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ホテルリネン業界のつぶやき

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 ~登竜門~

 

 次のブランドはエルメスかカルチェですかね?遂にホテルのランク付けにミシュラン迄参入してきた。5つ星では物足らないのだろうか?アングロサクソンはランク付けがお好きなようです。自称「五つ星」と謳って於きながら、ミシュランにそっぽ向かれるホテルが出てきたりしたらかっこ悪い。また逆に星を謳ってないホテルがミシュランに評価されて新たに脚光を浴びるなんて言う新たな展開も面白い。

 格付機関にはくれぐれも公平な評価を期待したい。これは高級ホテル世界だけの話題で、益々我々庶民から遠ざかった雲の上の話の様に思えるのだが。

 

 ホテル業界は歴史的な円安を追い風にインバウンドが爆発的に増加中で様々なプレイヤーがホテル分野に参入する様になってきた。五つ星クラスから一つ星迄の広い範疇で海外ブランドと日本ブランドとの弱肉強食の熾烈な第4次ホテル戦争がこれから繰り広げられようとしている。雲の上のミシュランを羨ましいと眺めている場合ではなく、我々も戦火に塗れて(まみれて)いる事を実感し10年後に負け組に入らぬ様、業界の動向を見据え、手綱を締めた経営をして行かねばならなくなってきた。

 

 折角円安で税収も4年連続過去最高で国民の財布も潤ってしまったせいか調子に乗っているのか、6月21日に政府が閣議決定した「骨太の方針」に遂に次なる目標値インバウンド6,000万人及びその消費額15兆円を2030年迄に達成、と掲げてしまった。6,000万人を抱える宿泊施設が不足しているのに、もうこの有様だ。

 

 オーバーツーリズム対策も出来ていない。少子高齢化、人出不足が加速される中、あと5年足らずでこれら諸問題を解決して行くのは並大抵ではない。

 

 因みに、2021年の国連統計によると、6,000万人というのは、世界ビッグ3のフランス、スペイン、アメリカの8,000万人クラスは別として中国、イタリアレベルということになり世界のTOP5の仲間入りを指している。政府が言うように、あと50件ラグジュアリーホテルが不足していると言っているが、インバウンドはセレブだけではない。本当に受皿、インフラを整備、オーバーツーリズム対策をしてゆかねば大変な事故を起こす事にもなりかねない。

 

 先日もスペイン随一の観光都市バルセロナで大量の観光客受け入れに反対し「観光に制限を」とのスローガンを掲げるデモが行われたばかりだ。過剰な観光客に苦しめられ、町は住みにくくなっているらしい。

 地元当局によると、家賃が過去10年間で68%上昇した為、地元の不動産市場に物件を流通させる為、1万戸ある観光客向けアパートの賃貸を2028年迄禁止する事になったそうだ。

 

同じ様な事が京都でも発生しており外国人の市内不動産漁りで地価の上昇を煽ったり、バスの異常混雑、マナー違反で住民も迷惑している。ニュースでも地元の人は「ここを商業施設だと思っている。観光地ではない。」と悲痛な叫びが聞こえる様になってきた。また、祇園では舞妓パパラッチも出現し舞妓さんを追い回すのが旅行客の楽しみの一つになっている様で、京都の一部地域ではこの程営業・商業目的の写真撮影は禁止になってしまった。先日は中国の観光客が1階の銀行に大勢入り込み暑さ凌ぎをしていたりと、銀行もいい迷惑だろう。

 

 定額減税を実施しているにも関わらず今年の夏は、日本人は経済的余裕がないという事で大型旅行を取止める世帯多いらしい。ポストコロナで観光産業は一気に自動車産業に次ぐ第2の外貨獲得産業に躍り出たが、観光業を支える旅行者の4/5は国内旅行者であり、その国内旅行者が今夏の旅行を「やや自粛気味」というのが少し気になる。海外投資家が指摘する経済成長と賃上げのバランスがマッチしていないとの言葉に賛同する様に更なる賃上げを期待してのボイコットかもしれない。

 

 今回の閣議決定で発表された骨太方針には先に掲げた数値に加え地方創生及び地域に於ける社会課題への対応の中に「持続可能な観光立国の実現」が盛り込まれた。具体的には

・インバウンドの地方誘客

・観光地域づくり

・オーバーツーリズム対策

等を推進。

 成熟した観光地になる為の登竜門とは言え、更なる大きなトラブル発生前に上手く舵取りをお願いしたいものだ。

 

 インフラ整備、ルール厳守等、様々な課題が残される中、パリオリンピックは久々世界をモスクワ、ロサンゼルスみたいに世界を分断し、更にミュンヘン以来のイスラエル対全アラブの憎しみを抱えた暗い雰囲気で開催されようとしている。最悪のムードで終わる事の無いように、クーベルタン男爵のオリンピック理念に立ち返り日本選手には6,000万人達成への登竜門の一つとして平和の架け橋を作って戴く事を切にお願いしたい。

<ワタキューセイモア ホテル営業本部>