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No.692 新型コロナで悪化した介護事業所の経営安定図るため、2021年度介護報酬は前回上回る0.70%のプラス改定

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■厚労・財務大臣折衝で、新型コロナの影響を踏まえ0.70%プラス改定で決着

 12月17日開かれた2021年度政府予算案の編成に向けた田村憲久厚生労働・麻生太郎財務両大臣の折衝で、介護報酬改定率について、①介護人材確保、物価動向、介護事業経営実態調査結果などを踏まえ、全体で0.70%のプラス改定とする(国費で196億円の増加)、②新型コロナウイルス感染症に対応するためのコスト増等を踏まえて、2021年4月から9月には、報酬上の特例的な評価を行うこととし、上記0.70%のうち0.05%をこれに充てる-ことで合意した。

 両大臣の合意内容は、2021年度以降の介護報酬改定に向け、①給付の適正化、感染症等への対応力強化、ICT化促進などメリハリのある改定とする、②特定処遇改善加算の取得拡大方策を推進する、③介護保険制度改革に向けて2021年8月から補足給付・高額介護サービス費の見直しを行う-ことになっている。

 

 2021年度介護報酬改定に関しては、財務省の財政制度等審議会が11月25日まとめた「2021年度予算案編成等に関する建議」で、高齢化の進展により大幅に費用が増加している介護分野について、「報酬単価の抑制等の徹底した合理化・効率化」「保険給付範囲の見直しをはじめとする制度改革」を進めていくべきと強調。介護報酬改定について、「プラス改定をすべき事情は見出せない」としたものの、「新型コロナウイルス感染症が収束するまでの臨時の時限措置としての介護報酬による対応は否定しない」との考えを示していた。

 

■基本報酬、単位数・算定要件などは社保審介護給付費分科会で審議

 厚生労働・財務両大臣の合意を受け、12月18日に「令和3年(2021年)度介護報酬改定に向けて(審議報告のとりまとめに向けて)」をテーマに開かれた社会保障審議会介護給付費分科会では、大臣折衝による2021年度介護報酬0.70%プラス改定の報告を受け了承した。全体としては前回2018年度改定プラス0.54%を上回る改定となる。新型コロナウイルス感染症の特例的な対応については、2021年9月までの時限的措置だが、10月以降は基本的には延長しないものの、厚労省は「感染状況や地域における介護の実態なども踏まえて柔軟に対応する」考えだ。

 

 介護給付費分科会では、2021年度介護報酬改定に係る基本的な考え方として、新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で(1)感染症や災害への対応力強化を図るとともに、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に向けて2040年も見据えながら、(2)地域包括ケアシステムの推進、(3)自立支援・重度化防止の取り組みの推進、(4)介護人材の確保・介護現場の革新、(5)制度の安定性・持続可能性の確保を図ることを掲げた(図3 令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案)の概要)。 

各サービスの運営基準や基本報酬、加算の単位数・算定要件などについては、介護給付費分科会の審議報告に沿って見直され、厚労省は年明けの1月か2月に、2021年度介護報酬改定の詳細を公表する予定である。

 

【事務局のひとりごと】

 2021年.今年は介護報酬改定の年である。昨年末に改定率が判明したが、プラス改定であるという。

 このコロナ禍で躍進した業界、そうでなかった業界、悲喜こもごも、「まだら模様」の経済状態となってしまった現在。コロナ禍で大変な目に遭っている業界におかれては言いたいこともあるだろうが、エッセンシャルワーカーとされる介護業界にとっては、ひとまず胸をなでおろされたのではあるまいか。ただし、今後は個別具体的な点数(短冊)に焦点が絞られることだろう。これまでの介護報酬改定では、たとえプラス改定であっても、基本的な報酬部分が素直に上がることはなく、加算によってプラス改定を実現してきた。加算部分は介護人材への給与部分を底上げしてほしいというメッセージ性の強い内容であった。その方向性は変わらないだろうから、今改定でも加算によるものが中心になるのだろうか。但し、本文中にもあったように、0.7%中、0.05は診療報酬同様に4月から9月までの半年間、報酬上の特例的な評価として充てられるそうなので、あくまで事務局の勝手な予想だが、こちらは基本報酬部分への加算となるのではないか

 

 コメントを紹介したい。

 

〇厚生労働大臣:介護事業者が永続して事業を運営できるようしっかり対応したい

 12月17日の麻生太郎財務大臣との大臣折衝で介護報酬プラス改定となったことを受け、記者会見で田村憲久厚生労働大臣は、直近の調査で事業者の経営状況が総じて悪化していたこと、新型コロナウイルスの流行で更に厳しさが増したことなどを、プラス改定で決着した背景として説明。「この改定で必要な点数をしっかりとつけさせて頂いて、介護事業者の方々が永続して事業を運営できるよう、しっかりと対応していきたい」と述べた。

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 SDGsの考え方ではないが、事業の永続的な運営は、誰もが望むところであるだろう。

 

 財務省官僚からはこんなコメントだ。

 

〇財務省官僚:介護報酬プラス改定は、介護職員の処遇改善を図る必要から判断した

 2021年度は介護報酬や障害福祉サービス等報酬はプラス改定となった。財務省の主計局幹部は、「骨太の方針に基づく歳出の目安を守らないといけない中で、薬価調査の結果で毎年薬価改定の実現による財政効果の目途がある程度ついた段階で、介護職員の処遇改善を図る必要から判断されたものである」との考え方を示した。

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 モノから人へ か。歳出の目安を守るのは容易いことではないのかもしれないが、介護職員の処遇改善が第一優先で、それが事業の永続的な運営につながっていく、という考え方だ。

 

 介護施設の経営者からはこんなコメントをいただいた。

 

〇介護施設経営者:せめてプラス1%は超えて欲しかった

 厳しい国家財政の中でプラス改定にもっていったことは評価したい。しかし、誠に申し訳ないが、プラス0.7%は小幅増と言わざるを得ない。政府は過去の改定で、1%以上の引き上げを4回(臨時改定含む)、その一方で2%以上の引き下げを2回実施している。プラス0.7%で本当に深刻な人手不足を解消できるのか?介護現場の努力にも限界がある。せめて1%(約1100億円)は超えて頂きたかった。まだまだ厳しい時代が続いていきそうだ。それにしても、財務省の壁は厚かった。

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 「まだ厳しい時代」とのこと。処遇改善のための加算、となると、プラス収入は人件費へ。それはそれで良いのかもしれないが、母体の運営(投資など)についての財務省の見解を聞いてみたいものだ。

 

 一人ひとりの給料が上がる(処遇改善)ことだけで、果たして人手不足の解消につながるか。「否」とは言い切れないが弱い。さらにこれまでの処遇改善加算で財源が隅から隅まで浸透したか、といえばそうではない。そこで介護福祉士からのこんなコメントを紹介したい。

 

〇介護福祉士がチームマネジメントで中核的役割を果たすことが離職防止につながる

 2021年度介護報酬改定で特定処遇改善加算について、リーダー級の介護福祉士に処遇改善が行われる内容となった。介護福祉士が介護職の中で、チームマネジメントや中核的役割を適切に担うことが介護職の離職防止や介護の仕事への訴求力を高めることになる。今後も継続して介護福祉士の役割や責任についてしっかり審議会で議論してもらいたい。

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 介護職のチームマネジメント。いかにして良質なチームを創り上げていくか、課題であり、難題である。

 

 業界団体からはこんなコメントをいただいた。

 

〇診療・介護報酬の同時改定に向けリハビリテーションのエビデンスを示す取り組みを

 日本リハビリテーション病院・施設協会は12月12日、会員向けの2021年度介護報酬改定の方向性についての解説の中で、2021年度介護報酬改定では介護におけるリハビリテーションの在り方をドラスティックに改正すると予想していたが、結果として、コロナ禍もあって大きな改正は先送りになったと説明。その上で、2024年度診療報酬・介護報酬の同時改定に向けてリハビリテーションのプロセスや体制整備の重要性、高齢者や障害者にとってあるべき姿について、「実践や取り組みを認めてもらう様な結果、エビデンスとして世間に示していくことを始めていかなければならない」と呼びかけた。

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 コロナ禍がもたらしたのは変革への加速だけでなく、改正の先送り という側面もあった。2024年同時改定 というキーワードも出てきたが、リハビリやケアプランに対する切込みは、今後厳しさを増していくのかもしれない。

 

ケアプランについてはこんなコメントを紹介したい。

 

〇ケアマネジャー:ケアプラン有料化は見送られたが、2024年診療・介護報酬の同時改定では必ず遡上にあがる

 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)のケアプラン費については現在、利用者の自己負担はない。増え続ける介護報酬に対応するため、自己負担を導入することが検討されていたが、2021年4月から介護報酬改定と共に実施される介護保険制度改正では、見送られることになった。社保審介護給付費分科会の介護保険制度見直しに関する意見では、「利用者やケアマネジメントに与える影響を踏まえながら、自立支援に資する質の高いケアマネジメントの実現や他のサービスとの均衡等幅広い観点から“引き続き検討”」と記載しており、「次回に向けて検討するという意味合い」である。2025年に団塊の世代が後期高齢者に全て入ることに備えた“最後の同時改定”となる2024年の診療報酬・介護報酬の同時改定では、ケアプランの有料化は必ず遡上にあがると思う。

 

〇介護保険利用者:国民負担増理由に介護報酬プラス改定に反対の財務省は、一方でケアプランの有料化を画策

 11月25日の財務省の審議会(財政制度等審議会)の建議では、「新型コロナウイルス感染症の国民生活への影響を踏まえ、介護報酬プラス改定によりさらに国民に負担増を生じさせる環境にない」と述べていたが、その一方で、かねてから財務省はケアプランの有料化を求めており、本当に国民負担増を憂慮した提言なのか、“二枚舌”で信用できない。

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 財務省の言う国民負担増、とは、保険財源や税金のことなのか(結局は国民のお金だが)、はたまた可処分所得(といえるかどうか分からないが)、若しくは生活費の負担増を憂慮した負担増なのか、答えはどうなのだろう?これも機会があればコメントを聞いてみたいものだが…。

 

 今月のもう一つのテーマで取り上げるべきコメントだったかもしれないが、介護にも関わってくるのでこちら紹介するコメントだが、調剤に関するコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇医業系コンサルタント:薬局の管理栄養士業務、介護報酬でも対象外。薬局が栄養関係の業務から“締め出されている”取り扱いには、疑問を禁じ得ない

 

 調剤薬局に詳しいコンサルタント。厚労省の社保審介護給付費分科会がまとめた2021年度介護報酬改定の骨子に当たる審議報告では、事業所外の管理栄養士による居宅療養管理指導の評価も盛り込まれたが、薬局に所属する管理栄養士や、薬局が併設した栄養ケア・ステーションの管理栄養士が実施した場合は対象外となる可能性が高い。2015年に厚労省が発表した「患者のための薬局ビジョン」では、健康サポート薬局における地域住民の健康サポートに関して具体的な取り組みとして、管理栄養士による栄養相談を例示している。そうした中で、薬局が栄養関係の業務から“締め出されている”取り扱いには、疑問を禁じ得ない。2021年度介護報酬改定の後、果たして管理栄養士による居宅療養管理指導の算定回数が増えて普及が進むのかどうか。注目する必要がありそうだ。

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 ここにも薬局に関する何らかの意図が見え隠れするが…。

 2021年の介護報酬改定ではコロナ禍で先送り感の強いイメージだ。現在我々はコロナ禍の真っ只中にいるが、しかし少し長いトンネルなのかもしれないが、そのトンネルを抜けた先、アフターコロナ、2024年の次期改定を、コロナ禍の水面下ではしっかり見据えていく必要があるだろう。

 

 

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