「CP4715」の慢性のアレルギー性結膜炎への改善効果を発見
-世界初のアレルギー性結膜炎に対する分子治療薬の開発へ-
アレルギー性結膜疾患の罹患率は全人口の約45%に達しており、その中でもアトピー角結膜炎(AKC)は全人口の約5.3%、つまり20人に1人が罹患する頻度の高い疾患である。AKCはアトピー性皮膚炎に伴う顔面および眼瞼の皮膚病変を有し、通年性の結膜炎症状を呈する。慢性的な痒み、目やに、異物感などが特徴である。また、同じく慢性アレルギー性結膜炎に分類され、症状が類似する春季カタル(上眼瞼結膜や角膜輪部に増殖性変化を生じる重症型アレルギー性結膜疾患)の罹患率は約1.2%と報告されている。これらの疾患では、上眼瞼結膜に直径1 mm以上の隆起病変である巨大乳頭を形成するなど増殖性病変を伴うことがあり、重症化すると失明につながる可能性が指摘されている。現在、治療薬としてステロイド点眼薬および抗アレルギー点眼薬が保険適応となっているが、効果が不十分な症例が存在し、副作用も問題となっている。そのため発症原因となる特定分子を標的とし、副作用の少ない新規治療薬の開発が求められているが、慢性アレルギー性結膜炎に対して選択的に作用する分子標的薬はいまだ実用化されていない。
佐賀大学医学部分子生命科学講座アレルギー学分野の出原賢治特任教授、同講座分子医化学分野の布村聡准教授らの研究チームは、富山大学の北島勲博士、日本大学医学部附属板橋病院眼科の松田彰准教授らとの共同研究により、アトピー性皮膚炎治療薬として開発が進められているペリオスチン阻害剤「CP4715」が、慢性アレルギー性結膜炎、とくにAKCに対して著明な改善効果を有することを明らかにした。「CP4715」が点眼薬や眼瞼用クリームとして開発されれば、慢性アレルギー性結膜炎に対する世界初の分子標的治療薬となる可能性がある。
研究チームはこれまでの研究において、鶴見大学・藤島氏による解析により、AKCや春季カタル患者の眼病変において、体内タンパク質の一種であるペリオスチンが高発現することを見出していた。さらに2019年には、富山大学との共同研究によりAKCの病態に類似したモデルマウスを確立し、「FADS(Facial Atopic Dermatitis with Scratching)マウス」と命名した。このモデルマウスの眼病変においてもペリオスチンが高発現していることから、ペリオスチンが病態形成の大きな原因になっていると考えられていた。
そこで、生まれつきペリオスチン遺伝子を持っていないFADSマウスを作製したところ、眼病変が発症しない、あるいは極めて軽度となることが明らかとなり、ペリオスチンが病態形成の重要因子であることが証明された。さらにAKCを発症したFADSマウスに「CP4715」を点眼投与した結果、眼病変が著明に改善し、炎症および血管新生の改善も確認された。
今後、「CP4715」は点眼薬や眼瞼クリームとしての臨床応用が期待されており、実現すれば世界初の分子標的治療薬となる可能性が高い。本研究成果は、アメリカアレルギー臨床免疫学会誌『Journal of Allergy and Clinical Immunology』において、日本時間11月6日午前3時にオンライン公開された。
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