歯周病が腎臓の炎症を引き起こすメカニズムを動物実験で解明
歯周病とむし歯は、歯科の二大疾患といわれており、成人期において歯を失う原因の大半を占める。厚生労働省によると、歯周病は歯と歯肉の隙間(歯周ポケット)から侵入した細菌が、歯肉に炎症を引き起こした状態(歯肉炎)、それに加えて歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてグラグラにさせてしまう状態(歯周炎)を合わせたものだと定義されている。同省が3年ごとに実施している「患者調査の概況」令和5年調査によると歯肉炎及び歯周疾患で治療を受けている患者数は1,897万3,000人までのぼり、いまや日本人の国民病として問題となっている。この歯周病は、人が歯を失う最大の原因であり、口腔内の健康を脅かすとともに腎臓の炎症をも引き起こす病気でもあるとされているが、その具体的なメカニズムは分かっていない。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野のMohammad Nurhamim大学院生、岡山大学学術研究院医歯薬学域(歯)予防歯科学分野の丸山貴之准教授・江國大輔教授、および宝塚医療大学の森田学教授らの研究グループは、歯周病を発症したラットに高発現したmicroRNAが、血流を介して腎臓に到達し、腎臓において炎症に関与する遺伝子の発現を調節することを解明した。
研究の結果、歯周病を発症した組織では「miR-128-3p」という特定のmicroRNA(21~23塩基程度の一本鎖RNAで、遺伝子発現の調節に関与しており、さまざまな疾患の発症と進行に関与しているとされるRNA)が大量に作られることが判明した。この物質は、核酸やタンパク質を遠隔組織へ運ぶ役割を持つ細胞外小胞という小さなカプセルに含まれた状態で放出され、血流に乗って腎臓まで到達する。腎臓に届いたmicroRNAは、腎臓内の特定の遺伝子の働きを抑制し、それまで抑えられていた炎症に関与する遺伝子の発現が高まる。その結果として腎臓のフィルター機能を担う糸球体が損傷を受け、炎症が引き起こされるというメカニズムが明らかとなった。
本研究においての、歯周病が腎臓への炎症を引き起こす新たなメカニズムの解明によりヒトにおける歯周病と腎臓の病気との関係を解き明かすヒントになる可能性がある。さらに、microRNAの制御の視点から、腎臓病の予防にも貢献できると期待される。
この研究成果は、令和7年12月3日、学術雑誌「Dentistry Journal」に掲載された。