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No.573 新規C型肝炎治療薬など高額医薬品の薬価が引き下げ 2016年度薬価制度改定で「特例拡大再算定」新設

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■ 「年間販売額1500億円超」のソバルディなど4成分 ・6品目が対象

 

 

 中央社会保険医療協議会(中医協)は1月20日開いた総会で、2016年度薬価制度改正で新設される「特例拡大再算定」の対象品目を決定した。4成分(6品目)で、「年間販売額1500億円超」となるC型肝炎治療薬ソバルディ錠(一般名ソホスブビル)とその類似薬のハーボニー配合錠(同レジパスビル アセトン付加物・ソホスブビル)、「年間販売額1000億円超」の抗血小板薬のプラビックス錠(同クロピドグレル)と抗がん剤のアバスチン点滴静注用(同ベバシズマブ)。プラビックス錠については、その後発医薬品も引き下げ対象になる。

 「特例拡大再算定」は、2016年度から新規に導入され、「年間販売額1000億円超、かつ予想販売額1.5倍以上」では最大25%「年間販売額1500億円超、かつ予想販売額1.3倍以上」では最大50%それぞれ引き下げる仕組み(図1:特例拡大再算定)。2016年度の薬価は、今年3月上旬に決まる予定で、(1)特例拡大再算定による算定額、(2)市場実勢価格に基づく薬価改定などによる算定額――のうち、低い方になる。ただし、アバスチンについては一定の臨床上の有用性を評価し、補正加算(5%)を付け、薬価下げ幅は緩和される。昨年末の2016年度予算編成段階では、「特例拡大再算定」の引き下げ分として、国費ベースで約280億円が想定され、この薬価引き下げ分が診療報酬本体プラス改定の財源の1つとなった。

 従来の「市場拡大再算定」(年間販売額150億円超、かつ予想販売額1.5倍以上)の2016年度の対象品目も、20成分(45品目)に決定。ただし、オ―ファンの適応追加などの3成分については、補正加算(5%)の対象とする。「効能変化再算定」は1成分(3品目)。

図4_特例拡大再算定(1-20中医協_「平成_28_年度薬価_制度の見直し」より) PDFファイル

 

■「特例拡大再算定」対象のC型肝炎治療薬は50万人使用すれば2兆円超え

 

 1月20日の中医協総会では、昨年末に了承した「薬価制度改革の骨子」を具体化した、「2016年度薬価制度の見直し(案)」も了承した。2016年度は、「特例拡大再算定」を新設するほか、薬価収載から25年以上経過し、臨床現場で広く使用されているなどの一定の条件を満たす「基礎的医薬品」の薬価を下支えする仕組みも試行的に導入される。成分別に、最も販売額が大きい銘柄に価格を集約して薬価を維持する。その対象は20日の総会で、134成分(617品目)を対象とすることが決まった。

 総会の議論では、「特例拡大再算定」などの対象品目について意見は出なかったが、健康保険組合連合会の代表委員から、「基礎的医薬品」について、「(対象品目は)限定的に捉えていたが、今回は初めて導入する仕組みなので、数多くの申請があったのだろう」と述べ、申請品目数を質問。厚労省保険局医療課薬剤管理官は、「申請があったうち、7、8割が対象になった」と回答した上で、「今回の試行は限定的であり、その結果を踏まえ、次回改定以降の対応を今後検討していく」との考えを明らかにした。

 

 「特例拡大再算定」の対象品目となった新規C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」「ソバルディ錠」の1錠薬価は8万円と6万1799円と高額。ソバルディ錠は12週間服用すれば、治癒までに要する薬剤費は併用薬を含めて約546万円。インターフェロンを使った治療の薬剤費は約223万円なので、倍以上に相当する。両剤とも公的医療費補助の対象となり、患者の負担は月1万~2万円となる。C型肝炎を治療できれば、中長期では肝臓がんなどにかかる医療費を節減できる可能性がある。一方で、高額な薬をすべて公的保険や助成の対象にすると、国民負担が過重になる。仮に50万人の患者が利用したとすると、薬剤費だけで2兆円を超えてしまう。これが、今回の「特例拡大再算定」が導入されることになった大きな要因である。

関係者のコメント

 

<製薬協会長「イノベーションの適切な評価に反し容認できない」>

 薬価制度改正で「特例拡大再算定」が導入されたことに対して、日本製薬工業協会の

多田正世会長は1月15日の定例会長会見の中で、「特例で実施される巨額再算定は、イノベーションの適切な評価に反しており容認できない」と表明。経済財政諮問会議や中医協などで度々議論されている頻回薬価改定についても、「研究開発力を削ぐ」として断固反対の姿勢を示し、予定される2017年度の消費税率引き上げに伴い検討される実勢価改定の阻止は2016年前半の「最大のテーマ」と述べた。

 

 

<日医、健保連は特例拡大再算定を「支持」>

 製薬業界が「特例拡大再算定」に対して反対意見を示す一方で、中医協の診療側の日本医師会代表委員と支払側の健康保険組合連合会代表委員は共に、中医協の議論の中で「支持」を表明している。中川俊男日医副会長は、「売上と利益の増加は営利企業としては評価されるべきだが、公的な国民皆保険制度を維持するための調節弁として」特例拡大再算定の新設を支持。また、幸野庄司健保連理事も「上にもキャップをかける考え方があっていいのではないか」とコメントしている。

 

 

<肝炎患者団体は「C型肝炎は飲み薬で治す時代へ」と期待>

 特例拡大再算定対象となったC型肝炎治療薬「ソバルディ」は大きな副作用がなく、治療期間も12週間と短い。国内の臨床試験では患者の96%が治癒するという高い効果を示した。このため、患者数が150万~200万人とされるC型肝炎ウイルスの新たな治療法として期待される。このため肝炎患者の団体は「C型肝炎は飲み薬で治す時代へ」と大きな期待を寄せている。

<調剤薬局運営事業者の声>

 調剤薬局チェーンは、大学・機関病院前の門前でハーボニー、ソバルディなどの処方箋応需が急増したことで売上高、利益共に大きく伸ばす結果となっている。15年10月以降の下半期は過去最高の売上を記録する一番の要因となる。薬価が最大50%減となることで業績に影響を与えるのは必至であるが、但し、取り扱う卸が限られるため薬価差益は限定的なものとなり、「売上高の影響は大きいが、利益についてはそこまでではない」と捉えている

薬局現場からすると、2年に一度の薬価改定時の3月は4月から殆どの薬品の薬価が下がることを見越し、在庫を極端に抑える傾向にある。特に今回から現れたハーボニー、ソバルディなどの超高額商品(1ボトル:28錠入)は、一夜明けたら、その価値が100万円下がることになる。この薬品を取り扱う薬局はいつ患者様が来局するかわからない為、3月末の在庫管理にも神経を使う

事務局のひとりごと

ある製薬メーカーMRの声を取材していただいた。

 

C型肝炎治療の新薬担当MR

 「肝炎治療でインターフェロンの副作用は強く、中には命に関わる副作用が出る場合もあった。一方、新規C型肝炎治療薬は経口薬で副作用も少ない。しかし、高額療養費制度の対象となるとはいえ、1錠8万円もする薬。会社にとって最大50%の引き下げは経営的に打撃だが、いざ私や家族がこの薬を使うようになれば、薬代が安くなるに越したことはない」。

 

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 「新薬開発」(イノベーション)には3つの越えるべき関門があるという。すなわち、「魔の川」、「死の谷」、「ダーウィンの海」だ。

 

 詳細は省くので、興味がある方は是非ともお調べいただきたいが、

・新薬が製品化を目指す段階に進めるかどうかの関門が「魔の川」。

・先の魔の川を越えた製品(の卵?)が、事業化段階に進めるかどうかが「死の谷」。

・そしてせっかく製品化、事業化の関門を越えた新製品が、他社との競合や顧客に受け容れられるかどうか、という荒波にもまれる過程が「ダーウィンの海」。

 

これらの関門を乗り越えるまで、莫大な投資と労力をかけてきた製品が(確かに1,000億円から1,500億円以上も売れたというのはあるが)、「はい半額です」と決められれば、言いたいことの一つや二つも出てきたっておかしくはない

 

 「特許で莫大な利益を享受する大手メーカー」というイメージがついて回る新薬メーカー。こと社会保障や命に関わることなので、どちらかの肩を持つというのも難しい。

 であるからには、財源論から来ているこれまでの議論が導く先にある我が国の未来の社会保障制度。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

※1…複数の社会保障制度の枠組みが出て来て競争の原理が働くわけでもないのでそれでうまくいくだろう(いって欲しい)、という至極単純な考えから。(WMN事務局)