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No.696 全てのサービス種別で基本報酬アップした2021年度介護報酬改定、科学的介護の新設加算も

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■全てのサービス種別で基本報酬アップした介護報酬改定に

 2021年度介護報酬改定が4月から、0.7%アップされる。0.7%分の財源の基本報酬や各種加算への具体的な配分が、1月18日の社会保障審議会第119回介護給付分科会で示された。今回の改定の最大ポイントは、改定率0.7%(ただし当初から新型コロナウイルス感染症に対応するための2021年9月末までの特例的な評価分とされていた0.05%を除く)がすべて基本報酬アップに充当されたことである。これにより、すべてのサービス種別において基本報酬がアップした(廃止予定の介護療養型医療施設等を除く)。

 今回の改定の柱は、(1)感染症や災害への対応力強化、(2)地域包括ケアシステムの推進、(3)自立支援・重症化防止の取り組みの推進、(4)介護人材の確保・介護現場の革新、(5)制度の安定性・持続可能性の確保-5つである(図3 令和3年度介護報酬改定の概要)。

 柱のうち、(2)地域包括ケアシステムの推進では、①認知症への対応力向上に向けた取り組みの推進、②看取りへの対応の充実、③医療と介護の連携の推進、④在宅サービス、介護保険施設や高齢者住まいの機能・対応力強化、⑤介護保険施設や高齢者住まいにおける対応の強化、⑥ケア・マネジメントの質の向上と公正中立性の確保、⑦地域の特性に応じたサービスの確保-をあげている(図4 地域包括ケアシステムの推進)。

 

 

 特に、①認知症への対応力向上に向けた取り組みの推進では、介護サービスにおける認知症対応力を向上させていく観点から訪問系サービスについて認知症専門ケア加算(加算Ⅰ3単位/日、加算Ⅱ4単位/日)が新設され、緊急時の宿泊ニーズに対応する観点から多機能系サービスにおける認知症行動・心理症状緊急対応加算(200単位/日)も創設された。厚労省では、「既に入所系サービスには認知症専門ケア加算が入っているが、今回、訪問系サービスにも加算が追加された。これで介護保険の必要なサービスにはほぼ認知症専門ケア加算が付くことになる」と説明している。介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていくため、介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講するための措置を義務づける(3年間の経過措置期間)。

 ③医療と介護の連携の推進では、老健施設で行う短期療養について、基本報酬の評価を見直すとともに、医療ニーズのある利用者の受入促進の観点から、総合的な医学的管理を評価することにした(総合医学管理加算275単位/日×7日まで)。例えば、自宅で急に熱発して肺炎が疑われた場合、老健施設で受け入れが可能になるようにした。また、老健施設で適切な医療を提供する観点から、検査実施の明確化や算定日数の延長、対象疾患の追加など所定疾患施設療養費の見直しを行った。④在宅サービスの機能と連携の強化では、訪問看護の使い勝手が良くなり、主治の医師が必要と認める場合に退院・退所当日の算定が可能になった。⑥ケア・マネジメントの質の向上と公正中立性の確保では、介護事業経営実態調査結果を踏まえてケアマネジャーの介護報酬の基本単位数をかなり上げるとともに、逓減制がかかる前の介護報酬算定件数を増やした。具体的には、ICT活用または事務職員の配置を行っている場合の適用件数を40件以上から45件以上とした。

 

 さらに今回の改定では、医師の訪問診療にケアマネジャーが同行でき介護報酬上評価される。具体的には、利用者が医療機関で診察を受ける際にケアマネジャーが同席し、医師等と情報連携を行い、当該情報を踏まえてケア・マネジメントを行うことを新たに評価する(通院時情報連携加算50単位/月)。

 

■今後の改定の方向性を示した「科学的介護推進体制加算」の新設

 改定の柱(3)の自立支援・重症化防止の取り組みの推進では、①リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取り組みの連携・強化、②介護サービスの質の評価と科学的介護の取り組みの推進、③寝たきり防止等、重症化防止の取り組みの推進-が図られる。

 ①のリハビリ・機能訓練、口腔、栄養の取り組みの評価は、2021年度改定で様々なサービスで盛り込まれた。通所介護や通所リハビリなど通所系サービス、小規模多機能型居宅介護などの多機能系サービス、特定施設入居者生活介護などの居宅系サービスでは、介護職員等による口腔スクリーニングの実施を新たに評価する口腔・栄養スクリーニング加算が新設された(口腔・栄養スクリーニング加算Ⅰ20単位/回、同Ⅱ5単位/回 6カ月に1回を限度)。

 施設系サービスでは現行の口腔衛生管理体制加算と栄養マネジメント加算が廃止され、基本報酬に包括化される。包括化することは、基本サービスとして提供することを求めることになり、特に栄養ケア・マネジメントに関しては、栄養ケア・マネジメント未実施減算(14単位/日)が新設された(3年間の経過措置期間)。

 

 さらに、介護療養型医療施設を除く施設サービスに新設された自立支援促進加算300単位/月)は、日中の離床などを促し、生きがい支援につなげていくことを評価した加算である。入所者の尊厳保持、自立支援・重度化防止の推進、廃用や寝たきり防止などの観点から、定期的な医学的評価や自立支援に係る支援計画等の策定が算定要件。

 

 今回の改定では、口腔・栄養スクリーニング加算、栄養ケア・マネジメント未実施減算、自立支援促進加算など今後の改定の方向性を示した加算が多いが、その中でも、目玉が介護サービスの質の評価と科学的介護の取り組みの推進を評価した「科学的介護推進体制加算(Ⅰ40単位/月、Ⅱ60単位/月:新設)である。事業所の入所者・利用者の基本的なデータ(ADL:日常生活動作の値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況、その他心身の状況)を厚労省に提出し、データベースを活用してサービス計画を確認するなど、PDCAサイクルを回してケアの質を向上させる取り組みを評価する加算である(図5 介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進(その1))。

 データ提出先として4月から運用が始まるのが、科学的介護情報システムLong-term care Information system For Evidence; LIFE)。LIFEは、介護老人保健施設などで既に運用されているリハビリテーションの質の評価データ収集に係るシステム「VISIT」、科学的介護データベース「CHASE」を一体的に運用するものである。

【事務局のひとりごと】

 

 唐突ではあるが、今月号の短信日本初「医療船」運航へ 被災地支援NPOが導入」の記事は、個人的には非常に感動した

♪ チャーンチャカチャーンチャカチャッチャッチャチャーン チャチャチャッ チャッ チャッ チャッ チャッ チャー チャカチャッチャーン パー パーパパパーパー パーパパパーパー パパパッパパパッ パパッパッパパー パパパッパパパッ パパッパッパパー パーーン さらば~ ・・・

 

 なぜか頭の中で「宇宙戦艦ヤマトのテーマ曲」がリフレインする。

 

 コロナ禍で話題がコロナ一色になってしまいがちだが、こちらは「災害医療」で、こちらはこちらで平時にはあまりクローズアップされない話だ。しかし、今や災害は毎年必ずどこかで起きる

クラウドファンディングという手法が一般に定着しつつある世の中になった今、以前よりははるかに資金を集める手段が容易になった。その理想は非常に崇高だが、しかしその上で「採算」も合わせようとすれば、非常にお金がかかりそうな取り組みだけに、財源はどうなるのだろう?素直にそう思ってしまわざるを得ない。

 「世のため人のため」

 口でいうのは簡単だ。

 であるからこそ、そんな取り組みを行おうとする崇高な理念には、ただ共感し、素直に感動も覚える。この記事を読んだ瞬間涙が出そうになった。是非とも成功してもらいたいものだ。

 

 メディファクス8449号(2021年2月26日(金))3頁/13頁によると、「大阪府病院協会の佐々木洋会長(八尾市立病院特命総長)は、(2月)25日のメディカルジャパンで公立病院の立場から講演し、新型コロナウイルス感染症の流行で地域医療構想における公立・公的病院の『不要論が一変した』と述べ、有事に備えて「地域医療構想の練り直しが必要」との考えを示した。」そうだ。

 確かに小泉改革から今日に至るこれまでの効率化・集約化、医療費の伸びの抑制、などの論調(財務省による論調?)は、少なくとも現時点においては、一気に「なりをひそめた感じだ。

 

 今回のテーマは、医療だけでなく、介護においても「全てのサービス種別で基本報酬アップした2021年度介護報酬改定」についてである。

 

 コメントを紹介したい。

 

 厚生労働省からコメントをいただいた。

〇老健課長:一丁目一番地に感染症への対応、災害への対応力強化を付け加えた

 介護報酬改定を担当した眞鍋 馨老健課長は、2月5日オンラインで開催された第8回慢性期リハビリテーション学会の特別講演の中で今回の改定について、「何と言っても、新型コロナウイルス感染症の対応が主眼である。これまでの改定の柱に加え、一丁目一番地に感染症への対応、災害への対応力強化を付け加えた」と説明した。

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 プラス改定ともなると、実に堂々と、どこか自信に満ち満ちたコメントである。勝手な想像であるが、そんな語り口調だったのではあるまいか。

 

 WMNではいつも引き合いに出される財務省のコメントはどうだろうか。

〇麻生財務大臣:職員の処遇改善にも配慮した介護報酬改定など必要な経費を確保しつつ、「高齢化による増加分におさめる」という方針を達成

 第204回国会での財政演説で麻生太郎財務大臣は、「社会保障関係費について、職員の処遇改善にも配慮した介護報酬改定・障害福祉サービス等報酬改定の実施に必要な経費を確保しつつ、毎年薬価改定の実現等、様々な歳出抑制努力を積み重ねた結果、実質的な伸びを『高齢化による増加分におさめる』という方針を達成した」と述べた。

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 なるほど。ただ切り詰めて、そして切り詰めて、さらに切り詰めて…というわけではないらしい

 

 介護業界団体からはこんなコメントだ。

〇老施協、特養の基本報酬14~17単位増など評価

 全国老人福祉施設協議会は、特養では14~17単位の大幅増、基準費用額(食費)53円の増、加算の充実など、廃止予定の介護療養型医療施設等を除き全てのサービス種別で基本報酬がアップしたことを評価している。

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 1月の段階では、0.7%程度では小幅増だ、財務省の壁は厚かった、などのコメントが目立った気もするが、いろいろ決まってくると前向きな評価コメントも出てくる。さすが廃止予定の介護療養型医療施設を除き、介護医療院への転換を促すための点数誘導的なメッセージも心憎い。

 

 利用者の家族からのコメントだ。

〇新型コロナ対応の介護報酬臨時特例が廃止、余計な利用者負担増が無くなり納得

 今回の介護報酬改定では、「通所介護サービス等で利用者の同意をもとに2段階上位の報酬を算定できる」とする新型コロナウイルス感染症対応の介護報酬臨時特例が3月末で廃止されることになった。余計な利用者負担増が無くなり納得している。新型コロナで経営が悪化しているデイサービスなど通所系介護事業者に配慮して政府は感染症対策にかかる手間や負担を考慮し、介護報酬を上乗せできる「特例加算」を設けて支援してきた。これに、利用者から、実際の利用時間よりも長く利用したとみなすため、利用者の一部負担額も自動的に上乗せされ、介護家族らは「利用していない分を負担するのは納得できない」と反発が上がっていた。

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 「2段階上の区分の報酬を算定可能とする」臨時特例は、つまり利用者負担(1割負担)も制度上増えてしまう。このための反発だが、新型コロナウイルス感染症を始め、種々の理由で利用者が急減した通所サービスの経営を下支えするための新加算での評価や、人員基準の緩和によってこの特例が今月末で廃止となるそうだ。

 

 現場をあずかる方々からのコメントを紹介したい。

 

〇介護福祉士:入浴介助の考え方が激変、個人入浴への対応が必要に

 今回の介護報酬改定の通所リハビリ、通所介護で激変したのが、入浴介助加算だ。従来、入浴介助加算は利用者に入浴いただくことで算定できる加算で、実施する職員には資格も経験も求められない実施加算だった。通所介護などでも、施設で入浴し自宅での入浴が不要となることで、その入浴をセールスポイントとする通所サービスも多い加算であった。しかし、今回の改定でこの概念が180度変わった。自宅での入浴が不要となるのではなく、自宅において自分で入浴を続けるためのリハビリテーションの一環として、施設での入浴があるべきだという考え方に変わる。今後、個人入浴という考えで、療法士や介護福祉士が利用者の自宅を訪問し、利用者の自宅での入浴環境を確認して個別入浴計画を策定する。その計画に基づいて個別入浴によるリハビリテーションを実施しなければならない。

 

 〇看護師:夜間に看護職員がいない特定施設での看取り対応強化は困難

 今回の改定では、看取り期の本人・家族との十分な話し合いや他の関係者との連携を一層充実させる観点から、基本報酬や看取り関係の加算の算定要件に、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取り組みを行うことを求めることになった。しかし、夜間に看護職員がいない特定施設が多いが現状を踏まえると、看取り対応の強化は難しい。

 

〇ケアマネジャー:ケアプラン、サービス割合の説明義務化でさらなる負担増を懸念

 訪問介護や通所介護、福祉用具貸与のケアプランに占める割合などの説明の義務化は、ただでさえ事務量が多いケアマネジャーの事務負担増大が懸念される。できるだけ簡素な形で、利用者へ説明を行う間隔も1年に1回など長くして欲しい。今回の介護報酬改定で居宅介護支援の運営基準が見直され、前6カ月間に作成したケアプランについて、①訪問介護、(地域密着型)通所介護、福祉用具貸与の各サービスの割合、②訪問介護、(地域密着型)通所介護、福祉用具貸与のサービスごとの同一事業者によって提供されたものの割合-を利用者に説明することを新たに義務づけた。

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 先日、介護現場の方に伺った話によれば、最近の介護現場では(コロナ禍という背景があるのもあるが)、大浴場というような考え方はあまり好まれるところでないそうだ。であるので、「個別入浴」のリハビリに対する評価なのだろうか。筆者はコロナ禍さえなければ、大浴場やサウナを、頻繁に活用したいと考える方だが、もしかするとそれは時代遅れの考え方なのかもしれない。自宅の風呂場と大浴場では、そもそもインフラが異なる自宅でも入れる、ということに主眼が置かれるとなれば、大浴場への入浴のリハビリは、仮に「楽しい」ものであっても訓練にはならない、か。

 

 医業系コンサルタントからはこんなメッセージだ。

〇介護事業における多角的な複数事業展開が必要に

 介護事業者の多くは、介護保険の対象サービスの1つに偏った単一的な事業を運営している。一つに集約した事業展開はパワーを集中出来るというメリットがあるものの、許認可事業であるために経営リスクの方が大きいと言える。今回改定の柱の地域ケアシステム推進では、認知症への対応力向上、看取りへの対応、医療と介護の連携などが示され、さらに介護保険制度改革によって、介護保険市場は重度者に特化する一方で縮小していく。今後は、介護報酬だけに依存した経営は衰退すると言っても過言ではない。認知症や看取りなど複数事業化と介護保険外サービスの併設によって利用者を囲い込み、事業拡大を図ることが急務である。

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 介護においては、「選択と集中」は禁物である。

 さらに介護報酬だけに頼ることも禁物である。

 保険財源への過度な依存をやめ、収入を稼ぐ手段を考えなさい

 というメッセージか。

 キーワードは囲い込みと多角化だ。つまり規模を拡大せねばならないとのこと。

 

 現コロナ禍下において、感染防止対策の観点から家族との面会も含め、リモートの活用が進んでいる。これもいわばICTだ。

 

 コメントをいただいた。

 

 〇介護現場のICT導入に当たり不安は、「経費」

 コロナ禍の中、介護現場ではリモートで会議を行うことの重要性が高まっている。しかし、ツールを必要とする状況下であっても、実際の介護現場ではICTの導入が進展していないのが現状ではないか。大分県宇佐市が市内の142事業所にアンケート調査をしたところ、ICT導入に関する不安で最多の回答が「経費」であったと聞く。科学的介護を実現するには、現場の介護事業所におけるヒト(介護職員)、モノ(設備)の体制整備が不可欠である。理念だけが一人歩きしないように望む。

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 「科学的介護」。これは今後の介護業界においては決して無視できない項目だ。

 

 再び厚労省のコメントである。

 

〇老健課長:次回2024年度介護報酬改定では、科学的介護をさらに推進

 第8回慢性期リハビリテーション学会の特別講演で眞鍋老健課長は、次回2024年度介護報酬改定の課題として、「介護データベースCHASE・VISITを活用した計画の作成や事業所単位のPDCAサイクルの推進、ケアの質の向上の取り組みについて、取り組み状況を把握し、さらなる推進方策を検討していくべきである。特に、訪問系サービス等の今回の介護報酬改定で評価の対象とならないサービスや、居宅サービス全体のケアマネジメントにおけるCHASE・VISITの活用を通じた質の評価のあり方等について、今後検討していくべきである」と、次期改定では科学的介護をさらに推進する考えを示した。

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 2024には、コロナ禍も収束しているだろうか。今は「新型コロナウイルス感染症の対策が主眼」であるが、3年後は、IoT技術を駆使しての見える化、エビデンスに基づいた介護、「科学的介護」に主眼が置かれるということだろう。

 

 介護データ利活用に関して、こんなコメントをいただいた。

〇今後、AI等の活用によって不正請求などの労務や法務の監視が厳しくなると予想される

 医療・介護データベースの構築により注意すべき事項は、現場の人員配置やレセプト請求の実態が見える化されることである。今後、AI(人工知能)の活用など精度の高い解析により、機械的にイレギュラー値をはじき出すことが容易になれば、これまで以上に不正請求などの労務や法務の監視が厳しくなることも予想され、コンプライアンスの徹底も必要になる。

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 まずはコロナ対策であることには論を俟たないが、

 科学的介護に取り組もうとする施設、

 まだ道半ばの施設、

 あるいはそうでない施設、

 3年間という月日は、長いようでいて短い近未来を見据えた介護経営が求められる

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>