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No.718 介護職員の処遇改善で、10月に創設される新たな処遇改善加算とは

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◇「介護職員の処遇改善で、10月に創設される新たな処遇改善加算とは」から読みとれるもの

・介護職員処遇改善加算を取得、補助金の3分の2以上を介護職員ベースアップ等に用いる事業所が対象

・1人当たり月額3%程度・平均9000円の賃金引き上げ

・2022年8月から受け付け、要件等を満たせば、10月分から支払い

 

介護職員処遇改善加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)いずれかを取得、介護職員等のベースアップ等充てる事業所が対象

 

 介護職員の処遇改善として2022年10月、介護報酬に新たな処遇改善加算が創設されることになった。厚生労働省は1月12日開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会で、介護職員の処遇改善に関して、自治体や介護事業所・施設等の事務負担に配慮し「2~9月の補助」を基本的に引き続く形の「新たな処遇改善加算」を2022年10月に創設する考えを示した。

 具体的には「介護職員処遇改善加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のいずれかを取得し、補助金の3分の2以上を介護職員等のベースアップ等に用いている」事業所に対し加算の算定を認め、事業所でそれを財源に柔軟にスタッフの処遇改善を行ってもらい、その計画・実績を都道府県等に報告してもらう仕組みとなる(図5 新加算のイメージ(案))。

 

 政府は、2021年11月19日に閣議決定された新たな「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」、12月20日成立した2021年度補正予算で「介護職員について、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%程度(月額9000円)引き上げるための措置(補助金交付)を来年2月(2022年2月)から9月まで実施する」ことを正式決定した。合わせて、12月22日の後藤茂之厚生労働大臣と鈴木俊一財務大臣との大臣折衝による合意で、「2022年10月以降は、介護報酬で同様の処遇改善(介護職員の収入を3%程度改善できる処遇改善)を行う」方針が決定された。

 これを受け、1月12日の介護給付費分科会で厚労省から「介護報酬による処遇改善案」が示され、委員から意見聴取が行われ、「介護報酬による処遇改善」は「新たな処遇改善加算」として行われることになった。

 

事業所の介護報酬(介護報酬の単位数)×サービス種類ごと交付率(加算率)で計算

 

 「新たな処遇改善加算」は、①介護職員処遇改善加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のいずれかを取得している、②加算で取得した財源の3分の2以上を「介護職員等のベースアップ」などに用いる(=賃上げ効果の継続を狙っている)-事業所・施設が対象となる。

 「事業所・施設の介護職員(常勤換算)について、1人当たり月額平均9000円の賃金引き上げを行える」財源を事業所・施設が算定可能。具体的には、各事業所の介護報酬(毎月、請求する介護報酬の単位数)×サービス種類ごとの交付率(加算率)(図6  介護報酬改定による処遇改善加算率(案))で計算する。

 

 補助金の交付率と新たな加算率には若干の差があるが、補助金の請求システムと加算の請求システムとの違いによるもの(総報酬から処遇改善加算等を除外できるか否かが異なる)にすぎないと、厚労省では説明している。

 さらに、「介護職員」のほか、事業所の判断で「他の職員」の処遇改善にも加算で取得した財源を充てることが認められる

 申請については、2022年8月から受け付け、要件等を満たせば、10月分から支払われる(介護事業所・施設に実際に入金されるのは12月から)。申請に当たっては「賃金改善計画書」(全体の賃金改善額を記載、個々人の改善額記載は不要)の提出が、また事後に「実績報告書」(同)の提出が求められる(図7  介護報酬改定による処遇改善(案))。

 

 一方、12月22日の後藤茂之厚生労働大臣と鈴木俊一財務大臣との大臣折衝では、2022年度診療報酬改定で、看護師の賃金を2022年10月から3%程度(月額平均約1万2千円)引き上げるための財源として国費約100億円を確保すると合意した。対象は新型コロナウイルス感染症対応などの救急医療を担う医療機関の職員で、2022年2~9月分は補助金で手当てし、10月からは診療報酬で財源を確保する。

 看護職員の処遇改善に関する国の「看護職員等処遇改善事業補助金」が、「対象が看護職員(看護師、准看護師、保健師、助産師)。医療機関の判断により、看護補助者、理学療法士、作業療法士等のコメディカルの賃金改善に充てることが可能」との一方で、薬剤師や受付等の事務職は対象外となっていることについて、相澤孝夫日本病院会会長は1月11日の記者会見で、「看護職員だけ賃金を上げることはできない。(それ以外の職種への賃上げの)その額は病院が捻出するのか、ありがたい一方で不安もある」とコメント。介護職員の処遇改善加算を例に取り、「介護施設が介護職員だけ賃金を上げたら他の職員の反発がものすごく強く、そのため他の職員も上げざるを得なかった」と指摘した。

 

【事務局のひとりごと】

 

 処遇改善月額平均9,000相当。時給換算すると、50円以上の時給アップだ(170時間/月 として)。

 

 今回とりあげたテーマは、全ての介護に携わる方々にとって福音と言えるのだろうか。

 少なくとも、「扶養の範囲内で」を希望される方以外で、収入が増えることを喜ばない人は、まずいないだろう、とは思うが…。

 

 先月号のひとりごとでも書いたが、「看護の処遇改善」は岸田総理の肝いり政策だ。同様に介護職員の処遇改善も、これまた肝いり政策である。

 ただ、介護職員については今回が初めてではない。

 

 医業系コンサルタントからのコメントを紹介したい。

 

〇次期介護報酬改定では、「3層構造の処遇改善加算の再整理」が論点に

 2024年度の次期介護報酬改定では、①2012年度改定からの介護職員処遇改善加算、②2019年度改定からの特定処遇改善加算、③今般の新たな処遇改善加算-の「3層構造の処遇改善加算の再整理」(例えば1本化する)が論点の1つになると思われる。

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 介護職員の処遇改善については、すでに10年も前の改定から導入されている。介護報酬改定は3年に一度なので、これまでに3回の報酬改定を経てきた。着実に介護職員の処遇は改善されているはずだ。今回の処遇改善は、本文中にもあるように、今年の2月から9月までは補助金による交付だ。この点は看護師の処遇改善も同様で、看護師の処遇改善に関する診療報酬上の何らかの点数増は今年の10月からのことになる。介護報酬も10月からは本体部分に何らかの加算が設定されることだろう。

 

 厚労省からはこんなコメントだ。

 

〇老健課長:新たな処遇改善加算は補助金の要件・仕組みを引き継ぐ

 1月12日の介護給付費分科会で、老健局の古元重和老人保健課長は、「介護報酬による処遇改善」は「新たな処遇改善加算」として行われることについて、「2022年2~9月の補助金と10月以降の介護報酬対応とは同じ政策目的の下で行われ、仕組み(補助要件など)を変えれば事務負担が大きくなるため、基本的に補助金の要件・仕組み等を引き継ぐ形で行うことにした」と説明した。

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 「処遇改善」は政治が決めたことだが、現場の事務負担増を考慮すると、これまで通りの仕組みで支払った方が混乱は少ない厚労省はそう見たようだ

 

 次はこんなコメントを紹介したい。

 

〇介護福祉士会会長:処遇改善による過度な負担増で介護サービス利用控えにつながらないように配慮する必要

 1月12日の介護給付費分科会で日本介護福祉士会の及川ゆりこ会長は、「処遇改善のために国民に過度な負担増が生じることは望んでいない。介護サービス利用控えにつながらないように配慮する必要がある」とコメント

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 今月号のもう一つのテーマでも、リフィル処方箋導入によって患者負担が減ることは、患者にとっては喜ぶべき大きな要素の一つであった。介護報酬もまた然りか。個人負担は少ない方が良い、というのは当然か。9月迄は補助金だが、10月以降の仕組みでは、普通に考えれば、介護報酬に何らかの加算が発生することになれば、それは「利用者の負担増」を意味する

 

 今後も「処遇改善」という言葉は、政治家がその存在を味方に付けたい時には、業界にもよるのだろうが、選挙の争点になったりする。様々な陳情の中で、介護職員の処遇に関する要望があったのだろうか。

 

 今度はこんなコメントを紹介したい。

 

〇介護サービス等の単位数引き下げなどで処遇改善加算財源を確保することも

 介護事業所経営者の立場から。介護人材の確保・定着を考えた時、特定処遇改善加算による「介護職員の処遇改善」は極めて重要だが、介護保険財源の行方を考えると、永久に介護報酬などで対応していくことは困難ではないか。今後は、介護サービス等の効率化・適正化(単位数引き下げなど)によって「処遇改善加算の財源を確保する」ことが求められると思う。

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 非常に現実的なコメントだ。一方の「処遇改善」と裏腹に、「利用者の負担増」があるのであれば、永久にその構図ではよろしくない。そうお考えになるのも無理からぬことだ。医療の場合は「薬価を下げた財源を本体に」という議論はよく耳にするが、このコメントであれば、「自らの報酬の適正化によって財源を確保」しようとする、非常に我が身に厳しいコメントなのである。医療の場合との対比が非常に印象的だ。

 

 今度は施設からのコメントだ。

 

〇処遇改善事務の簡素化、負担軽減の工夫を

 介護職員の処遇改善加算は、①2012年度改定からの介護職員処遇改善加算、②2019年度改定からの特定処遇改善加算、③今般の新たな処遇改善加算―の3層構造となり、それぞれに要件が少しずつ異なる。当然、請求する事業所・施設サイド、支払う自治体サイドの負担も大きく煩雑になる。適正な執行を行うためには一定の事務がどうしても発生してしまうが、事務等の簡素化、負担軽減の工夫を行ってほしい。

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 介護現場の事務作業は、結構大変である。先日、「LIFE」に関するセミナーを受講したが、2021年度改定から導入された「科学的介護推進体制加算」が、「LIFE」に利用者の情報を毎月提供することが必要なのだが、なんと入力項目数にして1利用者あたり約1,800項目にも及ぶのだ。

 介護を科学する以上、どのような介護が利用者の生活能力向上に寄与しているかを見極めるためには、より子細なデータを必要とするのは分かるのだが…。デジタルネイティブ世代が介護現場に数多くいることを願うばかりだ。

 事務作業は大変だ、という割に、やること自体は増える一方だ。本当に「DX化」などの一言で表現できるほど、改善が現場に進んでいくのだろうか?このあたり、少し疑問に感じなくもない。

 

 今回、看護師の処遇改善も同時に行われるのだが(介護職員同様に2月~9月は補助金、10月以降に何らかの加算設定)、その看護師からもコメントをいただいた。

 

〇勤務環境の改善にも積極的に取り組んで欲しい

 看護師の賃金引き上げを歓迎したい。さらに、仮眠室の拡張等による働きやすい職場づくり、看護補助者の配置やICTシステムの導入等による業務負担の軽減、院内保育所の整備、短時間正規雇用など多様な勤務形態の導入による就業しやすい環境の整備など、勤務環境の改善にも積極的に取り組んで欲しい。

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 処遇改善がなされるのに財源の心配をする介護職員もいらっしゃるが、このコメントをいただいた看護師におかれては、賃金引き上げをまずは歓迎されているご様子。

 病院経営者の皆様。その上で、まだまだやるべきことはあるようです。

 

 介護職員の処遇改善。それがすべての職員にもたらされるかというと、必ずしもそうではない。

 

 こんなコメントを紹介したい。

 

〇対象外事業所・施設での柔軟配分などを工夫してほしい

 訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)などは、そもそも介護職員処遇改善加算等の対象となっておらず、結果、今回の補助金や新加算の対象にもならない。対象外の事業所・施設等についても処遇改善を検討する場を設けてほしい。併設の対象外事業所・施設での柔軟配分などを工夫してほしい。

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 大変お気の毒なのだが、処遇改善加算は、「あくまで直接介護を行っている者に対しての支給」なのだそうだ。

 

 利用者(家族)からもコメントをいただいた。

 

〇高齢の介護保険利用者の負担は限界に来ている

 介護報酬で対応すれば、被保険者(40歳以上)、利用者、自治体、保険者などの負担増につながる。特に、高齢の介護保険利用者の負担は限界に来ている。

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先のコメントを再掲。

 

〇介護サービス等の単位数引き下げなどで処遇改善加算財源を確保することも

 介護事業所経営者の立場から。介護人材の確保・定着を考えた時、特定処遇改善加算による「介護職員の処遇改善」は極めて重要だが、介護保険財源の行方を考えると、永久に介護報酬などで対応していくことは困難ではないか。今後は、介護サービス等の効率化・適正化(単位数引き下げなど)によって「処遇改善加算の財源を確保する」ことが求められると思う。

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 最後に、こんなコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇介護職員よりも賃金水準の低いパート労働者などの負担増につながる

 一般企業では、従業員の処遇改善は企業の経営努力、労使間の交渉で行われるべきものである。私たちの介護を担うエッセンシャルワーカーの処遇改善は大切だが、結局、処遇改善が税金増、保険料増につながる。介護職員よりも賃金水準の低いパート労働者などの負担増で、より高収入の介護職員の賃金増を行うことに対し違和感を抱く労働者も多いのではないか。

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 「処遇改善」という、一見明るそうな話題でスタートしたはずのこのテーマだったが、なかなかどうして。

 サービスの受益者と提供者。この関係で保険財源が逼迫する中、財政中立を行おうとすると、自ずとこんな議論が生まれてしまう。

 安倍前々総理の掲げた「一億総活躍社会」は、介護サービスを、受益することではなく、働き続けることで介護を必要としない生活を送ってくれ、というメッセージだったのだろうか?

 筆者はあの言葉が出てきた時に空しさに近い感情を覚えたのだが。

 我が国に財源論が非常に重くのしかかる…。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>