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短信:1型糖尿病の根治へ 世界初の医師主導治験開始

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1型糖尿病の根治へ 医師主導で世界初の治験開始

 

 厚生労働省によると、1型糖尿病は自分の組織を自身が攻撃してしまう自己免疫疾患系の病気であり、現在、罹患者数は国内に約10万人~14万人ほどとされている。この病気は、インスリンの産生と分泌を行う膵島(すいとう)のβ細胞が破壊されて体の中のインスリンが全く無くなるため、血糖のコントロールができなくなり、異常な高血糖状態になってしまう。高血糖状態が続くと糖尿病特有の合併症(失明・神経異常)が生じるほか、心臓や脳の血管が侵されると心筋梗塞・脳梗塞等の生命の危険性につながる。そのため、自分で血糖を測る必要があり、針で自分の皮膚を刺して血を採り1日何回も血糖を測定する。そして、血糖に応じたインスリンを自身で注射しなければならない(自己測定・自己注射)。また、この血糖コントロールは困難であり、時に生じる無自覚の低血糖発作(意識消失)も生活に大きな影を落とすばかりか、生命に関わる事態になりかねない。1型糖尿病は、若年者(子ども)の発症も多いのが特徴で、病悩期間が長いことも様々な問題を生んでいる。命をつないでいくために一生、注射を打ち続けなくてはならない子どもたちがいるのも事実であり、「治る」病気にすることが課題であった。

 徳島大学病院消化器・移植外科池本哲也医師は、1型糖尿病の根治を目指した、再生医療技術を用いた世界初の治療法を実証する目的の医師主導治験の準備が終了し、2025年3月24日にPMDA(医薬品医療機器総合機構)へ治験計画届を提出した。本研究は、「患者自らの細胞を用いて、再生医療技術で膵β細胞を再生し、これを自らへ移植する」という世界初の試みであり、科学的にも、社会的にも極めて大きなインパクトを持っているものである。徳島大学病院内には、橋渡し研究支援機関である岡山大学からサポートを受けた治験調整事務局が設置されており、早ければ今年夏ごろの第1例目の患者さんへの投与を目指している。この研究開発の優れた点として、自分の細胞を使用するため他人の細胞を使用するよりも安全性が高く、免疫抑制剤も不要であることや遺伝子導入などがないため、遺伝子のエラーは生じにくく、癌の発生や子孫への影響は極めて少ないこと、患者のタイミングに合わせた作製が可能な点が挙げられる。

 この治療法を1型糖尿病に悩まれる患者のもとへ届けるために、その安全性と有効性の一部を科学的に検証・検討する予定である。本医師主導治験はFirst-in-human 試験(世界で初めてヒトに投与される臨床試験)であり、この治験の検討を進めることにより、1型糖尿病を根治する全く新しい治療法が全世界に向けて生み出される可能性がある。

 

 

世界初の医師主導治験を始めます!~治験計画届を提出しました!~ – 国立大学法人 岡山大学

糖尿病 | e-ヘルスネット(厚生労働省)