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短信:抵抗性アタマジラミの処方薬臨床試験が琉球大学で開始される

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抵抗性アタマジラミの処方薬臨床試験が琉球大学で開始される

 

 昨今、世界的大流行により国内でも感染拡大が危惧されたトコジラミだが、実はトコジラミはシラミではなくカメムシの仲間なのだ。人間に寄生する本物の「シラミ」はアタマジラミ、コロモジラミ、ケジラミの3種類がある。アタマジラミは人の頭髪に寄生して卵を産み、濃厚な身体接触やヘアブラシ、帽子などの身近なものの共有によって伝染する。頭がかゆくなり、耳の後ろや後頭部の毛根に楕円(だえん)形の卵のようなものが付く。5~11歳の女児に最もよくみられるが、ほぼ誰にでも生じる。特に保育園や幼稚園、小学校で広がりやすく、感染症は季節に関係なく年中発生する。コロモジラミは通常、衛生状態の悪い人、狭くて混み合った環境(兵舎など)に住む人にみられる。このシラミは人間に寄生するわけではないが皮膚に触れる衣類や寝具類に生息しており、それらを共有することで広がる。コロモジラミは稀に発疹チフス(発熱や激しい頭痛、極度の疲労感が現れ、数日後に発疹が現れる病気)、回帰熱(突然の悪寒とその後に高熱、重度の頭痛、嘔吐、筋肉痛や関節痛が起こり、ときに発疹が生じる病気)などの重篤な病気を媒介することがある。ケジラミは、カニに似た形のシラミで、主に陰部や肛門部の毛髪に寄生する。主に青年や成人の間で性的接触やタオル、寝具類、衣類などの無生物を介して伝染することもある。

 日本では第二次世界大戦前後にアタマジラミによるシラミ症が蔓延しており、米軍による有機塩素系殺虫剤(DDT)の散布によって流行は収束していた。その後、1971年に環境汚染や発がん性などの問題からこれらの薬剤の使用が禁止され、次第に集団感染が多く起こるようになった。アタマジラミに対する駆除剤が一時期なかったのだが、1982年にピレスロイド系有効成分を含んだシャンプーが発売され手軽に駆除ができるようになった。しかし、沖縄県内では2000年ごろから、市販の治療専用シャンプーでは効かない抵抗性アタマジラミの感染が拡大している。国立感染症研究所(06~10年)の全国調査によると、他県の抵抗性アタマジラミの検出率は10%に満たないが、沖縄は95.9%と突出して高い傾向にある。この抵抗性アタマジラミは、1990年代から欧米諸国で確認され、何らかの形で本土より先に沖縄へ持ち込まれたとみられる。

 東京の製薬会社と琉球大学は沖縄県内で広まっている「抵抗性」のアタマジラミの処方薬の臨床試験を開始した。既存治療で効果不十分なアタマジラミ症患者を対象としたランダム化二重盲検並行群間比較により、対象薬剤を頭皮及び頭髪に単回塗布した際の優越性を検証し、安全性を評価する。市販薬は2千~3千円と高額だが、臨床試験が成功し、病院で処方薬が出せるようになると中学生以下は実質無料で治療できるようになる。臨床試験では、医師がシラミの卵の確認や血液検査などを行う。約2カ月間で5、6回、最寄りの医療機関に通院する必要があり、負担軽減費として来院1回につき1人当たり1万~1万5千円が支払われる。

 

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/412-louse-intro.html

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