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短信:【金沢工業大学】脳が不調のとき肝臓も同時に不調になりうることを発見

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【金沢工業大学】脳が不調のとき肝臓も同時に不調になりうることを発見

神経栄養因子BDNFモデルマウスを用いた“心身機能連携の研究”

金沢工業大学、徳島大学、香川大学、産業技術総合研究所からなる研究チーム

 

[リリースの要点]

 心身の健康は私たちの願いです。本研究では神経細胞を成長させる脳由来神経栄養因子(BDNF)が低下したとき、肥満、代謝の低下、そして今世界的に問題となっている肝臓の疾患、非アルコール性脂肪肝炎NASHを発症することを発見しました。

 本研究成果は、脳と肝臓の疾患としてのつながり、心身の健康の考え方について、新たな示唆を与えるものと期待されます。

 

[研究概要]

 「脳由来神経栄養因子BDNF」は脳の発達、記憶と学習をはじめとする脳の働きに必須のタンパク質として知られています。しかしその役割は、脳だけでなく、摂食、体重のコントロールにも関与することも報告されています。

 そこで本研究では、BDNFの発現量が低下したマウスの末梢臓器を調べました。その結果、BDNF発現低下マウスは、著しい脂肪肝を呈しており、驚いたことにその肝臓には非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を発症しておりました。

 マウス肝臓のRNA発現解析(RNA-seq)もNASHを発症していることを支持していました。

 金沢工業大学、徳島大学、香川大学、産業技術総合研究所からなる研究チームは、脳における脳由来神経栄養因子BDNFの発現低下が末梢臓器である肝臓の疾患発症に関与することを解明し、その成果をジョン・ワイリー・アンド/サンズ社の科学雑誌「The Jounal of Pathology」(02,October 2023)に発表しました。

 

*当研究の内容説明と今後への展望(一部)

NASHとは

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH、non_alcoholic steatohepatitis)は、メタボリックシンドロームを基盤病態とする肝臓の生活習慣病である。しかし、単なる脂肪肝とは異なり、脂肪組織にリンパ球や好中球が浸潤する,肝細胞が風船様に変性するといった炎症の発生、肝臓組織にコラーゲンが蓄積する線維化を顕著な特徴としている。これらの病態の持続は肝不全や肝癌などのリスクにもなり得るため、NASHの治療および診断技術の開発は世界的に急務となっている。

 

 尚、2023年6月にNASHは「代謝障害関連脂肪肝炎」へと疾患名が改められた。

 

学校法人金沢工業大学企画部広報課

 担当:志鷹英男

 電話:076-246-4784