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No.710「病室に無料Wi-Fi」は国立病院などの2割、全く使えないは約5割

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■ 全ての病室で無料Wi-Fiが使えるのは約2割の114施設にとどまる

 がん診療連携拠点病院がある国立病院など国内563施設のうち、全ての病室で無料Wi-Fiが使えるのは約2割の114施設にとどまることが分かった。がん経験者らでつくる病室でのWi-Fi普及を求める有志の民間団体「#病室WiFi協議会」が9月6日記者会見を行い、調査結果を発表した。

 

 調査は2021年6月3日から8月27日にかけて、ボランティア調査員95人によって行われた。対象となったのはがん診療連携拠点病院451病院、小児がん拠点病院15病院、国立病院機構140病院、筋ジストロフィー病棟がある主要な病院の全国計563の医療機関(一部重複あり)。病室のWi-Fi設置状況に関する初の全国調査で、回答率は100%だった。

 調査結果は、「全病室無料でWi-Fiが使える(利用時間制限がある病院も含む)」は全体の約20%にあたる114施設、「一部で使える」が約27%の153施設、「全く使えない」が最も多い47%の266施設だった。「整備予定がある」とした病院は14施設あった(図3 全病室無料で使える115施設20%)

 

 

 同協議会では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国の病院で面会制限が続いており、気兼ねなくオンライン面会ができるよう、整備を進めてほしいと呼びかけている。

 

■Wi-Fiが医療機器や電子カルテなどシステムに悪影響を与えるとの「誤解」

 Wi-Fi整備が進まない要因としてあげられたのは、「Wi-Fiの電波が既存の医療機器や電子カルテなどのシステムに悪影響を与える」という誤解だ。総務省は以前病室Wi-Fiに関する注意喚起を行っていたが、今は安全であるとしている。

 また、院内で使用している電子カルテ内の個人情報の漏洩を懸念して患者用Wi-Fiの整備が進まない事例もあるという。同協議会では、「物理的に病院内のネットワークと患者が使えるネットワークを分ける、パスワードがないと利用できないようにするなどのセキュリティ対策を取れば問題はない」としている。

 

 ちなみに、病室へのWi-Fi設置については2021年4月、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、医療機関への支援補助金の対象にWi-Fi環境の整備が含まれることが明文化され、厚生労働省の「令和3度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」の対象となっている。しかし、申請期限は2021年9月30日と迫っており、同協議会では、「病院Wi-Fi導入のための補助金を10月1日以降も申請可能にするために、今からでもあきらめずに申請書を提出してほしい」と呼びかけている。

 

【事務局のひとりごと】

 

 舞台は2021年。世界はコンピュータネットワークでおおわれていた。

 その影響で。電磁波による病が、人類を飲み込もうとしていた。

 “記憶屋”のジョニーは、最後の仕事として、極秘情報を運ぶ依頼を引き受ける。

 依頼主の元へ行き、アタマのチップに情報を記録させる。

 その情報を狙って、犯罪組織“ヤクザ”が襲撃しに現れたのだった…

 

 映画、マトリックスで大ブレイクする前の キアヌ・リーブス主演、北野武との共演で当時話題となった映画、「JM(ジェイエム)」は、こんな世界観から始まるSFアクション映画だ(評価としては今ひとつだったようだが)(※2)。

 

 携帯電話が世にどんどん出てきだし、筆者も胸ポケットに入れて生活(営業活動)していたが、携帯電話の発信する電磁波が、体に影響を与えて不治の病が人類に影響を及ぼす、という設定の映画だったので、当時携帯電話を胸ポケットにいれるのを一瞬躊躇ったことを思い出す。

 因みに、特にこの設定がなくとも、映画はエンターテイメントとして成立出来たような気もする。ストーリーと世界観は、マッチしているようでいて「?」な部分もあったと思う。筆者は映画評論家ではないので、映画の内容についてはこの辺にしておくとするか。

 

 まだ世に出たばかりの新技術は、ちょうど今、新型コロナウイルスのワクチン接種でもいろいろな情報が錯綜しているように、フィクションも含めいろいろなバリュエーションもあり話題を呼ぶ。

 

 「Wi-Fi」という技術もそういう時期があったかもしれないが、今やWi-Fiは、使用できないエリアであることの方が「当たり前でない」状況を生んでいる。少なくとも人が集まることを前提としている場所や建物では。

 

 今回のテーマは、病院に患者が利用することを前提としたWi-Fi環境を!という動きについてである。

 

 コメントを紹介したい。

 

〇三原参院議員:癌学会特別企画シンポで病室Wi-Fiの補助金が10月以降も継続明言

 9月30日で病室Wi-Fi導入に関する補助金申請が締め切られたが、10月1日パシフィコ横浜で開催された第80回日本癌学会学術総会特別企画一般社団法人CancerX主催のシンポジウム「立場を超えて、多種多様ながん課題の共有・解決へ」の中で、自身もがんサバイバーで、がん登録推進法成立に関わるなどがん対策に取り組んでいる自民党の三原じゅん子参議院議員(厚生労働副大臣)が、病室Wi-Fiの補助金が10月以降も継続されることを明らかにした。

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 大変勉強不足で申し訳ありません。三原じゅん子議員もがんサバイバーだったとは。ただ、自分事となると、訴えかける言葉にも力が入る。人を動かす。なんと補助金も継続だ。

 

 次に病院内にWi-Fi環境を!の原動力となった、#病室Wi-Fi協議会からのコメントを紹介したい。

 

〇フリーアナウンサー:悪性リンパ腫で入院、コロナ感染拡大で面会制限の中、友人らとのオンライン会議システムでの会話が心の支えに

 協議会のメンバーで、フリーアナウンサーの笠井信輔氏(58)は2020年4月末まで、悪性リンパ腫を治療するため入院。感染拡大で面会が厳しく制限されていく中、友人らとのオンライン会議システムでの会話が心の支えになったという。笠井氏はフリーアナウンサーに転身した2020年に血液のがんである悪性リンパ腫のステージ4と診断され、入院生活を余儀なくされた。4カ月半の入院と治療の末、完全寛解した。しかしその入院生活はコロナウイルス下と重なり、孤独を強いられた。この経験から、8人の仲間と「#病室WiFi協議会」を設立し、病院で患者が利用できるWi-Fiの必要性を訴える活動を始めた。ブログやSNSへの投稿、YouTubeの視聴、原稿執筆など、インターネットを利用することにより入院生活を乗り越えた。ただし、笠井氏が入院した病院はWi-Fiが原則使用禁止。笠井氏は自身のスマホの契約を使用して通信を行ったため、月8000円から1万円に上る追加料金が発生した。当時の笠井氏は「病院とはそういうもの」と考え、病院に対してWi-Fiの使用を訴えることはまったくしなかったそうだ。

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 実は最近、筆者も突然、スマホが通信制限状態となり、大変困った。ちょっと時刻表を調べよう、午後の天気は?、映画のチケットを取ろう、こんなことが全くできないのだ。従ってWi-Fi環境のある所でなければ不安でしょうがない日々を過ごした(せいぜい1週間程度だが)。笠井アナの気持ちが少しわかったような気がする。

 

 厚労省からはこんなコメントだ。

 

〇医業経営専門官:医療機関コロナ補助金の対象は幅広く、入院患者のオンライン面会等のためのWi-Fi環境整備等に要する費用も対象に

 厚労省医政局医療経営支援課の上野直也氏(医療法人支援室医業経営専門官)は、「令和3年度新型コロナウイルス感染症拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」事業の趣旨について、「新型コロナの感染が急速に拡大する中で、医療機関や薬局等に対して院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療が提供できるよう、緊急的臨時的対応として感染拡大防止等の支援を行うものである。補助の対象となる費用は幅広く、入院患者のオンライン面会等のためのWi-Fi環境整備等に要する費用も対象になる」と説明している。

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 この補助金の内容は、後段で紹介するコメントを参照いただきたいが、Wi-Fi自体は、海外旅行の際にポケットWi-Fiなどをレンタルするなど、身近な存在になってきているのだが、建物の中に、さらに病院のような垂直の層になったような建物となると、やはり数百万~1千万近くはかかることになるだろう。

 こんな試算がある。

 

・概算で1床当り20,000~25,000円程度かかると想定

<前提>

 1.病院のネットワークとは共存せず、完全に物理的に専用のネットワークである

 2.ゲストWi-Fi専用のSSIDである

 3.配線費用は建物の構造によって大きく変わる

 4.エンタープライズなものではなく、コントローラー(集中管理)なしを想定

 5.障害切り分け料金は含まれていない

 6.1つのアクセスポイントに接続するのは20未満を想定

 7.帯域制限なし(できない)設計

 8.UTMは含まれない

(大手ビジネスソリューション取扱企業より)

 

 やや専門的な表現もあるが、自院では具体的にいくらかかりそうか?それを考えることは行っても良いのではないか?そんな気がした。

 

 今度は病院経営層からのコメントを紹介したい。

 

〇大学病院:長期入院の中学生がタブレット端末活用して志望校に合格

 病室Wi-Fi導入の福島県立医科大学病院では、白血病で7カ月もの長期入院した中学生が教師の病室訪問に加え、タブレット端末で民間の通信教育を受けられたことで、志望した高校に合格できた。

 

〇がん診療連携拠点病院:導入に当たり国の補助金が大きかった

 福岡市の南部にあり全室個室で330床を有するがん診療連携拠点病院の九州中央病院は、全個室への無料Wi-Fi整備を提供することになった。導入に当たっては、国からの補助金があったことも大きい。2021年4月に出された「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金に関するQ&A」では、「新型コロナウイルス感染症により入院患者と家族等の面会が制限されている中、医療機関において入院患者等が利用できるWi-Fi環境の整備等に要する費用については、本事業の補助対象となる」と明記され、病院・有床診療所では25万円に加えて、許可病床数×5万円を上限として補助が下りることになった。同院の場合、アクセスポイントを60台設置して、全個室で利用できるようにすると1200万円程度かかる。しかし、その全額を補助金(25万+〔330床×5万円〕=1675万円)で充当することができた。運用する回線数は利用状況で増やすことも検討しているが、いずれにしてもランニングコストは月々わずか数万円程度と見込んでいる。

 

〇中小民間病院:病室無料Wi-Fiは診療報酬点数で

 10月から開始されたマイナンバー利用した健康保険証資格確認をはじめここ数年病院のIT化に係る費用がかさんでおり、経営環境が厳しい中小の民間病院では病室Wi-Fi無料導入の整備まで資金が確保できない。導入のための初期費用だけでなく、毎月の通信料などのメンテナンス費用もかかる。補助金だけでなく診療報酬でカバーしてもらいたい。

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 がん診療連携拠点病院大学病院一般病院では、財源の点において考え方に差がみられるが、診療報酬点数としてか。なるほど、「治療」とは言い難いが、従来あった療養環境加算的な点数か。そうなれば、確かに導入する病院は格段に増えることだろう。

 

 医師からはこんなコメントをいただいた。

 

〇病室のWi-Fi設置は治療の一環(ストレスの軽減等)

 現代においては病室のWi-Fi設置は治療の一環(長期入院に伴うストレスの軽減等)と言っても良いくらいだと思う。

 

〇急性期病院ではスマホ禁止、療養型ではWi-Fi導入は必須

 現時点では、少なくとも急性期病院入院患者についてはスマホ禁止で良い。療養型なり、米国でよく見られる大病院の手術後に回復するためホテルのような施設であれば、むしろWi-Fi導入は必須と考える。

 

〇興味関心あるコンテンツを楽しむことができるネット接続の方が良い

 病院内であり余る時間を過ごすことになるので、その時間を必ずしも興味ある内容を放送しているわけではないテレビより、興味関心あるコンテンツを楽しむことができるネット接続の方が多くの患者さんにとってうれしいように思う。

 

〇無料は反対。テレビカードのように有料にすべき

 無料は反対。病室にあるテレビカードみたいに有料にすべき。

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 実に様々な意見をいただきました。

 昨年、話題となった韓流 ブラック・コメディースリラー映画、『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ出演)でも、スマホでデータ通信制限を受けた青年が、無料でWi-Fiを使えるエリアを求め、部屋中のあちこちのスペースでスマホのWi-Fiのアイコンのアンテナが立つ場所を探す日常が描かれている。韓国では「半地下」と呼ばれる低所得層の住まいがあるそうで、その地上部分に住む層は、いわゆる富裕層なので、その富裕層が建物の中でWi-Fiを使っているので、例えば半地下の天井は上層部の床にあたるので、できるだけスマホを天井に近づけたりしてその電波に寄生(パラサイト)しながら、極力お金を使わずに生き抜く姿が印象的だった。時にはそれに気付いた(かどうか定かでないが)富裕層が、自宅のWi-Fiにセキュリティパスを入れて、そうはさせまいとするような、笑いを誘うシーンもあった。結局家から出て公共の場所のフリーWi-Fiを活用することになってしまうのだが、それほど、Wi-Fiはもはや、公共的な場所の、あって当たり前のサービスになりつつある。韓国の貧富の差のリアルを感じるという点において非常に壮絶な映画であった。

 昨今、何を手続きするにしてもスマホ・タブレットは欠かせないツールになってしまっている。その点を踏まえると、たとえ療養環境であるとはいえ、利用者の通信環境を備える仕組みは、(無償・有償は別としても)必要なのではなかろうか?

 

 こういったコメントでは、つねに患者に寄り添ったコメントをいただいている看護師からはこんなコメントだ。

 

〇Wi-Fiトラブル時の対応で看護師の仕事が増えるので、導入してほしくない

 自分が入院する側であれば賛成だが、正直、Wi-Fiのトラブル時の対応や、つながらない等の苦情で看護師の仕事が増えると思うと導入してほしくない。

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 …。

 患者にとっては、看護師は非常に身近で頼れる存在、という裏返しでもあるのだろう。働き方改革も医療現場で起こっている。看護師の仕事が増えずに患者の療養環境が増える方策はないものか。そうすれば、患者第一より自分優先だった看護師の、このコメントに変化が起こるかもしれない…。

 

 患者(家族)からはこんなコメントだ。

 

〇個人持ちのWi-Fiで、仕事の引き継ぎ、情報の共有ができて大変助かった

 家族が入院したとき、個人持ちのWi-Fiを持って入院したことがある。仕事の引き継ぎ、情報の共有ができて大変助かったので、Wi-Fiがあると良い。

 

〇高齢者にはガラス越しの面会が一番喜ばれる

 80歳を超えるような高齢者にはWi-Fiは使いこなせない。面会制限があっても高齢者にはガラス越しの面会が一番喜ばれる気がする。

 

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 年齢によっては、確かにハイテクツールを誰でも使いこなす、というわけにはいかないか。しかしここまで来て何となくわかったのは、せめて院内でのWi-Fi使用を禁止しないで欲しい、という患者の要望をどう受け入れるか?それがまず医療機関にとって、自分たちが提供する医療内容と立ち位置を考慮し、是か非かを考えていくべきことなのだろう。

 

 そうなると、「魔法の言葉」、断りの殺し文句、

「医療機器に影響を及ぼす可能性があり、命に影響を与える可能性もある」

これに対抗すべき論拠が必要になる。

 

先ほど登場した笠井アナは、セミナーでこんなエピソードも紹介されている。

 

 Wi-Fi設備を提供している、ある大手企業をお訪ねした際、「今の病院界は10年前のホテル業界に似ている」というお話をうかがった。10年前はホテルに客室用Wi-Fiを提案しても、「Wi-Fiを付けてもお客様は増えない」と追い返されていたそうだ。ところがその5年後となると、「Wi-Fiがないとお客さんが来てくれない」と、逆にホテル側からお問合せの電話をかけてくるようになったという。

 これから5年後、病院界も同じようなことが起きるのではないか。患者用Wi-Fiは、患者の気持ちを前向きにさせるだけではない。病院選びの基準の一つになると断言できる。一つでも多くの病院に患者用Wi-Fiが整備され、患者さんを勇気づけてくれることを願っている。

(最新医療経営 PHASE3 10月号 51頁より 一部抜粋)

 

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 最後に、Wi-Fi設置事業者のこんなコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇医療・診療系のネットワークと患者向けのネットワークは切り離され、通常干渉はない

 Wi-Fi電波には2.4GHz帯と5GHz帯の周波数が存在するが、普及が進んでいる2.4GHz帯は電波干渉が多くトラブルの事例も存在する。一方、病院を運用するための要である医療・診療系のネットワークと患者向けのネットワークは切り離されているため、通常干渉することはないと言われている。また、心電図モニター(400MHz帯)とWi-Fi機器は周波数が異なるため影響はないとされているが、Wi-Fi機器(アクセスポイント)と心電図モニターのアンテナシステムの距離を可能な限り離す対策も可能である。

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 先の映画、JMで予想された近未来、電磁波がもたらしたディストピアは、今のところ、人類にはまだ訪れていない…。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※2)… キアヌ・リーブスは結構話題の新技術をテーマにした映画に出演していた、振り返ってみるとそんな気がする。マトリックスもそうかもしれない。
別の主演作、チェーン・リアクションは、水を材料とした水素エネルギーを発明(ほぼ無限のエネルギー)し、その技術の争奪戦に巻き込まれる内容のSF映画だった。こちらはJMよりもさらに前、1996年公開だ(モーガン・フリーマンも出演)。

<WMN事務局>