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短信:健康診断データから年齢を高精度に推定することに成功

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健康診断データから年齢を高精度に推定することに成功

 

 日本では、働く人の健康を守るために労働安全衛生法によって事業者が定期的に健康診断を実施する義務がある。これは、病気の早期発見や労働者の健康維持を目的とした制度であり、血液検査や心電図、胸部X線など多岐にわたる項目が含まれている。特に、血液検査では糖尿病や高脂血症など生活習慣病の兆候を把握することができ、働く人の健康管理において重要な役割を果たしている。近年では、こうした健康診断のデータを単なるチェックにとどめず、AI技術と組み合わせて新たな活用法を探る研究が進んでいる。

 国士館大学体育学部スポーツ医科学科の羽田克彦研究室(羽田、横井)、数理医科学研究センターの伊藤挙主任研究員(元・本学体育学部教授)などの研究グループは健康診断データから年齢を高精度に推定することに成功した。本研究では、代表的機械学習アルゴリズムであるランダムフォレスト法を用いて性別を含む71項目の血液データから年齢を推定した。全国約1万人の一般健康診査のデータを用いて、血液検査データから年齢推定を試みたところ、性別を含む全71項目を使用した場合、9243件の訓練データセット(全体の80%)で高い精度R²=0.7010を達成した。さらに一般的スクリーニング検査に用いられる項目の中で加齢により特徴的に変動するデータ項目を抽出することにより、加齢と健康問題におけるスクリーニングデータの役割を調べたところ、糖尿病に関連するヘモグロビンA1cや、鉄代謝に関わるフェリチンなどが、年齢を推定する上で特に重要な指標であることが明らかとなった。これらの項目は、加齢に伴う身体の変化を反映するものであり、血液年齢の算出において高い寄与を示した。また使用する検査項目数を71から15に削減しても、予測精度はほぼ維持されており、簡易な検査でも一定の有効性が期待できる結果となった。これは、限られた項目でも加齢の傾向を捉えることが可能であることを示している。さらに閉経後の女性では推定年齢が高く出る傾向が認められており、性別や生理的変化が血液データに影響を与えることが示唆された。

 これらの発見から、ランダムフォレストモデルを用いた血液データからの年齢推定(血液年齢)は、身体的加齢状態の評価に十分な精度を有することが明らかとなった。血液年齢は、加齢と関連したさまざまな指標から算出される他の生物学的年齢と同様に、メタボリックシンドロームやフレイル症候群などの加齢関連問題を探索する上で非常に有望な手法であることが示された。

 本研究論文は、臨床検査および分析に関する専門誌JCLA(Journal Of Clinical Laboratory Analysis)の表紙(Vol39(14))に採用された。

 

本学・羽田克彦教授ら研究グループが健康診断データから年齢を高精度に推定することに成功|国士舘大学

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/dl/s0119-4h.pdf