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552号 急性期病床削減「これでは足りない!(中医協 支払側)」

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4月から地域医療構想の策定作業がスタート

厚生労働省の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」は3月18日、都道府県が地域医療構想を策定するためのガイドラインをまとめた。このガイドラインをもとに同省は都道府県に、地域医療構想に関する関係法令の運用通知を出した。都道府県は4月から地域医療構想の策定作業に入った。

2025年(平成37年)の医療需要に応じた病床の必要量と医療提供体制の姿を示す地域医療構想は、医療計画の一部として構想区域ごとに策定される。  これまでの医療計画と異なる点は、①病床の必要量を医療機構区分ごとに示す、②構想達成に向けた取り組みをまずは医療機関等の協議に委ねる、③取り組みを支援する手段として医療介護総合確保基金が使える-ことである。しかも、医療機関等の協議にも厚労省から詳細なデータが提供され、それらと毎年発表される病床機能報告を活用することで、構想区域における医療機能の過不足を読み取り、自院の持つ医療機能を他院と比較する“ベンチマーク”に活用できる

ガイドラインは、「地域医療構想の策定」(「策定のプロセス」)「地域医療構想策定後の取組」「病床機能報告制度の公表の仕方」の3点で構成。「地域医療構想策定後の取組」の中に、需要と必要病床数の推計方法及び地域調整会議の運営方法、協議の合意内容等に反した場合の都道府県知事の権限などが、具体的に提示されている。

 

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6年後の急性期病床は現在と変わらず44.7%、さらに削減求める支払側  3月18日の検討会では、「病床機能報告制度の報告状況の速報値・第3報」が発表された。2014年7月1日時点の病床の機能区分別の病床数は、高度急性期が19万1180床(構成比15.5%)、急性期58万1179床(同47.1%)、回復期10万9617床(同8.9%)、慢性期35万1953床(同28.5%)。

これに対して、6年後の予想病床機能について各病院が回答した「6年が経過した日における病床の機能区分の予定別の病床数(許可病床)」)は、高度急性期が19万9634床(構成比16.1%)、急性期55万2964床(同44.7%)、回復期14万1428床(同11.4%)、慢性期34万3864床(同27.8%)。ここで注目されるのが、急性期の構成割合が6年後も2014年の47.2%から44.7%とほぼ横ばいと回答したことだ。

一方、3月4日開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会では、次期診療報酬改定に向け、入院医療に関する議論を開始。議論のたたき台として、厚労省から2014年度診療報酬改定によって、7対1入院基本料の病床数が改定後7カ月間で約1.4万床減少したことが報告された。

入院医療に関する2014年度診療報酬改定では、社会保障・税一体改革にもとづき、2025年に向けて病床機能の分化が進められ、7対1入院基本料については算定病床削減に向け、重症度・看護必要度をはじめとする要件の見直しが行われた。

その結果、改定後7カ月間で約1.4万床も減少したわけだが、このデータに関して中医協診療側の日本医師会代表委員は「7対1入院基本料の経過措置が2014年9月末まで設けられていたことも踏まえ、現時点で動向を把握するのは、時期尚早」とさらなる調査を求めた。

一方、支払側の健保連代表委員は「正直言って残念。次回改定では、急性期から慢性期へのさらなる病床の移行を促す改定を行うべきだ」と主張。2016年度次期診療報酬改定では、急性期病床削減を巡る議論が焦点となりそうだ。

 

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急性期病床の削減のされ方が「生ぬるい」とする支払側と、削減するにしても様々なデータを勘案して地域ごとに考え合って必要量を模索していってほしい、という厚労省の話の展開の仕方、これらは一見相反する意見のように捉えることもできる。

が、二次医療圏ごとに詳細な患者流入のデータを作ってきた厚労省には、恐らくゴールイメージが見えているのではないか。「あくまで地域ごとに」、「自分たちで」、「協議の場で話し合って・・・」。そのために地域医療構想策定のためのガイドラインが作られたのだろう。緩やかな削減か、はたまた急激な削減か。とりもなおさず、それは入院基本料とその算定基準を答申する厚労省次第なのだろう。

<ワタキューメディカルニュース事務局>