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No.551 厚労省検討会が「地域医療連携推進法人」(仮称)創設提言グループ経営を活かした地域医療・地域包括ケアの推進

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■「日本再興戦略 改訂2014」「規制改革実施計画」を踏まえた医療法人制度の見直し
 厚生労働省の「医療法人の事業展開等に関する検討会」(座長=田中 滋・慶應義塾大学名誉教授)は2月9日、
(1)医療・介護等を一体的に提供する非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)として検討していた「地域医療連携推進法人」(仮称)の創設、
(2)医療法人経営の透明性確保やガバナンス強化など運営面の規制強化、
(3)医療法人の分割規定や社会医療法人認定解消に伴う経過措置など規制緩和-などからなる医療法人制度改革の報告書を取りまとめた。
 いずれも昨年6月に閣議決定された政府の「日本再興戦略 改訂2014」や「規制改革実施計画」を踏まえ、検討してきたもの。特に、非営利新型法人については、医療機関相互間の機能分担及び業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための1つの選択肢として創設されるもので、非営利性が適切に確保されることを求めている。
また、医療法人の分割制度はより良い地域医療の実現のために適切に運用されること、社会医療法人の認定要件の見直しはあくまで例外的な措置であり、基本的には引き続き厳格な認定基準を維持するべきであると報告書では指摘した。
 厚労省は、医療法改正事項として社会保障審議会医療部会で審議等を行い、与党と政府部内の調整を経て法案化し、3月中をメドに通常国会に提出する意向。新型法人の施行は2017年4月以降になる見通し。

 

■地域医療・地域包括ケアを推進する地域医療連携推進法人(仮称)の創設
 報告書の目玉である新型法人「地域医療連携推進法人」(図1 地域医療連携法人制度(仮称)の仕組み)の法人格は、地域の医療機関等を開設する複数の医療法人その他の非営利法人の連携を目的とする一般社団法人。法人格を一般社団法人としたのは、医療法人は医療法上、医療機関つまり病院や診療所、介護老人保健施設を運営する法人として規定されているからだ。地域医療構想の単位地域を基本に設立されるが、新型法人が定める事業対象地域を都道府県知事が認めれば、その限りではない。
 認可に際しては、医療法人ほかの非営利法人の複数参加が必須条件となるが、介護事業や健康予防事業などの地域包括ケアを推進する事業のみを行う非営利法人も参加できる。例えば、配食サービスなどを手がけるNPO法人も参加法人になり得る。また、他地域に病院等を展開している法人も、新型法人の事業方針の対象を当該地域の病院等に限った上で参加できる。従って、日赤や済生会だけでなく、国立病院機構や大学法人も参加法人になれる。

業務内容は、
①統一的な連携推進方針(医療機能の分化の方針、各医療機関の連携の方針等)の決定、
②病床再編(病床数の融通)、キャリアパスの構築、医師・看護師等の共同研修、医療機器等の共同利用、病院開設、資金貸付等、
③関連事業を行う株式会社(医薬品の共同購入等)を保有できる-こと。
新型法人の枠組みは、一般社団法人格を持つ新たな法人類型を医療法に位置づけることになるが、認可基準や運営の考え方は、おおむね現行医療法人をベースにしている。 「地域医療連携推進法人」(仮称)の設立のメリット(図2)について、報告書では、「複数の病院(医療法人等)を統括し一体的な経営を行うことにより、経営効率の向上を図るとともに、地域医療・地域包括ケアの充実を推進し、地域医療構想を達成するための1つの選択肢となるとともに、地域創生につなげる」と説明。
具体的には、グループとしてのブランド力(競争力・信頼感)によって、
①価格交渉力の獲得・共同物品購入によるスケールメリット、
②人事の一元化による人員の適正配置、
③グループ内からのノウハウ・資金を入手による在宅医療、在宅介護等に新たな進出、
④資金融通によるグループとしての資金の有効活用、⑤関連事業の株式会社からの配当獲得、
⑤庶務業務の統一によるコスト削減-が可能となることをあげている。
さらに、
①グループ病院・介護事業所の相談・紹介、
②患者・要介護者情報の一元的把握、
③統一カルテ等のシステムによる重複した検査の省略、
④退院支援・退院調整ルールの策定、⑤訪問看護・訪問介護による在宅生活の支援、
⑥救急受入ルールの策定・要介護者急変時の円滑な対応、
⑦医師・看護師・介護福祉士等のキャリアパス構築による定着率の向上、
⑧人事の一元化による過疎地域への医師派遣の実施、
⑨診療科(病床)の再編成、
⑩ノウハウ・資金の入手による在宅医療、在宅介護等に新たな進出など-グループの特長を活かして、地域医療・地域包括ケアを推進できると強調している。

医療・介護を新たな経済成長のエンジンと考える安倍政権にとって、非営利新型法人「地域医療連携推進法人」(仮称)の創設は、「地方創生(まち・ひと・しごと)」につなげる強力なツールと期待されている。
米国では、地方の一都市ロチェスターにありながら、70医療機関のアライアンス、事業規模約9000億円、職員数約6万人を擁するメイヨー・クリニックがある。「メイヨーブランド」として世界的に通用するグループ病院は、地域の雇用・経済に貢献しており、アベノミクスを目指す「地域創生」のモデルとなるかもしれない。「地域医療連携推進法人」(仮称)の創設が「地域創生」を進めるツール、エンジンとなるか注目される。

 

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