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No.715 向かい風のなか2022年度診療報酬の改定率は本体0.43%増で決着、全体では0.94%マイナス

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◇「向かい風のなか2022年度診療報酬の改定率は本体0.43%増で決着、全体では0.94%マイナス」から読みとれるもの

・前回2020年度改定の診療報酬本体0.55%に比べ0.12ポイント低下

・改定の目玉は看護職員の処遇改善と不妊治療の保険適用。重点課題は、新型コロナ対応と働き方改革

・入院医療の適正化で地域包括ケア病棟入院料減額対象が拡大

 

■診療報酬本体は前回より下がったものの、2008年度以降8回連続のプラス改定に

 2022年度政府予算案を巡って後藤茂之厚生労働大臣と鈴木俊一財務大臣の大臣折衝が2021年12月22日行われ、2022年度診療報酬本体改定率を0.43%(国費300億円程度)増、薬価をマイナス1.35%(同マイナス1600億円程度)、材料価格をマイナス0.02%(同20億円程度)とすることで合意した。一定の所得がある75歳以上の窓口負担2割への引き上げは、2022年10月1日から施行することも決まった。

 診療報酬本体部分0.43%の内訳は、看護の処遇改善のための特例的な対応がプラス0.20%不妊治療の保険適用のための特例的な対応がプラス0.20%リフィル処方箋の導入・活用促進による効率化がマイナス0.10%小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来がマイナス0.10%で、これら以外がプラス0.23%。この0.23%分は医科0.26%、歯科0.29%、調剤0.08%で従来通り1:1.1:0.3の配分となる。

19日には岸田文雄首相が後藤大臣と鈴木大臣と協議を行い、厚労省の0.48%増、財務省の0.32%増という両案を基に岸田首相が決断した。前回2020年度改定は本体0.55%であり、0.12ポイント下がった

 

 厚労省は診療報酬と薬価等の改定率を差し引いた「ネット」の数字は前回に引き続き発表していないが、本体部分と薬価、材料価格を単純に足し引きするとマイナス0.94%となる。診療報酬本体は2008年度以降、8回連続のプラス改定となる。岸田政権が政策課題として掲げる看護職員の処遇改善と不妊治療の保険適用の引き上げは規定路線だった中で、いずれも0.2%増とし、その他の財源を0.23%増とする一方で、新型コロナウイルス感染症対応で特例的に引き上げられていた小児関連の点数の引き下げ等で0.2%減、差し引き0.43%増となる。

 

 財務省の財政制度等審議会は12月の来年度予算編成を巡る建議で、診療報酬改定本体についてマイナス改定を主張するなど、本体プラス改定に“向かい風”が吹いていた。これに対して、日本医師会をはじめ医療関係団体は繰り返し、プラス改定を要望し、自民党議連「国民医療を守る議員の会」もそれを支持していた。

 

■改定の重点課題は、新型コロナ対応と働き方改革

 2022年度診療報酬改定の基本方針については、12月9日の厚労省・社会保障審議会医療部会と医療保険部会で了承済みで、「 新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」と「安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進」が重点課題となっている(図1 令和4年度診療報酬改定の基本方針の概要)。2022年年明け以降、中医協で各診療報酬点数や算定要件等の議論に入り、2月の答申を目指す。

 

 改定の基本方針の重点課題のうち、新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築では、「新型コロナウイルス感染症への対応」「新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築」「医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価」「外来医療の機能分化等」「かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価」「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」「地域包括ケアシステムの推進のための取り組み」をあげた。

 2つ目の重点課題の働き方改革等の推進では、医師の時間外労働に上限規制が設けられる2024年に向け、準備期間を考慮すると次期改定が最後の改定機会となることに言及。その上で、「医療機関内における労務管理や労働環境の改善のためのマネジメントシステムの実践に資する取り組み」「勤務環境の改善」「タスク・シェアリング/タスク・シフティング」「チーム医療」「ICTを活用した医療連携」「届け出・報告の簡素化」「業務の効率化・合理化」等を推進する旨を具体的方向性の例として示した。

 

 今回改定の目玉である看護職員の処遇改善に関しては、2021年度補正予算案において、3次救急を担う医療機関に勤務する看護職員の収入を1%程度(月額4000円)引き上げるための措置を前倒しすることが閣議決定されている。さらに、2022年10月以降の収入を3%程度(月額平均1万2000円相当)引き上げるための仕組みを創設する。対象は補正予算と同じく救急医療管理加算を算定する救急搬送件数が年200台以上の医療機関と3次救急を担う医療機関で、57万人分を見込む。ただし、医療機関で働く看護補助者やその他の医療スタッフの処遇改善にもこの収入を充てることを認めるため、そうした対応を医療機関が取る場合は一人当たりの収入増加幅は抑えられることになる。

 

■中医協での入院医療を巡る議論、地域包括ケア病棟入院料減額対象が拡大の可能性

 重点課題の中であげられた「医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価」について、2021年12月までの中医協での入院医療を巡る議論では、一般病棟から転棟割合が高い地域包括ケア病棟の評価の見直しが焦点となった。

 

地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料については、(1)サブアキュート(軽度急性期の受け入れ)、(2)ポストアキュート(急性期後の受け入れ)、(3)在宅復帰支援──の3つの機能のうち、(1)ポストアキュート機能に偏っている病院の評価等が焦点となり、評価の適正化を巡り診療側と支払側との間で意見が対立した。

厚労省は「自院の一般病棟や自宅等からの入棟割合にばらつきがある」「患者の入棟元の違いによって重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)に相違がある」「病床種別が一般病床か療養病床かによって救急実施の有無の傾向が異なる」といったデータを示してきた。同入院料・入院医療管理料1では「自院の一般病棟からの転棟割合が60%以上」の病棟・病室は全体の30%にとどまったのに対し、同入院料2では70%に達することが分かった。

前回の2020年度改定では、自院の一般病棟からの転棟割合が60%以上の大規模病院(400床以上)について、地域包括ケア病棟入院料が1割減額される仕組みが導入された。この減額の対象が広げられる可能性もありそうだ。

 

 また、外来機能の評価のあり方では、中でもかかりつけ医機能の評価のあり方が焦点となっており、中医協で支払い側は機能強化加算等のかかりつけ医機能を評価した診療報酬の再整理を求めたのに対し、診療側は慎重な姿勢を示している。

 

診療報酬・薬価等に関する制度改革の厚労・財務大臣の合意事項

※中央社会保険医療協議会での議論も踏まえて、改革を着実に進める

1.医療機能の分化・強化、連携の推進に向けた、提供されている医療機能や患者象の実態に即した、看護配置7対1の入院基本料を含む入院医療の評価の適正化

2.在院日数を含めた医療の標準化に向けた、DPC制度の算定方法の見直し等の更なる包括払いの推進

3.医師の働き方改革に係る診療報酬上の措置について実効的な仕組みとなるよう見直し

4.外来医療の機能分化・連携に向けた、かかりつけ医機能に係る診療報酬上の措置の実態に即した適切な見直し

5.費用対効果を踏まえた後発医薬品の調剤体制に係る評価の見直し

6.薬局の収益状況、経営の効率性等も踏まえた多店舗を有する薬局等の評価の適正化

7.OTC類似医薬品等の既収載の医薬品の保険給付範囲の見直しなど、薬剤給付の適正化の観点からの湿布薬の処方の適正化

 

【事務局のひとりごと】

 

 2022年。新たな年を迎えた。昨年の年末年始とは人の動きが明らかに異なる動きを見せたが、引き続きコロナ禍の渦中だ。

 今年は寅年。十干と十二支を組み合わせた“60”を周期とすると、39番目の年だ。「壬寅(みずのえ とら)」、意味合いとしては「陽気を孕み、春の胎動を助く」、厳しい冬を越えて、万物が芽吹き始め、新しい成長の礎となる年回りなのだそうだ。

 

 今最も気になる新型コロナウイルスの変異株、オミクロン株だが、

 

 アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ゼータ、イータ、シータ、イオタ、カッパ、ラムダ、ミュー、ニュー、クシー、オミクロン、パイ、ロー、シグマ、タウ、イプシロン、ファイ、カイ、サイ、オメガ。

 

 アルファベットで表すとこうなる(小文字)。

 α、β、γ、δ、ε、ζ、η、θ、ι、κ、λ、μ、ν、ξ、「ο」、π、ρ、σ、τ、υ、φ、χ、Ψ、ω。

 

 ギリシャ文字の順だとオミクロン(ο)は15番目だ。現時点では第6波も乗り越えていない我国だが、仮にそれを乗り越えたとしても、今後も新たな注目の変異株が出現する可能性は高い。しかも オメガ(ω)まで行けば終わり、というわけでもない。

 それでも、昨年の「辛丑(かのと うし)」、一昨年の「庚子(かのえ ね)」より、暦の上では間違いなく好転している兆しがある。

 

 新しい成長の礎となる年回りに、是非ともなってもらいたいものだ。本年もワタキューメディカルニュースをなにとぞよろしくお願いしたい。

 

 今回のテーマは、オミクロン株もさることながら、医療業界の最も注目するところ、2年に一度の「診療報酬改定について」である。

 

 コメントを紹介したい。

 

〇岸田総理:メリハリのある診療報酬改定や効率的な医療提供体制の整備など、着実に改革を進める

 「社会保障改革と中期的な経済財政運営」をテーマにした11月25日の経済財政諮問会議で、岸田文雄首相は「2022年から団塊の世代が75歳以上となる中、メリハリのある診療報酬改定や効率的な医療提供体制の整備など、着実に改革を進め、社会保障の質の向上と国民負担の軽減を目指していく」と述べた。

 さらに、地域医療構想に係る対応方針等を民間医療機関も含めて策定等をするほか、2022年度診療報酬改定でのリフィル処方やかかりつけ医機能に係る対応などを盛り込んだ、「新経済・財政再生計画改革工程表2021」を策定した12月23日の経済財政諮問会議で、岸田首相は会議の締めくくりとして、「今週成立した2021年度補正予算を迅速に執行し、ワクチン接種の推進や治療薬の確保、医療提供体制の強化をしっかりと進めることにより、新型コロナ対応に万全を期し、通常に近い経済社会活動を取り戻していく」と挨拶した。

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 岸田内閣の真価が問われるのはこれからなのだろうが、現時点では内容的に文句のつけようがない。

 

 次は大臣のコメントである。

 

○後藤厚労相:リフィル処方箋、医療の質を下げない条件のもとで工程、手順、事務を効率化することは大事

 鈴木俊一財務大臣との大臣折衝後に記者会見した後藤厚労大臣は、「2021年度補正予算と合わせて国民の安心につながる社会保障制度の構築のために必要な予算を確保できた。さまざまな政策課題に対応し、一方で知恵も出してリフィル処方箋でマイナス0.10%とするなどして、全体で改定率を確保できた」と述べた。リフィル処方箋については中医協でまだ結論が出ていないが、「医療現場で合理的にできることはしていった方がいいという考え方だ。医療の質を下げない条件のもとで、工程、手順、事務を効率化することは大事だ。実効的な方策として導入することで再診の効率化にもつながる」と説明した。

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 次期改定の目玉の一つリフィル処方箋(処方箋の複数回利用)」についてのコメントもある。

 「プラス改定」の考え方は色々ある。報道などでは、どうしても分かりやすく簡潔に情報を伝えたいので、「プラス」だ「マイナス」だという表現としたくなるのだろうが、一応「本体はプラス」と言われているものの、それが真の意味で「プラス改定」になっているとは、関係者からすれば、実のところ誰も思っていないのではないか?となると、広い意味での国民が、「本体プラス改定」の報道を受け、いったい何を思うか?ということがポイントではないか?どう思ってもらえば、(誰の)意図通りなのだろう?

 

 財務省からはこんなコメントだ。

 

〇財務省:メリハリのある改定で歳出抑制

 政府は12月24日の閣議で、2022年度予算案を閣議決定した。これを受け財務省は「看護の処遇改善と不妊治療の保険適用を実現するとともに、通院負担の軽減につながるリフィル処方箋の導入等によりメリハリある改定を行い、改定率を 0.43%(国費292億円)とし、国民の保険料負担を抑制。薬価等について市場実勢価格を反映する等により▲1.37%(国費▲1570億円)とする」と、歳出抑制に努めたことを説明した。

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 つまり、国費の歳出は減る(個人負担も連動して減る)、ということだ。「本体プラス改定」の、実のところである。

 

 診療報酬改定については、中医協で議論の応酬が繰り広げられる。

 

 次は中医協(支払側・診療側)からのコメントだ。

 

〇メリハリ、優先順位をつけた改定

 2021年内最後となった12月24日の中医協総会で、支払側・診療側の双方が「改定に対する意見」を提出した。

 支払側は「2022年度診療報酬改定は、新型コロナウイルス感染症を経験し、団塊の世代が75歳に到達し始めて最初の改定である。コロナ禍の教訓と人口構造の変化を踏まえれば、安心・安全で効率的・効果的な医療につながるよう、これまで以上にメリハリの利いた配分の見直しを行うべきである」と指摘した上で、①病床機能の分化・強化をさらに進める観点から、急性期一般入院料1の重症患者割合(看護必要度を満たす患者割合)引き上げ、患者の状態に応じた評価のメリハリを強め、病床機能の分化を促進するべき。②ポストアキュート機能に偏った地域包括ケア病棟で医療資源の投入量が相対的に少ない実態を踏まえ、一般病棟から転棟した患者割合が一定以上の場合の減算を、許可病床400床未満の医療機関に拡大するべき。③初診料の機能強化加算について、算定対象を慢性疾患等のかかりつけ患者に限定するべき-などを求めた。

 一方、診療側は「これまで中医協で検討してきた項目については、あくまでも財源を考慮せずに議論されてきたものであり、改定率を踏まえ、メリハリを付けたり、優先順位を決め、実施しないものが出てくることは当然である」と指摘した上で、①医師の技術料の最も基本部分であるとともに経営原資となるものである初診料・再診料・外来診療料の適切な評価(引き上げ)。②重症度、看護必要度については、改定の度に評価項目を変更すること自体、医療現場にとって負担となっており、新型コロナウイルス感染症禍での対応等を考慮し、今改定での評価項目見直しなどは避ける。③入院医療の評価体系の大幅な変更は現場に過大な負担となる。新型コロナウイルス感染症対応による影響は大きく、不合理な箇所の部分的修正などに留めること-などを求めた。

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 「メリハリ」。

 ネットで調べてみると、「緩めることと張ること。音の高低。抑揚。物事の強弱や緩急をはっきりさせること。

 で、「メリカリ」が転じた言葉であるそうだ。

 邦楽用語で、低い音を「減り(めり)」、高い音を「上り・甲(かり)」と呼んだもので、近世頃より「かり」に変わって「張り」が使われるようになり、「メリハリ(減り張り)」という語になったそうだ。

 れっきとした日本語である「メリハリ」だが、支払側も診療側もメリハリをつけることには同意しているが、全く といって良いほどにその主張は乖離している

 

 今度は改定率を受けての、各団体のコメントだ。

 

〇日医会長:0.43%増の改定率は必ずしも満足ではないが、厳しい国家財政のなか率直に評価

 診療報酬本体0.43%増の改定率について、中川俊男日本医師会長は12月22日の定例記者会見で、「厳しい国家財政の中、プラス改定になったことについて、率直に評価をさせていただきたいと思う。地域医療の確保および充実に向けて尽力いただき、心よりお礼申し上げる」との見解を示し、関係各位に謝辞を述べた。

 

〇日病会長:急性期病床を減らすような改定は、「愚策中の愚策」

 12月20日の定例記者会見で日本病院会の相澤孝夫会長は、2022年度診療報酬改定で「重症度、医療・看護必要度」の見直しなどが浮上していることをあげ、「急性期病床を減らすことを目的に、数字をいじろうとしている」と指摘。「コロナ感染症対応病床を確保しなければならない中で『コロナ感染症対応病床を減らせ』と言っているのと同義である。現状での見直しは『愚策中の愚策』である」と強い調子で批判した。

 

〇日本薬剤師会:リフィル処方箋の導入・活用促進、薬剤師・薬局の姿勢が改めて問われるものと受け止めている

 厚生労働大臣と財務大臣との大臣折衝でリフィル処方箋の導入・活用促進が明記されたことについて、日本薬剤師会は12月22日、「今後の薬剤師・薬局の姿勢が改めて問われるものと受け止めている」との見解を示し、山本信夫会長は「覚悟を持って対応する」とコメントした。

 

〇日本看護協会:看護職員の処遇改善に向けた大きな潮流となることに期待

 診療報酬本体の改定率をプラス0.43%のうち、「看護の処遇改善のための特例的な対応」としてプラス0.20%とすることを決定し、既に決定されていた2022 年2~9 月の措置に続き、10 月からの看護職員の3%程度(月額平均12,000 円相当の賃金引き上げが明らかになったことについて、日本看護協会は12月23日、「本会は、看護職員の賃金水準、賃金体系を改善し、段階的であっても、すべての看護職員を対象に十分な収入増を実現する恒久的な措置の導入に向けて引き続き取り組んでいくとともに、本会の目的の一つでもある『看護職員が安心して働き続けられる環境づくり』を推進していく」との決意を表明。看護職員の処遇改善に向けた大きな潮流となることに期待を寄せた。

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 「本体プラス」、「重症度・看護必要度」、「リフィル処方箋」、「看護の処遇改善」と、各団体が、次期改定のキーワードについてのそれぞれの受け止めをいただいた。特に「看護の処遇改善」は岸田総理の肝いり政策なだけに、国民の注目を浴びているが、現時点でその恩恵にあずかる看護職(ならびに他スタッフ)はあまり多くない。むしろそれが故に看護職の大同団結に楔を打ち込もうとでもしているのか?と、若干 意地悪な勘繰りすらしてしまうのは筆者だけだろうか…。

 

 続いては病院経営層のコメントだ。

 

〇日慢協会長:一般病床と療養病床で重症度・看護必要度に差はない

 2022年度診療報酬改定に対する日本慢性期医療協会のスタンスを明らかにした定例記者会見で武久洋三会長は、「地域包括ケア病棟は2021年9月現在、約2700病院、約9万6000床が地域包括ケア病棟を届け出ている。その中には全病棟を急性期として維持できず、次善の策として地域包括ケア病棟に格下げする病院も見受けられる。一方、療養病床が中心の慢性期病院でも、地域の高齢者の急変時に対応しようと、病院の機能向上を図る目的で積極的に地域包括ケア病棟に転換している病院もある。一般病床と療養病床で看護必要度に差はなく、特定入院料包括対象のリハビリの出来高換算は療養病床が高い。中医協の病床種別の重症度、医療・看護必要度の調査でも、一般病床と療養病床における重症度、医療・看護必要度は入棟元の種類にかかわらず、ほとんど変わらない。地域包括ケア病棟の重症度は、一般病床か療養病床かという病床種別による差異はない」と指摘した。

 

〇地ケア病棟にさらに厳しいペナルティは、国が目指す地域包括ケアを阻害

 地域包括ケア病棟を有する200床の病院長。自院からの転棟が多い場合や自宅からの入棟が多いケースなどは、地域の包括ケアを成り立たせるためやむを得ず運用していることを中医協委員の方々は知っていただきたい。入棟元の割合が自院と自宅などで異なる点について、入院料・入院医療管理料1・3は、自宅等からの入棟や緊急患者の受入等の実績要件が既に一定程度求められており、その分、高い点数設定になっている。実績要件を満たせずに一般病棟から多数の患者を受け入れて自宅等からの受入が少ない病棟は低い点数の2・4を算定することになっている。こうした現状を踏まえ、今回の改定で地ケア病棟にさらに厳しいペナルティを与えるような措置は、国が目指す地域包括ケアを阻害するものとなる。

 

〇地域包括ケア病棟の3つの機能をバランスよく提供するのは少しハードルが高い

 近隣に在支診や在支病があるか否かなど地域ごとの医療提供体制の違いによって、受け入れ件数や自院からの転棟件数など、地域包括ケア病棟に求められる3つの役割(①急性期後の患者を受け入れるポストアキュート機能、②自宅等からの軽度急性期の患者を受け入れるサブアキュート機能、③在宅復帰機能)には濃淡が生じるとして、満遍なく3つの役割を果たすのが難しいケースがある。自院の急性期病棟からの転棟のみで運営している度が過ぎた偏りは解消していく必要はあるが、地域によりその病院に求められる機能はそれぞれ違ってくる中で、すべての地域包括ケア病棟に3つの機能をバランスよく提供することを求めることは、少しハードルが高いと言わざるを得ない。

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 地域包括ケア病棟については、その類型が発案された時、「急性期後の患者を受け入れるポストアキュート機能」も当然想定されていただろうし、DPCの入院期間Ⅱを過ぎたら自ずと地域包括ケア病棟に誘導するような点数設定にしておきながら… いろいろ思うところはあるが、次期改定における焦点の一つだ。

 

 医師からのコメントを。

 

〇看護師だけの処遇改善に充てられるのは納得いかない

 医師の働き方改革で、仕事が各部門に色々な業務が振り分けられていくなか看護職員だけの処遇改善はなんだかなと思う。他職種の業務に対しての加算をもっと作って欲しい。

 

〇リフィル処方は患者の服薬アドヒアランスを向上

 大学病院勤務医。病状安定した患者の通院回数を減らし、遠方の医療機関への通院の負担を減らす。病院、医院の収入が減りそうだが、自分が処方してもらう立場だったら便利。リフィル処方箋を認めた方が、患者の服薬アドヒアランスが向上する。

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 アドヒアランス

 医療現場では、「患者が治療方針の決定に同意し、積極的に治療を受けること」だそうだ。医師側は、看護師だけの処遇改善にはあまりウェルカムではないご様子。ただ、医師の処遇改善を求めてのご不満ということでは、決してない。

 

 今度は当事者の看護師から。

〇医療職で最大シェアを占める看護職員の給与引き上げが全体の引き上げにつながる

 2020年の全職種平均賃金(賞与等含めた月収換算)が35万2000円のところ、看護師は39万4000円で4万2000円高い。なぜ公的な費用を使って給与を上げるのかという指摘がある。医療関係職種の中で「最大のシェア」を占める看護職員について先んじて給与を引き上げていくことが、「医療・介護関係職種の給与全体を引き上げていく」動きにつながると思う。

 

〇高度人材への報酬を上げるべき

 専門性の高い専門・認定看護師などの高度人材への報酬を上げるべき。

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 …確かに医療関係職の中で看護師の人数は「最大のシェア」だ。岸田総理はこの最大シェアを味方につけた(のか?)。

 

  客観的視点から、医業系コンサルタントからもコメントをいただいた。

 

〇マイナス改定を望んだ財務省の顔立てた改定率に

 診療報酬本体では2008年以降8回連続のプラス改定といわれるが、2016年改定以降は診療報酬本体引き上げ分を薬価引き下げ分が上回り、これで4回連続のネットではマイナス改定となる。新型コロナの世界的なパンデミックでコロナ補助金前の医業利益率が大きく低下している中でネットでのプラス改定を望んだ医療提供側の期待はかなわなかった。マイナス改定を望んだ財務省の顔を立てた改定率となった。

 

〇目玉政策の看護における処遇改善は医療機関が限定、職員1人分の取り分も少なく

 岸田首相の目玉政策だった「看護における処遇改善」プラス0.20%は「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関(救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関)」について2022年10月以降収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げるための処遇改善の仕組みに使うとした。介護保険の処遇改善加算を参考にしたようだ。現時点で詳細は不明だが、全医療機関が対象だと思っていたが、該当しない医療機関は蚊帳の外になりそうだ。さらに看護職だけではなく、看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てる柔軟な運用を認めるとした。しかし、多くの職種に分配すると医療機関への配分上限額は決まってくるので、職員1人分の取り分は少なくなってしまうだろう。

 

〇不妊治療の保険適用は、ピンポイントのプラス改定

 10月の衆議院議員選挙で看護職の賃金引き上げを自民党総裁選で公約に掲げて叫ぶ岸田新首相率いる自民党に投票した医療関係者は多かったとみられる。また、「不妊治療の保険適用の特例的な対応」プラス0.20%も菅前首相肝いりの政策であった。このように今回のプラス改定分0.40%分は前首相と現首相の総裁選公約に忖度した形となった。これは救急医療管理加算を算定しておらず、または不妊治療を実施していない医療機関には全く関係がないピンポイントのプラス改定である。

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 …結構辛辣な、しかし、的を得たご意見でもある。

 

 最後にこんなコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇補助事業から保険診療へ移行で、技術の標準化が進み質の向上が期待

 不妊治療が、現在の「補助事業(特定治療支援事業)」から「保険診療」へ移行することにより、「技術の標準化が進み質の向上が期待される」という大きなメリットがあるが、利用者(患者)や提供医療機関には「制度変更による戸惑い」も生じる。保険診療ルールを適正に整備することはもちろん、利用者等サポートを十分に行うことが重要である。

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 メディファクス2022年1月6日 8653号 8頁/8頁「人工授精、正しく理解3割」の記事では、次期改定から公的医療保険の適用拡大が決まった不妊治療について、知識が十分に浸透していないことが調査で分かった、というトピックが採り上げられていた。

 「人工授精」とは、女性の子宮内に精子を注入するという治療内容で、そのことを正しく理解していた(おそらく)女性は、妊娠を希望する女性4,000人中の36%だった、ということだ。「体外受精」、卵子を体外に取り出して精子と受精させ、受精卵を子宮内に移植する方法と混同している人が多かったという。

 人工授精による妊娠率は3~10%とされるそうだが、半数近くの人の認識は20~30%と、実際より高く認識していたそうだ。

 

 現在の議論では、人工授精、体外受精に止まらず、顕微授精の保険適用も検討されているようだが、先月号の、医師の働き方改革が当事者の医師に情報が伝わっていない件といい、結構、提供者側の理論だけで物事が進んで、受益当事者との情報の非対称が起こるのは何故だろう?

 

 少しでも特殊合計出生率の低下に歯止めがかかり、子を持ちたいと希望するご夫婦の願いが実現することに期待したいところだ。

 診療報酬改定に関する個別議論(短冊)の議論が本格化するのはこれからだ。

 

 2022年は良い年でありますように…。 

<ワタキューメディカルニュース事務局>