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ホテルリネン業界のつぶやき

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 ~ダライ・ラマの教え~

 

 「地獄の沙汰も金次第」という言葉がる。どんな悪いことをしても、お金さえあればどうにでもなる、とい事らしいが、元々は水中でゆすって砂の中から砂金や米などをえり分けること。転じて、物、人物の精粗を選り分けるという仏教用語らしい。

 日本列島にも漸く桜前線が到来。この時期何処に行っても開花した桜を見ることが出来るのはインバウンドにとっては格別な感動だろう。桜が開花して我々も束の間1年のローテーションのスタート位置に立ち爽やかな気分になる。2月のインバウンドは2,788,000人で前年同月比89%増、コロナ前2019年比7.1%増とコロナ前以上に回復した。この調子で行けば2024年のインバウンド新記録達成は間違いない。

 コロナ感染症は第5類に変更されてからもう直ぐ1年になる。1年前から大きく変化したのはアメリカの金利とオーバーツーリズムだろう。数字が回復するに連れコロナ禍で眠っていた問題も湧き上がって来ている。

 また此処に来て中小・零細企業の息切れも垣間見える。観光名所でのインバウンド増加までは読めていたが、食事をする場所が不足して弊害が出ている。所謂、昼飯難民、晩飯難民が出ているのだ。30~40分待って漸く席に着いたかと思いきや人手不足で食事が出てくるのが遅い。挙句の果て、食事を終えるのに1時間半も要した。ホテルを沢山作るのも良いが、飲食店も同様に増やしてあげなくてはインバウンドに失礼ではないか、と同情する。

 飲食店というのは逃げ足が速い産業なので彼らの動きは経済先読みの参考になる。然し、インバウンドがコロナ前状態に戻っても未だに閉店が相次ぐのは異常に感じる。円安効果でインバウンド目当ての割高のお店は残っているが、我々庶民に手の届くお店迄が淘汰されているのを最近目の当たりにするようになった。

 政府が奨励している賃上げと人手不足のせいで未だにメニューのコストが安定しないのだろう。需給バランスが狂いだした為、コストが落ち着くまでは我々も淘汰の渦に巻き込まれるのは叶わない。

 結局のところ、円安で食材が高騰したのと、円安を謳歌しているインバウンド様の「ツケ」が庶民に回ってくるってことか?

 

 日本経済再生に賃金upが必要と言われ今後も引き続き賃上げを実施と経団連も推奨されているが、このまま毎年5%の賃上げが行われると時給は15年経ったら倍になる。という事は、物価も倍になっているという事か? 

 15年後はビッグマック単品が¥960って事に?米国のビッグマックが$5.58だから後9年経ったら日米のビッグマック価格が逆転するなんて、このまま経済成長を続け内部留保を蓄えるならまだしも、現在G7で一番弱い通貨で且つアジアで一番成長していない通貨である円にとってはとても信じ難い数字だ。

 

 外食産業と同じく逃げ足の速い産業に不動産投資事業がある。現在日本の不動産投資事業で成功している外資は殆どがコロナ前から仕掛けを行っていた業者ばかりであるが、昨今の人手不足での公共入札の不調を見ていると人手不足で遂に建設業にも受注能力の限界が来た感がある。北海道ニセコに於いても海外からの投資マネーにブレーキが掛かってきた様だ。

 

 人件費も含めた現地でのプロジェクトに掛かるコストが2年で3割上昇、過去10年では3倍に拡大。おまけに銀行融資の厳格化やその他規制も掛かり外資にとっては魅力が少薄れて来ていると聞く。コロナ前から投資している外資は既に元を取った筈なので逃げ道を探しているに違いない。違いはあるが、場所によっては既にバブルが弾ける兆候が出ている。

 

 外資は逃げ足が速いので日本企業も逃げ遅れない様に冷静な判断が必要だ。

 判断材料となるのは総量規制と金利だ。1990年に発せられたたった一発の不動産融資規制で日本経済はノックアウトされその後30年立ち上がれなかった。日本人はこの恐ろしさを熟知している筈である。

 故に、政府に先立つ地方で発せられる金融機関の規制は警鐘ととらえるべきである。

 

 金利に関しては出口戦略を明確にしている欧米の利下げ政策に対し、日銀の出口戦略が未だ見えない。過去20年以上低金利の世界で我々は過ごして来た為、金利に疎くなっている。住宅とか車のローンをお持ちの方はそれなりに敏感かもしれないが、こと会社の経費として金利がボディーブローの様に効いてくるのでこれからは金利の怖さも多少勉強しておいた方が良い。

 アパホテルでは支配人が事業計画を立てる際は社内金利8%で計算させていると代表が言われていたのを覚えているが、流石元銀行員だけあって経営に抜け目がない。低金利時代にあっても厳しい経営をされて来ているので業界TOPになっても不思議ではないと思う。逆に金利に疎い業者はやがてボディーブローに沈むであろう。

 

 人手不足でこれ以上受注を増やせない状況にあるという事は、これ以上の経済成長は望めないという事の裏返し。既に限界点に達している様に思え省エネ、賃上げ等と綺麗事を言っているが先ずは息切れしている所の燃料補給が必要ではないのか?自分の手取りが3割目減りして迄喜んで日本に出稼ぎに来る海外実務研修性もそろそろ日本に愛想がつきるのではないかと危惧する。その前に政府には抜本的な対策を講じて貰いたいものだ。

 

 此処に来て旅館・ホテル業界も勝ち組負け組が鮮明になりつつある。コロナ禍でいち早く人材が流出し業界で一番人手不足が深刻と言われた宿泊業にも4月から新入社員が多数入社しているのを聞くと少し安堵する。アパホテル 600人、星野リゾート750人等の人数を聞くと業界も絶好調かと思えてくるが、どうも此方は勝ち組負け組が鮮明になり勝ち組の事だけをクローズアップしているに過ぎない様にも思える。

 

 実際には、業界全体では人手不足の閉塞状態であり、業界淘汰の入り口に居るに過ぎないのかも知れない。

 

 器は増えど、従事する社員不足とゼロゼロ融資返済もあり収支を考えると稼働を落としてもこのままの方がマシなんて云う旅館・ホテルもあるくらいだから、このままでは年間6億泊が限界だろう。単純計算でも後3000万人誘致するなら最低でも1億泊のキャパと人材が必要だ。政府はツケを民間に押し付けるのではなく、インバウンド6,000万人誘致に向けコロナ後の出口戦略を考え民間をリードすべきである。

 

 「物質的な発展は人々に一瞬の快楽はもたらしても、長期的な幸福はもたらさない。この世界は依存しあって成立しているので世界の一部に起きたことも直ぐに全体に影響する。

 我々は何かを行う時自分のエゴに対してだけでなく、全体に対しても責任を取らねばならない」と、

 「普遍的責任感」を持つべきことを説いたのはダライ・ラマ14世である。

 

 現在のSDGsを先取りしている事に驚かされる。

<ホテル営業本部>