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No.711 政府のコロナ感染症対策本部、「幽霊病床」を見える化し、感染拡大時の使用率8割以上に

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■ 政府、コロナ用「幽霊病床」なくし、感染拡大時の使用率8割以上に

 政府は10月15日、新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、第5波の2倍程度の感染力を想定した「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」の骨格を取りまとめた。即応病床として申告されながらも、新型コロナ患者に使われない病床をいわゆる「幽霊病床」と問題視し、感染拡大時には新型コロナ病床の使用率が少なくとも8割となるようにすると明記した。国立病院機構や地域医療機能推進機構(JCHO)など公立公的病院に対して専用病床化を求める。さらに想定以上の感染拡大が起こった場合には、国の権限を発動し、一般医療を制限して緊急的な病床確保を求める構えだ。

 政府は「感染力が今夏の2程度」となったとしても、ワクチン接種率の向上や検査体制の強化、経口薬の実用化などによって、入院患者数は2割程度の増加にとどまると想定している。即応病床の確実な稼働や臨時施設の整備に加え、国立病院機構法や地域医療機能推進機構法に基づいて公立公的病院での病床確保を進めるとともに、大学病院や共済病院にも病床確保を求める。これらによって受け入れ患者数の2割増を目指す図1 今後の感染拡大に備えた対策強化のポイント)。

 

 

 新型コロナ用病床の医療機関別の使用率を「見える化」することで、いわゆる「幽霊病床」の実態把握に努める

 例えば、東京都のモニタリング会議資料によると、2021年9月1日時点の入院患者数は4271人。それに対して確保病床数は5967床と、単純計算すると使用率は7割にとどまる。自宅療養者が急増する中、一部メディアでは「なぜもっと受け入れないのか」といった指摘があった。ただ、患者の入れ替えなどで同時に受け入れる患者数には限界があり、「8割以上の使用率」が実務上可能なのかは不透明だ。

 政府の担当者は新型コロナウイルス感染症対策本部後メディアに対して、「都道府県によっていろいろな状況があるが、しっかりとマネジメントされて、医療機関や行政の連携が図られている県では8割程度の使用率となっている。事前の準備によって8割を確保できたのだと思う。例えば、100床あって100人入れられるわけではないが、80人は目指したい」と説明している。

 

 自宅や宿泊施設で療養する患者に対しては、従来の保健所のみの対応を転換し、地域の医療機関を活用することとし、全ての陽性者に対して判明翌日までに健康観察や治療を実施できる体制を確保する。全ての自宅療養者にパルスオキシメーターを配り、オンライン診療も活用する。

 また、ワクチンの3回目の接種や経口薬の実用化も年内をメドに進める方針である。今後、ワクチン・検査パッケージなどの活用によって、社会経済活動の制限の緩和を進めるが、想定以上の感染拡大を起こった場合は、強い行動制限を機動的に求める。

 

■中川日医会長、「幽霊病床」レッテル貼りで悪影響を懸念

 中川俊男・日本医師会会長は10月20日開いた定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症のいわゆる「幽霊病床」について、全国知事会による「レッテル貼りが行きすぎてしまい、結果として真に必要な医療体制の確保に悪影響を及ぼさないよう配慮を求める」との見解を支持し、「言葉が独り歩きして、どうしてそうした状況になったのかを冷静、早急に分析して次なる波に備えるべきだ。理由なく予定された病床が使われなかったわけではない」と指摘。活用されなかった病床が生じた背景として、①即応病床と準備病床についての理解を行政と医療機関が共有していなかった、②患者を病状に応じてどの医療機関に収容できるのかという情報の共有と連携が必ずしも十分ではなかった-ことなどをあげた。

 「確保病床」は、即応病床と準備病床の合計だが、準備病床を即応病床に切り替えるには、10日間から2週間はかかるとし、この点も含めて今後、病床整備の仕方を整理すべきと強調した。

 

 日医と全国知事会は、10月5日開いた意見交換会の中で、「新型コロナ対策について、基本的には同じ方向を向いている」という点で意見が一致しており、年内にも病床確保をテーマの1つとした意見交換会を開催すること、同月27日に全国自治体病院協議会や四病協、厚生労働省と共に「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」を開催し、今後に向けて踏み込んだ議論を行う予定であることを明らかにした。

【事務局のひとりごと】

 

 日本電産の永守重信氏。

 この名前を知らない人の方が珍しいのではないか。我が国には多くの名経営者がおられるが、永守氏の発するメッセージは非常にシンプルであるが核心を衝いている。

 企業経営には「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」が必要とよく言われる。

 永守氏が経営に乗り出した京都先端科学大学(KUAS)は、監督官庁である文科省との幾度にも渡るやり取りの末、工学部新設が遅ればせながらの許認可となったという(参考:日本経済新聞 2021年11月4日(木) 30頁/32頁)。

 記事によると

 

――医学部創設の構想も表明しました。

「調べるとあまりにもバリアーが高い。政治も絡むし医師会も絡み、利害関係が複雑だ。(中略)医学部を作りたいがこの壁を破る力が自分にあるのか。大概のことは諦めない が、これは簡単ではない。私が50歳なら可能性もあるだろうが、時間がない」

 

 1944年生まれ、ということは今年77歳を迎えられる永守氏。こと企業経営においてはもろもろ熟知しておられ、海千山千の永守氏をもってしても、医療を取り巻くステークホルダーの障壁は、結構高いと嘆いておられるご様子。

 

 新型コロナウイルス感染症の新規感染者数がパタッと止まった日本列島。もちろんこれから第6波への備えを怠るべきではないのだろうが、世間は一瞬の安堵感に包まれている。これまで人出が「先週末対比で〇〇%増」、と、(どちらかと言えば)危機感を訴えていたと思われる報道姿勢は、今度は同じ「先週末対比で〇〇%増」を、なかなか増えませんね~、もっと出かけましょうよ。とでも言いたいかのような論調に変わってきたように感じるのは筆者だけだろうか?

 

 今回のテーマは、政府のコロナ感染症対策本部が病床を見える化し、感染拡大時の使用率8割以上を目指すと明記したという内容だ。しかも「『幽霊病床』を問題視」とある。

 

「幽霊病床」

いろんな皮肉のこもった言葉にも取れる。

「なんちゃって病床」(※1)

いったいどこから生まれた言葉なのだろう。

それはさておき。

 

コメントを紹介したい。

 

〇厚生労働大臣:法的な措置が取れないものは、病床確保は現行法でやるしかない

 10月15日の厚生労働大臣記者会見で後藤茂之大臣は、「病床確保の法整備で要請に従わない病院について、病院名公表以上に強い措置を想定しているのか」との質問に対し、「法的な措置が取れないものについては、現行制度のままでやるしかない。地方との間で調整して、地域において保健・医療提供体制の確保の方針を作ってまとめていただく。そういう調整についても現在の枠組みの中でやる。一方で国はNHO(国立病院機構)だとかJCHO(地域医療機能推進機構)等に対しても働きかけをお願いしており、その場合には個別の法律にその根拠もあるので、そういうものも使ってやる」などと答えた。

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 本文中にもあったが、

「国立病院機構や地域医療機能推進機構(JCHO)など公立公的病院に対して専用病床化を求める。」

とある。

 

 国立病院、公立病院にはその公益性を鑑みて率先してその任についてもらおう、という主旨だろう。考え方としては理解のできるところだ。

 

 「俺は防人じゃねぇ!!」(さきもり)

 

 前職で筆者の上司が、会社によって次から次へと困難な任地へ赴任せよ、との辞令に対し、それがあまりにもご本人にとって「理不尽だ」と感じてしまった瞬間(ご自身の思い込みによるところもおありだったのだろうが)、思わず当時の常務取締役に口走った(とされる伝説の英雄譚的)言葉だ。

 

 仮に「幽霊病床」なるものが存在したとして、筆者が考えるその理由は、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」のうち、「ヒト」が不足したからに他ならないと考える。病棟の改装はできても(モノ・カネ)、運用には看護師が必要だ。病床数にもよるが、夜勤体制まで考えれば、いったい何人の看護師が必要か?いつ埋まるか分からない病床のために、その人員を手当てすることができるのか?

 

 公務員、あるいは準ずる方も人間だ。怖いものは怖いし、避けたいものは避けたいはずだ。

 さらには医療職全てが独り身でもなく、家に帰れば家族もおりご高齢や幼い子どもの面倒を見る必要がある方だっておられるだろう。その家族の安全等、総合的に考えた時、使命感だけで新興感染症の病棟勤務を引き受けるだろうか?「独り身」と書いてしまったが、独り身なら必ず引き受ける、というものでもないだろう。やはりあくまで個人の意思が尊重されて然るべきだろう。ワクチン接種一つ取っても強制ですらない、あくまで個人の意思が尊重される、というのが先進各国の「コモンセンス」ではなかったか。

 

 続いてはこんなコメントだ。

 

〇東京都、幽霊病床は補助金返還求める考え

 医療体制が危機的状況に陥った新型コロナの第5波で、患者の受け入れを申告しながら、一部の病院で、受け入れ実態がかい離したいわゆる“幽霊病床”問題が、東京都議会で取り上げられ、東京都の福祉保健局長は、「受け入れ実績や病床使用率が低い医療機関には書面で理由を確認していく。医療機関に補助金の返還による精算を求めるなど、補助金にかかる業務を適切に執行していく」と、病床の補助金返還を求めることを明らかにした。

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 支払った側としては、当然そう言いたいところだ。

 

 今度はこんなコメントだ。

〇繰入金の補填を受けて政策医療を担っている公立病院にコロナ病床確保を

 中規模民間病院理事長。民間病院バッシングによってあまり注目されなかったが、今年1月の時点でも多くの公立病院が「コロナ患者受入れ不可」としていた。まずは公立病院に対して、強制力をもった病床確保をする必要がある。そして、繰入金等の補填を受けて政策医療を担っている公立病院の中にコロナ専門病院を作るべきと考える。コロナ専門病院でどうにもならない状況に陥った場合に限って、それを補完するためならば、ある程度の強制力を発揮して民間病院に病床確保を命ずることが可能になると考える。

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 これまた、「繰入金の補填」、「政策医療」という公立・公的病院の使命に照らせば、確かに仰るとおりだ。しかし、その公立・公的病院の経営層ならまだしも、勤めておられる医療職(主に看護師)が、「政策医療」はともかく、「繰入金」をもらっているから地域の医療機関に先駆け、我々が率先してなどと考えるだろうか?これはあくまで筆者の考えなので、言い過ぎがあったらごめんなさい。

当然全ての医療現場では、全ての医療職がその職に使命感を以って臨んでおられることだろう

 

 病院勤務医からはこんなコメントをいただいた。

 

〇コロナ病床確保には勤務医の働き方改革も考えて欲しい

 土日にも新型コロナウイルスの診療を担当している公立病院の勤務医が、時間外や土日は、結局ボランティア勤務になっていることがあり、かなり負担がかかっている。働き方改革どころの話ではない。「コロナだから頑張ろう」というのは何年も続かないと思う。今コロナ対応をボランティアで頑張ってくださっている人がバーンアウトしてしまう前にしっかり民間病院、公的病院問わず、コロナの医療提供体制を立て直して改革すべきである。

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 ・・・ですね。たとえ家族と同居でも、食事は一人で採り(当然黙食)、ご友人との休日にお出かけして食事、なんていうのも(多分)ご遠慮され、(多分)夜も会食すら叶わず、もろもろ我慢されながら感染リスク回避の基本行動を取っておられる、そういう医療従事者は今でも多いはずだ。

本当に頭の下がる思いです。

 

 開業医からはこんなコメントだ。

〇在宅医療医から見て、一概に病院を責められない

 在宅医療を展開し、コロナ患者の自宅療養者を診た開業医。 (第5波で)急性の呼吸不全を来す患者が同時多発的に増えてしまう状況だった。医療依存度の高い患者を受け入れる病院の数に限界があった。病院の人手不足や、新型コロナの重症者に対応できる医療設備がないことなどで、患者を受け入れることができなかったケースが増え、結果的に、幽霊病床が生まれる要因になったと思われる。一概に病院を責めるべきではない。

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 「人手不足」、「重傷者対応医療施設」。これも幽霊病床の要因であるという…。

 

 看護師からはこんなコメントだ。

〇軽症患者の施設では、一種の「コロナバブル」が起きている

 フリーランスの看護師。昨年8月から全国の病院のコロナ病棟やクラスターが発生した高齢者施設、軽症者療養用のホテルなどで働いてきた。そこで見たのは、命に直結するような過酷な現場ほど、看護師が足りないという現実だった。一方、ワクチン接種の現場や軽症者療養ホテルなど、重症病棟に比べれば「それほどキツくない」現場は、人を集めるために1日3万円という高給を提示され、一種の「コロナバブル」が起きている。

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 うーん。ボランティア精神、使命感、企業による運営、需要と供給のバランス、金銭、もろもろ考えると、これも世相を表す一つの現実なのだろう。

 一緒にしてはいけないのだろうが、今から10年前の東日本大震災の復興で、仙台市の国分町(繁華街)が、夜は土木や建築関係のお客で、それはそれは賑わったという。この時、東北の繁華街は間違いなく復興バブルであった。わざわざ仙台に出稼ぎに行く水商売の人も多かったと聞く。一方で新型コロナによる「コロナ禍」では、たとえコロナバブルで収入面が良かった方がおられたとしても、繁華街には「緊急事態宣言」や「まん防」によって光が訪れなかったこととは非常に対照的である。

 

 続いては訪問系サービス従事者のコメントだ。

 

〇クラスターが発生した高齢者施設スタッフの過酷な現実

 公立病院の訪問看護ステーションの看護師。人員がある程度確保されている病院に比べ過酷な高齢者施設の現実を知った。あるNGOからの要請で、クラスターが発生した高齢者施設に応援に入った。それまで十数人いたスタッフは1人を残して他の部署に異動していて、圧倒的に人が足りない状態だった。利用者の中には3週間入浴できておらず、シーツが交換されていない人もいたという。人手不足から、利用者が転倒して亡くなるという事故も起きていた。毎日朝7時半から夜20時30分まで働いた。他のスタッフも8日連続勤務、5日連続夜勤という過酷な勤務状況だった。あるスタッフからクラスターが起きたということだった。利用者に感染が拡大し、その本人はもちろん、濃厚接触したスタッフも休まねばならなくなった。こうして極端な人手不足に陥り、残ったスタッフの勤務状況は過酷になるという悪循環に陥った。

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 …過酷である。今でこそ多くの知見により感染対策がはかられ、コロナ禍当初に比べてクラスターの発生の方は格段に減ったが、このような事象も現実の一つだ。この現場に、医療・介護が天職と考えている人がいたとしても、使命感を持っておられたとしても、自らと家族の生活も含めて鑑みて、そこに飛び込むことが果たしてできるだろうか。飛び込むことができれば偉い、というものでもなく、飛び込めないからと言って非難されるものでもない。冷静になれば誰だってそう思うことだろう。

 

 しかし、世の論調として「幽霊病床」という言葉が定着してしまうと、そこには、感情的で非難の色が強く、「けしからん」というような風潮が助長される恐れがある。

鳥取県平井伸治知事は、政府が、使われていない病床を「幽霊病床」と表現して使用率の改善を求めたことに対し、「レッテルを貼られると病床確保の交渉がしづらくなる」と苦言を呈したそうだ

 

 最後に、医業系コンサルタントからの、こんなコメントで締めくくりとしたい。

 

〇「いつでもどの病院にでもかかれる医療」に落とし穴

 私たちは「いつでもどの病院にでもかかれる医療」に落とし穴があったことを、新型コロナで実感することになった。新型コロナでの医療ひっ迫を受けて、「医師や看護師をもっと増やせ」という声もあるが、人口が急速に減り労働人口の確保が年々厳しくなる日本で、医療関係者ばかりを増やすわけにはいかない。貴重な人材やIT技術を最大限に生かし、役割分担と連携を強めた体制が求められる。

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 諸般の事情はそれぞれ異なり、現場ごとに理由はあるのだろうが、財源出動も含め、医療提供体制について、何らかの国民的議論や運用の見直しの必要性があるのは間違いない。

 

 新規感染者数減少傾向が「束の間」でなく、継続してくれることを願いつつ、来たる(来るのか?)「6」に対して我が国には、果たしてどれだけ時間が残されているのだろうか

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)…日本語俗語辞書によると、

なんちゃってとは出来もしないことをやると言ってみたり、ありえないことを見たと言った後に付けることで、それまでの話しが本気ではない・冗談・嘘・誇張していたことを表明する言葉である。1977~1978年、電車の中でこのな~んちゃってを使って笑わせるなんちゃっておじさんが話題に。TVでも取り上げられ、なんちゃっては全国的流行語となった。また、1990年代半ばになると偽物・まがい物、見せかけだけといった意味で使われるようになる(例:なんちゃってセレブ、なんちゃってギタリスト、なんちゃってブランドなど)。

(「日本語俗語辞典」より引用 http://zokugo-dict.com/21na/nancyatte.htm)

 

つまり、「なんちゃって病床」とは、

本気でない病床?

嘘の病床?

冗談の病床?

ということになろうか。

結構キツイ表現だ。な~んちゃって。

<WMN事務局>