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No.811 2026年度診療報酬改定 30年ぶりの本体プラス3.09% 「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化対応」が重点課題

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◇「2026年度診療報酬改定 30年ぶりの本体プラス3.09% 「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化対応」が重点課題」から読みとれるも

・改定の基本方針に「現役世代の負担抑制」を明記

・重点課題に「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」

・改定率、厚生労働・財務大臣折衝で「診療報酬本体3.09%」

 

2026年度診療報酬改定の基本方針に「現役世代の負担抑制」を明記

 厚生労働省は12月8日開かれた社会保障審議会医療部会(部会長:遠藤久夫・学習院大学長)で、「2026年度(令和8年度)の診療報酬改定の基本方針案」を示した。反対意見は出ず、部会が了承した。

 

 改定に当たっての基本認識として、①日本経済が新たなステージに移行しつつある中での物価・賃金の上昇、人口構造の変化や人口減少の中での人材確保、現役世代の負担の抑制努力の必要性、②2040年頃を見据えた、全ての地域・世代の患者が適切に医療を受けることが可能かつ、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制の構築、③医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進等による、安心・安全で質の高い医療の実現、④社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和-が提示された。

 その上で、改定の基本的視点と具体的方向性として、(1)物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応、(2)2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化、(3)安心・安全で質の高い医療の推進、(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上を示した。重点課題に、(1)の「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」をあげ、具体的方向性として、「医療機関等が直面する人件費や、医療材料費、食材料費、光熱水費及び委託費等といった 物件費の高騰を踏まえた対応」「賃上げや業務効率化・負担軽減等の業務改善による医療従事者の人材確保に向けた取組」を示した。

 今回の診療報酬改定の基本方針では、基本認識として「賃上げ・人材確保」の重要性が謳われる一方で、経済・財政との調和の欄に「現役世代の保険料負担 の抑制努力の必要性を踏まえながら」という文言が追記されたことが注目される。(図1 令和8年度診療報酬改定の基本方針の概要

令和8年度診療報酬改定の基本方針の概要

 

■中医協、2026年度診療報酬改定の意見書を取りまとめ、厚労相に提出

 社保審で「2026年度(令和8年度)の診療報酬改定の基本方針案」が了承されたのを受け、中医協は12月10日開いた総会で2026年度診療報酬改定に関して支払側、診療側がそれぞれ意見を開示。12日開いた総会で、公益側が両側の意見を併記した形で意見書を作成、上野賢一郎厚生労働大臣に提出した。

 意見書は、「物価や賃金動向に対応した改定が必要」と記載したものの、具体的数字や具体策まで踏み込まず、診療側の「十分な『真水』による財源を確保するべきであり、病院、診療所、薬局などを分断するような改定率議論ではなく、医療提供体制全体を俯瞰して改定率を決定する必要がある」、支払側の「診療所・薬局から病院へ財源を再配分する等、硬直化している医科・歯科・調剤の財源配分を柔軟に見直すこと」といった意見の併記(以下、支払側・診療側の主張)にとどまった。

 

●支払側の主張(要旨)

① 長期的な物価・賃金停滞の中で高齢化・医療高度化により医療費が増加。被保険者・事業主の保険料負担は限界に達している。

② 医療経済実態調査結果から、病院経営の安定化と医療従事者の賃上げは必要。ただし病院と診療所・薬局間、病院同士でも機能・施設別に経営格差が存在

③ 地域医療構想・制度改革の方向性:限られた医療資源を有効活用し、安全・安心・効率的な医療を目指す。スピード感を持った取り組みが必要。

④ 診療報酬改定に関する基本認識:基本診療料の一律引上げは患者・保険料負担増につながり妥当でない。医療機能の分化・強化・連携、経営マネジメント強化、DX・ICT活用による効率化が重要。

⑤ 改革の方向性:保険料負担抑制と給付充実の両立を図り、国民皆保険制度を持続。医療機関・薬局の経営健全化と医療従事者の賃上げを確実に担保。税制・補助金との役割分担を前提に優先順位を意識した診療報酬改定。診療所・薬局から病院への財源再配分など、医科・歯科・調剤の硬直的配分を柔軟に見直す

⑥ 医薬品・医療材料の対応:ライフサイクルに応じた市場の棲み分け。根拠に基づく価格設定と適切な使用方法。費用対効果評価制度のさらなる活用。

 

●診療側の主張(要旨)

① 急激な物価高騰・人件費上昇に診療報酬改定が追いつかず、医科・歯科・薬局で閉院や倒産が過去最多ペース。医療提供体制の崩壊を防ぐため、経営健全化が早急に必要

② 診療報酬の役割:医学の進歩・高度化対応、医療従事者確保に不可欠。令和8年度改定では「真水」による大胆な財源上乗せが求められる。

③ 医療経済実態調査結果から、 給与費は伸びているが、最低賃金・人事院勧告・春季労使交渉の賃上げ幅に未達。医療人材の他産業流出が続き、医療提供体制に支障の恐れ。

④ 費用面の問題:医療機関の諸費用・歯科材料価格が上昇。薬局では医薬品供給不足や管理コスト増加。自助努力では対応困難。

⑤ 働き方改革・DX:令和6年4月開始の医師等働き方改革は効果が認められており、継続的な見直し・評価が必要。医療DXは業務効率化・職場環境改善に有効であり、導入・維持費用を含めた支援が必要。

⑥ 改定の方向性:令和8年度診療報酬改定では十分な「真水」財源を確保。病院・診療所・薬局を分断せず、医療提供体制全体を俯瞰して改定率を決定。公定価格で運営する医療機関が安定的に賃上げ・人材確保・物価高騰対応を行える体制整備が急務。

 

■「診療報酬本体プラス3.09%、薬価・材料価格マイナス0.87%(総額ベース)」で決着

 2026年度診療報酬改定を巡り、上野賢一郎厚生労働大臣と片山さつき財務大臣との大臣折衝が12月19日行われ、「診療報酬本体プラス3.09%、薬価・材料価格マイナス0.87%(総額ベース)」で決着した。本体3%超は1996年度以来30年ぶり。全体としては2014年度以来のプラス改定となる。診療報酬本体プラス3.09%の内訳は、賃上げ対応1.70%、物価対応0.76%、光熱水費(食費含む)0.09%、その他過去の物価対応0.44%、政策改定0.25%、外来・在宅、調剤報酬の適正化マイナス0.15%。

 

 2026年度診療報酬改定が一定の決着を見たとの報道を受けて日本医師会は12月19日、「日本医師会は、令和8年度診療報酬改定に向けて、インフレ下における賃金・物価上昇への対応として、純粋に財源を上乗せする”真水”での対応が必要だと強く主張してきた。公定価格で運営されている医療・介護分野は、賃金・物価上昇を価格に転嫁することができず、経営状況が著しく逼迫しているが、今回、通常の改定とは別枠で賃上げ、物価対応のための財源を一定程度確保いただいたとのことである。政府・与党はじめ多くの関係者の皆様に医療機関等の厳しい経営実態をご理解いただけたものと実感し、大変感謝している」「今後は中医協での具体的な配分の議論に移る。すでに『令和8年度診療報酬改定の基本方針』は、厚生労働省社会保障審議会医療部会及び医療保険部会での議論を踏まえて、『改定の基本的視点と具体的方向性』として、決定されている。そこでは、1.物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応【重点課題】 2.2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進 3.安心・安全で質の高い医療の推進 4.効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上 の4点が挙げられている。診療報酬だけではなく、税制、補助金、支援金、さらには文部科学省からの大学病院への運営費交付金および私学助成金など、あらゆる手段もフル活用して、国民の生命と健康を守るため日本医師会は総力を挙げて取り組んでいく所存である」との見解を公表した。

 

 


 

 ジャッキー・チェンもだいぶお年を召されたなぁ。昨年公開のベスト・キッドレジェンズで久々にスクリーンに登場したジャッキーを観てそう感じていた。

 なんのなんの、ところが昨年12月公開映画、マカオを舞台としたアクション映画「シャドウズ・エッジ」では、現役を退いた元警察官・黄徳忠(演:ジャッキー・チェン)の、そのお年を召された風貌からは想像もできない、当時の若者が熱狂した「プロジェクトA」や「スパルタンⅩ」を彷彿とさせるような圧巻のバトルアクションシーンに、140分以上の長編にもかかわらず、時間を忘れてしまうほどに没入、しかも非常にスカッとさせられた。エンドロールにはジャッキー・チェン映画お約束のNGシーンもあり大満足。帰り道に思わず口笛が出てしまうほどの爽快感であった。他にも大作のあった年末映画だが、筆者の1押しは間違いなく「シャドウズ・エッジ」だ。

 長年にわたるジャッキー・チェンの飽くなき挑戦心には頭が下がる思いだ。

 

 記憶に新しい、同様に昨年12診療報酬の改定率が「プラス改定」との報道

 筆者が我が業界に勤め出したのは今から約25年くらい前だったか。例えば2000診療報酬改定率本体+1.9%だった。それまでは当然プラス改定が前提と思われていた診療報酬改定。1998初の実質マイナス改定(本体+1.5%薬価マイナス2.8%)を皮切りに、医療業界に長い寒波が到来した(といっても、医療費全体としてはほぼ毎年「過去最高」を更新し続けているのだが)。

 件のジャッキー・チェンが初めてスクリーンに登場したのは、1962年公開の香港映画『大小黄天霸』だそうで(当時8才)、1970年代にはブルース・リー主演作『ドラゴン怒りの鉄拳』(1971)などにスタントマンとして出演、その後トップスターへと駆け上がっていったのはご存じの通りだ。

 そのジャッキー・チェンが生きてきたのと同時代、日本の診療報酬どのような変遷を辿ってきたのか

 生成AIに何度か質問を投げかけた。

 文章中の改定率については本体部分に関する記載に統一しているので、実質改定率(薬価等マイナス部分を差し引いた改定率)ではない。

 また、2000年代に至るまでの本体部分改定率については、生成AIが導き出した数値を筆者が確認・検証し、修正を加えてはいるものの、その正確性については少し怪しい部分があるかもしれないので、そこはお含みおきを

 


1. 1970年代:高度経済成長と医療費高騰の時代

 1970年代は、日本の高度経済成長期の終焉と、それに続く石油危機による「狂乱物価」に見舞われた激動の時代でした。この時期、国民皆保険体制の下で医療へのアクセスが容易になり、国民医療費が大幅に増大しました。

1970年代:大幅なプラス改定(高成長・福祉元年)

1972年 (昭和47年): +13.7%(大幅引き上げ、オイルショック前の景気拡大期)

1973年 (昭和48年): 福祉元年、老人医療費無料化(診療報酬の改定率ではないが、医療費が増大)

1974年 (昭和49年): 2月1日から+19%、同年8月1日から+16%

 

 石油危機後の物価上昇に対応するため、診療報酬は大幅に引き上げられました。特に、1974年には2度にわたる改定で35.0%もの引き上げが行われました。その後も、1976年には9.0%、1978年には11.6%の引き上げが実施されています。

 診療報酬の大幅な引き上げに伴い、国民医療費も大きく増大しました。

 この時代は、医療提供体制の拡充と、医療サービスへのアクセス向上に重点が置かれていたと言えます。


 筆者がこの世に生を受けたのはこの頃だ。なるほど「福祉元年」、「医療提供体制の拡充」か。量的な整備のための点数誘導だった側面が強い。しかも診療報酬改定が毎年行われていたりしてもいる。

 改定率は「%」で表記される。この頃の国民医療費の絶対額は今より確実に少なかった筈だ。現在の3.09%と過去の35%、数字上は10倍以上の差に見える。現在は1%プラスになると約4,800億円の財源が必要だと言われている。3.09%となると、つまり約1.4兆円だ。

 では絶対額から見た時、果たして現在と当時、どれだけの差があったのだろうか。

 調べてみると、

 1974年度の国民医療費は 約5兆3,786億円(前年度比+1.4兆円増)

 だ。なので、

 5.3兆円‐1.4兆円=3.9兆円(←1973年度の国民医療費概算)

 単純に考えると35%の改定で1.4兆円(!!)の財源(患者の自己負担も含んでいる)が使われたと考えられなくもない。

 なので、今回の本体+3.09は、たとえ一桁台と言えども、予算上は1974年規模に匹敵するくらいのプラス改定なのかもしれない

 しかしだ。3.09%というプラス改定でもなお、「(おそらく)それでも全然足りない」現状は、診療報酬で禄を食む人の数が1970年代と2025年代では圧倒的に違うことに起因しているのだろう。つまりトータル金額は確実に増えたが一人当たりの分け前が減った」ということなのだろう。

 


2. 1980年代:医療費抑制への転換期

 1980年代に入ると、増大し続ける国民医療費が国の財政を圧迫し始め、医療費の抑制が重要な政策課題として浮上しました。

 国の予算編成において社会保障関係費の抑制策が講じられるようになり、医療保険制度においても医療費増加の抑制が大きな課題となりました。これに伴い、診療報酬についても引き上げ幅の抑制策が進められました。

 高齢者医療費の無料化制度が見直されるなど、医療費抑制に向けた様々な改革が試みられました。

1980年代:抑制路線の始まり

1981年 (昭和56年): +8.1%?

1984年 (昭和59年): +2.8%

1985年 (昭和60年): +3.3%

1986年 (昭和61年): +2.3%

1988年 (昭和63年): +3.4%


 1984年から1986年までには3回ほど診療報酬改定が行われたようだ。

 抑制路線とはいえ、今からすれば考えられないようなプラス改定だったようだ。また、1988年以降、診療報酬改定が2年に1度行われることが暗黙の了解になったようだ。

 因みにチェン史はこんな感じだ。

1983年 (昭和58年): プロジェクトA 公開(日本での公開は1984年)

1984年 (昭和59年): スパルタンX 公開

1985年 (昭和60年): ポリス・ストーリー/香港国際警察 公開

1987年 (昭和62年): プロジェクトA2史上最大の標的 公開

 


3. 1990年代:バブル崩壊と医療費抑制の継続

 1990年代は、バブル経済の崩壊と長期的な景気低迷に見舞われ、国家財政は一層厳しさを増しました。医療費抑制の流れは継続され、効率的な医療提供体制の構築が模索されるようになりました。

 抑制傾向の維持: 1980年代に引き続き、医療費抑制の傾向は維持されました。

 医療制度改革の議論が深まり、後の介護保険制度の創設などにつながる基盤が作られ始めた時期でもあります。

1990年代:バブル崩壊と低成長、薬価引き下げ

1990年 (平成2年): +3.7%

1992年 (平成4年): +5.0%

1994年 (平成6年): +2.7%(この頃より実質的な抑制が強まる)

1996年 (平成8年): +3.4%(入院時食事療養費の一部負担、付添看護料廃止10月から)

1997年 (平成9年): +1.7%(臨時改定:消費税率が3%→5%に、薬価の引き下げが主)

1998年 (平成10年): +1.5%(実質改定率において初のマイナス改定、実質-0.3%)


 プラス幅もみるみる縮小し、ここでいよいよ、初のマイナス改定が登場した。

 一方、チェン史は

1991年 (平成3年): プロジェクト・イーグル 公開

1992年 (平成4年): 酔拳2 公開

1995年 (平成7年): レッド・ブロンクス公開(全米No.1ヒットを記録)

1998年 (平成10年): ラッシュアワー 公開(クリス・タッカーとの共演)

 と、上げ潮傾向だ。

 


2000年 (平成12年): +1.9%(介護保険制度の導入、医療と介護の連携が課題となり始める)

2002年 (平成14年): -1.3%(小泉政権下、「聖域なき構造改革」)

2004年 (平成16年): ±0.0%(医療費抑制の厳しい方針が維持)

2006年 (平成18年): -1.36%(医療機関経営に影響大、医療現場から厳しい声が)

2008年 (平成20年): +0.38%(医師不足や地域医療の崩壊が社会問題、プラス改定に)

2010年 (平成22年): +1.55%(微増ながらプラス維持、医療提供体制安定化を目指す姿勢)

2012年 (平成24年): +1.38%(東日本大震災後の復興も課題、医療提供体制の維持重視)

2014年 (平成26年): +0.73%(消費税率5%→8%、消費税増税分を補填する形)

2016年 (平成28年): +0.49%(医療費抑制の必要性を認識しつつ、戦略的なプラス改定に)

2018年 (平成30年): +0.55%(地域包括ケアシステム推進、医療介護の連携強化)

2020年 (令和2年) : +0.55%(医師の働き方改革推進、地域包括ケア推進、ICT活用)

2022年 (令和4年): +0.43% (新型コロナ対策継続・強化、医師の働き方改革・負担軽減 等)

2024年 (令和6年): +0.88%(医療DXの推進、医療従事者の賃上げ・働き方改革 等)

 

2025年 (令和7年): ベスト・キッドレジェンズ、シャドウズ・エッジ公開

2026年 (令和8年): +3.09%(?)


 2000年以降の改定率については、本体部分はプラスでも、薬価部分のマイナスを加算すると全体としては実質マイナス改定となった時の方が多い。

 同時期のジャッキー・チェンのヒット映画については、2025年以外は割愛させていただいた。

 意外にも、1970年代から2000年代にかけての改定率については、網羅的な情報がなかなか見つからなかった。そのため若干事実と異なる部分があるかもしれないので、そこはご容赦を。

 あらためてこうやって整理するのも勉強になるなあ。

 

 コメントを紹介したい。

 

○高市首相が厚生労働・財務の大臣折衝に出席したのは、異例

 12月19日午後、高市首相が首相官邸で上野賢一郎厚労相と片山さつき財務相と面談し、最終的に診療報酬の改定率を決定した。首相が厚生労働・財務の大臣折衝に出席したのは、異例。賃金・物価高が医療現場に深刻な影響を及ぼす中で、日本医師会ら医療関係団体は大幅なプラス改定の必要性を強調。2025年度補正予算の決定に際し、高市首相は「賃上げに取り組む医療機関で働く従事者に対し、プラス3%の半年分の賃上げ」を行うことを明言していた。


 「責任ある積極財政」を標榜された高市政権だからこそ実現できた数字、ということが一層際立つようなエピソードである。

 

 続いて。

○田村元厚生労働大臣:「官邸が分かっていても、財務省をねじ伏せなければならない」

 自民党国会議員らで構成する「社会保障を守る会」(代表:田村憲久・元厚生労働大臣)は12月18日、自民党本部で緊急集会を開催し、診療報酬改定を巡り同日夕方に高市早苗首相へ申し入れる決議文をまとめた。田村氏は集会のあいさつで「官邸が分かっていても、財務省をねじ伏せなければならない。医療や介護、福祉分野で働く方々は940万人おり、全労働者の14~15%くらいだ。ここの賃金が上がらなければ、日本の国で働く方々の所得が増えるわけがない」と強調した。


 「ねじ伏せる」か。集会に集まった国会議員の決意と、国の金庫番へのある意味、「敵意」を感じる。しかしそうなってしまうと、毎回中医協等で多くのエビデンスによって積み上げられてきた議論は一体、どこへ行ってしまったのか。一方でそう感じないでもない。

 一般人には想像もできないような、高度な、そして実のところ非常にシンプルな駆け引きが、おそらくあったのだろうが…。

 

 続いては上野厚生労働大臣。

○上野厚労相

 12月19日記者会見で上野賢一郎厚生労働大臣。「保険料負担の抑制も大事であり、同時に、賃上げ、物価高騰に適切に対応することも必要。しっかりと覚悟を持って調整にあたりたいと考えている。」


 プラスと抑制。調整。

 筆者は観たことがないが過去に「冷静と情熱のあいだ」という映画があった。

 この表現は映画外でも「理性と感情の葛藤」や「客観性と主観性の両立」といった意味合いで使われ、ビジネスや人間関係、創造的な活動など幅広い文脈で「理想的な状態」として捉えられるのだそうだ。

 「理想的な状態」か。すべてのステークホルダーが「理想的」と感じることができる状態とは果たして?…

 

 続いて。

○財務省関連

 経済財政諮問会議は12月5日で片山財務大臣は、「診療報酬改定では、データに基づき経営の改善や処遇改善につながる適切な対応を講じつつ、保険料負担軽減のための外来医療や調剤報酬の適正化に取り組む」との考えを表明した。その他、OTC 類似薬の薬剤自己負担見直しなどにも言及した。

 

○経済財政諮問会議委員

 12月5日の経済財政諮問会議は、「社会保障改革の新たなステージにふさわしい予算編成」とすることなどを盛り込んだ2026年度予算編成の基本方針を答申。会議後の会見で、民間議員からは、▽医療・介護分野へのAI、ロボットなど、テクノロジーの導入促進、▽社会保障改革の新たなステージに向けて、2026年度予算編成、診療報酬改定、制度改正に前例にとらわれずに取り組む、▽当面の対応が急がれる課題として、インフレ下における医療・介護給付の在り方と現役世代の保険料負担抑制の整合性を確保する、▽社会保障制度を豊かで幸せを実感できる成長経済・成長社会にふさわしいものへと再設計する、▽給付と負担の将来推計を示すとともに世帯類型別に分かりやすく「見える化」する、▽経済全体の中で財政を把握する観点から、国・地方に加えて社会保障基金を含めた一般政府の部門別フローを示す――などの意見があった。


 さすがに本体プラス改定となると、その上で削減効果を図る施策としては、現時点での手の内を全て出し尽くしたかのような財務省のコメントだ。ただ、「外来医療」と「調剤報酬の適正化」となると、今後の診療報酬改定の短冊議論では波乱を起こす可能性もある。

 経済財政諮問会議の意見については、この段階では「ごもっとも」的な内容だ。

 

 病院団体のコメントだ。

○日医会長:インフレ下での『今後の道しるべ』となる極めて重要な改定

 松本日医会長。「政府・与党はじめ多くの関係者の皆様に医療機関等の厳しい経営実態を理解いただけたものと実感し、大変感謝している。インフレ下での『今後の道しるべ』となる極めて重要な改定となった」。

 

○日病会長:政府の思い切った決断

 「30年ぶりの3%台ということで、政府の思い切った決断」(相澤日病会長)

 

○国立大学病院長

 「当初は(改定率が)1%と2%の間なんていう噂があったが、それを超えたということで、大変嬉しい。追い風になった非常に大きな額となった」「職員一同安心している」「安心」「延命できる」(国立大学病院長会議の定例記者会見に出席した各病院長)


 「道しるべ」とは、今後の改定の考え方ということなのだろうか。

 今改定の重点課題として「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」が(1)項目に挙がっているので、普通に考えれば、その環境が変わっていなければ(インフレ傾向)、優先度はともかく2年後も「プラス改定」が続きそうな方向性にも見える。

 

 病院経営層のコメントを複数紹介したい。

○病院経営層

 「本体3.09%は30年ぶりの高水準で、政府として医療現場の危機感を一定程度受け止めたと評価している」

 

 「しかし、これは“増益”ではなく、物価高・人件費高騰で生じた赤字を埋めるための応急処置に近い」

 

 「3.09%はすぐに溶ける 。電気・ガス料金の高騰は大規模病院で年間数千万円〜億単位の負担増になっている」

 

 「給食・衛生材料・医薬品などの原価上昇は診療報酬に転嫁できず、固定費の圧力は続く」

 

 「本体プラスでも、薬価・材料価格の引き下げや物価高騰を考えると、実質的な収益改善効果は限定的です。特に急性期病院では、入院基本料の評価や働き方改革関連の対応が収支に大きく影響する。病院ごとに“どの領域で収益が伸び、どこが圧迫されるか”を精緻に分析する必要があります。」


 そうなのだ。病院経営層から見た風景は、たとえプラス改定といってもこう見える筈なのだ

 しかし、報道面ではそのような論調になっていない、むしろ、社会保障改革の緩みを咎めるような論調の方が強いと感じるのは筆者だけだろうか。

 

 続いて看護師。

○看護師

 「夜勤の負担は限界に近い。処遇改善があっても、離職が止まらなければ意味がない」

 

 「診療報酬の本体が3.09%上がることは評価するが、現場の人手不足や業務負担の重さは依然として深刻です。賃上げや働き方改革につながるかどうかが、看護師の離職を防ぎ、患者さんへのケアの質を守る上で最も重要だと感じている」

 

 「今回の改定は前向きな一歩だが、看護師の処遇改善と人員確保が伴わなければ、医療の質と安全は守れない。診療報酬だけでなく、タスクシフトの制度整備や現場の業務負担の見直しなど、総合的な支援が必要」


 …ですね。

 

 薬剤師からも。

○薬剤師

 「本体3.09%の引き上げは前向きな一歩だが、薬価改定や医薬品供給不安の影響を考えると、薬剤部としては依然として厳しい状況が続く。安全な薬物療法を支えるためには、病棟薬剤師の配置や業務負担の見直しなど、診療報酬以外の制度的な支援も不可欠」

 

 「薬剤師の専門性は、医薬品の適正使用やチーム医療の質に直結する。今回の改定は一定の評価ができるものの、薬価差益の縮小や供給不安への対応など、薬剤部の負担は増す一方です。診療報酬だけでなく、配置基準やタスクシフトの制度整備を含めた総合的な支援が必要である」


 配置。負担は増す一方。タスクシフト。

 

 続いて。

○コメディカルスタッフ

【理学療法士】

 「診療報酬の引き上げは評価しますが、リハビリの需要増と人員不足のギャップは依然として大きい。質の高いリハを提供するためには、配置基準や評価体系の見直しが必要」

 

【管理栄養士】

 「物価高で食材費が上がり、栄養管理の質を保つための工夫が限界に近い。栄養管理加算の評価が十分とは言えず、専門性が報酬に反映されにくい」


 人員不足。食材費高騰。加算評価不十分。

 報道の論調とのギャップを感じる。

 

 続いてのコメントを。

○医業系コンサルタント:“構造改革を進めるための時間を買った”改定

 「本体3.09%は前向きなメッセージではあるが、病院の7割が赤字という構造問題を解消するには不十分。診療報酬だけで持続可能性を確保することは難しく、タスクシフト、地域連携、DX、医療機能の再編など、制度と現場の両面からの改革が不可欠。今回の改定は“構造改革を進めるための時間を買った”と捉えるべき。」


 なるほど。

 「止血」→ プラス改定 

 して

 「外科手術」→ 構造改革推進

 プラス改定は止血のため、か。

 そうすると、先ほどの「道しるべ」の意味合いとは、少し異なった見解として捉えられなくもない

 

 最後にこんなコメントを。

○患者(または家族)

 「診療報酬が上がると、結局は患者負担に跳ね返ってくる。病院の経営が厳しいのは理解しているが、私たちの生活も物価高で苦しい」


 今回紹介したコメントは、すべて「インフレ基調」が背景としてある。

 何もかも値上がり基調だ。

 

 2026年1月。さて今年はどのような1年となるのか。どのような1年とするのか。

 我が業界はどうなるのか。ジャッキー・チェンの新作映画はどうなるのか。

 

 今年もワタキューメディカルニュースをよろしくお願いします

<ワタキューメディカルニュース事務局>