれるかもしれないので、別の表現で説明する。

 

 十数年前、筆者はある医療機関で時間外診療受付窓口業務に就いたことがある。診療時間外とは、17:00~翌8:30迄である。当然のことながら、外来患者は8:30~お昼過ぎくらいまでが最も集中するので、時間外窓口に来る患者数はそう多くない。とはいえ、平日の夜は1日20件くらいの受付数はあるので、それと土日祝(土日祝は多い:この医療機関には当時小児科があったので)の昼夜を勘案し、数字を均して試算し、配置人員を検討した。

 人員体制は以下の方法を採った。

 <平日>

 17:00~22:00 2名

 22:00~翌8:30 上記2名のうち1名が残る

 <土日祝>

 8:30~17:00 3名

 17:00~22:00 2名

 22:00~翌8:30 上記2名のうち1名が残る

 年末年始、連休は別途調整だが基本的にはこの繰り返しである。

 

 いくら平均して一時間当たり患者数が何人、などと見積もっても、必ず患者が集中してしまう時間帯はある。通常時間帯(平日8:30~17:00)に人員体制が整っていたとしても、従事しておられる受付スタッフはてんてこ舞いだ。

 ましてや土日昼間の小児科患者殺到時などいわんやをや。ピーク時は悲鳴すら上がりそうなくらいの局地戦状態となる。

 ピーク時とそうでない時の落差が激しいのが時間外窓口業務である。阪神戦のナイター中継が終わった頃からおじいちゃんおばあちゃんからの電話が鳴り響く。時間にして21:30を回った頃だ(関西圏では阪神戦が終了までTV中継されるチャンネルがある)。もうすぐ2人体制のうち1人が返ってしまう頃、一人、二人、リピーター患者の高齢者がゆうゆうと救急車に乗ってやってくる、などという光景も冗談ではないほど経験した。

 

 伝わったかどうか分からないし、例えが悪かったかもしれないが、

 

 「10人患者がいたとして、そのうち9人は診療報酬点数を下回る費用で標準的な治療を施すことで治癒できたとしても、残る一人が全く標準的な治療が当てはまらない症例で、どれだけ輸血しても間に合わず、費用を度外視した医療を施さないといけない場合だってある。医者はその患者に対して、今できる最善を尽くす。」

 

 ようするに

 

 少数を少数として扱えない何でもかんでも効率化できるなどということが出来ないそれが医療なのだ

 

 というのが べき分布、収束しない、を説明した、勉強会に参加していた医師の回答だ

 

 これまで5疾病5事業という考え方に基づいて医療計画が立案されてきたが(少し前までは4疾病5事業)、ここへ来て感染症に関する視点も必要ではないか、という意見が今コロナ禍で急浮上し、医療計画に関する議論が見直されることとなったわけだ(※3)。

 

 コメントを紹介したい。

 

〇地域医療計画課長:感染症によって病床をどう確保するのかは今後の論点

 10月21日の地域医療構想ワーキンググループの会合で感染症病床確保の考え方について問われた、鈴木健彦医政局地域医療課長の説明。もともと医療法の中で基準病床という制度があり、地域医療構想で議論されているのは一般病床・療養病床であるが、感染症病床は、一般病床・療養病床とは別で整理されているというのが現状。感染症病床については、それぞれ特定感染症指定医療機関は全国に数カ所、第一種感染症指定医療機関は都道府県に1カ所程度整備されている。あと、第二種感染症指定医療機関は、2次医療圏に各1カ所整備されてきた。ただ、今回の新型コロナウイルス感染症は第二種感染症指定医療機関に入るが、そことの対応が若干異なっていることもあり、また、当初は病原性が分からなかったということもあり、病床確保計画は都道府県単位で行っていただきたいとしている。感染症によって、どういうところでどの範囲を考えながら病床を確保していくのかについては、今後の検討の論点ではあると思う。

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 感染症の専門的議論の審議会メンバーからもコメントをいただいた。

〇一般病床を感染症病床に転換するだけなく、重症者をどのように管理するかも重要な視点

 10月28日開かれた厚生科学審議会感染症部会で地域での新型コロナウイルス感染者管理について、脇田隆宇部会長(国立感染症研究所所長)は、「一般病棟を感染症病棟に転換するだけでなく、その際に重症者をどのように管理するかも重要な視点である」、また、東北医科薬科大医学部の賀来満夫特任教授は「地域での人材育成や、拠点とネットワークづくりも重要。ブロックごとに状況を把握する機関が必要だ」などと指摘した。

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 自治体の首長からもコメントをいただいた。

 

〇鳥取県知事:医療提供体制の再構築の再検討が必要>

 10月29日に開催された地方3団体(全国知事会、全国市長会、全国町村会)と国との間による「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」で、全国知事会・社会保障常任委員会の平井伸治委員長(鳥取県知事)は、「医療の在りようが変わっている点を踏まえ、地域医療構想・医師偏在対策・医師働き方改革といった『医療提供体制の再構築』そのものを再検討していく必要があるのではないか」との考えを示した。

 

〇凍結も含めて、現実的かつ弾力的な検討を行うべき

 県内に多数の統合再編の424病院リストを抱える県知事。現場はとてもではないが、期限を決めた再検証を行える状況ではない。今は新型コロナウイルス感染症対策に注力すべきである。また、新型コロナウイルス感染症対策の中で公立病院・公的病院が重要な役割をはたしていることがクローズアップされた。凍結も含めて、現実的かつ弾力的な検討を行うべきである

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 いわゆる「424リスト」にリストアップされた医療機関からもコメントをいただいた。

 

〇長崎原爆病院:被爆者医療という病院の役割を理解してほしい

 昨年9月に厚労省が再編・統合の議論が特に必要として公表した全国424病院リストにあげられた長崎原爆病院の事務部長は、「被爆者医療という病院の役割を理解していただくしかない」とコメント。同病院について、厚労省が「手術数や実績が少ない」とした中には周産期医療、小児医療なども含まれるが、事務部長は「そうした役割を持たないので、がん治療など取り組んでいるものをしっかりと説明していくだけ」と話す(毎日新聞地方版)。被爆者医療という特殊性で、実績以上に優遇されている面はあると思うが、それでも被爆者がいる限りは必要ではないかと思う。

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 一時の保健所のひっ迫した状況や、コロナ患者受け入れ病院の状況を思うと、議論の方向性についてはうなずけなくもない。これまでの医療計画もエビデンスに基づいて議論がなされてきたはずだが、未知の感染症の登場で、議論はこれからで、まだ収束しそうにない

 

 現在、気温の低下による影響が大きいと思われるが、北海道では新型コロナウイルスの新規感染者数が連日100人を超え、200人も超えたという報道もあり、すでに第2波(第3波?)が来ているという見解があるかもしれない。12月には現在の北海道並みの気温になるであろう本州においても、要警戒だ。「GO TO 〇〇」キャンペーンはどうなるのだろうか。

 

 今度は新型コロナウイルス感染症に関係した医療機関からのコメントを紹介したい。

 

 【新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた病院】

〇一般病床から感染症病床に迅速に転換できる柔軟な医療体制構築を望む

 民間病院長。平時から感染症を担う病床を確保するには、経営上の問題もさることながら、医師や看護師の配置転換など効率的にも難しい部分が出てくることが、今回の新型コロナウイルス感染症患者を受け入れて感じた。一般病床から感染症病床に迅速に転換できるような柔軟な医療体制が可能な政策を望みたい。

 

 【受入れを行わないという判断をした病院】

〇オペ室の隣にICUがあり、コロナ疑いの患者手術の院内感染を考え受け入れなかった

 新型コロナウイルス感染症患者受け入れをしなかった地方の基幹病院。敷地が狭く、オペ室の隣にICUがあり、医療の質が高くても、コロナ疑いの患者の手術を行った場合の院内感染を考え、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れが難しかった。新型コロナには病院設備の大幅な改修が必要とならざるを得ない。

 

〇医療と介護が必要となる高齢コロナ患者、中小病院では対応に限界

 地方の中小民間病院長。重症化リスクの高い高齢者が新型コロナウイルス感染症や疑い症例として入院した場合には、医療とともに介護が必要となるが、設備・人材が不足する中小病院では対応に限界がある。このために大病院への入院が多くなるが、それがために、大病院の医療体制がひっ迫してしまう。

 

〇新型コロナでは公的公立と民間病院の枠を超えた連携体制が必要

 公立病院長。今回の新型コロナウイルス感染症患者の受け入れで、人口100万人以上の都市で民間病院が多数のコロナ患者を受け入れたことに驚いている。今後は例えば、公立病院でコロナ患者を収容しているところに、同じ医療圏の民間病院から医療スタッフが応援に来て、その公立病院の医療スタッフをコロナ患者さん用に充てられるような連携も大事ではないか。コロナ患者を受け入れるために、入院している患者さんをよその病院にお願いしなければならないといった連携体制もきちんと考えていかなければいけないと思った。民間病院、公立病院の枠を超えた連携体制が必要ではないかと感じた。

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 官民連携のコメントが出てきたことは、コロナ禍が生んだ一つのエポックメイキングではないだろうか。

 

 仕組みとしての官民連携である地域医療連携推進法人からもコメントをいただいた。

 

〇新型コロナで病院経営悪化する時だからこそ、地域医療連携推進法人の検討を

 新型コロナウイルス感染症の影響で医療機関の経営に陰りがみられる。補助金・交付金・寄付などに頼ることができない民間の医療機関は「地域医療連携推進法人」を活用したらどうか。地域医療連携推進法人制度は、地域医療構想の実現に向けて、地域の医療機関の衰退や共倒れなどを防ぐために、競争ではなく協調を選ぶ対応策の一つで、参加法人が独立性を保ちながら、医薬品の共同購入や法人間の病床融通、人的交流、協働研修などが可能な仕組みになっている。新型コロナで病院経営が悪化する時だからこそ、積極的に検討しても良いのではないかと思う。

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 「競争ではなく協調を選ぶ」というフレーズが印象的である。果たして今後、地域医療連携推進法人の増加につながっていくのだろうか。

 

 地域医師会からはこんなコメントをいただいた。

 

〇徳島県:徳島県の医療体制はあらゆる意味で後進県。抜本的改革が必要

 医師会のある診療所会員。中途半端な病院が多いのは確かで、地域ごとに集約化していくのは仕方がないと思われる。病床が過剰とも言われる徳島県の医療体制はあらゆる意味で後進県。抜本的改革が必要。

 

〇鹿児島県:高度医療機関が鹿児島市に集中している傾向

 鹿児島は、高度医療機関が鹿児島市に集中している傾向があることは確かで、何らかの再編は必要と思う。鹿児島市に集中している点は減らしても良いと思うが、地方の病院はそれなりの役割を担っているので残してほしい。

 

〇大阪府:「なんちゃって二次救急病院」を減らして、急性期の病院を集約すべき

 医師会のある診療所会員。大阪市内に急性期病院が集中しており、泉南、北摂地域の救急応需体制が不十分であったりする。距離は近いので無理にこれらの地域の医療機関をスケールアップする必要はないが、大阪市内医療機関との連携を進める必要がある。「なんちゃって二次救急病院」を減らして、急性期の病院を集約すべきだ。

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 地域により若干異なるが、開業医におかれては病院の集約・再編に関しては、その必要性を感じておられるようだ

 

 話は変わるが、新型コロナウイルス患者への対応をしていただく看護師・スタッフについてコメントをいただいた。

 

〇新型コロナに当たるスタッフの短時間勤務可能とする医療体制の検討を>

 社会保障審議会医療部会の論議の中で、井伊久美子日本看護協会副会長は、「海外では、新型コロナウイルス感染症に対応する看護師は短時間勤務となっている」ことを紹介。わが国でも、看護師に限らず医療従事者全体について、新型コロナウイルス感染症治療に当たるストレス等軽減のためにも、短時間勤務などを検討していく必要があると指摘し、短時間勤務を可能とするためのスタッフ確保、医療体制構築の検討を求めた。

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 医療従事者への慰労金がまだお手元に届いておられない方々も多数おられることだろうが、まだまだスタッフが足らない、という点を我々は認識し、やはり日々の心掛けで、一人ひとりが感染防止に努めていく必要があるだろう。

 

 新型コロナ中等症に対応した専門病院もオープンしたが、患者にわんさか来て欲しいと考えてのことではないだろう。地域医療における機能分担を企図してのオープンであるに違いない。であればその機能維持のためには経営面においてはどうか。医業系コンサルタントからコメントをいただいた。

 

〇民間病院が独自の判断で新型コロナ中等症患者に対応した専門病院を経営することは難しい

 仮にコロナ患者を「一括して診る」病院が開設されれば、軽症になった方をホテル等の療養室に移す等の機能分化と連携が図り易くなる。また、地域の一般病院が余力を持って、コロナ以外の患者に対応できるし、患者も感染を気にせず病院へ通院できるので、受診抑制も解消される。感染疑いの濃厚な患者が救急搬送された場合は、当該専門病院に送れば良いため、地域で救急車が搬送先を見つけられない事態も改善される。加え、保健所や帰国者・接触者相談センターの業務負担も解消され、地域医療的には良いことづくめに見える。

 しかし、民間が経営するのは難しい。そもそも現在の地域医療構想下においては、新規に病院を開設するのはほぼ不可能である。基本的に当該自治体が開設、あるいは経営の悪化した民間病院等を国や自治体が買収し、政策医療を担う公的病院として位置づけ、その法人が自治体から新型コロナ「重点医療機関」として運営・管理を受託するような形態でなければ、経営は成り立たないと思う。

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 必要な機能だが、経営として成立するにはなかなか厳しいという見解だ。

 

 ここまで、特に新型コロナウイルスへの対応を医療の面から見てきた。今度は陽性患者を受け入れてくれた宿泊施設のコメントを紹介したい。

 

〇ホテル経営者:風評被害、顧客離れのリスクなど簡単な道ではなかった

 大規模ホテル「アパホテル&リゾート」(横浜市)では、神奈川県の要請に協力。4月20日~8月31日までの一棟借り上げ方式で実施。1日最多で120人ほどが利用しているという。「政府関係の方から打診があり、世界的にも猛威をふるう新型コロナの恐怖は国難とも言える状況。医療崩壊を防ぐために側面からお力になりたい一念から受け入れを決めました。公表後、7日で多くのキャンセルが発生。近隣からの反対も多くいただきました。国や自治体も説明してくれ、私達も一生懸命ご説明し、最終的に承諾いただいた形です。決して簡単な道ではありませんでした。過去にもオイルショック、バブル崩壊、リーマンショックと大変でしたが、今回は想定以上の打撃で驚いています。事態の早期終息を願いつつ、ピンチをチャンスに変えていけるよう頑張っているところです。」

(ORICON NEWS)

 

〇医療現場の負担軽減に少しでも寄与したいと考えたホテル

 「ワシントンホテル」(横浜市)も神奈川モデルの新型コロナ感染対策に協力して、9月14日から感染状況に応じて受け入れを開始した。同ホテルは、公式webサイトで「神奈川県からの要請を受けて、新型コロナ感染症の無症状者及び、軽症者を受け入れ、医療現場の負担軽減に少しでも寄与したいと考えた」としている。

(ヨコハマ経済新聞)

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 今コロナ禍では医療機関も大打撃であったが、ホテルはもっと大打撃だった。そんな中での患者受け入れへの手挙げ、頭の下がる思いである。

 

 最後に、宿泊施設を利用した患者のコメントを紹介して締め括りとしたい。読むと、やはり

 

 感染しないにしくはなし

 

 と感じる読者も多いことだろうと考える。

 

 コロナ軽症者向けの宿泊施設では、感染者間に不満やいさかいもあったようだ。

【例】

◆ケース1:無症状で入った2人の20代男性、退屈で言い合いになったり、「時々、宿泊施設から抜け出し、トイレでたばこを吸ってた。」「退屈だと酒が飲みたくなる」と話す。

◆ケース2:室内の清掃用具が共用。症状は違うのに、同じものを使用するのには抵抗があった。

◆ケース3:タオルなど用意した生活必需品がなくなり、薬を含めて取り寄せしてもらえなかった。

◆ケース4:医療態勢には限界があるのか、PCR検査など早く受けやすくしてほしいと思った。

◆ケース5:検査で陽性が分かったが、体調は全く変わらず。ビジネスホテルに2週間といわれた。部屋から出られるのはお弁当を取りにロビーに行く時だけ。窓は開かず、1日中閉じこもる羽目に。本当にきつかった。筋トレなどで何とか気を紛らわしたが、夜中に脱走者が出たとかで、ざわついたりすることが何度かあった。

◆ケース6:様々な職業、年代、収入の人が社会にいる中で、感染者と一括りにして同じホテルで療養することの怖さを知ることができたと思う。

◆ケース7:無症状あるいは軽症の人でも肺に陰があったということだよ。

◆ケース8:日本にはシステム構築できる政治家がいない。官僚もいない。穴だらけ。本当にコロナ終息を目指しているのか?コロナは潜伏症状でも感染させることはわかっているのに。

◆ケース9:宿泊者が看護師と口論になったり、怒鳴り声が聞こえてくるのはしょっちゅうだった。看護師も2人ぐらいで何十人もの管理をしなくてはならないらしく、かなり疲弊していた。宿泊期間が長引けばみんないらいらしはじめて・・。コロナ云々ではなく人間の嫌な部分ばかりが目につく。刑務所で生活しているような日々。逃げ出したくなる気持ちは本当によくわかる。

◆ケース10:すでに「第2波の真っただ中」とも指摘されている、わが国の新型コロナウイルス感染状況。無症状の感染者が今後さらに増えたとき、現状のような「閉じ込め」や「隔離」だけではさらに大きなトラブルを呼び込むことになりかねない。誰も好き好んで感染したがる人がいない以上、感染者は「被害者」と同様に扱われるべきではないか。そうすることで感染者への風評被害も軽減するのではないか。そうした議論がなされるべきフェイズなのだと思うが。

(yahoo ニュース ほか)

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 最近はあまり報道されることはないが、国民の多くが抗体を持つようになる必要もあるが、現時点では、陽性になることで抗体を獲得する、というのは避けた方が無難だろう。日々の感染対策を行いつつそれでも経済を回していく。ロックダウンが起こらぬよう、慎重にそして大胆にこの両立をはかっていく必要を誰もが感じているに違いない

 

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 

 (※1)…5疾病 がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患(4→5時追加)

 5事業 救急医療、災害医療、へき地医療の支援、周産期医療、小児医療