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短信:きつ音における修学時の合理的配慮

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「きつ音」における修学時の合理的配慮に関する全国大学への初調査

 

 吃音は話し言葉が滑らかに出ない発話障害である。その症状には、単に非流暢なだけではなく、多岐にわたる。中核症状として、音や語の一部の繰り返しをする連発、言葉を引き伸ばす伸発、音や語が詰まって出ない難発がある。その他の代表的な症状としては、随伴症状や工夫、回避、情緒性反応が挙げられる。ここで挙げたその他の症状は中核症状に付随したものだが、青年期・成人期では中核症状が工夫や回避によって症状として表面に表れないことが少なくない。文部科学省によると、2022年において日本には吃音を含む言語障害を持つ児童・生徒は約1,495人いるとされている。

 きつ音のある大学生は、人口の1%存在するが、不登校や中途退学のリスクがあり対策が必要である。きつ音のある大学生の修学に対して、各大学は2016年から合理的配慮の提供を始めた。きつ音の学生に対する支援方法については、合理的配慮を受けるための根拠となる資料が必要である。この根拠となる資料は医師以外でも作成可能なのだが、この事は必ずしも広く知られていないのが実情であった。そこで、九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科の中川尚志教授、菊池良和助教、山口優実博士、佐藤あおい言語聴覚士、南愛媛病院の岡部健一院長、長崎県立大学の吉田恵理子准教授、筑波大学の飯村大智助教、目白大学の坂崎弘幸専任講師、大分県立看護科学大学の矢野亜紀子助教、金沢大学の小林宏明教授を含む、計14名で構成された日本吃音・流暢性障害学会の合理的配慮に関するワーキンググループは、2024年1月から3月の間に大学に対してきつ音学生に対する合理的配慮の実態を調査した。調査対象は日本全国の大学751校、回収率は19.3%(145校)だった。この調査によって、2022年度に合理的配慮を受けたきつ音学生は25名であるのに対し、2023年度に合理的配慮を受けた学生は47名と増加傾向であることを明らかとなった。また、合理的配慮の方法について回答した大学数は33校だった。その内容は、教員への吃音の周知、発表形式の変更、出席の返答の配慮、特定教科の発表を免除、外部の実習での配慮などが挙がった。また、合理的配慮の根拠となる資料として医師の診断書が最多だったが、言語聴覚士など外部の専門家の意見書も採用されていることも明らかとなった。

 2024年4月から私立大学も含め全国の大学等で合理的配慮が義務となったため、今回得られた知見は、修学に困難があるきつ音学生に広がる支援方法となるだろう。今後の展望として2025 年の秋頃には、2024年度、2025年度の大学での合理的配慮の提供の実態調査を行い、2024年に施行された「改正障害者差別解消法」の影響を再調査する予定である。

 

「きつ音」における修学時の合理的配慮に関する全国大学への初調査 | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)

吃音(きつおん)について|日本吃音・流暢性障害学会

(参考資料10)有識者会議参考資料