コロナ禍の行動制限とその解除が体組成と血糖管理に与える長期的影響を解明
2019年末から爆発的な感染拡大を起こした新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限は、人々の生活様式に大きな変化をもたらした。特にダイアベティス(糖尿病)を含む耐糖能異常(体内に取り込まれた糖を適切に処理する能力が低下した状態)を有する人では、身体活動の低下や食習慣の変化が血糖管理に影響することが懸念されてきた。これまで、緊急事態宣言下における血糖値や体重の変化については報告があったが、行動制限の解除後まで含めて、血糖管理、体組成、生活習慣がどのように推移したかを長期的に検討した研究は限られていた。
京都大学の村上隆亮 医学研究科助教、小林亜海 医学部附属病院 疾患栄養治療部 管理栄養士、境内大和 医学研究科研究生、矢部大介 同教授らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う行動制限とその解除(コロナ禍前から5類感染症移行後)が、耐糖能異常を有する人の血糖管理や体組成に与えた長期的な影響を明らかにした。
本研究では、京都大学医学部附属病院に外来通院中の耐糖能異常を有する221名を対象に、①コロナ禍前(2019年)、②緊急事態宣言下(2020~2021年)、③5類感染症移行後(2023年)の3時点におけるHbA1c値(過去1~2か月程度の平均的な血糖状態を反映する指標)および体組成の変化を後ろ向きに解析した。体組成はBIA法(生体電気インピーダンス法のことで、体に微弱な電流を流し、その抵抗値から体脂肪量や骨格筋量などの体組成を推定する方法)を用いて評価し、生活習慣の変化については2023年時点の質問票調査を用いて検討した。
結果として、HbA1c値は5類感染症移行後にコロナ禍前と比べて有意に高値を示した。体重およびBMIは緊急事態宣言下では大きく変化しなかった一方、5類感染症移行後には低下した。体脂肪量については緊急事態宣言下で増加し、その後減少したが、骨格筋量は全期間を通じて減少した。また、緊急事態宣言下にHbA1c値が悪化した68名を対象とした探索的解析では、その後さらにHbA1c値が悪化した群と改善した群に分かれた。質問票データのクラスター解析では、身体活動低下の持続と間食増加を特徴とする行動パターンを示すクラスターで、5類感染症移行後のHbA1c値上昇が大きいことが示された。
本研究により、社会的な行動制限が解除された後も、耐糖能異常を有する人では血糖管理への影響が残存しうることが示された。そしてその背景には、身体活動や食習慣の変化に加え、体組成の変化が関与している可能性が考えられる。今後は、こうした生活習慣や体組成の変化を早期に把握し、患者一人ひとりの背景に応じた治療サポートにつなげることで、長期的な血糖管理の改善に役立てることが期待される。