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短信:「国立がん研究センター 院内がん登録情報を公表」

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 国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉 東京都中央区)は、国が指定するがん診療連携拠点病院等(以下、がん診療連携拠点病院等)を含む院内がん登録実施施設から収集した院内がん登録情報を用いて、2014-2015年診断例(2か年)の5年生存立率、2010年診断例の10年生存率集計結果を報告書にまとめて公表した。

 

 国立がん研究センターでは、がん対策研究所(旧称:がん対策情報センター)・がん登録センターを中心に、これまで全国がん登録及び院内がん登録の標準化や体制整備を行ってきた。

 院内がん登録は、2007年診断症例から全国のがん診療連携拠点病院のデータを収集し、院内がん登録全国集計としてわが国のがん診療の実態を把握する資料となるよう、毎年、全国集計報告書を公表している。院内がん登録情報を基にした生存率集計は、10年生存率、5年生存率、科学的根拠に基づく情報をより迅速に提供するために、より早い段階での生存率として3年生存率を公表してきた。

 

 

 本報告者では、がん診療連携拠点病院をはじめ全国555施設から、2015年診断例の5年予後情報付きデータの提供を求めた。

 このうち、集計基準である生存状況把握割合が90%以上であった427施設件数のデータと、2014年診断症例について同様の診断をクリアした447施設 942,717件のデータを用いて、2014-2015年5年生存率集計報告書をまとめた。

 また、今回から、がん以外による死亡の影響を除外するための方法として、以前の相対生存率に変え、国際標準となっているネット・サバイバルを採用した。数値の上では以前のデータとの比較が容易でなくなるが、ネット・サバイバルの方が優れた集計方法として定着していることを受けたもので、今後の集計の基礎となると考えられる。

(令和5年3月 国立研究開発法人国立がんセンター 理事長 中釜斉)

 

 

<以下、調査結果の1部を全がんにつき紹介>

 

◎全がんの5年生存率集計

集計対象施設数 447

集計対象    942,717

死亡数     371,523

生存状況把握割合(%)98,2

平均年齢    68,3

 

〇全がんの生存率集計にあたり

 全がんでの生存率集計値の算定に当たり、特性が異なるがんの生存率算定の意義について、疑問を呈する声もあったが、先行する」地域がん登録、全国がんセンター協議会加盟施設における既存生存率集計と比較するため、ここでは院内がん登録5年生存率集計においても全がんでの生存率集計結果について提示する。

 

〇生存状況把握割合

 対象者は942,717例で、そのうち5年以内に死亡していた者は、371,523例、打ち切りが17,206例であった。全体として、生存状況把握割合は98.2%であった。

 

〇対象者の属性  

 男性が57.7%、女性が42.3%とやや男性が多かった。診断時の年齢は、男女共70歳代が最も多く、次いで60歳代となっており、60歳、70歳台で全体の60.2%を占めた。60.3%の対象者に観血的治療が実施されており、53.6%が原発巣・治癒切除であった。

 発見経緯別にみると、他疾患経過観察中が31.3%であった。

 部位別に見ると、男性では胃、肺、前立腺、大腸の順に多かった。

 以上