◇「中医協、前回改定に続き入院時食事療養費を引き上げ 食材費や光熱費の高騰を受け対応、嚥下調整食や特別食も」から読みとれるもの
・食材費の高騰を踏まえ、2026年度診療報酬改定でも「食費の基準額」を引き上げ
・約30年ぶりの引き上げの後も「食料支出・消費者物価指数(CPI)」は増加
・嚥下食も特別食加算の対象に追加
■入院時食費基準額、2024年度・25年度に続き、2026年度改定で引き上げへ
食材費の高騰を踏まえて2024年度・25年度と「食費の基準額」を引き上げたが、その後も食材費高騰が続いている点を踏まえて、2026年度診療報酬改定においても「食費の基準額」を引き上げる。
厚労省は11月7日の中医協総会で入院時食事療養費の見直しを提案、食材費や光熱費の高騰が続く中で診療側、支払側とも反対は出ず、2024年6月と2025年4月に続く引き上げが行われる見通しとなった。特別食加算の対象となっていない嚥下調整食については、患者の栄養管理やQOL向上の観点から評価をする。行事食などの特別料金(1食あたり17円)についても、引き上げの提案に異論は出なかった。
入院時に必要な食費は、1食当たりの総額と自己負担を国が定め、その差額を保険給付として支給している(「入院時食事療養費(保険給付)」=「食事療養基準額(総額)」-「標準負担額(自己負担額)」)。一般病床、精神病床、療養病床に入院する65歳未満の者については入院時食事療養費において、療養病床に入院する65歳以上の者については、入院時生活療養費の食費において評価している。(図5 入院時の食費の概要)
1994年創設された入院時食事療養費は1日あたり1900円に設定され、1997年に消費税が3%から5%に引き上げられた際に1920円に増額された後は30年近く据え置かれた。諸物価高騰への対応として2024年6月に1食当たり670円、2025年4月に同690円に引き上げられたが、その後も食費の支出は増加してきている。中医協「入院・外来医療等の調査・評価分科会」が10月にまとめた検討結果では、委託業者から給食委託費の引き上げ要望があることや食事の質への影響が懸念されることなどが指摘されていた。(図6 入院時の食費の基準額について(令和6年度診療報酬改定等))
一般病床、精神病床、療養病床に入院する65歳未満の者については入院時食事療養費において、療養病床に入院する65歳以上の者については、入院時生活療養費の食費において評価。入院時の食事基準額については、食材費の高騰を踏まえて2024年度診療報酬改定「プラス30円」、2025年度には「プラス20円」の引き上げが行われた。約30年ぶりの引き上げとなり、その後も「食料支出・消費者物価指数(CPI)」は増加を続けており、病院は「全面給食委託の約7割、一部給食委託の約5割の施設が委託事業者から値上げを要望され、対応せざるを得ない状況にある」など厳しい状況に置かれている。(図7 食料支出・消費者物価指数(CPI)の動向)(図8 令和6年6月以降の給食事業者への委託業務に関する状況)
中医協で診療側委員から、「現在の1食当たり690円(2024・25年度の基準額引き上げ後)では給食提供が困難である」「給食業者から、委託(受託)額の値上げを求める。さもなければ業務を受けられないと迫られ、要望を飲まざるをえない状況である」という厳しい状況報告とともに、2026年度における基準額のさらなる引き上げを求める意見が出された。これに対し支払側の健保連理事は理解を示し、食費基準額は引き上げられる見込みとなった。
■「嚥下調整食」を「特別食加算」の対象に追加
高齢になると嚥下機能(食事を飲み込む機能)に問題が出るケースが多く、この場合、「嚥下調整食(嚥下食)」の提供が必要になってくる。対応を誤れば、「誤嚥」→「肺炎」につながってしまう。
「見た目を改善し、適切な栄養量を確保する」ことでエネルギー摂取量増加やADL改善の効果が得られるとの研究結果が報告される嚥下食は、「特別食加算」の対象となっていない。嚥下食は普通食よりも食材費が高く、最もコスト高の嚥下調整食と普通食の1日当たりの食材費の差は76円だったとの報告もあり、「有用性とコストを踏まえた評価を行ってほしい」「高齢の入院患者増加により嚥下食提供の場面が増えていく。高齢者の状態は様々で、個々の嚥下機能に合わせて食事を作る必要があり、病院側の負担が大きくなる」との要望を踏まえ、嚥下食を「特別食加算」の対象に追加する方向で検討する。(図9 特別食加算の概要と算定状況について)
さらに「1食当たり17円の特別食加算は、時代に合致していない」として見直しを求め、患者の栄養管理やQOL向上の観点から評価され引き上げられることになる。行事食やハラール食(イスラム教の戒律に沿った食事)など患者の求めに応じて提供される特別メニューの食事に対応した特別料金(1食あたり17円)についても、見直しの提案に異論は出なかった。

2025年もいよいよ師走を迎えた。年を経る度に月日が経つのを早く感じるのは、「ジャネーの法則」によるものなのかもしれないが(毎年書いているかもしれないので法則の説明は割愛する)、さらに筆者個人としてはもう一つ、残暑から秋、秋というよりは涼しい夏が終わったら、いきなり真冬になる感じ、これも影響しているのかな?と感じる。
この秋、日本列島を襲った熊被害。こういった現象は、地球は人間だけのものではないと分かっているものの、人間による、飽くなき利便性向上の欲求からもたらされた行動との因果関係は否定できないだろう。「バタフライエフェクト」というよりは、どれかの行動1つだけでなく、そのもろもろが絡まりあって起こった現象だ。つまるところ、土地開発が伴って結果として人間以外の存在にとっての自然が破壊された結果だ。最近の流行の土地開発としては、大規模太陽光発電というのもあるかもしれない。
熊被害に遭われた方やそのご家族、今も恐怖と隣り合わせの生活を余儀なくされておられる方々もおられるという現実もある。今後も何らかの対策が打たれていくのだろうが、先進国を除けば地球規模においてはまだまだ人口増が予見されているので、人間の利便性向上の欲求からもたらされる行動は過去よりも「SDGs」に沿ったものになるだろうことはあったとしても、絶対数が増える以上、自然環境への負荷がかかるのは間違いない。
人口が増え続けるというのは、前出の、言わば「負の側面」がある一方で、戦後日本が復興の中で経験してきた「人口ボーナス」のことを考えれば、経済成長という観点から見れば好ましいことなのかもしれない。「消費活動が増える」という点においてだが。
「健康」と「長寿」。もちろん現在の日本の重要課題である社会保障給付費の増大による財源問題等の側面が生まれてしまったことも否定できないが、日本は戦後の復興からこれまで、この2点は間違いなく実現したといって良いのではないか。
先日、北川景子主演の、危険ドラッグの密売に手を染めてでも、ひょんなことから知り合いになった女性格闘家と一緒に、子育てのために必死に生きようとする二人の女性をテーマとした映画を観た。そこまで(危険ドラッグの密売)しなければならないような経済状態の中にあっても、母と子二人、その友人(女性)との家族愛、そして対比的に描かれる、金銭的には比較的余裕がありながらも、家族愛とは全くかけ離れた家庭にいる母親像、映画のタイトルである「花」の印象的な使われ方…いろいろ考えさせられた。特にヴァイオリンを弾く小学生の女の子の演技が上手だった。
いくら生計のため、家族を守るためとはいえ、やっていることは決して褒められたものではないというのは大前提だが、それでも主人公に感情移入してしまわざるを得ないので、映画の鑑賞後もその家族たちの幸せを願わずにはいられなかった(※2)。
「生きること」とは「食べること」。
局地的には戦争とは無縁でいられ、衛生環境の向上、医療知見・技術の発達、産業の発展とともに、格差社会、貧困問題という歪みも孕みつつ、それでも豊かな食環境の実現が図られてきた日本。戦国時代には「人間50年」と言われていた頃からしてみれば、「人生100年時代」とまで飛躍的に寿命が延びた日本人。
仮に1日3食を必ず食べるとするならば、日本人は
3(食)×365(日)×50(年) ≒ 54,750回
の食事を採っていたのが、今やその倍、
109,500回の食事を採っている計算だ。
AIによれば、2024年末時点での日本の飲食店数は約100万店と推定されているそうだ。
戦国時代に飲食を生業とするような店があったのかは知らないが、寿命が倍に延びて約11万回外食が出来るようになったとしても、100万店舗ともなると、最大でもその1割の数の店舗にしかお世話になることが出来ない。
飲食店舗だけでなく、食事を採る方法はまだまだある。キッチンカー、仕出し弁当、コンビニ、デパ地下、自炊、お菓子で乗り切る、パーティー、給食も(例外として食事抜き、というのもある)。
かくも食事とは、人間の営みの中で切っても切り離せないものだということを物語っている数字だ。
あまりお世話になりたくないという心情はあるのだろうが、少なくともコロナ禍以降、その人数は減少傾向だが、毎日約117万人の患者が病院に入院している。つまり病院における食事、患者給食も、人によっては一生の約11万回の食事の内訳に何回かは入るであろう数字である。
今回のテーマは、中医協における、前回改定でも価格改定があったにも関わらず、食材費や光熱費の高騰を受けて入院時食事療養費を引き上げの議論がテーマだ。
コメントを紹介したい。
○田村憲久議員
入院時食事療養費について田村憲久議員は厚生労働大臣時から、「食材費や光熱費の高騰を踏まえれば、入院食の質を守るための費用引き上げはやむを得ない。ただし、低所得者や高齢者への配慮を徹底し、安心して入院できる環境を維持することが重要である」などと述べてきた。
遠足に行くならお弁当、キャンプに行くなら炊き出し、食事時に人が大勢集まるならその食事、災害時の避難場所でも食事の確保…と、食事の準備は何かの時に必ず念頭に置かねばならない事項だ。
ある意味、人種・性別・ステータスを問わず、生物である以上万人が必要とするのが食事(エネルギー補給と必要な栄養素の補給)だ。
続いて。
○厚労省官僚:林保険局医療課長
中医協で、林保険局医療課長は、入院時食事療養費の引き上げについて「食事は医療の一環であり、患者の病状に応じて必要な栄養量を確保することが重要。物価高騰を踏まえ、質の維持と公平な負担の両立が必要」との考えを示した。
「食事は医療の一環」。厚労省がこの視点を持っているのは非常に重要な事項だ。仮にそうでなければ、患者一人ひとりで「お好きにどうぞ」ともなりかねない。戦後の日本において基準寝具制度・基準給食制度という考え方が生まれる以前、入院患者と、またその家族にとって、入院とは一大イベントであった。入院のための寝具も患者自身が準備し、食事も自分で(あるいは家族が)準備する、それが当たり前の時代があったのだ。
厚労省の視点とは対照的だがこんなコメントを。
○財務省官僚
財務官僚は一貫して「食費は生活費であり、自己負担部分」という制度的整理に基づき、国費による追加支援には慎重である。食材費高騰への対応は必要と認めつつも、患者負担増を前提に議論し、病院経営支援は診療報酬改定など別の枠組みで対応すべきであるとコメント。
2024年度診療報酬改定において、20年ぶりに入院時食事療養費の単価が30円上がったのもすごいことなのかもしれないが、それも束の間、次の改定を待たずに2025年度から単価が20円上がったのである。
財源論に最も厳しい立場で臨む財務省も、点数増は必要と認めているというのが、やはり人間にとって、「生きること」は「食べること」であることの証左だろう。
但し「患者負担増を前提に」だ。保険財源(税金も一部入っている)を使うのでなければ、意外ともいえるほどの財務省の諒解である。
中医協委員のコメントだ。
〇中医協委員
【支払側】
物価上昇を踏まえれば、基準額の引き上げをせざるを得ない。一般的な食事は医療保険給付外とすべきであり、今回の基準額引き上げは「すべて患者負担」とすることが妥当(北川博康全国健康保険協会理事長)。
2024・25・26年度と3年度連続の患者負担増となるため、それに見合った配慮(適切な食事提供など)が必要。光熱水費の高騰を踏まえた基準額引き上げも、低所得者に配慮することを条件に了承する(佐野雅宏健保連会長代理)。
【診療側】
食材費が高騰しており、病院の給食部門の収支はマイナス(赤字)となっている。このためスタッフを減らす病院も一部にあるようだが、労働環境が悪化してしまう。患者負担の引き上げを再度お願いせざるを得ない。さもなければ食事の質が低下し、患者にも不幸な事態が起きかねない。光熱水費も高騰しており、ある程度の引き上げは致しかたない(島弘志日本病院会副会長)。
2024・25年度と2年度連続で食事の基準額を引き上げた。しかし、これでも物価高騰に追いつかない。入院時の食事には「栄養管理」という側面もあり、こうしたコストは「現在の基準額690円(1食)」を超えており、再度の基準額引き上げが必要だ。光熱水費についても同様である(城守国斗日本医師会常任理事)
この ひとりごと を編集している12月上旬、入院時食事療養費については「1食あたり40円上げてはどうか」、という案が厚労省によって中医協で示されたそうだ。いつ施行か、すべて自己負担増なのか、まだ決まっていないが、この、増えた単価「40円/食」をどうとらえるべきか。データ的なエビデンスがあって初めて国が上げ幅を示し、立場は違えど支払側・診療側も賛同していく過程の中、「まだ不足している」という肌感覚はおそらく間違っていないのだろうが。エビデンスとして示すにはまだ時間がかかってしまう。次のエビデンスが出たタイミングでも「まだ足らない」となるのかどうかはさておき、今この時も病院における食事は毎日3回提供され続けている…。
病院経営層のコメントだ。
〇地方中小病院:委託事業者からの一方的な値上げ要請に対応せざるを得ない。拒否すれば給食業務撤退のリスク
地方中小病院では、委託事業者からの一方的な値上げ要請に対応せざるを得ない。拒否すれば給食業務撤退のリスクを抱えている。
〇小野田赤十字病院:給食業務委託契約で「運営管理費」と「食材費」を分離契約とする方式を明記
小野田赤十字病院(山口県)は、令和8年度(2026年度)からの給食業務委託契約仕様書において、従来の「包括委託」方式から一歩進め、「運営管理費」と「食材費」を分離契約とする方式を明記した。食材費は単価制とし、積算根拠を明示するよう委託事業者に求めており、契約の透明性を高める先進的な事例として注目されている。小野田赤十字病院のように分離契約方式を導入すれば、診療報酬改定の増額分を食材費や人件費に適切に反映できる。
〇特別食は必要以上にコストがかかってしまう
特別食は、かつては糖尿病や高血圧、高脂血症への対応で「高いものを削っていく」場合が主だったが、近年は高齢者が増えたことにより食の細い患者に、どれだけ食べさせられるかが非常に大事。追加する部分の費用を勘案した特別食を作らなければならず、必要以上にコストがかかってしまう。
「一方的な値上げ要請」、「撤退リスク」、「運営管理費」と「食材費」分離、「特別食」、
当グループにおいても患者給食業務を提供しているが、お取引先でもある病院には、人件費の高騰、365日体制を維持するためにかかる管理コスト、食材費のコスト増、最近は特に米のコスト増、様々な要因が絡まりあい、大変心苦しいが委託金額の値上げをお願いせざるを得ない状況が続いている。それは介護系の施設に対しても同様だ。
日赤病院は公的病院なので、入札に関するルール策定や予定価格の見積、スケジュール管理等、それに携わる職員におかれては毎回悩ましいところだろう。なるほど「食材費」と「管理費」に分けての金額で札入れする必要があるわけだ。仰っておられる従来の「包括委託」方式では、金額の内訳の説明が難しいという面もおありだったことだろう。昨今の情勢からして、どういった方式の入札になったとしても、「入札」という行為で得られる最大のメリット(決められた仕様内でより安いコストで調達する)が、給食部門において実現できるかどうか、何とも言えない。
こちらの病院におかれては先進的な事例と捉えられているようだが、昨今、そういった契約方式は、筆者の知る限りそう珍しいことでもないのだが…。
少なくとも1食あたり最大40円、予定価格にオンできる可能性がでてきたという点において、発注側・札入れ側の緊張感に、若干の変化が訪れるのかもしれない。
医師のコメントだ。
○医師
「入所者・家族への説明が必要となる。食費は高額療養費制度の対象外であり、長期入院や療養病床利用者にとっては月数万円単位の負担増になるため、家族への理解を得る努力が求められる」。
「嚥下調整食は、摂食嚥下機能が低下した方の誤嚥性肺炎の予防や低栄養の改善に不可欠であり、その導入は利用者・施設双方にとって費用対効果が高い。ただし、通常の食事に比べて食材費や人件費などのコストは高くなる。実際は、中医協の調査による普通食との差76円以上のコストがかかってしまう。
お立場によって異なるが、食事は(たとえどこにいても必ずそれなりの対価を支払って)誰でも食べる(ことができる)ものだ、という前提で入院時食事療養費制度に関する議論において主張されるご発言をたまに見かける。
おおよそ学識経験者や諮問会議のメンバー(企業の経営層)がそういったご発言をされることが多いように見受けられる。
「3食食べられて当たり前、その前に先立つものか必ず必要で、それもみんな当然持っていることが前提で…」という論調だ。一般論として否定するものではもちろんないが、病院において提供される食事メニューの種類が如何に多いか(禁忌・アレルギー対応食、特別食、一口大、刻み食、ミキサー食、流動食 等々)、さらにそれを誤配膳することなく、365日、適時適温で安全に3食提供し続ける使命感・緊張感、そういったものを当然にご理解された上でのご発言であることを願いたい。
介護施設からのコメントも紹介したい。
〇次期介護報酬改定での食費引き上げは必須
医療機関以上に介護保険施設においても食材料費や人件費の高騰は深刻な問題であり、2026年度診療報酬改定で入院時食事療養費が引き上げられることで、次期介護報酬改定での引き上げが必須だ。
〇食事は、介護保険制度上は“生活費”扱い
食事は介護の質を左右する重要な要素だが、制度上は“生活費”扱いで、介護報酬に含まれないため、施設としては工夫の余地が限られている。
〇結果として在宅介護に偏り、家族の負担が増えるという副作用
食費負担が重いと、入所をためらう高齢者も出てくる。結果として在宅介護に偏り、家族の負担が増えるという副作用が懸念される。
食費負担が重いと入所をためらう高齢者…。
先日筆者が観た、北川景子主演の映画は、現実にはあり得ない完全なフィクションだ(今日の1食ですら食べることが出来るか分からない生活)、などという時代で、今はなくなっているのだろう。
今度はこんなコメントを。
○医業系コンサルタント:2026年度診療報酬改定の焦点、食費はまさに「医療と介護の連携」
医療保険では、入院時食事療養費は診療報酬で算定され、患者負担と保険給付で分担。食材費高騰に応じて毎年見直し。一方、介護保険では食費は生活費扱いであり、制度的な補填はほとんどない。基準費用額は設定されているが、実際の食材費高騰には十分対応できていない。2026年度診療報酬改定の焦点である「医療と介護の連携」が、まさに食費問題。
「診療報酬」の議論で「食費問題」が焦点か。食事は治療の一環であるということを如実に物語っているということなのか、何かが歪んでいるのか…。う~ん。
食事提供に関する事業者のコメントだ。
○患者給食委託業者:委託費の高騰、人材不足を背景に病院が給食業務を直営化する動きに対応
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢を考える病院が増えている。すべて委託会社に丸投げするにはリスクがあると考える病院が増えてくるのではないか。今回の入院時食事療養費引き上げを契機に、クックチル(またはニュークックチル)を活用し、病院が直営で給食を運営できるよう専門スタッフや食材供給を組み合わせて支援し「直営支援型」の取り組みが注目されるのではないか。
○学校給食事業者:自治体が頼りの学校給食
学校給食は、自治体ごとに給食費を設定し、保護者負担が中心。国の制度的補助は限定的。学校給食事業者から見ると、病院給食は制度的に守られているが、厳しい地方財政を考えると、学校給食は価格転嫁が難しい。
○外食産業:公的保険、国の補助ある病院給食とは、全く土壌が異なる
「病院給食は医療制度の一部であり、サービス産業としての自由度がない。食材費高騰や人件費増は共通課題だが、外食業界は価格転嫁が比較的容易である一方、病院給食は制度的制約が強く、診療報酬改定でしか調整できずタイムラグがあり、柔軟性に乏しい。外食では、ランチ価格を数十円〜百円単位で調整するなど、メニュー改定や値上げで柔軟に対応できる。
病院が直営するのをクックチル等の活用で直営支援か。確かに委託金額の高騰に対し、直営にして調理済食材をご購入されるというご選択をなさる施設もある。委託費がかからなくて済んだら、おそらくこれまで支払っていた消費税分(現在の税率10%)を含めて大きな金額がランニングコストとして浮いてくることだろうが、それを原資として食材購入、あとは人員確保と体制づくりだ。
当然、3食×365日の永続的な維持が求められるので、人員確保と運用に自信のある病院なら金額がこれまでの委託費内に大きく収まるなら、それはそれで良いのかもしれない。小さくしか収まらないのであれば、費用対効果の面で今後に少し課題が残ることになるかもしれない。
学校給食は病院給食と似ている部分もあるが、大抵、昼食1食のみで、学校のある日だけの対応だ。
外食産業は、それこそ柔軟な対応が可能だろうが、反面、競合も激しく、まさに群雄割拠、弱肉強食の世界だ。商品開発力とともに、集客面(マーケティング戦略)こそが最大の課題だ。
最後にこんなコメントを紹介して締めくくりとしたい。
○患者(または家族)のコメント
同じ「多床室」利用でも、医療保険:光熱水費370円/日、介護保険:居住費430円/日と、60円の差が発生し、負担額が異なる。医療と介護を行き来することが多い高齢者にとって「同じ生活費なのに制度で負担が違う」という不公平を感じてしまう。
入院時食事療養費の価格引き上げ同様に、病院の光熱水費370円/日が2024介護報酬改定時に介護保険側で見直された430円/日に合わせることも議論されている。
そういうことではないのかもしれないが、「不公平を感じる」ことはなくなる可能性が高くなった。
安い方に合わせることが出来た方が良いのかもしれないが…。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
(※2)…
映画のタイトルは「ナイトフラワー」。
特に印象的だったシーンは、餃子が大好きで、家計のことなど分からず無邪気に餃子が食べたいとせがむ我が子のために、お金がないので買ってもあげられないし作ってもあげられない中、偶然にも、ある飲食店が消費期限の関係で売り物に出せないのでゴミとして出された弁当を見つけてしまう。相当な葛藤の中、その弁当のうち3個を持ち帰り、翌日親子3人で(中には餃子も入っていたので)仲良く食べたシーンだ。小さな子どもは満面の笑み、小学生の女の子は、嬉しいのかもしれないが、おそらく訳あり弁当なのだろうということをなかば察して笑顔で食べ、子どもに笑顔を見せつつも、とても複雑な心境の母親(主人公 北川景子:この時はもう一人の女性と出会っていなかったので弁当は3人分、捨てられていたのは6個以上あった)。幸いにも腹痛や食中毒などを起こしてしまうようなストーリー展開はなかったが、おそらくこの時の主人公の心情としては、お金のため(家族のため)になら、(たとえコンプライアンス上問題のある行為であっても)何でもやってやろう、と決意したのだと思う。
おそらくこのシーンは、主人公が、家族を守り生き抜こうとする生存本能・母性本能と、人間の尊厳との狭間で動く心の葛藤を描き、そして「生き抜いてやる‼」と決意を固めた重要なシーンであったのだろうと筆者は感じた。
<筆者>




