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No.722 どうなる?2022年度診療報酬改定で大幅な見直し行われた地域包括ケア病棟

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◇「どうなる?2022年度診療報酬改定で大幅な見直し行われた地域包括ケア病棟」から読みとれるもの

・地域包括ケア病棟の3つの役割を一層求める改定に

・救急告示病院などが要件に加わり、救急医療の重要性を強く打ち出す

・随所に「減算」ルールが導入

 

■地域包括ケア病棟の3つの役割意識した診療報酬改定

 

 2022年度診療報酬改定では、入院料について急性期、地域包括ケア、回復期リハビリのいずれも大幅な見直しが行われた。特に、地域包括ケア病棟入院料は、施設基準が厳格化。一般病床で地域包括ケア病棟入院料を算定する場合、救急告示病院であることなどが要件に加わり、救急医療の重要性が強く打ち出された。地域包括ケア病棟に対し「急性期後の患者の受け入れ」「在宅患者の入院の受け入れ」「在宅復帰支援」という3つの役割が一層求められる改定となった(図3 地域包括ケア病棟入院料の施設基準(イメージ))。

 

 

 今回の改定では、(1)急性期後患者の受け入れ機能への偏りを是正(2)在宅患者受け入れ機能の推進(3)在宅復帰機能の推進―の3つの柱が立てられた。地域包括ケア病棟等に求められる3機能(「急性期後の患者の受け入れ」「在宅患者の入院の受け入れ」「在宅復帰支援」)をバランスよく果たすことを求めるもので、とりわけ「自宅等で急性増悪した在宅患者の入院受け入れ」機能の強化を目指している点が注目される。

 

■随所に「減算」ルール導入した改定

 

 改定の3つ柱のうち、(1)急性期後患者の受け入れ機能への偏りを是正では、地域包括ケア病棟入院料2・4における「自院の一般病棟から転棟した患者割合」が高い場合の減算について、対象病棟の拡大(許可病床200床以上病院の地域保活ケア2・4を対象にする)、クリアできない場合の減算幅「マイナス10%」を「マイナス15%」に厳格化した。

 

 (2)在宅患者受け入れ機能の推進では、地域包括ケア病棟入院料1・3、同管理料1・3における自宅等から入院した患者割合の要件について、1割5分以上から2割以上に変更するとともに、自宅等からの緊急の入院患者の3カ月の受け入れ人数を6人以上から9人以上に変更するなど厳格化。地域包括ケア病棟入院料2・4でも要件基準(自宅等から入棟した患者割合:20%以上/自宅等からの緊急患者の受入れ:3カ月で9人以上/在宅医療等の実績:1つ以上)を設け、クリアできない場合は入院料を10%減算する。さらに、一般病床の地域包括ケア病棟等について「2次救急医療機関」「救急告示病院」のいずれかであること、また一定規模未満の場合には「救急外来の保有」「24時間救急医療提供」のいずれかを要件化する(図4  地域包括ケア病棟入院料に係る施設基準)。

 

 

 (3)在宅復帰機能の推進では、地域包括ケア病棟入院料1・2、同管理料1・2における在宅復帰率の要件について、7割以上から7割2分5厘以上に変更。地域包括ケア病棟入院料3・4、同管理料3・4について、7割以上であることを要件に追加クリアできない場合は入院料を10%減算。入退院支援加算1取得を100床以上病院の地域包括ケア1・2において義務化し、クリアできない場合には入院料を10%減算することにした。

 

 救急医療の指定を取らないと、療養病床であるだけで5%減算となる。入退院支援加算1の届出がないとか、在宅復帰率が7割以上できなければ10%減算、自院の一般病棟から転棟した患者割合6割未満でないと15%減算となるなど、随所に「減算」ルールが導入された(図5 2022年診療報酬改定地域包括ケア病棟 減算割合・減算要件)。

 

 

【事務局のひとりごと】

 

 WMN 2018年(平成30年)11月号の事務局のひとりごとを振り返ってみた。

 

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 地域包括ケア病棟について振り返ってみる。

 今を遡ること3年前、2015年6月10日、厚生労働省が中医協総会に報告したデータによれば、当時4月時点の届け出施設数が約1170施設、届け出病床数は3万1700床に達したという。2014年10月時点の約920施設・2万4600床に対し、施設数は約250施設増、初めて1000施設を突破した。特に、7対1・10対1一般病棟入院基本料と亜急性期入院医療管理料からの転換が9割以上を占めていた。届け出を行った医療機関の病床規模については、100~200床の医療機関が過半数を占める一方、200床以上の医療機関も一定程度存在していた(※7)。

 本文によれば、2018年9月20日時点で地域包括ケア病棟算定病院は2262病院・7万4600床に達したという。

 つまり、比であらわすとこうなるだろうか。

2014年:2015年:2018年

920施設:1,170施設:2,262施設

24,600床:31,700床:74,600床

 

4年間施設数は2.4病床数は300%増となったわけである(※1)。

 

コメントを紹介したい。

 

○医業コンサルタント:「急性期病院からの紹介に頼らない地域包括ケア病棟の運営を」

 200床未満の病院の地域包括ケア病棟を優遇した2018年度診療報酬改定は、地域の1つか2つの中学校区で200床未満の地域多機能型病院を中心に在宅ケアを実施し、在宅療養患者の急変時対応もして欲しいというメッセージと言える。今後は、急性期病院からの紹介だけに頼ることなく、地域で軽・中等症の急性期患者を受け入れる努力をしなければいけないと思う。

 

○厚労省医療課長:「地域包括ケア病棟は、面倒見の良い病院というのが本来の姿」

 今年7月に開催された地域包括ケア病棟研究大会のシンポジウムで、厚労省の迫井正深医療課長(現在、大臣官房審議官)は、「地域包括ケア病棟は面倒見の良い病院というのが本来の姿。地域での生活を支える診療機能が前提の入院医療施設で、急性期と長期療養の中間に位置づけられ、2018年度改定では在宅復帰、リハビリなどの体制を評価した」などと述べている。

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 地域包括ケア病棟は最大60日間、患者を入院させることが可能だ。であるので、大病院(7:1若しくは10:1算定病院)が、1~2病棟を地域包括ケア病棟に転換すると、DPCの入院期間Ⅱが終わった段階でまだ入院を必要とするような患者は、この病棟に転棟してもらった方が、経営的にも非常に良いだろう。この、自院からの転棟に対し、問題意識を持っている、ということだろう。あくまで「地域」がキーワードになっているのをあらためて認識できる。

 

 医療機関からはこんなコメントをいただいた。

 

○民間中小病院長:「地域包括ケア病棟は、競争の時代に入った」

 地域包括ケア病棟を有する日本海側の200床未満の民間病院長。地域包括ケア病棟算定病院は2262病院、7万4600床と2015年の倍以上となり、日本の病院の中で大きなポジションを占めるようになった。私の地元の済生会病院も地域包括ケア病棟を設置するなど、高度急性期病院も地域包括ケア病棟を設置する動きが活発化している。既に、地域包括ケア病棟は「競争の時代」に入り、いかに地域に密着した特色ある地域包括ケア病棟を運営するか岐路に立っている。

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 高額医療機器のテーマでも触れた「激戦」が、地域包括ケア病棟でも起こっていることを物語るコメントだ。

 

○地域包括ケア病棟勤務の看護師:「退院後の生活を想定し、患者の生活リズムに合わせた看護が必要」

 以前は急性期病棟に勤めていたが、同院で初めての地域包括ケア病棟の担当に替わった。それまで急性期病棟で患者さんの急変に対応しながら忙しく立ち働いていたが、真逆の環境となり、最初は戸惑った。以前は、絶えず時間に追われていたが、今思えば、医療側の都合だったと反省している。地域包括ケア病棟では、退院後の生活を想定し、患者さんの生活リズムに合わせて食事やトイレの介助をしていく看護が求められる。

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 日本に押し寄せている少子高齢化の波は、病院に入院している患者像にも変化を及ぼしている。食事・トイレの介助は、ある意味「生活」でもあり、もちろん医療現場でも必要であることは間違いないが、一昔前は、医療よりもむしろ「介護」の現場で必要とされる行為であったはずだ。「医療」でも「介護」でもない、シームレス(段差がない)な連携、厚労省が求めているケアの姿は、名称だけでなく患者の実像を捉えて欲しい、というメッセージなのだろう。

 

 地域包括ケア病棟と連携している医療機関からもコメントをいただいた。

 

○「在宅医療の後方病床としての地域包括ケア病棟の役割」

 家庭医として無床診療所で外来・訪問診療に従事してきたが、近年の病棟再編の動きの中で、在宅医療における後方病床として、また緊急時の入院に対応した地域包括ケア病棟の役割の重要性を感じている。今後も、積極的に地域包括ケア病棟を有する病院に患者さんを紹介し、連携を深めたい。

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 こういう考え方が医療現場に浸透していけば、高額医療機器のテーマでも挙げたが、ある意味、地域包括ケア病棟とは、「地域」がこの病床を共同利用している姿でもあるのだろうし、本来は大病院が一部の病棟を転換することを企図してはいなかったのではないだろうか、とも考えられる。もちろん、大病院においてさまざまな病床機能を有し、一つの病院で医療を完結させようとする動きがあることも理解できるところだが。

 

 最後に、最も重要な視点である、地域包括ケア病棟に入院した患者からのコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

○「安心して療養・リハビリに専念できるようになった」

 これまで入院していた急性期病院と比べれば、骨折の手術後に、リハビリの時間もないまま自宅に帰されることなく、安心して療養・リハビリに専念できるようになった。また、家族からも、自宅で療養できない病気やケガが起きた際に、緊急入院させて一時的に患者を預けることができると、地域包括ケア病棟に移って安心したと言っている。

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 皆が使い勝手が良い、とされる存在であれば、この先も際限なく、とはいわないが地域包括ケア病棟は増えていくことだろう。高額医療機器のテーマの「激戦区」という言葉がちらつくが、地域の中で患者を、利用者を獲得するための施策は、国が介入しない限り果てしなく繰り広げられ、その先にはやはり「淘汰」が待っているのかもしれない…

 

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 今月号は振り返りばかりで大変申し訳ないが、いよいよ、その「淘汰」に向けた動きが見え始めてきた。

 

 コメントを紹介したい。

 

〇医療課長:医療機関の連携・機能分化推進する取組を評価した改定

 2022年度診療報酬改定の概要に関する説明で井内努医療課長。入院から在宅まで切れ目ない医療を提供する観点から、感染対策向上加算1・2・3、外来感染対策向上加算において求めている医療機関間連携や回復期リハビリテーション病棟の対象病態の拡大、外来在宅共同指導料新設、機能強化型在支病の施設基準への地域包括ケア病棟組込みなどの新たな連携強化の取組も活用し、医療機関の連携・機能分化を更に推進する取組の評価を実施した、などと解説した。

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 続いて中医協委員からのコメントを。

 

〇健保連理事:院内転棟が多い場合に相応の評価とすることは必要

 松本真人健康保険組合連合会理事。地域包括ケア病棟の機能強化の観点から施設基準の要件を厳格化するとともに、院内転棟が多い場合に相応の評価とすることは必要だ。

 

〇日医常任理事:施設基準の見直しなどハードルを引き上げると急性期受け皿が阻害

 城守国斗日医常任理事。地ケア病棟はそもそも急性期病床削減の受け皿、連携先として設置された経緯がある。施設基準の見直しなどハードルを引き上げると連携が阻害される危険がある。

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 城守氏の仰るとおり、地域包括ケア病棟には、そもそも急性期病床削減の受け皿の要素があったはずだ。DPC期間Ⅱが終わるのと同時に地域包括ケア病棟への転棟を考えてしまうような点数設定がなされていたはずであり、そういう意味では厚労省の一般病床(急性期病床)を削減するための転換政策としての地域包括ケア病棟は、ある意味的を得ていたのだろう。

 しかし、である。

 

 地域医療構想会議のメンバーからはこんなコメントだ。

 

〇政策誘導型の色合い濃い厳しい改定に

 地域包括ケア病棟について厳しい改定、政策誘導型の色合いが濃い診療報酬改定となった。地域全体で病院単位によって機能分化を進めてもらいたいというのが、厚労省の考えであると思う。

 

〇救急医療提供を行う地方の慢性期病院に、自治体は積極的に救急指定等を行うべき

 地域包括ケア病棟の施設基準に救急医療提供の強化が明確になった改定となったが、自治体サイドは、救急医療提供を行う地方の慢性期病院に対して積極的に救急指定等を行うべきである。

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 続いては病院経営者から。

 

〇「7対1」の基準を満たすために、一部を地域包括ケア病棟に転換した病院には厳しい改定

 地域包括ケア病棟を有する300床の急性期主体の民間病院。地域包括ケア病棟は自院の一般病棟から転棟した患者割合や在宅復帰率のほか、200床以上の病院が持つ場合の基準が厳しくなった。この辺りは、次の改定でもっと基準が厳しくなると見ている。特に「7対1」の基準を満たすために、一部を地域包括ケア病棟に転換した病院にとっては厳しい改定。

 

〇「減算を受けずに地域包括ケア病棟を運営できるかどうか」が勝負のポイント

 療養病床を持つ慢性期多機能病院では「減算を受けずに地域包括ケア病棟を運営できるかどうか」が勝負のポイントになる。療養病床の地域包括ケア病棟では、救急医療提供などの要件をクリアしなければ減算が行われるため、療養病床を持つ病院も積極的に救急医療提供を行い「手術等を要しない誤嚥性肺炎や尿路感染症などの軽度救急患者」受け入れをしなければならない。

 

〇求められる機能・役割を果たせない場合、退場してもらうという厳しいメッセージ

 地域包括ケア病棟には数多くの減算規定が盛り込まれた。「求められる機能・役割を果たせない場合には、当該入院基本料・特定入院料から退場してもらう」という厳しいメッセージが込められ厳しい改定となった。

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 地域包括ケア病棟を持つ病院経営者からは、軒並み「厳しい」改定であるという感想の色合いが強い。

 

 開業医からはこんなコメントをいただいた。

 

〇ACPを施設要件とする地域包括ケア病棟との連携

 地域包括ケア病棟の役割に看取りへの対応がある。2022年度診療報酬改定では、在宅医療支援診療所・在宅医療支援病院の施設基準の見直しとして、適切な意思決定支援の推進として、全ての在支診・在支病について、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえた適切な意思決定支援に係る指針(ACP)を作成していることを要件とした(※2)。在宅医療支援病院の地域包括ケア病棟と診療所との連携が期待される。

 

〇新設の「在宅療養移行加算」の連携先、地域包括ケア病棟

 2022年度診療報酬改定では、在宅医療支援診療所以外からの在宅医療への参画をさらに推進する観点から、従来の継続診療加算に加えて、市町村や地域医師会との協力・連携により、往診が必要な患者に対し、当該医療機関又は連携する他の医療機関が往診を提供する体制を有している場合を評価した「在宅療養移行加算」(「継続診療加算」から名称変更)が新設された。この「在宅療養移行加算」は、協力・連携先として診療所から緊急時の受け皿となる24時間体制が可能な地域包括ケア病棟があげられるのではないか。

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 入院先としての連携先を希望される在宅医療からは、今改定でより必要としている機能との連携強化を図りたい、そう感じることのできるコメントだ。

 先の病院経営者側と在宅医療側の今改定に対する捉え方は非常に対照的である。

 

 最後に、医業経営コンサルタントからのコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇地ケア病棟3つの役割果たしていればプラス改定に

 今回の地域包括ケア病棟の厳しい改定は、地域包括ケア病棟の3つの役割を果たしていればプラス改定となるが、厳しい改定となる病院は自院の現状と問題点を把握しておくべきだ。

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 「厳しい」という言葉が随所に散りばめられた今回のテーマであった。

 病床再編は、急激ではなく、緩やかに、ではあるが確実に厚労省の思惑どおりに進んでいる…。

 

基本的な考え方は変わらない

 

というのが厚労省のスタンスだ。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)…2019年は2,532病院88,913床。(日本アルトマーク社 HPより)

 

(※2)…ACP(Advance Care Planning) アドバンストケアプランニング

今後の治療・療養について患者・家族と医療従. 事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス.をいう。よりなじみやすい表現として「人生会議」という呼称でも知られている。

 

<WMN事務局>