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短信:東京医科大学、MRIで見逃される前立腺がんを色で可視化

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東京医科大学、MRIで見逃される前立腺がんを色で可視化

 

 前立腺がんは、日本の男性で最も罹患数が多いがんであり、厚生労働省の「2023年全国がん登録罹患数・率報告」において、2023年の日本における前立腺がんの新規患者数は約10.2万人とされている。前立腺がんは加齢が最大のリスク因子であり、罹患率は高齢になるほど増加する。死亡数は肺がん・大腸がんなどより少なく予後が良いがんであるため、治療選択肢を広げるためにも早期発見が非常に重要となる。前立腺特異抗原(PSA)検査の普及は、がんの早期発見を可能にした一方で、生命予後に大きな影響を与えない低悪性度のがんまで発見されることがあり、過剰診断や過剰治療が課題となっている。そのため現在では、治療が必要な「臨床的に意義のある前立腺がん(clinically significant prostate cancer: csPC)」を正確に見つけ出すことが重要視されている。

 近年では前立腺生検を行う前に MRI 検査を実施し、その結果をもとに生検の必要性や標的部位を判断する診療が広く普及している。特に、MRI 所見を標準化して評価する PI-RADS(Prostate Imaging-Reporting and Data System)は、前立腺がん診断において重要な役割を果たしているのだが、PI-RADS による評価は、読影医の経験や技量に影響を受けるため、施設間や読影者間で判定にばらつきが生じることが知られている。MRIで疑わしいと判断された病変の中に実際には重要ながんが含まれない場合や、逆に重要ながんが見逃される場合もある。

 東京医科大学泌尿器科学分野の大野芳正主任教授、岡田充生助教、放射線医学分野の斎藤和博主任教授らの研究グループは、前立腺 MRI のADC(Apparent Diffusion Coefficient:見かけの拡散係数)値を用いて病変を色分け表示する新たな二色カラーマップを開発した。これにより、臨床的に意義のある前立腺がんの検出やリスク評価を支援し、従来の MRI 読影で見逃される病変の発見に役立つ可能性を示した。

 本研究では、前立腺MRI のADC値を利用して病変を自動的に色分け表示する「ADC ベース二色カラーマップ」を開発し、その臨床的有用性を検証した。MRI 融合標的生検(MRIで見つけた怪しい部分を、リアルタイムの超音波画像に重ね合わせて、生検針を正確に刺す技術)を施行した 108 例および前立腺全摘除術を施行した93 例を対象に解析を行った結果、カラーマップで陽性と判定された病変では、陰性病変と比較して臨床的に意義のある前立腺がんが有意に高率に検出された。特に PI-RADS 4 (がんの可能性が高い)病変において、がんリスクをより正確に評価できる可能性が示された。さらに、従来の MRI 読影では指摘されなかった病変の中にも、病理学的に重要ながんが含まれていることが明らかになった。

 本技術は、既存の MRI 画像から簡便に作成できるため、新たな高額機器や複雑な人工知能システムを必要とせず、幅広い医療機関への導入が期待される。読影医の経験に依存しやすい前立腺 MRI 診断を客観的に支援することで、診断の均てん化や医療の質向上に貢献する可能性がある。さらに、不要な生検の回避や臨床的に重要ながんの早期発見につながれば、患者負担の軽減と適切な治療選択の実現にも寄与することが期待される。

 本研究結果は、2026年6月1日、医学誌「Cancers」(IF: 4.4)に掲載された。

 

東京医科大学,MRIで見逃される前立腺がんを色で可視化

がん登録 |厚生労働省

厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告」001630323.pdf