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短信:イヌ・ネコから感染「出血熱」ご注意 致死率2割超 昨年109人報告

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 ネコやイヌから、致死率が2割を超える「出血熱」の一種に感染する人が出始めた。もとはマダニが媒介していたが、発症した動物の体液に触れたり、かまれたりしてうつったとみられる。死亡者も出ている。専門家は飼い主、獣医師らに注意を呼びかけている。

 

 「もうろうとして家族のことすら考えられなかった。感染を防ぐ配慮が足りず反省しています」

 宮崎県西都市のやの動物病院に勤務する獣医師、奥山寛子さん(47)は2018年夏、治療したネコから重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に感染した。重い症状を引き起こし、ネコの致死率は6割超とされる。

 

 1歳の雄ネコは来院時点で嘔吐を繰り返し、止血の役割を担う血小板が少なくなっていた。奥山さんは治療中、ネコの体や床の拭き取りをした。かまれも、ひっかかれもしなかった。ネコは入院3日目に死んだ。

 

 全身に筋肉痛が出たのは1週間後だ。その2日後には39度近い熱が出て、感染が判明した。高熱にうなされて意識は混濁。10日間入院した。手袋はしていたがネコの身震いによる飛沫が、目などに入り感染した可能性があるという。

 SFTSウィルスがヒトに感染すると、嘔吐、下血や発熱が起きる。5人に1人以上が死ぬ。「ウィルス性出血熱」だ。正式な特効薬はまだない。

 日本では、13年にヒトへの感染が初めて確認され、21年には、過去最多の109人が報告された。日本医療研究開発機構の研究班によると、17年から今年3月までに西日本を中心にネコ449匹、イヌ24匹の感染も確認されている。主にはマダニかまれての感染で、シカやイノシシ、アライグマなどの野生動物の生息拡大や頭数増加に伴い、ヒトやペットへの感染が確認された地域も拡大していると考えられている。

 さらに発症したペットからヒトに感染したとみられる事例まで出てきた。国立感染症研究所によると、18~21年、奥山さん以外にもペットの診療時などに感染した獣医療従事者が、少なくとも7人にのぼる。

 

  「室内飼い 徹底を」

 

 感染を防ぐには何に気を付ければいいのか。

「飼い主はネコが屋外でマダニにかまれないよう室内飼いを徹底すべきです。」と宮崎大の岡林環樹教授(獣医感染症学)は話す。

 宮崎県内で感染が確認されたネコのほとんどが野良猫や、屋内外を行き来できる状態の飼い猫だったという。

 イヌの散歩の後には体にマダニが付いていないか確認し、付いていればできるだけ動物病院で取り除いてもらう。ペットのダニ駆除剤の使用も重要となる。

 

 ネコもイヌもSFTSを発症すると元気や食欲の低下、発熱などがみられる。

血液や排泄物、涙、唾液もウィルスを含む恐れがあるため、ペットの体調が悪い時にはなるべく直接触らない。道ばたで倒れた動物にも注意が必要だ。

 また、ペットが感染した場合、隔離する法的基準はない。設備がない動物病院では入院させられず、SFTSと判明しても飼い主にかえす場合があるという。

 ペットの感染を行政などに報告する制度もなく、事例の把握は獣医師らによる研究機関への自主的な報告頼みなのが現状だ。

 感染研の前田健・獣医科学部長は、「SFTSの動物と関わって2週間以内に発熱があれば、医師にそのことを伝えてほしい。マダニに日々さらされる野生動物も含めて、命にかかわる人獣共通感染症として早急に対策を進める必要がある。」と話す。

(朝日新聞 5/22より)