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555号 健保組合がレセプトを事前点検へ 審査手数料の削減と医療費削減を狙う

 

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 厚生労働省は医療機関の診療報酬請求明細書(レセプト)の点検方式を見直す。現行方式では、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)や国民健康保険中央会(国保中央会)の審査機関を経て保険者に送られるが、希望する健保組合が自ら点検した後、疑わしい分だけ審査機関が点検する制度を2016年度にも導入する。健保組合が審査機関に払う手数料を2割減らす狙いだ。

健保組合など「保険者がまず全てのレセプトの点検を可能とする仕組みの導入」(図2 保険者よるに事前点検のイメージ図)については、2014年6月、政府の規制改革会議の「規制改革に関する第2次答申」に基づき、閣議決定された「規制改革実施計画」の中で、「必要となるシステムの改修、保険者に周知すべき手続内容、審査手数料のあり方等について検討を行い、2014年度に結論を得る」と記載。その後、支払基金、国保中央会、厚労省保険局との検討、健保組合連合会(健保連)への説明を行い、2016年度導入を目指すことになった。


 健保組合など保険者は、支払基金などの審査機関に審査支払手数料をレセプト1件当たり80.60円(2014年度平均手数料)支払っているが、事前点検方式の導入によって、基本手数料(疑義のないレセプトの手数料)65円程度と約2割削減できる。追加手数料(疑義のあるレセプトに追加される手数料)が現行合計655円から590円程度に削減されると試算。
 新制度では、希望する健保組合は全レセプトを自ら点検した後、疑義のあるレセプトだけを支払基金の再点検に回す。これにより、健保組合が点検に注力し、医療費の無駄を発見することにより、医療費削減につながると期待される。

医療関連マスコミ筋のコメント
 レセプト点検、「データヘルス」、そして「医療ビッグデータ」特定健康診査(いわゆるメタボ健診)やレセプトなどから得られるデータ分析に基づき健康保険組合が組合員に保健指導などを行う保健事業「データヘルス」計画が、2015年度からスタートした。レセプト点検の強化は、この「データヘルス」計画を支える柱となる。「データヘルス」計画の推進は、医療データの電子化をさらに加速させ、いわゆる「医療ビッグデータ」のさらなる増大と、応用ビジネスを生み出す素地ともなりそうだ。

事務局のひとりごと
 保険者側のレセプト点検は、一般に病院などで委託されている医療事務代行事業者が行っている業務と本質的には同質の能力が要される業務であり、診療報酬請求事務業務に携わる人間は多い中でも、その業務の受託業者の事業者数となると、非常に少ない。また、通常、医療事務代行事業者が得られる受託料から類推するに、保険者側のレセプト点検受託料は非常に割合が良いと思われる。本年4月の介護報酬改定でもあったことだが、一部事業で「利益が出過ぎ」とみなされてしまうと、厚生官僚の中に「儲けるなとは言わないが、それなりの利益率の確保に止めてほしい」という意識が働いてしまうことだろう。
 工数も削減され、文字通り効率化されるのだろうが、お金の問題が絡んでくる。それによって人の頭数も減らされるのか? それとも従事されている方一人あたりの収入が減るのか? はたまた業務の質が落ちてしまうのか?
これまでもやり玉に挙がっていた議論だが、関係者にしてみれば「いよいよこっちにも来てしまったか・・・。」といったところかもしれない。
 果たしてどれだけの従事者に影響を及ぼしていくのだろう。それはやはり「2割」ということなのだろうか。

<ワタキューメディカルニュース事務局>