熱中症の既往がある人で白内障リスクが約2倍に
近年、平均気温の上昇に伴い熱中症患者数は増加している。厚生労働省によると、令和5年における職場での熱中症死傷者数は、1,106人であり、過去3年の増加傾向は顕著だ。一方、白内障は世界的に主要な視覚障害の原因の一つであり、高齢化の進行とともに今後も患者数の増加が見込まれている。日本眼科学会によると、白内障とは目の中にある水晶体というレンズが混濁することで視機能が低下する病気とされている。白内障の原因は主に加齢だが、喫煙、紫外線曝露、放射線曝露や糖尿病、アトピー性皮膚炎などは白内障を進行させる。症状としては、視力低下、複視(だぶって見える)、羞明(まぶしさが強くなる)などである。軽度の白内障では自覚症状が乏しく、通常は長い年月をかけてゆっくり進行するため、早期発見が難しい。
白内障にはいくつかの種類があり、その一つである核白内障については、加齢に加えて熱ストレスとの関連が指摘されてきた。近年では、気温が40℃を超える「酷暑日」が発生するなど、酷暑が人々の健康に及ぼす影響への関心が高まっている。
こうした気候変動を背景に、熱中症と白内障との関連について大規模な調査が実施された。名古屋工業大学および金沢医科大学の共同研究において、東京および大阪に本社を置くIT企業が運営する医療レセプトデータベース「REZULT」を活用し、熱中症の既往と白内障発症リスクの関連が全国規模で解析された。本研究では、2010年4月1日から2023年12月31日までの全国約246万人分の保険加入者データを用い、熱中症の受診歴がある人とない人を追跡比較した。
解析では、年齢、性別、地域、糖尿病の有無などの要因を調整した上で、熱中症既往の有無と白内障発症リスクが統計学的に比較された。併せて、年代別、性別、糖尿病の有無による違いについても検討された。Cox回帰分析の結果、熱中症の既往がある人は、ない人に比べて、その後の白内障発症リスクが1.96倍高いことが示された。次に、白内障の一種である核白内障に限っても、発症リスクは2.16倍と高いことが確認された。さらに、年代別および糖尿病の有無別の解析では、30代で2.99倍、糖尿病のない人で2.44倍と、従来あまり高リスクと見なされてこなかった層で関連がより強くみられた。なお、核白内障に限った解析でも、非糖尿病者では3.00倍と高い関連が認められた。
本研究成果は、熱中症予防の意義を急性期対策にとどまらず、長期的な眼の健康という観点からも示唆的なものである。なお、本研究は統計的な関連を示したものであり、因果関係を直接示すものではない。本研究成果は、学術誌「Environmental Research」(2026年3月)に掲載された。
【プレスリリース】熱中症の既往がある人で白内障リスクが約2倍 ~全国規模の保険者データベースを用いた大規模分析~ | 研究活動 | 金沢医科大学