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No.747 正常分娩にも出産費用の保険適用導入を検討 政府が少子化対策「たたき台」を公表

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◇「正常分娩にも出産費用の保険適用導入を検討、政府が少子化対策「たたき台」を公表から読みとれるもの

・「異次元の少子化対策」として、司令塔こども家庭庁の発足、出産費用の保険適用など

・出産費用の保険適用は、次々回診療報酬改定の2026年度をメド

・少子化対策の財源は、後期高齢者医療保険料引き上げなどから捻出

 

こども家庭庁発足、出産費用の保険適用など岸田政権が「異次元の少子化対策」

 政府は3月31日、岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」のたたき台となる「こども・子育て政策の強化について(試案)」を公表した。異常分娩に限られている出産費用の保険適用を正常分娩にも導入することを含め、出産支援の在り方を検討すると明記した。

 試案では、今後3年間を少子化対策の集中取り組み期間と位置付け、優先度の高い政策を「こども・子育て支援加速化プラン」として取り組む。現金給付の強化を掲げ、児童手当を拡充する。所得制限撤廃などのほか、経済的負担感が強い多子世帯への手当額は諸外国の制度を参考に、加算する方向性を示した。具体的な対象や金額は6月の経済財政運営の指針「骨太の方針」取りまとめまでに結論を出す。

 

 こども施策については、社会全体で総合的かつ強力に推進していくための包括的な基本法として2022年6月に成立、2023年4月に施行された「こども基本法」に基づき2023年4月1日、「こども家庭庁」(渡辺由美子長官)が発足した。こども対策の司令塔となるこども家庭庁は内閣府の外局として、厚労省、内閣府の関連部局を統合し、地方自治体職員や民間公募を合わせ、430人体制でスタートした。結婚支援から妊娠相談・支援、妊産婦支援、子育て支援、虐待やいじめ対策、困難な状態にあるこども支援など、年齢や制度の壁を超えた切れ目ない包括的支援を行う(図1 こども家庭庁関連予算の基本姿勢)。

 

■岸田首相、保険局長が2026年度メドに出産費用の公的保険適用検討を表明

 「こども・子育て政策の強化について(試案)」では、出産等の経済的負担の軽減~妊娠期からの切れ目ない支援として、①これまで手薄になっている妊娠・出産期から2歳までの支援を強化し、2022年度第二次補正予算で創設された「出産・子育て応援交付金」(10 万円)について制度化等を検討することを含め、妊娠期からの伴走型相談支援とともに着実に実施する。②2023年4月からの出産育児一時金の大幅な引上げ(42 万円→50 万円)及び低所得の妊婦に対する初回の産科受診料の費用助成を着実に実施するとともに、出産費用の見える化について2024年度からの実施に向けた具体化を進める。③その上でこれらの効果等の検証を行い、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め出産に関する支援等の在り方について検討を行う-ことを明記した。

 

 出産費用の公的保険適用検討については、厚労省の伊原和人保険局長が、4月5日の衆議院厚生労働委員会で、「医療行為の標準化が大事である。一定期間データを集積し分析する必要がある」などと述べ、保険適用に向け見える化を通じて集まった費用に関するデータを分析する必要があるとの認識を示し、次々回の診療報酬改定が実施される2026年度(令和8年度)適用をメドに進める考えを示した(図2 出産費用の見える化の方策について)。

 

 さらに、岸田首相は4月12日の衆議院厚生労働委員会で「保険適用にあたっても、平均的な費用を賄えるようにするという基本的な考え方は踏襲していきたい」と述べ、保険適用にした場合、原則3割の自己負担が生じないような制度を検討していく考えを示した。また、保険適用の導入を目指す時期について、「2026年度をメドに検討を進めることにしている」と述べた。

 

■少子化対策の財源は後期高齢者医療保険料引き上げなどから捻出

 少子化対策の財源について、保険料で賄うか消費税など税で賄うか、大きな論点となっている。

 社会保険料引き上げを目的に医療保険制度改革として、政府は2023年2月10日、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するため、出産育児一時金に係る後期高齢者医療制度からの支援金の導入、後期高齢者医療制度における後期高齢者負担率の見直し、前期財政調整制度における報酬調整の導入、医療費適正化計画の実効性の確保のための見直し、かかりつけ医機能が発揮される制度整備、介護保険者による介護情報の収集・提供等に係る事業の創設等の措置を講じることを目的に、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」を閣議決定、同日、令和5年通常国会に提出した(図3 全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要)。

 

 その後4月13日の衆議院本会議で、今年4月に42万円から50万円に大幅に増額された出産育児一時金の財源に充てるため、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度の保険料の上限額を引き上げることを盛り込んだ健康保険法などの改正案「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が賛成多数で可決。参議院での審議を経て、今国会で成立する見通しとなった(図4 次期医療保険制度改革の主要事項)。

 

 これまでは原則、現役世代が負担していた出産育児一時金の財源を、後期高齢者医療制度からも捻出するため、加入者が支払う保険料の上限額を段階的に引き上げる。厚労省によると、後期高齢者医療制度の保険料は今の上限66万円から、2024年度には73万円、2025年度には80万円に引き上げられ、2年間で75歳以上のうち年金収入が年153万円を超える約4割の人が負担増となる。

 

 

 


 

一次元・・・線

二次元・・・面

三次元・・・立体・空間

四次元・・・時空?

異次元・・・???

 

 筆者の、次元に関する認識はこの程度である。異次元とはどういうものか?

 

 「異次元

 

 調べてみると、通常とは全く異なる考え方のことらしい。

 その考え方に基づく「異次元の少子化対策」の目玉政策、正常分娩にも保険適用導入を検討、というのが今回のテーマである。

 

 子を持つ母親に、少子化対策としての、「正常分娩が保険適用されること」についてどう感じるか聞いてみた

 

 

 妊娠出産は病気では無いと言われるけれど、現実には、リスク回避の為、医療機関を受診する必要があることを考えれば保険適用は当然のことだと思う。

 ただ、それが少子化対策に繋がるかと言われれば難しいだろう。

 子ども1人育てるのに1千万では足りないと言われる現在、保育園から大学まで全ての教育費を、所得制限無しに無償化するぐらいの手を打って初めて、少子化に歯止めがかかるのではないだろうか。

 現在は、一生懸命働くほど、所得制限に引っ掛かり、受けられなくなる助成も多い。自分たちの老後の年金にも不安がある若い世代が、子どもを減らして自分たちの老後に備えようという考えを持ったとしても仕方がないのではないだろうか。

 少子化対策は、社会保障・年金制度と併せて考えてこそ、効果を発揮するものだと思う。

<3児の母>

 

 私は2人とも帝王切開のため、異常分娩ということで保険適用されています。その時は、一時金はもちろん、保険がとても助かったことを記憶しています。一般家庭で出産となると、診察代、入院費、出産後の生活費といった現実は切実です。

 ただ、出産費用負担減だけで少子化対策になるかと言われると疑問ですが、出産にかかわる費用が少なくなるのにこしたことはないと思います。

個人的な気持ちとしては、約20年前の日本の職場環境と比較すると、出産後における時短の内容や在宅勤務、周囲の認識など、現在は恵まれてきているように思います。

 一時的な負担減だけではなく、子どもの成長とともに長い目でみてもらえる(現役子育て世代にも)費用負担減となる支援を検討してほしいです。

<2児の母>

 

 確かにそれは助かると思う。でも、お金の問題より、欲しくても子どもが出来ない、例えば不妊の問題で子どもの数が増えない、ということも少子化の背景にあると思うのですが…。だからこそ不妊治療も保険適用されたのでしょうが、正常分娩を医療保険財源でみたからといって、特に子どもの数が増えることはないんじゃないかな?

<3児の母>

 

 正常分娩であっても1児あたり出産育児一時金・手当金(?)を受け取ることができ、自己負担額の9割程が戻ってくるイメージです。

 その他出産費(本体)以外の自己負担は確かに発生しますが、個室や様々なオプションがついている病院などを選択しない限り(9割方が戻ってくるので)許容範囲の金額かと考えます。

保険適用になったからと言って少子化対策になるとは思えません。

 むしろ、生む費用よりも生んだ後の対策を講じた方が少子化対策になると感じます。保育の場(保育士不足)、病児保育、養育費、教育費、医療費、など。乳幼児の間で言えばオムツ代は低所得者の生理用品問題と同様、切実ではないでしょうか。

 また、子供たちの将来性に関係なく、ある程度の収入がないと望む学校に通えません(選択肢の少なさなど)。

 フルタイム勤務者は男女に関わらずシングルであってもひとり親(母子・父子)手当の支給対象ではない方も多く、都道府県によって支給される内容や金額が異なるかもしれませんがギリギリのライン上の対象者であった場合はかなり制限されます(おおよそ年収200~320万円位で支給額が増減、それ以上は不支給)。

 尚、出産費用だけで考えれば実際、双生児で尚且つ正常分娩でなかった場合などは1児あたり×給付になるので自己負担額よりプラスになっているのが現状です。但し、それは一時的なお話で、生んだ後の費用は当然2倍かかります

<1児の母>

 

 保険適用導入・産休中の金額増額・児童手当増額では少子化は止まらないと思います。いただけたら本当にうれしいですが、これで産むことを決めるのは、ほんの一握りではないでしょうか。

 今子どもを産んでいる人の数はそれほど減っていないと聞いています。ただ一人っ子が増えているそうです(本当かどうかはわかりませんが)。

 その理由だと思われるのは、二人目を産むと仕事への復帰が難しい。年子(としご)等で産むと続けて産休をとれ、数年後に復帰、ができますが、年齢を空けるとそれができず、結果退職という選択肢を取らざるを得ません。

 何年たっても元の会社に復職できる制度(もちろん契約社員としてでも)があれば、心置きなく子どもを産める気がします。

<2児の母>

 

 3人目が生まれた家庭には国から1,000万円給付

 

 など、どうせやるなら例えばこんな感じの方がメッセージ性は高いのではないか?

 折角財源を振り向けて皆に「良かった」、と思われようとするならば、夢のありそうな対策の方が良いのかもしれない。仮に1,000億円の財源なら、1万人の第三子以降の家族に支給可能だ。金はかかるが、その若い命が成人し、将来の日本を背負ってくれるなら安い(?)ものだ。

 これも単なる思い付きだ。

 

 岸田総理には大変申し訳ないのだが、これらのコメントで、正常分娩の保険適用導入が、少子高齢化に対する特効薬になるかどうかのすでに答えは出てしまったような気がする。

 ただ、少子高齢化による人口減が叫ばれ、本当に我が国はこのままで良いのか?との思いから、とにかくやれることは何でもやろうという心意気が、総理に「異次元の少子化対策」を打ち出す源泉だったのだろうから、今テーマに関しては「正常分娩の保険適用導入検討」だが、少子化対策に「NO」が突き付けられたわけでは決してないことを申し添えたい。

 

 コメントを寄せていただいた多くの働く女性の方々ご協力ありがとうございました

 

 コメントを紹介したい。

 

〇岸田首相:子育てを全世代で支えていく観点から重要

 出産育児一時金を75歳以上の後期高齢者の一部に負担を求めることを盛り込んだ健康保険法一部改正について審議した参議院本会議で、野党側が高齢者の保険料から捻出するのはおかしいと批判したのに対し岸田首相は、「出産育児一時金に要する費用の一部を、後期高齢者医療制度が支援する仕組みを導入することは、子育てを全世代で支えていく観点から重要である」と反論した。

 

〇出産費用等の負担軽減を進める議員連盟:将来的に出産費用無償化を提言

 自民党の出産費用等の負担軽減を進める議員連盟(会長:小渕優子元経済産業大臣)は4月11日岸田首相に対し、4月から出産育児一時金が原則50万円に引き上げられたことを評価した上で、さらなる負担軽減に向けて、保険適用の導入や自己負担分への給付によって将来的に出産費用の無償化を実現することを求めた提言を手渡した。


 政治家は国民によって選挙で選出される。どうしても投票権を持つ存在に向けた政策が、つまり高齢者に対する手厚い政策が打たれてきたこれまでと、潮目が変わってきたことは感じるのだが?

 どこまで行っても「財源論」が付きまとう。気がしてきた。

 

厚労省のコメントだ。

 

〇加藤厚労大臣:出産費用に地域差、全国一律の診療報酬との整合性が課題

 加藤厚生労働大臣は3月24日の閣議後の記者会見で出産費用の保険適用について、「妊婦の選択で様々なサービスが利用され費用に地域差がある。全国一律の診療報酬で評価する医療保険との整合性が課題となる」との認識を示した。


 「全国一律」、「1点単価」、具体的な議論を始めようとすると立ちふさがってくる問題である。

 

 今度はこども家庭庁のコメントを紹介したい

 

〇こども家庭庁長官:出産費用の実態把握が一丁目一番地

 こども家庭庁の初代長官となった渡辺由美子こども家庭庁長官は4月12日の就任記者会見で、出産費用の保険適用について、まず実態を把握することが一丁目一番地であると、実態把握の必要性を強調した。


 そうですね。実態把握は大事ですね。どのように把握するのが良いでしょうかね?

 

 今度はこんなコメントだ。

 

〇産婦人科医会長:全国で分娩を行える体制を維持することが最優先課題

 日本産婦人科医会の石渡勇会長は4月12日の記者懇談会で、政府の出産費用(正常分娩)の保険適用検討について、正常分娩の費用には地域差がある上に、女性が安全に出産できる体制や設備の整備・維持にもコストがかかることを指摘。全国で分娩を行える体制を維持することが最優先課題だとの認識を示した。


 住む場所を自由に決める権利、職を自由に決められる権利、「自由」という言葉の定義が難しいが、我が国では自己責任ではあるが、結構いろいろなことを個人の自由意志で決めることができる。

 それでも、自治体はその自由で住む場所を決めた個人に対し、社会的なサービスを提供する義務がある。全国で分娩を行える体制を維持、か。実現するのは大変なことだと思うぞ。

 

 産科医のコメントを紹介したい。

 

〇無痛分娩でも帝王切開でも、形にこだわらず全て無料にすべき

 帝王切開などの難産では通常の出産よりも入院期間や手術費用に負担がかかるケースもあると考えられる。無痛分娩でも帝王切開でも、形にこだわらず、妊婦健診も含めて全て無料にすべき。

 

〇何故に出産費用が保険適用にならないのか、むしろ不思議なくらいだ

 少子高齢化が叫ばれながら何故に出産費用が保険適用にならないのか、むしろ不思議なくらいだ。


 病気でない ということが保険診療かそうでないかの大きな分かれ目だ。正常分娩は、確かに病気ではないわな。

 ただ、冒頭のコメントをお読みいただいてお分かりのように、出産費用が保険適用になったことが少子高齢化問題に対する特効薬なのかどうかは怪しい。

 

 産科を診療科に持つ病院経営層のコメントだ。

 

〇保険診療では全国一律料金で運営できない

 地域により、賃金、地代など費用が違うのに保険診療では全国一律料金で運営できるはずがない。

 

〇十分なシミュレーションした上で保険適用導入を検討すべき

 現行の出産一時金制度と医療保険制度とを比べた場合、本当に負担軽減になるのだろうか。産婦人科の病院やクリニックへの影響はどの程度あるのだろうか。十分なシミュレーションした上で保険適用導入を検討すべき。


 総理の思い付き。

 のようなことになってしまうのか?はたまた諸問題が解決され、皆納得の保険制度導入が実現するのか?制度設計が大きなポイントになるのは間違いない。

 

 看護師からのコメントだ。

 

〇子育てのため訪問看護を選んだ

 訪問看護は、看護師が病気や障害を持つ方の自宅に訪問し、主治医の指示の下に看護を行う。訪問看護の職場には、土日・祝日休みも多く、基本的に夜勤はない。公的病院外科病棟に勤務していたが、妊娠して迷わず訪問看護師になることを選択した。日数や時間を選べる非常勤の募集も多いため、その中から仕事と子育てを両立できる現在の職場を選んだ。


 きちんと考え、きちんと選べば、仕事と子育ての両立は可能だ。

ということか。

 これから訪問看護師を目指す看護師は、時代の要請も背景に、ますます増えていくのだろうか?

 

 医業系コンサルタントはこんなコメントだ。

 

〇出産費用の保険適用によって産婦人科クリニックの経営環境は大きく変化

 最近産婦人科クリニックの収益が10年前と比べておよそ15%近く増加をしているように感じる。収益増の原因は、産婦人科医不足が総合病院や一般病院の産婦人科の規模縮小や廃止を招き、産婦人科クリニックに患者さんが来院するようになり、競合が少なくなっていることがあげられる。また、産婦人科の4院に3院程度は自由診療を取り入れているといわれる。出産費用保険適用の導入によって、自由診療中心の産婦人科クリニックの経営環境は大きく変わっていく。妊婦の減少が続くなか、保険適用に対応した事業モデルの準備を進めるべきである。


 なかなか考えさせられるではないか。競合の少なさ、自由診療でも選ばれている現況、そこに保険適用、出産費用の一時的な支払いが子を持ちたいと考える夫婦の抱える問題なのであれば、岸田総理の政策はニーズにピッタリ合っていることになるが…。

 保険適用となれば、一律なサービスレベルの整備が可能となる反面、当然これまでよりサービスレベルが下がるという可能性があるということも、我々は考えておかねばならない。

 

 最後に、幅広い世代のコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇今の若者には、坂本九のヒット曲、「明日」はもうやって来ない

 後期高齢者。我々が高校生、そして子育ての1980年前半は、毎年賃金が上がる「右肩上がり」の時代、将来設計ができた時代だった。1964年東京オリンピックの前年に発売された坂本九のヒット曲「明日があるさ」は、自分に自信が持てず、意中の女性に恋心を打ち明けられないにもかかわらず、前向きに日々を過ごす男子学生の思いをコミカルに表現している。その中で繰り返されるフレーズ「明日がある 明日がある 明日があるさ」は、当時の若者の将来への期待を表現していた。一方、将来不安がいっぱいで、将来設計が出来ない現在の若者に「明日」は、もうやって来ない‥‥。

 

〇イソップ童話の「アリとキリギリス」、高齢者はキリギリス派

 イソップ童話の「アリとキリギリス」は人生の過ごし方を二極化し、いずれかを目指すべきかに関して一つの答えを出してくれる寓話である。内閣府の定点観測調査「国民生活に関する世論調査」(2021年)では、今後の生活におけるスタンスとして、「貯蓄や投資など将来に備える」「毎日の生活を充実させて楽しむ」どちらに力を入れたいかと尋ねたところ、「高齢者はより『楽しむ派』に(キリギリス派)」「若年層はより『備える派』に(アリ派)」と答えていることが明らかになった。将来不安がいっぱいのアリ派の若年層は、子育てどころか毎日の生活でいっぱい、いっぱいかも。

 

〇人口ボーナスに頼らない国づくりを

 子育てを期待される世代の若者。国連人口基金(UNFPA)が4月19日公表した世界人口推計によると、インドの人口が今年半ばに中国を抜いて世界最多となるという。一方、中国の出生率は近年、急低下しており2022年には人口が1961年以来初めて減少に転じた。中国の急速な経済成長は、いわゆる“人口ボーナス”によるものといわれる。今回、与党や政府が打ち出した少子化対策の根底には、日本の高度成長を支えた“人口ボーナス(期)”への回帰・幻想があるようだ。政治家や官僚は、我々若者を「人口ボーナスの担い手」として押しつけて欲しくない。「人口ボーナスに頼らない国づくり」に矜持をもって臨んでもらいたい。


 人口ボーナスか。確かに戦後日本の復興、団塊の世代、そういった人口の多さで、経済的には何もかも良い方向に傾いた時代は確かにあった。我々は郷愁の思いでその時代を取り戻そうとしているのか

 SDGsや環境問題など、地球規模的にテーマ感が変化した現在、人口ボーナスへの回帰を主眼に置いた政策をとってしまうのは、もしかしたら、それは少し違うのかもしれない。

 現代を生きる我々は、未来を生きる世代にどんな日本を残すべきで、そのために今すべきことは、果たして何なのだろうか?

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>