職場トイレの快適性がウェルビーイングにつながることを示唆
文部科学省によるとウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に良い状態にあることをいい、短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含む概念とされている。現在、経済先進諸国においてはGDPに代表される経済的な豊かさのみならず、精神的な豊かさや健康までを含めて幸福や生きがいを捉える考え方が重視されてきている。OECDの「Learning Compass 2030(学びの羅針盤2030)」では、個人と社会のウェルビーイングは「私たちが望む未来(Future We Want)」であり、社会のウェルビーイングが共通の目的地とされている。
横浜市立大学データサイエンス学部 上田雅夫教授、YCUコミュニケーション・デザイン・センター 西井正造助教らの研究グループは、都内に本社を置くトイレメーカーと共同で、「ウェルビーイングと職場のトイレ環境の関係」に関するウェブ調査を実施した。本調査では、変量効果モデル(グループ間の差を明らかにする手法の一つ)を用いて、職場のトイレの満足度が働く人の「生活全体の満足度(Subjective Well-being: SWB)」に与える影響を定量的に分析した。その結果、職場のトイレの満足度が仕事の満足度に影響を与え、さらにその仕事の満足度が生活全体の満足度(SWB)に寄与することが判明した。そして、このトイレの満足度が仕事の満足度に与える影響度は男女で統計的に差がなく、トイレに対する満足度が形成されれば、性別によらず仕事に好影響を与えることが分かった。また、トイレの満足度に影響を与える要素を調査したところ、男性は「嫌なにおいがしない」が1位となり、次に「空間のゆとり」を重視し、女性は「清潔さ」、「空間のゆとり」を重視していることが明らかとなった。さらに、男性に対しては、「洗面台の広さ」「明るさ」などの機能性・視覚的快適性を強化することが重要であり、女性に対しては、「手荷物スペース」「コート・上着をかける場所」「室温」などの細やかな配慮と快適性を提供することが満足度に影響するという結果であった。
今回の調査では、職場のトイレという一見ささやかな空間が働く人の生活の満足感にまでつながる可能性を示した。トイレの満足感に影響する要因は、男女で全て共通ではなく、一致するものもあれば異なるものもあった。このことは、トイレを利用する目的、ニーズが男女間で異なることを考えれば自然なことと思われ、このニーズをどのように反映し、実現するかが次の課題になる。
ウェルビーイングと職場のトイレ環境の関係について調査を実施 ~職場トイレの快適性が仕事の満足度ひいてはウェルビーイングにつながることを示唆~ | YCU Research Portal