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短信:包括的遺伝解析から日本人のアルコールの効き方が3タイプに分類可能と解明

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包括的遺伝解析から日本人のアルコールの効き方が3タイプに分類可能と解明

 

 日本では、1922年に「20歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律」が制定され、飲酒年齢は20歳と決められている。諸外国を見てみると、近隣の中国は18歳以上、韓国は19歳以上となっている。ヨーロッパでは、ドイツは14歳から段階的に可能となり、イギリスやイタリアでは18歳以上から飲酒が合法となる。日本は、他国と比べ飲酒が合法化される年齢が遅い傾向にあるが、20歳未満の者の飲酒は大きな社会問題となっている。厚生労働省によると、20歳未満の飲酒は臓器障害を引き起こしやすくなったり、脳の発達や骨の成長、内分泌系へ大きな影響を与えたりするとされている。世界保健機関(WHO)の「Global Status Report on Alcohol and Health 2018」によると、アルコール関連疾患は世界的に重要な公衆衛生上の課題の一つとされており、アルコールの有害使用(健康被害や社会的・経済的な損失、事故・暴力・家庭問題につながる過度の飲酒)は全死亡の約5.3%に関与していると明かした。アルコール代謝には個人差があり、その違いは環境要因に加えて、遺伝的要因に影響を受けることが知られている。アルコール代謝に主に関与する遺伝子としては、ADH1B(アルコール脱水素酵素1B)およびALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)が知られており、東アジア人は共に特有の遺伝的多型を有している。しかし、このADH1BおよびALDH2遺伝子のみでは、感じる酔いの強さや気分の変化などを表すアルコール摂取後の主観的反応(SR :Subjective Response)や行動変化を十分に説明できない。

 理化学研究所(理研)生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの寺尾知可史チームディレクター(静岡県立総合病院免疫研究部長、静岡県立大学特任教授)、ファーマコゲノミクス研究チームの曳野圭子研究員、莚田泰誠チームディレクター、国立病院機構久里浜医療センターの松下幸生院長らの共同研究グループは、日本人のアルコール反応性に着目し、健常な若年成人を対象に包括的なクラスタリング解析(質の似たデータを自動的にタイプに分類する統計手法)を実施した。健常な日本人若年成人を対象として、SRの時間依存的変化を定量的に評価した。身体的な感覚の変化などを評価する3種類の評価尺度を用い、それぞれに含まれる計11の評価項目(サブスケール)を静脈内アルコールクランプ法(点滴によって血中のアルコール濃度を一定に保つ方法)による静脈からのアルコール投与後30分ごとに測定した。その結果、数値が大きいほど、各項目の程度が強いことを示す多くの項目のスコアが最初の30分後にピークを示し、一部は150分後にピークを示した。その後、評価項目の時系列データを主成分分析と階層的クラスタリングで解析した結果、評価項目は三つのクラスターに分類された。次に、同様手法によって参加者の属性を分類した結果、三つの明確な参加者クラスターが同定され、それぞれが特定の評価尺度クラスターと対応関係を示した。

 このような対応関係は、SRにおける個人差が、参加者側と評価尺度側の双方で共通する構造的なパターンを持つことを示唆している。これらの結果は、アルコールに対するSRが、参加者の個人差および評価尺度の構造の双方において、三つの異なるタイプに整理可能であることを示しており、日本人集団におけるアルコール応答の生物学的特徴を理解する上で新たな知見を提供するものである。今後、本研究で示された反応指標および個人の3タイプ分類は、アルコール反応性の客観的評価法としての有用性が期待され、アルコール関連疾患のリスクが高い個人の早期特定や、予防的介入の実装に向けた基盤となる可能性がある。本研究成果は、科学誌『Neuropsychopharmacology』オンライン版(6月21日付)に掲載された。

 

日本人のアルコールの効き方、3タイプに分類可能 -若年日本人を対象とした包括的遺伝解析から解明-(共同プレスリリース) | ニュース | 静岡県公立大学法人 静岡県立大学

 

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