クローン動物からクローンを作ることには限界が
-哺乳類がクローン生殖できない理由が明らかに-
これまで人類は効率よい食糧生産のために、偶然生まれてくる優秀な個体を選抜し、数百年かけて品種改良を行ってきた。一方、クローン技術を用いると、優秀な個体とまったく同じ形質を持つ個体を短期間で、しかも大量に作り出すことができるようになると考えられている。現在、厚生労働省はクローン技術を利用して生産された食品の安全性を確認するために家畜クローン技術の安全面の検証やバイオテクノロジー応用食品の確保に関する研究に取り組んでいる。さらに、クローン技術によって老齢や事故で不妊になった動物から子供を作ることや、絶滅危惧種を救済することも可能になる。しかしドナー(元の個体)の細胞を使い切ってしまったら、もうその個体のクローンは作れない。
山梨大学と放射線影響研究所は、1匹のマウスの体細胞からクローンマウスを作り、そのクローンマウスの体細胞からクローンマウスを作る「連続核移植(再クローニング)」を20年間続けた。当初、再クローニングは無限に続けられると考えていたが、突然変異の蓄積により出産成績は徐々に低下し、58世代目で再クローニングの限界がきてしまった。
研究チームは、2005 年に1匹のメスマウスをドナーとして選び、体細胞を採取し、この細胞から核移植技術によりクローンマウスを作り出してこれを第1世代とした。約3か月後、大人に成長したクローンマウスから卵丘細胞を取り出して再クローニングを行い、第2世代の再クローンマウスを作出した。以降同様に3-4カ月ごとに再クローニングを繰り返し、再クローンマウスの成功率や出生時の体重の推移などを明らかにした。
その結果、再クローンマウスの成功率は、世代ごとにばらつきが大きいものの、第1世代の7.4%から徐々に高くなり、26世代目には15.5%に達したが、この世代以降、クローンの出産成績は徐々に低下しはじめ、58世代目の成功率は0.6%まで低下した。そして、生まれた 58 世代目の再クローンマウスは生後数日以内に死亡したことで、クローン生殖の限界が科学的に示された。この原因を明らかにするため再クローンマウスの全ゲノム配列を調べたところ、クローンマウスは普通の交配で生まれるマウスに比べ、突然変異の発生頻度が3倍高いことが判明した。さらに、世代を重ねるにつれて、生命に深刻な影響を与える「重い突然変異」が増えていくことも明らかとなった。
これまでクローン動物のDNAはドナーと完全に同じであり、再クローニングは無限に続けられると考えられていたが、本研究により、少なくとも現在の核移植技術では自然交配よりも高頻度にDNA変異が生じるため、再クローニングには限界があることが示された。今後人類がクローン技術を利用するためには、クローンに関してより深い理解が必要であり、有害な変異を引き起こさない安全な核移植技術の開発が必要である。
本成果は2026年3月25日午前1時(日本時間)に『Nature Communications』に掲載された。
【プレスリリース】クローン動物からクローンを作ることには限界が! -哺乳類がクローン生殖できない理由が明らかに- – 山梨大学生命環境学部